口腔機能とは?お口の機能が低下する原因や検査方法、機能向上方法を紹介

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口腔機能

「最近、食べ物が飲み込みづらくなった」「口の中が乾きやすくなった」など、口腔機能の低下を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?この記事では、口や舌が果たす役割、それらが損なわれる原因を解説しています。また、それによってどんな症状が生じるのか、検査・改善方法も掲載しているので、口腔機能の低下が気になるという方は参考にしてください。

この記事の目次

1.口腔機能とは?お口の五つの主な役割を解説

お口にはさまざまな役割があり、中には何気なく使っている機能もあります。主な口腔機能としては、以下のようなものがあります。

 

1.かみ砕いて飲み込む

「歯でかみ砕き、飲み込む」のが、食事をとる際の一連の流れです。かみ砕くことを咀嚼(そしゃく)とも呼び、よく噛むことで顎の骨や筋肉に刺激を与えます。飲み込む動作は嚥下(えん)といい、咀嚼によって細かくなった食べ物や飲み物を消化管へ運びます。

 

2.唾液を分泌する

唾液にはいくつかの機能があります。咀嚼と嚥下をしやすくする、歯や粘膜の保護、抗菌作用、歯の再石灰化作用などがあります。

 

3.言葉を発音する

言葉を発することは、歯・顎・骨・口唇・舌の形・口の周囲の筋肉の機能や形によって行われます。歯並びや舌などの形状によっては、正しい発音ができないことがあります。

 

4.表情をつくる

笑顔や怒りなど、口元の形で表情をつくります。コミュニケーションを図るうえで大切な機能です。 またそれにより聴覚障害者の方々のコミュニケーション手段の手助けとなります。

 

5.噛み合わせの力と感覚

噛み合わせが悪いと食事だけではなく、身体の骨格や筋肉のバランス、平衡感覚などに影響を与えます。

 

どれかひとつでも口腔機能が欠けてしまうと、食事や体調に影響を与え、生活に支障をきたす恐れが出てきます。

 

口腔機能

2.口腔機能低下症とは?機能が低下する原因や検査方法を紹介

2-1.口腔内の衛生状態不良

口腔内の衛生状態が悪くなる原因として、歯垢や歯石の付着が挙げられます。毎日歯磨きをしていても、磨き残しから虫歯や歯周病を招いてしまうケースがあります。歯並びが悪いと磨きづらくなる、歯ブラシを強くあてすぎると毛先が歯にあたらないといったこともあり、セルフケアだけでは口腔内を清潔に保つのは難しいともいえます。

歯垢や歯石が残った状態では微生物が大量に発生し、「口腔衛生状態不良」となります。放っておくと誤嚥性肺炎、術後肺炎、術後感染、口腔内感染症などにつながる恐れがあります。

 

2-2.咀嚼・嚥下機能の低下

老化や怪我で歯を失うことにより、食べ物をうまく噛めなくなります。この状態がさらに悪化することを「咀嚼機能低下」と呼び、噛む力や舌の運動能力が弱くなります。合わせて、飲み込む力が弱くなることを「嚥下機能低下」といいます。食べ物をしっかり噛めないため消化不良や誤嚥につながる、食欲低下や低栄養などを招く恐れがあります。

咀嚼機能低下に対してはグミゼリーを咀嚼することによる検査、嚥下機能低下には嚥下スクリーニング検査といった方法で調べられます。

 

2-3.お口の中の乾燥

口の中がよく乾く、ネバネバする、舌が乾燥してヒリヒリするといった症状がある時は、「口腔乾燥症」の恐れがあります。これはドライマウスとも呼ばれ、唾液の分泌量が低下している状態のことです。原因としては加齢やストレス、口呼吸などが考えられますが、口や喉周辺の悪性腫瘍に対して放射線治療を行った術後の副作用や、稀には口腔乾燥を主たる症状とするシェーグレン症候群などの疾患である場合もあります。唾液には抗菌作用があるため、分泌量が減ることで虫歯や歯周病などを招くこともあります。

ドライマウスの疑いがある場合、口腔粘膜湿潤度を計測する機器や、唾液量の検査で調べられます。

 

