歯がぐらぐらして痛む、重度の歯周病で抜歯が必要といわれたなど、歯周病による抜歯についてお悩みではないですか?歯周病による抜歯基準は難しく、できれば歯を残したいと考えている方も少なくありません。
この記事では、一般的な歯周病の抜歯基準、どんな方法で抜歯を行うのか、抜かずに済む治療方法はないのかということについてまとめています。
この記事の目次
1.歯周病の原因と抜歯の基準
1-1.歯周病を招く原因とは
日本人の多くが発症している歯周病。しっかりと歯磨きをしているのに、虫歯や歯周病になってしまうとお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
歯周病とは歯を支えている歯茎や骨(歯槽骨:しそうこつ)が溶けてしまう病気で、症状が進行すると歯を失う原因となります。歯周病を招く主な原因は、歯垢(プラーク)のなかにある歯周病菌です。
歯垢は粘着性のある細菌の塊で、お口のなかをしっかりとケアしなければ増殖し、時間がたつと歯石に変化します。歯と歯茎の間にある歯周ポケットにはこの歯垢や歯石が溜まり、細菌から発生した毒素が歯茎に悪影響を及ぼします。
1-2.歯周病が原因による抜歯基準
歯周病は大きくわけて、初期・中等度・重度で診断されます。抜歯が視野に入ってくるのは中等度から重度ですが、状態によって変わります。
一般的な抜歯基準としては以下になります。
・歯周ポケットが6mm以上
・歯槽骨吸収が歯根の1/3以上
・歯の動揺度が大きい
あくまで一般的な基準です。歯の根が割れる歯根破折や、膿瘍(のうよう)といった症状が解消されない、虫歯が進行しているなど、歯周病とそのほかの要因が重なり、抜歯となるケースもあります。
1-3.抜歯は歯科医師とよく相談するのが大切
抜歯の一般的な基準について説明しましたが、歯はできるだけ残したいと考える方も少なくありません。歯を残すことでデメリットとなる場合は、抜歯を推奨されることもありますが、歯医者さんによって判断が異なるケースもあります。治療方針や導入している治療内容によって、抜歯以外の選択肢を広げてくれる歯医者さんもあります。
歯を残すメリット・デメリット、どのような治療方法があるのかについて、歯科医師によく相談したうえで決めましょう。
2.一般的な抜歯の方法
痛い、怖いと懸念している方も多い抜歯。一般的な抜歯の方法は以下のような流れになります。
1.表面麻酔
「治療中の痛みを抑える麻酔注射自体が苦手」という方は少なくありません。その不快感を軽減させるために、まずは歯茎の表面に麻酔を塗布します。
2.麻酔
抜歯する際の痛みを軽減するために、麻酔をかけます。歯医者さんによって麻酔方法は異なりますので、どのような方法や機器を使っているのか、不安な方は事前に確認しておきましょう。
3.歯周靭帯の切除
歯周靭帯によって歯と歯茎はくっついているので、切除して歯を抜きやすくします。
4.てこ(梃子)で歯を脱臼させ、鉗子(かんし)で歯の抜去
歯は骨に埋まっている状態ですので、てこを歯と骨の間に入れて脱臼させます。そして鉗子で歯を抜き去ります。
5.抜歯窩(ばっしか)の確認
歯を抜いたあとのくぼみを「抜歯窩」といいます。この抜歯窩には、歯の根が腐っていたときやぐらぐらしていた場合に、悪い組織が残っているケースがあります。しっかりと取り除いてきれいにします。
6.止血
最後に止血します。ガーゼを噛んで止血するのが一般的ですが、抜歯窩が大きいときや血が止まらない場合は、縫合することもあります。
一般的な抜歯方法は以上です。抜くことになる歯や口腔内の状態に応じて、抜歯方法は変わります。
3.抜歯以外の治療方法はある?
3-1.重度歯周病治療(再生療法)
重度の歯周病では抜歯を推奨されることがありますが、歯周組織再生療法を導入している歯医者さんもあります。どうしても抜歯をしたくない、ほかの治療方法も知りたい方は、再生療法を取り入れている歯医者さんを探してみましょう。
歯周病再生療法には、「GTR法」「エムドゲイン」「骨移植術」などがあります。
3-2.GTR法
GTR法とは、「guided tissue regeneration」の略です。まず歯周ポケットに溜まった歯石などをきれいに取り除きます。歯周組織は破壊する原因を取り除くことで再生し始めますが、歯肉が入り込んでしまうと再生を妨害してしまいます。
そのため、メンブレンと呼ばれる人工膜で、歯肉が入り込まないようにします。歯周組織が再生されるまで、一定の時間がかかるほか、メンブレンを取り除く再手術が必要です。
3-3.エムドゲイン法
エムドゲイン法ではGTR法のような膜ではなく、歯周組織の欠損部分にジェル状の薬剤を注入します。GTR法と同様に、歯肉を入り込むのを阻止することで再生を促す方法です
この薬剤は時間経過とともに吸収されるので取り除く必要がなく、再手術の必要がないのが特徴です。
また、薬剤を使用した歯周組織の再療法はエムドゲイン法以外にもあります。
3-4.骨移植術
骨が溶けて欠損してしまった部分に、自身の骨、または人工の骨を移植する治療方法です。
しかし、自身の骨を利用する場合、骨を取り出す手術が必要なことに加え、移植した骨が吸収されてしまう、結合しないといった懸念もあります。骨移植を行う場合は、歯科医師とよく相談したうえで検討しましょう。
4.抜歯した後の注意点は?
歯が抜けた状態では安定性がなくなり、かみ合わせの問題や、抜歯した両隣の歯が倒れこんでしまうなど、さまざまな不具合を招きます。
そのため、ブリッジや入れ歯、インプラントなどの人工の歯で補う必要があります。ブリッジや入れ歯は保険診療で行えますが、使用する素材によっては自由診療となります。インプラントは自由診療です。保険診療と自由診療では大きく費用が異なりますので、見た目や使用する素材、費用面などよく相談して決めましょう。
5.まとめ
歯周病の抜歯基準は難しく、歯医者さんによって意見がわかれるケースもあります。できれば抜歯せず残したいところですが、抜かないことでデメリットが生じる恐れもあるため、歯科医師とよく相談する必要があります。
また、重度歯周病治療(再生療法)を取り入れている歯医者さんであれば、治療の選択肢が広がりますので、抜歯以外の選択肢がないのか気になる方は、再生療法も視野に入れてみましょう。
【監修医 松岡 浩司先生のコメント】
歯医者さんの中には、歯周治療専門に治療を行っている方もおみえになります。
重症ケースではこうした歯周病専門医を尋ねるのも一方法でしょう。
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