お口の中に白いできものができると、どうしても気になってしまうことがおおいですよね。特に、舌の先端に口内炎ができると、言葉を発したり、食事したりするときに痛みが走ることもあるかとおもいます。
お口の中にできる白いできものは口内炎であることが多いですが、口内炎ができる原因は様々です。また、口内炎だと思っていたら別の疾患だったということもあります。この記事では”白い口内炎”の原因や一般的な治療法を中心に、赤い口内炎や白い口内炎以外の疾患についても取り上げています。
この記事の目次
1.口内炎ができやすい場所とは?
口内炎とは、お口の粘膜に起こる炎症の総称です。そのため、口内炎ができる箇所は舌だけでなく、ほおの内側や唇の裏、喉、歯茎など多岐にわたります。
歯茎にできた口内炎を「歯肉炎」、舌にできた口内炎を「舌炎」、唇の粘膜にできた口内炎を「口唇炎」など、口内炎が発生した場所によって、違う呼び方をされる場合もあります。
2.口内炎を治すためには?
2-1.睡眠不足やストレス解消により免疫力を上げていく
口内炎ができてしまう原因は様々ありますが、そのひとつが免疫力の低下と言われています。
免疫力の低下の原因としては、過労や睡眠不足だけでなく、ストレスなどもあげられます。免疫力が低下すると、お口の中が乾燥しやすくなり、細菌が繁殖しやすくなります。その結果として、口内炎ができやすくなる傾向があります。
また、お口の粘膜を守る働きがあるビタミンB群が不足してしまうと、細菌の影響を受けやすくなり、口内炎を招いてしまうことも。
ビタミンB群は偏った食生活により摂取量が少なく不足してしまうだけでなく、ストレスがたまりビタミンB群の必要量が増え、相対的に不足してしまうこともあります。ビタミンB群は卵やレバー、バナナ、緑黄色野菜などの製品に含まれています。
2-2.お口の中を清潔に保つ
口内炎ができてしまった場合には、これ以上口腔内で細菌を繁殖させないようにすることが大切です。そのため、歯磨きやうがいを行い、お口の中を清潔に保つよう意識しましょう。
毎食後に歯磨きをすることに加え、うがいを定期的に行うことも口内炎を早く治すために有効です。
2-3.歯医者さんを受診・市販薬で対応
口内炎は、耳鼻咽喉科や歯科口腔外科、内科、皮膚科など様々な診療科にて対応している症状です。しかし、すべての病院が対応しているわけではないため、受診の際は一度電話やホームページで確認することをおすすめします。
病院での口内炎治療は、薬の処方が主になります。口内炎の薬は市販でも手に入れることができます。
口内炎治療では、「ステロイド系の外用薬」が処方されることが多いですが、口内炎の発生原因により、異なる薬が使用されることもあります。
たとえば、ビタミン不足などが原因の場合は、ビタミン剤が処方されたり、ウイルスが原因でできた口内炎に対しては抗ウイルス薬が使用されたりします。また、矯正器具や入れ歯などの器具によりお口の粘膜が傷つき口内炎ができていしまった場合は、歯医者さんに行き不具合を解消することで、口内炎が治ることもあります。
2-4.口内炎のできる原因は複数ある
前述の通り、口内炎ができる原因はひとつではありません。
いくつもの原因があり、原因ごとに「見た目」「痛みの程度」「リスク」などが異なります。
次の章からは、口内にあらわれたできものを病名別に分けて、考えられる原因と症状をお伝えしていきます。
3.白いできものができる口内炎
3-1.アフタ性口内炎
口内炎の中で、一般的に知られているものが「アクタ性口内炎」です。アクタ性口内炎の治療方法は基本的に自然治癒です。改善の目安は1週間程度、遅くとも2週間程度になります。
しかし、一度に5個以上の口内炎が発生したり、6mmを超える潰瘍ができたりした場合、また、2週間が経っても現状のままの場合などは、別の病気が隠れていることもあるので病院に行くことをおすすめします。
アフタ性口内炎の特徴 | |
外見的特徴 | 2~6mm程度の円形・楕円形 |
凹凸 | やや窪んだ潰瘍(かいよう) |
輪郭 | ハッキリしている |
