虫歯の原因と言われると、歯磨き不足や甘いものを食べたことなどを考える方が多いのではないでしょうか。虫歯の原因には、大きく四つの要素があることがわかっています。ここでは、その要素について詳しくまとめていきます。また、虫歯にならないためにできることや虫歯になりにくい方の特徴、どのくらいの速さで進行するのかなども解説しています。虫歯のことを知りたい方は、ぜひ確認してみてください。
この記事の目次
1.虫歯は四つの要素が重なることで起こる
1-1.お口の中に虫歯菌がいるかどうかが影響する
虫歯の原因には、四つの要素があるとされています。一つ目は「細菌」です。お口の中には常にたくさんの細菌がいて、その種類や数は一人ひとり異なります。虫歯菌は生まれたばかりのときにはお口の中におらず、食器の共有などによって身近な大人からうつることがほとんどです。
1-2.歯の質は年齢や生活環境、遺伝などで決まる
二つ目は「歯質」です。歯の質も人によって違います。年齢、服用している薬、遺伝などによって異なるほか、生活環境や普段の歯磨きの仕方でも変わっていきます。歯の質が弱い方は、虫歯になりやすくなってしまいます。
1-3.糖分が細菌から酸を生み出すもととなる
三つ目が「糖分」です。飲食物に含まれる糖分は、虫歯菌のエサになります。虫歯菌は糖分を得ると酸をつくりだして歯を溶かします。甘いものだけではなく、多くの飲食物には糖分が含まれていますので注意が必要です。
1-4.飲食から歯磨きまでの時間が関係する
四つ目に、「時間」の経過があります。飲食のあと3分経つとお口の中が酸性になり、歯の表面が溶けやすい状態になります。その後時間をかけて再石灰化し、元の状態に戻っていきます。再石灰化とは、歯の表面のエナメル質という部分を形成し直す働きを指します。飲食後に歯磨きをせず酸性になっている時間が長いと、再石灰化が追いつかなくなり虫歯になりやすくなります。
2.虫歯を防ぐためには
2-1.菌を減らすことはできる
お口の中にいる細菌の種類は変えられませんが、数を減らすことはできます。そのためには、歯磨きと歯垢の除去が必要です。歯ブラシでていねいに磨くだけではなく、フロスをはじめとした清掃用具を活用してしっかりと汚れを落としましょう。また、歯医者さんでは専用の器具を使って、セルフケアでとりきれない歯垢の除去に対応しています。
2-2.フッ素などで歯の質を高めるケアをする
フッ素には歯質を強くする作用があります。酸をつくりだす過程をブロックするほか、抗菌作用も期待できます。さらに、唾液に含まれるカルシウムやリン酸を歯に吸着させる作用があり、歯の再石灰化を促します。
歯磨き粉や洗口剤にフッ素が含まれたものを使用したり、歯医者さんでフッ素塗布をしたりすることで、歯質の強化と虫歯になりにくいお口の環境づくりにつながります。
2-3.糖分の摂取を減らす
飲食物に含まれる糖分量の問題だけでなく、口の中でくっつきやすいもの、長い時間口の中に残るものの摂取を減らすことが虫歯予防につながります。例えば、チョコレートやキャラメルなどは糖分が多く、さらに歯にくっつきやすいため虫歯の原因になると言われています。こういったものを食べる回数を減らすことも大切です。
2-4.飲食後に歯磨きをし、間食を減らす
飲食後の歯磨きにより、酸性になっている口内を中性に戻したり、汚れを落としたりすることで虫歯のリスクを抑えられます。
また、食事だけではなく間食したり糖分を含む飲み物を飲み続けたりすると、酸性の状態が長く続くことになります。すると再石灰化が追いつかず、虫歯になりやすくなります。そのため、間食を減らすことも虫歯予防につながります。
3.虫歯になりにくい人はいるの?
3-1.もともとの歯質が強い
酸で溶けにくい歯の表面(エナメル質)を持っている、もともと歯質が強い方であれば、虫歯になりにくいと言えます。また、歯並びや歯の表面の形状によっても虫歯になりやすいかどうかは変わってきます。
3-2.唾液の分泌が活発である
唾液は消化酵素として飲食物に作用するだけではなく、お口の中を清潔にするためにも重要です。酸性になったお口の中を中和したり、食べかすや汚れを流したりします。また、抗菌作用がある物質が含まれているほか、歯の表面の再石灰化に必要なカルシウムやリン酸を補います。
こういった作用があるため、唾液の分泌が活発な方は虫歯になりにくいと言えます。
3-3.お口の中に虫歯菌がいない
生まれたばかりの赤ちゃんには虫歯菌がいません。1歳半から2歳半の間にまわりの大人からうつることがほとんどです。そのため、虫歯菌に感染する機会がなくお口の中に虫歯菌がいなかったり、菌の数が少なかったりすると、虫歯になりにくくなります。
4.虫歯の進行する速さはどれくらい?
4-1.年齢や食生活、歯磨きの状態などで異なる
スウェーデンにおける若年層を対象とした調査では、歯の表面に最初の虫歯が見つかってから象牙質に進行するまで約8年、そこから象牙質の厚さの半分を超えるまで約3~4年かかったとされています。
しかし、虫歯の進行速度は条件によりさまざまです。例えば、
・若い方ほど進行が速い
・初期虫歯が多い状態の方は進行しやすい
・虫歯のできている歯やその面によって進行具合が異なる
と言われています。
食生活や歯磨きの仕方も影響し、早ければ半年から1年で歯がボロボロになってしまうこともあります。
4-2.虫歯の進行を遅らせるためにできることは?
初期虫歯と言われる段階の場合には、進行が食い止められる場合があります。
・飲食後に歯磨きをしっかりとおこなう
・糖分を多く含むものをとりすぎない、間食を減らすなど食生活をコントロールする
・フッ素を塗布し、歯の再石灰化を促す
・噛みあわせを整え、汚れを付着しにくくする
これらの方法で、削らずに経過観察で済む場合があります。
しかし、これらの処置や判断については歯医者さんに相談することが大切です。
5.まとめ
虫歯の原因や予防のためにできることをご紹介してきました。虫歯になりにくい条件や、虫歯になった場合にはどのくらいの速さで進行していくのかについてもおわかりいただけたかと思います。虫歯を防ぐためにはきちんとした歯磨きや食生活のほか、歯医者さんでおこなわれている定期検診やクリーニングを受けることも大切です。
【あわせて読みたい】
・虫歯を放置するとどうなる?全身への影響や定期検診について詳しく解説
監修医
小川 隆介先生
後楽園デンタルオフィス 院長
経歴
2005年 日本歯科大学 卒業
2005~2006年 東京医科歯科大学摂食機能構築学 医員
2007~2011年 東京都内歯科医院 副院長
2011年 後楽園デンタルオフィス 院長就任
現在に至る
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