広告やWeb施策に取り組んでいるのに、新患数が思うように伸びない。そう感じている歯科医院もあるのではないでしょうか。新患を増やす施策は数多くありますが、自院の状況に合わないものから手をつけると、費用と手間のわりに成果が見えにくくなります。
本記事では、歯科医院で新患を増やすための8つの施策を、患者さまが来院を決めるまでの行動段階(認知→比較検討→来院決定)に沿って整理します。あわせて、開業フェーズや診療方針に応じた優先順位の決め方と、効果測定の進め方も解説します。
結論:新患を増やすには「患者さまが来院するまでの3段階」で施策を選び、優先順位をつけて積み上げる
歯科医院で新患を増やす主な方法は、次の8つです。ただし、すべてを同時に始める必要はありません。
- 基本のWeb施策:ホームページ、MEO対策
- 追加のWeb施策:SEO対策、口コミの環境整備、ポータルサイト、Web広告
- Web以外の施策:ブランディング、紹介の仕組み化
本記事では、患者さまの行動を3つの段階に分けて整理します。医院を知る「認知」、他院と比べる「比較検討」、予約する「来院決定」です。各施策が主に関わる段階は次のとおりです。なお、1つの施策が複数の段階に関わることもあります。
| 段階 | 患者さまの行動 | 主な施策 |
|---|---|---|
| 認知 | 近くの歯科医院を探す・知る | Web広告、MEO対策、SEO対策、ポータルサイト、ブランディング |
| 比較検討 | 診療内容・口コミ・雰囲気を比べる | ホームページ、SEO対策、口コミ |
| 来院決定 | 予約・電話をする | ホームページの予約導線、紹介 |
新患が伸びないときは、まずどの段階で患者さまが離れているかを確認します。たとえば、Googleマップでの表示回数は多いのに予約が少ない場合は、比較検討か来院決定の段階に課題がある可能性があります。
そのうえで、自院の開業フェーズ・強み・予算に合う施策から優先的に取り組むのが現実的です。
新患を増やすうえで押さえたい医院選びの背景
厚生労働省「医療施設動態調査」によると、全国の歯科診療所数は2026年7月末時点で64,975施設です(概数)。前月からは60施設減少しています。ただし、全国の施設数だけでは、自院の診療圏の競合状況はわかりません。地域の医院数や診療内容、人口構成もあわせて確認する必要があります。
患者さまの医院選びも変わりつつあります。「地域名+歯医者」で検索し、Googleマップやホームページ、口コミを見比べてから予約する、という流れをとる方も少なくないと考えられます。看板やチラシで医院を知った方も、来院前に検索して情報を確かめる場合があります。
検索したときの情報が古かったり少なかったりすると、比較検討の段階で選ばれにくくなります。オフライン施策も、Web上の情報整備とあわせて考える必要があります。
歯科医院で新患を増やす方法8選
8つの施策を、3つに分けて整理します。まず整えたい「基本のWeb施策」、接点と信頼を広げる「追加のWeb施策」、そして「Web以外の施策」です。各施策の詳細は、それぞれの解説記事で確認できます。
まず整えたい基本のWeb施策
ホームページとMEO対策は、患者さまが医院を探したときに目にすることが多い情報の受け皿です。他の施策で接点を増やしても、ここが整っていないと来院につながりにくくなるため、最初に取り組みます。
① ホームページを制作・改善する
ホームページは、広告・MEO・ポータルサイトなどで医院を知った患者さまが、最終的に診療内容や雰囲気を確かめる場所です。比較検討と来院決定の両方を担うため、他の施策の成果を左右する土台といえます。
最低限、次の情報がスマートフォンでもすぐに見つかる構成にしましょう。
- 診療内容
- 料金の目安
- 診療時間
- アクセス
- 院長紹介
あわせて、予約ボタンや電話番号への導線をわかりやすく配置します。ホームページの掲載内容も医療広告ガイドラインの対象になるため、表現には注意が必要です。
制作費用、制作会社の選び方、載せるべき情報は、「歯科医院ホームページ完全ガイド」で解説しています。
② MEO対策でGoogleマップからの来院につなげる
MEO対策とは、Googleマップ上で自院を見つけてもらいやすくするための取り組みです。歯科医院は自宅や職場の近くで選ばれやすいため、「地域名+歯医者」の検索で表示されることは、新規患者さまとの重要な接点になります。
基本となる取り組みは次の4つです。
- Googleビジネスプロフィールの診療時間・診療内容・電話番号・URLを正確に保つ
- 外観や院内の写真を掲載する
- 投稿機能で休診日などのお知らせを発信する
- 口コミに返信する
