外傷性咬合(がいしょうせいこうごう)をご存じでしょうか?噛み合わせが原因で歯茎に過度な力を与えてしまうことで、咬合性外傷を招いてしまいます。歯周組織がダメージを受けると、さまざまな問題を引き起こす原因になるため、早めの対応が必要です。
この記事では外傷性咬合の原因、外傷性咬合によって起こる症状、治療方法などについて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
1.外傷性咬合(がいしょうせいこうごう)とは?
1-1.外傷性咬合ってなに?
若い年齢のうちから噛み合わせや歯のバランスがくずれている場合、外傷性咬合の可能性があります。外傷性咬合とはどのような病気で、日常生活ではどのような面で不都合があるのでしょうか。
ここでは、外傷性咬合についての基礎知識や原因、想定される主な症状について詳しく見ていきましょう。
外傷性咬合とは一種の噛み合わせ異常で、「咬合性外傷を引き起こすリスクのある噛み合わせ」を表します。
通常、人間の歯は上下がすき間なくしっかりと噛み合うことによって正常な咀嚼や発音が行えるようにつくられています。しかし、上下の噛み合わせに何らかのずれが生じ、歯や骨、歯茎などにダメージを与えてしまいます。
これが外傷性咬合であり、外傷性咬合によって生じたダメージを咬合性外傷と呼びます。外傷性咬合、咬合性外傷ともに歯科治療の対象であり、歯列矯正や噛み合わせのトレーニングによる矯正が行われます。
1-2.外傷性咬合の主な原因
外傷性咬合は、何らかの要因で歯列がずれてしまうことで起きます。主な原因として挙げられるのは、歯ぎしり、食いしばり、高さの合わない被せ物による圧力などがあり、先天性よりも後天的に生じる要因の影響が大きいと考えられます。
また、子供のうちから歯並びの悪さを放置しつづけていると外傷性咬合がより進みやすくなり、大人になってから急に症状が悪化するケースもあります。
外傷性咬合は、子供のうちから歯列矯正を行う根拠にもなっています。
1-3.外傷性咬合が招く症状
外傷性咬合はひとつの状態であり、このような噛み合わせに問題がある状態を放置していると、さまざまな症状を引き起こします。比較的軽度の症状としては、歯の表面の摩耗、顎関節の消耗などがあり、より重度になると歯根の周囲にある「歯根膜」という結合組織が破壊されます。
そのほか、歯周病を悪化させる局所的因子として外傷性咬合には大きな問題があります。
いずれにしても、噛み合わせ異常にともなう物理的圧力の偏りを放置するとますます治療が難しくなりますので、できるかぎり早い段階で治療を検討しましょう。
2.外傷性咬合の治療方法
外傷性咬合の治療方法としては、噛み合わせの調整が挙げられます。噛み合わせを調整しても、歯が根もとからぐらついている場合には、応急処置としてレジン系樹脂による固定が試みられる場合もあります。
また、外傷性咬合は心理的な要因によって重症化する側面があるといわれており、ストレスの軽減や生活習慣の見直しをはじめとする心療内科的なアプローチが求められるケースもあります。
3.外傷性咬合や咬合性外傷を悪化させないために
3-1.歯ぎしりや食いしばりの改善に努める
外傷性咬合を改善するためには、日頃の生活習慣を見直すことも大切です。正しい噛み合わせをキープし、そのうえでストレスの少ない生活を心がけることが予防につながります。
ストレスが溜まるほど無意識の歯ぎしりや食いしばりが増え、歯ぎしりだけで奥歯を失ってしまう人もいるほどです。
特に、睡眠中の歯ぎしりが多い場合は無意識のうちにストレスを溜め込んでいる可能性がありますので、歯ぎしりによる咬合性外傷が長期間にわたって改善しない場合は、心療内科の受診も検討しましょう。
歯ぎしりや食いしばりを見直すことで、外傷性咬合のリスクを軽減することができます。
3-2.睡眠時はマウスピース・ナイトガード
歯ぎしりや食いしばりのリスクが特に高くなるのは、睡眠時です。睡眠時の歯ぎしり、食いしばりの影響をおさえるには、マウスピースやナイトガードが有効です。
この二つの治療方法は、歯列全体をおおうような治療装置を就眠時などに装着する方法で、歯や歯茎にかかる大きな圧力を歯列全体に均等に分散させて一部に集中させないようにしたり、クッションのような役割をはたしたりすることを目的にしています。
4.まとめ
外傷性咬合は歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせのずれによって歯根部分に強い圧力がかかってしまう状態を指し、それによって歯や歯根、歯茎がダメージを受けることを咬合性外傷といいます。
症状の改善には歯列矯正による噛み合わせ治療やストレスの軽減が有効であり、子供のうちから治療をはじめることで重症化を予防することができます。
もちろん、成人してからも定期的に歯科治療を続けることによって症状の進行をやわらげることができますので、噛み合わせに不安がある、最近歯がぐらついてきた、などの異変を感じている方は速やかに歯医者さんに相談しましょう。
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監修医
遠藤 三樹夫先生
遠藤歯科クリニック 院長
経歴
1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
現在に至る
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