同時に発生する個数 | 平均して1~3個 |
痛み | 強い~非常に強い |
刺激がないときにズキズキ痛むようなことはありませんが、物理刺激を受けると強い痛みを感じます。そのほか、辛いもの、酸っぱいもの、しょっぱいものを口にした場合にも、痛みが出ることが多いです。
アフタ性口内炎の原因
実のところ、アフタ性口内炎の直接的な発症メカニズムはわかっていませんが、下記のようなことが口内炎を引き起こす原因と言われています。
◆体調不良
睡眠不足、ストレスの多い生活、疲労などの体調不良は、口内炎だけでなく、免疫低下により様々な疾患にかかりやすくなります。
◆歯磨き不足による不衛生
きちんと口の中のケアをしないでことで、雑菌が増えます。その結果、粘膜が刺激を受け、口内炎の発生につながります。
◆物理刺激
入れ歯の金具(クラスプ)、不適合なかぶせ物など、同じ箇所に慢性的刺激を加えるものが口内にあると、口内炎リスクが高まります。
◆ドライマウス(口の中の乾燥)
潤滑油の役割を持つ唾液の不足により口腔内にて摩擦が増え、物理刺激が起こります。唾液には抗菌作用もあるため、唾液不足になると口内の細菌が増殖しやすくなります。
◆ビタミンB群 / 鉄分の不足
栄養不良も口内炎のリスクファクターになります。ビタミンB群、鉄分が足りないと、アフタ性口内炎の発症確率が上がります。
3-2.ヘルペス性口内炎
口の中に「白い水ぶくれ」が多発した場合、ヘルペス性口内炎の可能性があります。この口内炎の傾向として、舌・歯茎などの一部だけでなく、ほおの内側、唇の裏側、喉の奥など口全体に症状が広がるケースが多いです。
ヘルペス性口内炎の特徴 | |
外見的特徴 | 真ん中が白く、周囲が赤い水ぶくれ |
凹凸 | 膨らんでいる |
輪郭 | ハッキリしている |
同時に発生する個数 | 口の中全体に、多数 |
痛み | 強い~非常に強い |
ヘルペス性口内炎の初感染の場合、かなり痛みが強く症状が出ている間は飲食に苦労します。高熱・だるさなどの全身症状を伴い、風邪+口内炎のようなものがあげられます。
口内全体に症状が出るので、痛い場所を避けて食べることも難しくなります。思うように食事ができなくても、水分だけはしっかりと補給しましょう。
ヘルペス性口内炎の原因
ヘルペス性口内炎は、「HSV-1(単純ヘルペスウイルス1型)」というウイルスにかかることで、発生します。乳児時に初感染を起こしやすい口内炎です。一度ヘルペス性口内炎にかかると、ウイルスは「三叉神経節」という場所に留まり続けるため、大人になっても体調不良などにより免疫力が低下すると再発することがあります。
ただし、体内のウイルスが暴れ出すことによる発症(=再発例)は軽症で済むことが多いため、大人のヘルペス性口内炎は軽症の場合が多いです。
ヘルペスが再発する多くの場合、大人のヘルペス性口内炎ではなく、唇の周囲に水疱ができる「口唇ヘルペス」の形で発症します。
「口の中に水ぶくれが出て、高熱が出る子供の病気」には手足口病・ヘルパンギーナも該当します。
3-3.カンジダ性口内炎(口腔カンジダ症)
カンジダ性口内炎は、口腔カンジタ症とも言われ、急性型と慢性型に分けることができます。細かく分けていくと、「白い苔が付着している」ように見える「急性偽膜性カンジダ症」・「慢性肥厚性カンジダ症」と、舌にヒリヒリした痛みや粘膜に紅斑が見られる「萎縮性カンジタ症」に分けることができます。
「萎縮性カンジタ症」には、急性型も慢性型も存在します。
「急性偽膜性カンジダ症」と「慢性肥厚性カンジダ症」は双方、お口の中の粘膜に白い膜ができますが、「急性偽膜性カンジタ症」がこすると膜がはがれるのに対して、「慢性肥厚性カンジタ症」はこすっても膜がはがれにくいという違いを持ちます。
カンジダ性口内炎(偽膜性カンジダ症)の特徴 | |
外見的特徴 | 線状または、点状または、まだら状の膜 |
凹凸 | ほとんど平坦 |
輪郭 | ぼやけている |
同時に発生する個数 | 多くは、ひとつながりの病変がひとつ |