口コミへの返信は、医院の対応姿勢を伝える要素にもなります。
具体的な手順や、外部の会社に依頼する際の判断基準は、「歯科医院のMEO対策|実践手順と会社選びのポイント」で紹介しています。
接点と信頼を広げる追加のWeb施策
基本の施策を整えたうえで取り組むと効果を広げやすいのが、次の4つです。それぞれ、検索からの流入、比較検討時の安心感、外部媒体での露出を補強します。
③ SEO対策でホームページへの検索流入を増やす
SEO対策は、Googleなどの検索結果で自院のホームページを見つけてもらいやすくする施策です。歯科医院では「地域名+診療内容」(例:「横浜 小児歯科」)での検索を意識し、診療内容ごとに専用ページを用意するのが基本です。
患者さまの疑問に答えるコラムを継続して公開すると、まだ医院を探していない段階の方とも接点をつくれます。ただし、Googleはページの変更が検索結果に反映されるまでに数時間から数か月かかると説明しています。短期の成果だけを求める施策には向きません。
キーワードの考え方や進め方は、「歯科医院のSEO対策とは?基本方法と進め方」で解説しています。
④ 口コミを投稿しやすい環境を整える
患者さまは来院前に、Googleマップやポータルサイトの口コミを参考にすることがあります。口コミの件数や内容に加えて、医院からの返信の丁寧さも比較検討の材料になります。
生成AIに「〇〇市でおすすめの歯医者さんは?」のように質問して、医院を探す使い方も考えられます。Googleは2026年3月、Googleマップで会話形式の質問に答える機能「Ask Maps」を発表しました。
公式ブログによると、Ask Mapsは3億件以上の場所の情報を分析して回答し、その情報には5億人以上のコントリビューターによる口コミも含まれます。発表時点の提供地域は、米国とインドです。
この発表からは、口コミがAIによる場所の案内に使われる情報の一つであることがわかります。ただし、日本の歯科医院の案内にどう反映されるかや、口コミの件数・評価が回答に与える影響は、現時点では判断できません。
医院側でできるのは、口コミを投稿できる場所があることを、患者さまが自発的に確認できる環境を整えることです。たとえば、Googleマップの口コミ投稿ページにつながるQRコードを、待合室など誰でも見られる場所に掲示する方法があります。
Googleのポリシーでは、特典と引き換えに口コミを求めることや、高評価の口コミだけを選んで求めることは認められていません。また、医療広告規制では、医院が患者さまに肯定的な治療体験談の投稿を依頼した場合、有償・無償を問わず広告に該当することがあります。掲示は投稿先の案内にとどめ、評価や投稿内容を指定しないようにしましょう。
低評価の口コミには、事実関係を確認したうえで、個人情報に配慮しながら冷静に返信します。
口コミが医院選びに与える影響や、投稿しやすい環境づくりについては、[内部リンク予定:歯科医院 口コミ]で詳しく解説します。
⑤ 歯科ポータルサイトを活用する
ポータルサイトは、複数の歯科医院の情報を地域や診療内容から検索できるサービスです。自院のホームページにたどり着かない患者さまとも接点を持てる点が特徴で、Web予約まで完結できるサービスもあります。
一方で、他院と並べて比較されるため、写真・診療内容・医院の特徴が十分に掲載されていないと選ばれにくくなります。掲載後も、情報を定期的に更新し続けることが前提です。料金体系や掲載の仕組みはサービスによって異なるので、複数を比べて検討しましょう。
主要サイトの特徴や費用対効果の考え方は、「歯科ポータルサイト完全ガイド|主要サイトの比較と選び方」で詳しく解説しています。
⑥ Web広告で短期的に接点を増やす
リスティング広告は検索キーワードに連動して表示されるため、出稿を始めた直後から検索ユーザーとの接点をつくれます。SNS広告は年齢や地域で配信対象を絞り込めるため、矯正やホワイトニングなど自費診療の認知に使われることがあります。
注意したいのは、Web広告も医療広告ガイドラインの規制対象になる点です。たとえば、次のような内容は広告できません。
- 患者さまの主観に基づく治療内容や効果の体験談
- 虚偽・誇大な表現
- 他院と比べて優れていると示す比較優良広告
また、広告は出稿を止めると接点もなくなります。予約1件あたりの広告費を確認しながら運用しましょう。
広告の種類ごとの特徴や費用の目安は、「歯科医院の広告の種類一覧|費用の目安と向いている医院」をご覧ください。
Web以外で選ばれる理由をつくる施策
Web上の情報整備とあわせて、医院の強みを院内外で一貫して伝えることや、来院している患者さまとの関係から新患につなげる取り組みも重要です。どちらも成果が見えるまで時間がかかるため、Web施策と並行して進めます。
