阿南歯科医院

通いたいと思っていただくための工夫としては、院内のデザインにこだわりました。業者さんに相談すると決まったパックを提案されますが、精密な医療をやりたいと考えていましたので設計者を入れて、自分の想いが伝わるデザインにしてもらいました。
また、患者さまにとって歯科医院は怖くて来たくないところですので、できるだけ居心地が良いように内装にもこだわりました。2階はヨーロッパのリゾートをイメージした解放感のある空間にし、外にはラウンジもご用意しています。
ただし、あくまでも医院の作りはハードウェアであって、ソフトウェアである我々一人ひとりの接遇が非常に大切だと考えています。患者さま一人ひとりにおもてなしができるよう、日々トレーニングを積んでいます。この前も接遇の講師の方に歯科業界のリッツカールトンを目指してほしいと言われましたが、そこを目標にしていきたいですね。

私は曾祖父の時代から医師の家系で、生まれは九州なんですが、九州にも阿南医院というのがあります。九州にいた患者さまが阿南医院にかかり、静岡で父親の弟が阿南胃腸科をやっていますがそちらにもかかり、藤沢に来て僕の所にも来たという、そんなことがあるんだとびっくりしましたね。
あとは、色んな患者さまに怒られたエピソードもたくさんありますね。そんなこともあったので、さらに勉強して患者さまによりよい医療を提供できる、還元できるようにしていきたいです。

100年後に目指すべきところは、歯を治療することが時代遅れで、患者さまはメンテナンスに来て帰ってもらうだけ、というのが目標だと思っています。だからそれまでの間は、虫歯になる患者さま、歯を失った患者さまがいますので、インプラントや歯周病、虫歯の治療をしっかりとしていかなければいけないと考えています。
最終ゴールは100年後には治療では無くてメンテナンスだけで終わること。そういう意味で予防は大切です。

治療以外にもカウンセリングに力を入れています。トリートメントコーディネーターが、患者さまがどうなりたいのか、どうしたいのか、根掘り葉掘りお聞きします。ナラティブ・ベイスト・メディスンといって患者さまにはいろいろな歴史があって、物語があります。小さい頃に歯医者で痛い思いをした、怖い思いをした方が、歯がボロボロになって歯科医院に来た時に「なんでこんな事になったんですか」と言われるととても嫌になりますよね。なんで歯の治療をうけなかったのか、なんで歯を大切にするのか、そこを僕は重要視しています。科学的な根拠に基づいた治療は当たり前です。患者の「患」という字は心に串が刺さると書くように、患者さまの心の串を抜いてあげなければ治療に入れないと思っています。

スタッフからは「自分自身が成長できる場所」と言ってもらえていますね。やはりこれは働く環境や一緒に働く他のスタッフがあってのことだと思います。スタッフにも楽しい人生を送ってほしいですし、それが患者さまにも広がっていけば良いと思っています。

訪問診療を始めましたが、これが僕が最後にやりたかったことの一つです。
最初のきっかけは僕がインプラントを20年前から本格的にやり始めた頃です。これから高齢化が進んで患者さまが寝たきりになった時のことを考えると、せめて僕の診た患者さまは最後まで診たいと考え、いつか訪問部隊を作ろうと思っていました。
それがやっと少しずつ始まりだして、自分たちの患者さまだけではなく施設などにも行くようになりました。
先日、初めて重度の方がいる施設に行ったのですが、とても考えさせられましたね。要介護の方や寝たきりで食事が自力でできない方がいる中で、改めて医療を見つめ直しました。
入れ歯を入れたくないのに無理やり入れる必要もないですし、緩和ケアというわけではないですけども少しでも患者さまを楽にできれば…そういうところまで垣間見て深いなぁと、まだまだ自分自身がたくさんやることがあるなと思いましたね。
今後、そういった方たちも多く診ていけるようにしたいです。訪問診療のクオリティーは医院での治療に比べてまだまだ低いですので、それこそ意識の無い方たちにも気持ちが届くような治療にしていきたいなと思っています。
展望としては100年先には治療は無くなり、メンテナンスだけになるようにしていきたいですね。