痛み | 痛みを感じない~非常に弱い |
ガーゼなどでこするとはがれますが、膜の下に赤くただれた病変があることが多いです。無理に膜をはがすと痛みが悪化してしまいます。
カンジダ性口内炎の原因
カンジダ性口内炎の原因は、 もともとお口の中にある常在菌であるカンジダ菌という菌が過剰増殖することによって引き起こります。普段は菌数が増えずに、他の菌と共存をしていますが、次のような場合に増殖してしまう傾向があります。
◆口腔内を不衛生なままにしている場合
カンジタ性口内炎にならないようにするためには、カンジタ菌が増加しないように予防することが大切になります。口腔内が不衛生であったり、唾液が減少していたりすると菌が増殖しやすくなります。
また、入れ歯を使用している人は、特に注意が必要です。入れ歯洗浄剤を使わない、寝るときも入れ歯をつけっぱなしという習慣は、カンジダ菌の増加につながります。
◆免疫力が低下している場合
身体の抵抗力が落ちていると、カンジダ菌のような感染力の低い菌に感染することがあります。
日和見感染(ひよりみかんせん:免疫力が落ちていろいろな菌に感染する状態)するような持病を抱えている人はもちろん、身体が弱ってきている高齢者も要注意です。
3-4.ニコチン性口内炎
お口の中の天井にあたる場所を「口蓋(こうがい)」と呼びます。ニコチン性口内炎は、口蓋が白く変色してしまいます。
ニコチン性口内炎の特徴 | |
外見的特徴 | 円形・楕円形 |
凹凸 | 表面が厚く膨らむ |
輪郭 | ぼやけている |
同時に発生する個数 | 基本的に1個 |
痛み | 痛みを感じない~非常に弱い |
痛みを伴うことは少ないですが、辛い食べ物をはじめ、刺激物がしみる場合があります。口蓋の表面にシワが入ったり、ひび割れのようになったり、表面の質感が大きく変わり美観を損なうこともあります。
また、唾液が出る「小唾液腺」が炎症を起こした場合、「白い口蓋の中に、赤い唾液腺が点在」といった外見になります。
ニコチン性口内炎の原因
喫煙がニコチン性口内炎の原因ではありますが、「原因物質がニコチンである」というところまで、ハッキリしているわけではありません。
口内炎ができる原因として、有力視されているのは、次のふたつです。
◆タバコに含まれる有害物質
ニコチンかどうかはわからず、多数の有害物質の中のいくつかが関与している、と考えられています。
◆タバコの熱
タバコの煙は火のついた部分を経由しているので、熱気を含んでいます。結果、口蓋が軽い火傷を繰り返し、だんだん変色してくる、と考える人もいます。
3-5.アレルギー性口内炎
アフタ性口内炎のような白い潰瘍で周辺が赤く腫れている口内炎が、唇や舌といった口腔内にできます。
アレルギー性口内炎の特徴 | |
外見的特徴 | 白色の潰瘍と周囲が赤く腫れる |
痛み | 触らなくても痛みがある |
アレルギー性口内炎の原因
食べ物や銀歯・義歯といった装置に使用されている金属、薬などに対するアレルギー反応として口内炎のような症状が出てきます。
歯の治療に使用している装置が原因だった場合には、歯医者さんでアレルギー反応のでない素材に変更することを検討してください。
4.できものが白くない口内炎
4-1.カタル性口内炎
口内炎の中には、白いできものができない口内炎もあります。その代表的な例として、カタル性口内炎があります。
カタル性口内炎は、口腔内が腫れるだけでなく、唾液の分泌量が増えたり、口臭に影響したりすることもあります。
カタル性口内炎の特徴 | |
外見的特徴 | 炎症が起きて赤くなったり、斑点・水疱ができたりする |
痛み | 触ると痛い |
カタル性口内炎の原因
カタル性口内炎は、免疫力の低下や口腔内環境が影響を及ぼしますが、物理的な刺激や傷が直接的な原因となり口内炎が発生します。
入れ歯や矯正器具、ブリッジといった歯に装着した器具が口に合わず、口腔内の粘膜を傷つけてしまうことで、そこから細菌が繁殖してしまい、口内炎となってしまいます。
5.2週間以上経っても治らない白い口内炎!考えられる原因は?