⑦ ブランディングで「選ばれる理由」を明確にする
同じ地域に複数の歯科医院がある場合、患者さまは「この医院を選ぶ理由」を探します。ブランディングとは、その理由を明確にして、一貫して伝える取り組みです。
差別化の軸には、たとえば次のようなものがあります。
- 診療内容(小児歯科・矯正など)
- 院長やスタッフの専門性
- 通いやすさ(夜間・土日診療、予約の取りやすさ)
- 院内の雰囲気
自院が実際に強みとしている領域を1〜2つに絞り、ホームページ・院内掲示・スタッフの説明内容をそろえることが基本です。
差別化軸の見つけ方や進め方は、[内部リンク予定:歯科医院 ブランディング]で解説します。
⑧ 紹介が生まれやすい仕組みをつくる
既存の患者さまからの紹介には、医院への一定の信頼がある状態で来院につながりやすいという特徴があります。紹介を増やすには、医院名・診療時間・地図を載せた紹介カードを用意するなど、患者さまが知人に医院を伝えやすい状態を整えます。
紹介の起点は、日々の診療や受付対応への満足度です。スタッフ間で対応方針を共有しておくことも大切です。
注意点として、保険医療機関は療養担当規則により、健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供して、患者さまを誘引することが禁じられています。紹介特典を設ける場合は、法令やガイドラインに照らして慎重に検討してください。
紹介カードの作り方や紹介を増やす仕組みは、[内部リンク予定:歯科医院 紹介]で解説します。
自院の状況に合わせた優先順位の決め方
8つの施策の優先順位は、開業からの年数や力を入れたい診療内容によって変わります。代表的な3つのケースで考え方を整理します。
開業初期:土台づくりと短期施策を並行する
開業直後は、医院の認知がほとんどない状態です。まずホームページとGoogleビジネスプロフィールを整え、検索した患者さまに必要な情報が届く状態をつくります。そのうえで、Web広告やポータルサイトで初期の接点を補う組み合わせが考えられます。
安定期:時間をかけて積み上がる施策の比重を高める
新患数が一定の水準で推移している段階では、時間をかけて成果が積み上がる施策の比重を高めます。具体的には、SEO対策、口コミの環境整備、紹介の仕組みづくり、ブランディングです。広告への依存度を下げ、医院名で探してもらえる状態を目指します。
自費診療を強化したい場合:比較検討の段階を厚くする
矯正やインプラントなどの自費診療は、患者さまが比較に時間をかけやすい分野です。中心になるのは、次の3つです。
- 診療内容ごとの専門ページを充実させる
- SNS広告で対象となる層に届ける
- 院長の専門性を発信する
ホームページに治療前後の症例写真を掲載する場合は、症例ごとに次の情報を、写真とあわせて確認できる形で掲載します。
- 治療内容
- 治療期間・回数
- 費用
- 主なリスクや副作用
自由診療の情報については、問い合わせ先の明示など、限定解除の要件も満たす必要があります。なお、体験談や虚偽・誇大な表現は、限定解除によって認められるものではありません。
効果測定と再来院までを一体で設計する
施策の効果を判断するには、始める前に測定の仕組みを整えておく必要があります。最低限、次の項目を把握しておくと、どの段階で患者さまが離れているかを確認しやすくなります。
- ホームページのアクセス数(Googleアナリティクス)
- 検索結果での表示回数・クリック数(Google Search Console)
- プロフィールの閲覧数、通話ボタンのクリック数、ルート検索数、ウェブサイトへのクリック数(Googleビジネスプロフィール)
- Web経由の予約数(予約システムの管理画面)
- 新患の来院経路(初診時の問診票やヒアリング)
Googleビジネスプロフィールの数値は、実際の通話数や来院数ではありません。予約数と実際に来院した新患数も分けて記録し、施策ごとの費用と新患の来院数を照らし合わせましょう。予約後のキャンセルもあわせて確認します。
また、新患が増えても、必要な治療の継続や状態に応じた定期管理につながらなければ、医院経営への効果は限られます。リマインドの送付やメンテナンス予約の取りやすさなど、再来院の仕組みも新患施策とあわせて見直しましょう。
再来院を促す仕組みについては、[内部リンク予定:歯科医院 リピート対策]で解説します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 新患を増やす施策の費用はどのくらいかかりますか?
