親知らず周辺から出る膿に悩む方もいるのではないでしょうか?膿が出る理由はいくつかあり、親知らずがある場合、抜歯している場合によって治療方法も変わってきます。
この記事では、親知らずから膿が出るときの原因や具体的な治療方法について、詳しく解説しています。親知らず周辺の歯茎から出る膿が気になっている方は、自身の症状について理解を深めるきっかけにしてみてください。
この記事の目次
1.親知らずから膿が出るときの特徴
1-1.親知らずの周りが赤く腫れる
親知らず周辺に膿がたまっている場合のわかりやすい特徴として、歯肉の腫れがあります。また赤みを帯びて熱を持っていて、そのままにしておくと顎や首にまで腫れが拡大するケースもあるので、お口の変化に気づいたら早めに歯医者さんを受診しましょう。
1-2.抜歯後に化膿することもある
親知らずの抜歯をした後に感染症を引き起こすことがあり、炎症が大きくなると膿が出てきます。抜歯箇所の穴を塞ぐ血の塊がうまく定着しないドライソケットと呼ばれる状態になると、細菌に触れやすくなるため炎症や膿の原因となります。経口避妊薬を飲んでいる女性や30代以上の方、喫煙者といった方に現れやすい症状です。親知らずの抜歯後に化膿した場合は、歯医者さんで膿を取りのぞく処置と抗生剤による治療をしてもらいましょう。化膿すると痛みが強く出る場合が多いので、処方してもらった鎮痛剤を服用する、患部を頬側から冷やすなどして痛みを軽減します。また、細菌への抵抗力を高めるために、休息をしっかり取ることも重要です。ドライソケットの場合は、抜歯で開いた穴に傷をつけて血餅をつくり直す再掻爬(さいそうは)という治療をおこなう場合もあります。
1-3.膿により口臭が強くなる
歯茎に膿がたまると、自身でも歯茎の不快なにおいに気づきやすくなります。自身では膿が出ている自覚がなくても、口臭がある場合は膿の可能性を疑ってみましょう。膿による口臭は「メチルメルカプタン」という物質が放つ生ゴミのような悪臭をともなうため、磨き残しの歯石によるにおいよりもきついことが特徴です。メチルメルカプタンは悪臭防止法でも規制のある物質のため、他人とのコミュニケーションにも影響を及ぼさないよう、早い段階で歯医者さんに相談しましょう。
2.親知らずから膿が出るときに考えられる疾患
2-1.歯周病や智歯周囲炎(ちししゅういえん)
親知らずから膿が出る症状として考えられる疾患が、歯を失う原因にもなりやすい歯周病です。歯周病菌の拡大を防ごうとする免疫細胞の活動により、死骸となった菌や細胞などが膿として歯茎にたまります。膿が出ているという時点で、歯周病の進行の度合いは中度から重度と言えるでしょう。
智歯周囲炎(ちししゅういえん)は親知らず周辺に出る歯周病と似た症状で、膿や腫れをそのままにしておくと激しい痛みをともなうほか、お口が開かなくなるケースもあります。炎症箇所はお口だけにとどまらず全身へと広がることもあるので、親知らず周辺の膿には気を付けましょう。
2-2.根尖病巣(こんせんびょうそう)
根尖病巣は歯の根っこ部分にまで細菌が入り込み、膿がたまる疾患です。親知らずの場合は、虫歯が進行して神経が機能しなくなったときに起こりやすいです。袋のなかに膿がたまるため歯茎が膨らんで見える場合もあり、症状に気づいたときには早い段階で歯医者さんを受診することが大切です。炎症が顎の内側の骨などに広がらないよう迅速な対応が求められる疾患です。
3.親知らずに膿がたまっているときの治療法
3-1.薬によって膿を出す
膿を出すための基本的な手段として抗生剤の服用が挙げられ、数日から1週間程度処方されることが一般的です。膿が出るとお口のなかが不快な状態になり悩む方もいると思いますが、薬を使うことで膿が止まるケースもあります。また抗生剤とあわせて痛みがある場合は鎮静剤、お口のなかを衛生的に保つためのうがい薬なども処方されやすいです。
3-2.切開排膿処置をおこなう
歯の根っこ部分に膿がたまって重症化しており、抗生剤では腫れが引かない場合は歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)をおこなうこともあります。そのほか膿の量が多く腫れが大きい場合にも、歯茎を切開して膿を取り出す施術をするケースがあります。歯医者さんによっては、レーザーを使って膿を出すこともあるので、メスを使った手術に抵抗がある方も検討しやすいです。
3-3.抜歯をおこなう
炎症をおさえて膿を出したら、抜歯をおこないます。歯周病や根尖病巣によって膿が溜まる場合は、すでに重症化しているので抜歯が基本となります。智歯周囲炎の場合も、親知らずが再び炎症や膿が溜まる原因になる危険性が高いため、抜歯をおこなうことが多いです。
4.まとめ
親知らずの周りから出る膿に悩んでいる方のために、症状の特徴や考えられる疾患、治療方法について紹介してきました。親知らずの抜歯後に化膿した場合は、合併症を起こしている可能性もあるので、すぐに歯医者さんを訪れることが大切です。お口の膿は口臭を招く原因となるため、自身だけではなく周囲にも不快感を与えかねません。親知らずが原因で膿が溜まるまで症状が進行している場合は、基本的に抜歯となることが多いです。親知らずは炎症や虫歯など、トラブルの原因になりやすいため、歯医者さんでの定期検診を活用して、症状が重症化する前に対処するようにしましょう。
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監修医
野村 雄司先生
本町通りデンタルクリニック 理事長
経歴
2003年 大阪歯科大学卒業
2007年 大阪歯科大学保存学講座入局
2009年 まごころ歯科勤務
2012年 まごころ歯科退職
2012年 本町通りデンタルクリニック開業
2013年 大阪歯科大学保存学講座歯学博士号取得
現在に至る。
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