歯がグラグラしていると痛みが生じたり、つい気になって触ったりしてしまいますよね。原因の多くは歯周病といわれていますが、そのほかにもいくつか原因があり、放置しておくとさらに悪化してしまいます。
なぜ歯周病で歯がグラグラするのか、ほかの原因はなにか、グラグラし始めた場合の治療方法などについてまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
1.歯がグラグラする原因
1-1.歯がグラグラする多くの原因は歯周病
歯がグラグラする症状で多くの人が思い浮かべるのが、乳歯が大人の歯に生え変わる経験ではないでしょうか。歯がグラグラする原因はいくつか考えられますが、大人になってから永久歯がグラグラするという症状は、原因の大半が歯周病の悪化です。
では、歯周病とはどんな病気なのでしょうか。
歯周病は、ほとんどの人の口の中に存在している歯周病菌という細菌が引き起こす炎症性の病気で、悪化すると歯ぐきや骨が壊されてしまいます。歯を失う原因の8割以上が歯周病か虫歯によるものといわれています。
歯周病菌は体の中に存在している常在菌のひとつですが、歯磨きが正しくできていなかったり、磨き足りない部分があったりすると、その数が徐々に増えていきます。
そして、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきのすき間にある溝に細菌を含む歯垢(プラーク)がたまり、それが原因で歯ぐきの内側で炎症を起こしてしまうのです。
1-2.歯周病以外の原因は
歯がグラグラする症状で、歯周病以外の原因として考えられるものがいくつかあります。グラグラしている歯が永久歯なのか、乳歯なのかでも内容は違ってきますので、それぞれの原因を追ってみましょう。
■子どもの場合
・乳歯からの生え変わり
小さい子どもの乳歯がグラグラしている場合、考えられる原因はいくつかありますが、その多くが乳歯から永久歯への生え替わりです。
乳歯の生え替わりは成長に必要な過程で、病気ではありませんので特別な処置は必要ないといわれています。
時々、このグラグラから早く解放されたいがために、歯に糸を結びつけて無理に抜こうとするのを見かけますが、場合によっては歯ぐきが裂けてしまうこともあるのでやめておいた方がよいでしょう。
・外傷によるグラグラ
子どもの歯がグラグラする原因として、転んだりふざけあったりした事故による歯のケガも多く報告されています。歩行が不安定な1〜3歳ころに多いのが、転んでテーブルやおもちゃなどに口元をぶつけて歯を傷つけてしまう事故です。
そして小学生くらいになると、行動範囲が増えて活発に動き回るようになるため、遊具や高い場所から転げ落ちたり、転倒したりして歯をケガしてしまう事故が見られます。
■大人の場合
・歯の根の病気、歯の根が割れている
大人の歯がグラグラする原因として考えられることは、歯周病以外にもいくつかあります。
歯根破折(しこんはせつ)という言葉を聞いたことがありますか?
歯の根っこにヒビが入り壊れ折れてしまう症状のことで、この状態になると折れた歯がグラグラし始めます。この歯根破折の原因もまたいくつかあげられますが、重度の虫歯や神経をとったあとの弱い歯に起こりがちな症状といわれています。
・噛み合わせや歯ぎしり
噛み合わせの悪さ、歯ぎしりなどによって、一部の歯にだけ偏った力がかかってしまうことが原因で、咀嚼の際にクッションとなっている歯根膜に負荷がかかり、歯を支えられなくなってしまうことがあります。その結果、歯がグラグラしてしまうというケースもあります。
・外傷
子どもと同じように、大人もスポーツや不慮の事故などで口元を強く打ち、歯を支える骨の部分にダメージを受けて、根元からグラグラになってしまうケースがあります。
強い衝撃により歯が抜け落ちてしまう症状を完全脱臼、歯の位置はずれずグラグラしている症状を亜脱臼、さらに歯ぐきの奥に歯がめり込んでしまう症状のことを陥入(または埋入)といいます。
・矯正治療
歯の矯正治療をすると、「歯がグラグラして不安に感じる」という人が少なくありません。
歯と歯ぐきの間には、歯根膜と呼ばれる健康な状態で0.15㎜ほどの血液の膜があり、これがクッションの役割をしています。
このクッションによって、歯は正常の状態でも0.2mmくらいは上下左右に動くことができます。さらにこの膜の中には歯周靭帯という大量の繊維があって、これがロープのような役割をしており、歯は歯ぐきから吊るされている形となっています。
矯正治療によって動かしたい方向に向け負荷をかけ続けると、歯根膜が活性化します。この負荷によって動かしたい側の歯根膜は縮み、周囲の骨を溶かして吸収しますが、逆側の歯根膜は引っ張られて新しい骨を作ります。