施策や依頼する範囲によって大きく異なります。主な施策の目安は次のとおりです。
- MEO対策:Googleビジネスプロフィールの利用は無料で、自院で運用する場合は人件費のみです。運用代行を依頼する場合は、月額固定型で月3万〜10万円程度が目安です。成果報酬型の料金体系もあります。
- リスティング広告:月10万〜30万円程度の予算から始めて、効果を検証するケースがあります。
- SNS広告:月数万〜20万円程度から始めるケースがあります。
- ホームページ制作:初期費用と月額の保守費用がかかり、制作の範囲によって金額が大きく変わります。
- ポータルサイト:月額固定型、成果報酬型、無料掲載+有料オプション型などがあります。
実際の金額はサービスごとに異なります。各社の公式情報や見積もりで確認し、施策の組み合わせ全体で予算を検討しましょう。
Q2. 効果が出るまでどのくらいの期間が必要ですか?
施策によって、効果が見え始める時期は異なります。
- Web広告:配信を始めた直後から表示されます。予約や来院につながるかどうかは、地域・診療内容・広告の設定によって変わります。
- MEO対策:情報の修正は比較的早く反映される場合があります。表示回数や来院への影響は、数か月単位で数値を確認していくのが現実的です。
- SEO対策:Googleは、ページの変更が検索結果に反映されるまでに数時間から数か月かかると説明しています。
- ブランディング・紹介:院内外での取り組みが積み重なって成果につながるため、年単位で取り組む施策です。
効果が出るまでの時間が異なる施策を組み合わせると、特定の施策だけに依存しない運用を目指せます。
Q3. ホームページとポータルサイトはどちらを優先すべきですか?
ポータルサイトで医院を知った患者さまも、ホームページで詳細を確かめてから予約することがあります。そのため、まずはホームページを土台として整えるのが基本です。ただし、開業直後で認知を早く広げたい場合は、ポータルサイトを並行して活用する選択肢もあります。
Q4. 施策は自院で進めるべきですか、外部に依頼すべきですか?
Googleビジネスプロフィールの登録や紹介カードの運用は、自院でも始めやすい領域です。ただし、MEO対策では多くの項目の入力、写真や投稿の更新、口コミへの返信が継続して発生します。院内で続けるのが難しい場合は、運用代行など外部の支援を使うのも選択肢です。
ホームページ制作、SEO対策、広告運用も専門知識と継続的な工数が必要なため、外部への依頼も含めて検討しましょう。
Q5. 競合する歯科医院が多い地域でも新患は増やせますか?
医院数だけでは、その地域で新患を増やせるかは判断できません。診療圏の人口や年齢構成、診療内容ごとの需要もあわせて確認します。
そのうえで、診療内容、診療時間、院内環境、院長の専門性など、自院が選ばれる理由を明確にし、来院してほしい患者層に向けて伝えることが重要です。
Q6. 医療広告ガイドラインはホームページにも適用されますか?
適用されます。2017年に成立し、2018年6月に施行された改正医療法により、医療機関のホームページも広告規制の対象になりました。
ただし、一定の要件を満たせば、自由診療の内容や症例写真などを掲載できる場合があります(限定解除)。判断に迷う表現は、厚生労働省の医療広告ガイドラインや関連する事例解説書で確認しましょう。
まとめ|自院に合う施策から始めて積み上げる
歯科医院で新患を増やす方法は、ホームページとMEO対策を基本に、SEO対策、口コミの環境整備、ポータルサイト、Web広告を加えたWeb施策と、ブランディング・紹介の仕組み化というWeb以外の施策の8つに整理できます。
すべてを一度に始める必要はありません。自院で見直すポイントは次の4つです。
- 患者さまの行動段階(認知→比較検討→来院決定)のうち、どこで離れているか
- 開業フェーズや力を入れたい診療内容に合った施策を選べているか
- 予約数だけでなく、実際に来院した新患数まで測定できているか
- 新患が必要な治療の継続や定期管理につながる仕組みがあるか
短期の施策と中長期の施策を組み合わせ、自院に合う形で段階的に積み上げていきましょう。