5-1.できものの原因が口内炎でない
口の粘膜の一部が白くなり、厚く盛りあがってきた場合、口内炎ではなく「白板症(はくばんしょう)」ができてしまった恐れがあります。「白板症」は「前がん病変」とも言われ、将来「口腔がん」に変わる恐れがある疾患です。
「口腔がん」になるのは、白板症の3~5%と言われています。それほど高確率ではないものの、「口腔がん」になる恐れがある以上、注意深く経過観察する必要があります。
白板症の特徴 | |
外見的特徴 | 形状はさまざま |
凹凸 | 表面が盛りあがる |
輪郭 | ハッキリしている |
同時に発生する個数 | 基本的に1個 |
痛み | 痛みはないが、悪化すると痛むこともある |
また、白板の一部が隆起している、白板の一部がえぐれているなどの特徴があると、「口腔がん」に変わる確率が高まります。白板症が悪化すると白くなっていた箇所に、まだらに赤い模様が入ってくることがあります。
この状態を「紅斑混在型(こうはんこんざいがた)」と言います。紅斑混在型になると、痛みが出る場合もあります。
普通の口内炎と違い自然に治ることはなく、だんだん大きくなるのが普通です。「白い口内炎が2週間以上経っても治らない」という場合は白板症を疑ってください。
白板症の原因
白板症の直接的な原因はハッキリしていませんが、慢性的な物理刺激が白板症のリスクを高めると考えられています。
「タバコ」「アルコール度数の高い酒類」など、刺激物の摂取も要因になり得ます。
白板症の治療法
「口腔がん」に変わりさえしなければ、大きな問題はありません。「がん化」の兆(きざ)しが見られた時点で対処を始める、という「定期的に受診して経過観察を続ける」ことが基本的な方針です。
白板症をなくす方法は、外科手術を行い病変を切除するしかありません。「がん化の兆候があれば切除するが、そうでなければ経過観察」という考え方が普通です。
5-2.物理的刺激により繰り返し口内炎ができることも
同じ場所に何度も刺激が加わることを、「慢性的刺激」と言います。
◆割れた歯の、尖った部分が食いこむ
◆合わない詰め物・かぶせ物が接触する
◆部分入れ歯の金具が接触する
このような刺激がずっと加わっていると、口腔内の粘膜が傷つき、口内炎ができやすい状況が生まれてしまいます。
口の中に物理刺激の原因があるなら、早めに歯医者さんへ相談しましょう。割れた歯の治療、詰め物・かぶせ物の調整で解消できます。
6.まとめ
白い口内炎を中心に、特徴と原因・治療方法をまとめました。口内炎は白いできものができるだけでなく、赤い腫れやできものができることがあります。同じような白い口内炎であっても、発生の理由には様々な種類があります。
中には「口内炎」のように見える、「口腔がんに変わる恐れがある前がん病変」も存在するので、「たかが口内炎」と軽く考えることは危険だとも言えます。
基本的に「2週間で改善の兆候がなければ、ただの口内炎ではない」と認識しておくといいでしょう。
痛みが気になったり2週間で改善する様子がなかったりする場合には、早めに歯科口腔外科・耳鼻咽喉科・皮膚科などを受診しましょう。
【監修医 貝塚 浩二先生のコメント】
2週間様子を観察している間は口内炎は痛いままなので、歯科医院で薬剤の塗布やレーザー治療をうけてみてはいかがでしょうか。薬物やレーザーを口内炎の表面に作用させると、食べ物が当たったりしたときの痛みが和らぎ、治りもある程度早くなると言われています。
ただし、レーザー治療は波長によっては保険適用外になることもありますので、事前に医療機関に相談して下さい、ただ逆に口腔癌に対しては促進してしまう作用があるので、気になる場合は、まず口腔内蛍光観察装置等がある歯科医院で診断してもらって下さい。
【あわせて読みたい】
・病院を受診したほうがいい口内炎とは?症状別に考えられる疾患を紹介
監修医
貝塚 浩二先生
コージ歯科 院長
経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
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