2-4.噛む力の低下

老化や歯の欠損、歯並びや噛み合わせの悪化から、噛む力が弱くなることがあります。こうした力は咬合力(こうごうりょく)と呼ばれ、歯だけではなく筋力の低下も関係しています。噛む力が弱くなれば硬いものを食べるのは困難となり、咀嚼機能も低下するといわれています。

また、咬合力のバランスによっては一部分だけに大きな負荷がかかり、食事がしにくい、顎に痛みがでる、歯が動揺しだしたなど、さまざまな不調が出ることもあります。

噛み合わせや噛む力を調べるには、咬合力検査を行います。

 

2-5.舌と唇の運動機能低下

お口周りの筋力、全身疾患、脳・神経の機能低下などから、舌と口唇(こうしん:唇のこと)の動きが悪くなることを「舌口唇運動機能低下」といいます。

舌や口唇の機能が悪くなると、食事や生活機能、生活の質が低下します。

舌口唇運動機能低下を調べるには、運動速度や能力を測定するオーラルディアドコキネシスと呼ばれる検査があります。

 

2-6.低舌圧

舌が上あごに接触する力が衰えている場合、「低舌圧(ていぜつあつ)」であると考えられます。この機能が低下することで、咀嚼や食べ物を飲み込みやすい形状にする際に支障をきたし、嚥下にも影響を与えます。舌圧は、舌圧検査で調べることができます。

口腔機能

3.口腔機能を向上させる方法は?

3-1.お口の中のケア

口腔衛生状態不良を改善するには、歯磨き、舌や義歯の清掃、うがいなどが大切です。歯やお口の状態に合わせたケアが必要となり、自己流では磨き残しやケアが難しい部分が出てくることもあります。歯医者さんでクリーニングや口腔内のチェックをしてもらうために、定期検診を受けてみましょう。

 

3-2.噛む・飲み込む訓練

咀嚼・嚥下機能を向上させる方法には、シャキア訓練(頭部挙上訓練)や頸部等尺性収縮手技(頭部挙上訓練の変法)と呼ばれるものがあります。

シャキア訓練では、仰向けの状態からゆっくりと頭をあげ、足のつま先を見ます。

頸部等尺性収縮手技は、顎を力いっぱい引きながら、親指で顎を押し戻します。顎と親指で押しあいっこするイメージです。

そのほか、ガムやグミを噛む、口唇・舌・頬などのマッサージがあります。

 

3-3.唾液腺のマッサージやドライマウスの治療

お口の中が乾燥するドライマウスの対策としては、唾液腺マッサージがあります。

唾液腺マッサージは、次のような手順で行います。

①耳下腺:親指を除く4本の指を頬に乗せ、上の奥歯がある付近から口元に向かってマッサージします。

②顎下腺:顎下にある骨の内側のやわらかい部分に親指をあて、耳の下まで5か所ほど押します。

③舌下腺:両手の親指をそろえて顎下に置き、下顎から舌を突き出すようにゆっくり押す。

 

①~③を毎日くり返すことで、唾液の分泌量が増え口の乾燥を抑えることが期待できます。

 

 

3-4.舌やお口の運動

舌や口の機能改善には、いくつかのストレッチ方法があります。

 

①口の開閉:手のひらを頬にあてながら、お口を大きくゆっくり開けて「あー」と発声。次にお口を閉じて舌を上あごに押し当てながら「んー」と発声します。咬筋や側頭筋の機能を向上させます。

②舌だし:舌を出したりしまったりをくり返します。次に、舌を出した状態で左右に動かします。これは、咀嚼機能向上に期待が持てます。

 

そのほかにもストレッチ方法はいくつかありますので、無理のない範囲で続けましょう。

 

 

口腔機能

4.まとめ

口腔機能が低下してしまうと、食事や会話が難しくなり、生活の質が落ちてしまいます。老化とともに筋力や歯を失うこともありますが、虫歯やドライマウスによって若い世代の方でも口腔機能が低下しているケースがあるようです。

歯磨きや口内のクリーニングに加え、口腔機能を向上させるストレッチで予防・改善に努めましょう。

 

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監修医

遠藤 三樹夫先生

遠藤歯科クリニック 院長

経歴

1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
 現在に至る

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