この骨の代謝活動によって歯が動きますが、歯周靭帯の働きで歯は歯ぐきとつながっていますので、歯がグラグラしても抜けることはありません。
2.歯がグラグラしている場合の治療方法
2-1.グラグラした歯は動かさない
歯がグラグラしていると、その場所が気になりついつい舌や指で動かしたくなってしまいますが、大切なのは動かさないことです。動かすことで症状が悪化して、骨に悪影響を与えてしまうこともありますので、控えるようにしましょう。
さらに、固いものや歯にくっつきやすい食べ物などは避けるようにしましょう。これらの食べ物も、歯のぐらつきをさらに進行させてしまう恐れがあります。
これらの行動を避け、速やかに歯医者さんを受診するようにしましょう。
2-2.歯周病の治療方法
歯周病を治すために必要な治療は、まず、原因となっている菌を取り除くことです。そして、菌がつきにくいように口腔内を整えることが大切です。
具体的には、スケーラーと呼ばれる道具で、歯の表面、根の周りの歯垢や歯石を取り除きます。軽度の歯周病は基本的な治療で改善が見られることが多いのですが、改善が見られない場合には外科治療を行うケースもあります。
2-3.外傷や噛み合わせの治療方法
・外傷
事故などによる外傷は、まずレントゲンで歯の根や周りの骨の状態を確認し、その症状に合わせた治療がなされます。
歯がグラグラする亜脱臼の場合、基本的には安静にして様子を見ます。ただし、食事の時に痛みがある場合には、歯を2週間程度固定することもあります。
脱臼して完全に抜け落ちてしまった場合でも、早急に適切な処置を行って歯を元の位置に整復し、固定処置を行って数週間経過を見れば(期間は傷の状況にもよる)もとのよ
・噛み合わせや歯ぎしり
噛み合わせが原因で歯がグラグラする場合は、根本的な問題が歯並びにあるため、矯正治療で歯並びを整え一箇所に負担がかからないようにします。
また歯ぎしりの場合は、就寝時にナイトガードと呼ばれるマウスピースを装着し負担を軽減する方法があります。
3.歯周病は予防が大切
3-1.歯のグラグラを招かないために歯周病予防
ここまで、歯がグラグラするさまざまな原因と治療方法について見てきましたが、その多くは歯周病が原因です。歯周病は、日常的な歯磨きである程度予防が可能な病気です。
歯周病の原因は歯周病菌です。この歯周病菌がかたまりになった歯垢(プラーク)は、水に溶けにくく、歯の表面にくっついてしまうため、歯磨きをして取り除くことが大切です。
しかし、毎日歯を磨いていたとしても、歯と歯の間や奥歯などに歯垢が残ってしまうこともあります。そして、この磨き残しが歯周病菌の温床となってしまうのです。
自宅でのケアを補うのが、歯科医院での定期的なメンテナンスです。歯科医院でのメンテナンスは、歯垢の除去はもちろん、歯垢が石灰化して硬くなった歯石を取り除くこともできます。
また、歯周病が悪化する原因として、疲れやストレス、喫煙などもあげられます。
バランスのとれた食事、十分な睡眠など規則正しい生活を心がけること、そしてアルコールやタバコを控えることなど、生活習慣を見直すことも大切です。
3-2.子どもも歯周病になる恐れがある
子どもも歯周病のひとつである歯肉炎になることがあります。歯肉炎は細菌のかたまりである歯垢が原因となる病気で、歯周病への第一歩です。ケアをせずに放置してしまうと、歯を支える歯周組織に炎症が広り、やがては歯周病へと進行してしまいます。歯肉炎は一般的に痛みを伴わないため、自覚症状がなく気がつきにくいので、定期的に大人が子どもの歯をチェックする必要があります。
予防と改善には歯磨きが重要であり、ていねいで正しい歯磨きを行うことが予防につながります。歯磨き以外でも、甘いものを控える、口呼吸の癖を治すなど、さまざまな予防策がありますので、歯磨きと併せて取り入れていくとよいでしょう。
4.まとめ
歯がグラグラする原因として、歯周病や外傷、噛み合わせなどがありますが、それぞれの原因に合わせた治療や予防が大切です。グラグラしているからとつい指や舌で触ってしまいがちですが、できるだけ動かさずに早めの受診を心がけましょう。
また、歯周病は大人だけではなく子どもでも発症する恐れがありますので、注意が必要です。子どものうちから定期的に歯医者さんへ訪れて、歯のメンテナンスを習慣づけることをおすすめします。
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監修医
遠藤 三樹夫先生
遠藤歯科クリニック 院長
経歴
1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
現在に至る
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