口腔機能の低下は子供も高齢者も起こりえる?日々の予防でリスクを軽減

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口腔機能が低下することで起こる「口腔機能障害」をご存じでしょうか?咀嚼(そしゃく)や飲み込む力が弱くなり、栄養不足や全身への悪影響を及ぼします。口腔機能障害に至る途中の段階には、「口腔機能低下症」があり、少しでも早く対処することで症状を軽減することが大切です。

この記事では、口腔機能障害や口腔機能低下症、検査方法や予防についてまとめています。

この記事の目次

1.口腔機能障害とは?

1-1.口腔機能障害の概要

口腔機能障害とは、口が本来果たすべき生活上の機能が年齢以上に衰えていく状態のことです。私たちは普段、食べ物を噛んだり、飲み込んだり、水分を誤嚥しないように調整したりしています。それらは無意識のうちに行っている行為であり、年齢が若く、口の機能が正常に保たれているうちは特に意識することもありません。

しかし、口の機能が衰えると物を噛んだり、唾液を飲み込んだり、舌の筋肉をうまく使ったり、といった健康ならば当たり前にできるはずの行為が正常に行えなくなり、口が使いにくくなることでさらに口腔機能が低下します。
口腔機能が低下すると、誤って胃液や食べ物、細菌などを気道に吸い込んでしまうことで引き起こされる「誤嚥性肺炎」を発症する危険性もあり、高齢者の場合は特に注意が必要です。
また、口腔機能障害は、以前は高齢者に多い障害とされてきましたが、現在では加齢以外の要因も重なって複合的に機能が低下していることを指し、高齢者だけの問題とは言い切れなくなっています。

口腔機能障害の前段階として、「口腔機能低下症」があります。食べる、飲む、舌を使う、という口の基本的な機能が年齢以上に衰えている状態を口腔機能低下症といい、これが進行すると口腔機能障害となります。

口腔機能障害

1-2.口腔機能障害の定義

口腔機能の低下は、「咬合力低下」「咀嚼機能低下」「嚥下機能低下」「口腔乾燥」「口腔不潔」「舌口唇運動機能低下」「低舌圧」といった七つの観点から判断され、三つ以上当てはまる場合は口腔機能低下症であるとされています。

高齢になると、誰であっても少なからず口の機能が低下し、スピーディに物を食べたり、水分を流し込んだりできなくなります。
しかし、口腔機能障害とは「年齢的な基準以上に口の機能が衰えている状態」を指し、40~50歳代でも前段階である口腔機能低下症の症状が見られるケースが少なくありません。

咀嚼、摂食嚥下は人が生きるうえで基本となる機能であり、口腔機能障害が進行すると若年層でもQOL(生活の質)が低下してしまいます。また口腔機能障害とされる段階まで悪化してしまうと、治療によって健康な状態まで改善することが難しくなるため、早期改善が望ましいとされています。

1-3.そもそも口腔機能とは?

口腔機能とは、咀嚼、摂食嚥下、発音、唾液による細菌の侵入防止などに関わる機能を総合的に指す概念です。そのため、食べることや話すことが主とされますが、口の役割は物を食べたり、水を飲んだりすることだけではありません。

口腔内には唾液が適度に分泌されており、唾液の殺菌作用によって細菌やウィルスが体内に侵入しにくくなるようになっています。機能が低下すると口腔内の細菌が繁殖しやすくなり、口臭や感染症のリスクがさらに高まってしまいます。

2.高齢者と子供に起こることが多い

2-1.高齢者の口腔機能低下

高齢者の口腔機能の低下は、加齢による自然な機能低下と見分けがつきにくく、治療が遅れやすいという特徴があります。

高齢者の口腔低下をできる限り維持すべく、介護施設や医療機関では、食事の様子を観察する、マッサージを取り入れるといった試みが行われています。

2-2.子供でも口腔機能が低下することも?

口腔機能の低下は今や、高齢者だけの問題ではなく、子供のうちから診断されるケースも増えています。

子供は通常、発達年齢に応じて食事内容を変えることで口腔機能を発達させていきます。そのなかでも「噛む」という行為は重要であり、子供の頃から歯ごたえのある物を食べることによって顎の筋肉や歯ぐきが鍛えられ、正常な歯列や噛み合わせを維持することにもつながっていきます。

口腔機能障害

しかし、柔らかく歯ごたえのない物ばかりを食べていると筋肉が鍛えられないばかりか、噛む、飲み込む、といった基本的な機能が発達しないまま大人になってしまいます。

こうした子供の口腔機能不全は、早期に治療することで改善されます。歯医者さんや家庭でも咀嚼や嚥下のトレーニングを続けることで、機能が少しずつ向上していくと考えられています。

3.口腔機能の検査内容

3-1.口腔機能の検査

口腔機能の低下は、前述した七つの機能を数値的に測定し、三つ以上の項目で基準に当てはまっていた場合に診断されます。機械による測定のほか、検査用のゼリーをかむ検査、質問票を使った検査などがあります。

口腔機能の低下には口内の乾燥も含まれ、ドライマウスになっていると口臭がきつくなることもありますので、最近どうも口臭が気になる、と家族が気づいたら検査をすすめるのも良いかもしれません。

3-2.検査にかかる費用

平成30年度の診療報酬改定により、口腔機能の検査費用に対して健康保険が適用されるようになりました。これにより、費用の心配をせずに口腔機能の検査を受けることが可能になりました。年齢にかかわらず、口腔機能に少しでも不安がある方は検査を受けましょう。

口腔機能障害

4.口腔機能障害の予防

口腔機能が低下してしまうことは決して特殊な状態ではなく、日常生活を少し見直すだけでもリスクを抑えることができます。

物をよく噛む、舌の筋肉をよく使う、といったちょっとしたトレーニングを子供のうちから続けることで、高齢になってもお口の機能をキープすることにつながりますので、歯医者さんのアドバイスを受けつつ、口腔機能をキープしていきましょう。

5.まとめ

口腔機能障害は加齢による影響以上に口腔機能が衰えてしまう状態を表します。高齢者と子供に多く、進行すると生活にも支障をきたしてしまうので、早い段階での治療・改善が必要です。

歯ごたえのある物を食べる、毎日の歯みがきで歯や歯ぐきを刺激するなど、簡単なトレーニングを続けるだけでも口腔機能をキープすることにつながりますので、歯医者さんと連携を取りながらお口のメンテナンスを続けていきましょう。

 

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監修医

遠藤 三樹夫先生

遠藤歯科クリニック 院長

経歴

1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
 現在に至る

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