歯の健康をおろそかにすることは、歯以外の病気にも結びつくといわれています。それはつまり、歯を健康に保つことが身体の病気を予防することへつながる、ともいえるのではないでしょうか。
高齢者だけが歯を失わないよう意識すればいいわけではなく、子どものころからの習慣が大事なので、その対策などを以下で記述していきます。
この記事の目次
1.歯の健康を保つことは全身の健康と関係している
1-1.歯の健康を保つためには、食事が大事
全身を健康に保ち、豊かな人生を歩むためには、歯の健康を維持することが大切になります。
歯の健康は食事をするためだけではなく、会話を楽しむ際にも基本となる要素です。 そして丈夫な歯をつくるためには、カルシウムや、アミノ酸をバランスよく含むタンパク質、ビタミンA・B・Cなどの栄養が必要になります。
そのため、バランスの良い食事を取り、よく噛んで骨を丈夫にすることが重要になります。
また、歯の健康を保つためには、日ごろからしっかりと歯磨きなどの口腔ケアをおこない、口腔内を清潔に保ち、虫歯や歯周病といったトラブルも予防する必要があるのです。
1-2.噛むことは人生においてとても大事なこと
咀嚼能力が高いと、高齢者であっても、運動・視聴覚機能などの活動能力を高く維持しやすいことが明らかになっています。
また、よく噛むことで活動能力の維持だけではなく、口内を清潔に保つことができます。
例えば、食事の際に多く噛むことで口腔内に唾液が分泌されます。この唾液には、食べ物の消化を助けたり、口内の細菌の繁殖を抑えて虫歯を防ぐ役割があるのです。
1-3.日本国民は歯の喪失が課題
日本の高齢者の多くは歯を喪失しており、50歳を超えると平均して2年に1本の歯を失うことが、大きな課題となっていました。歯の喪失には、虫歯や歯周病といったさまざまな原因があります。
平成5年では、55~64歳で24本以上自分の歯が残っている人は44.1%ほど、75~84歳で20本以上自分の歯が残っている人は11.5%という調査結果がありました。 このような状況から、年を重ねるにつれて歯を喪失してしまい、生活に何かしらの影響を受けていることが分かります。
食事、会話などを楽しむためにも、自分の歯の健康が要となり、高齢になっても自分の歯を維持する口腔ケアは非常に重要になります。
2.年齢を重ねても健康な歯で過ごす!「8020運動」とは?
2-1.長生きするためには歯の健康も重要
80歳以上の高齢になっても、自分の歯を20本以上保つことを推進する運動のことを「8020運動」といいます。
「8020運動」の「80」は、男女合わせた平均寿命を指しており、「20」は自分の歯だけで食事ができる歯の本数を指しています。20本以上の歯を保てていれば、食事に不自由を感じることなく生活できるといわれています。
年々、8020運動の達成者は増加傾向にありますが、高齢化の影響もあり非達成者も少なくない状況が続いています。
2-2.8020運動の現状
近年は高齢化社会といわれているため、80歳を超える高齢者が増え、比例して歯の健康に悩んでいる方も増えています。にも関わらず、8020運動がはじまった1989年から現在まで、80歳以上で20本以上の歯が残っている高齢者の割合は増加しています。
当初わずか10%未満だった達成者が、2016年の厚生労働省の調査によると、51.2%もの方が達成しているようです。
このことからも、以前より高齢者が歯の健康に対して高い意識を持ち、口腔ケアをしっかりとおこなう方が増えていることが分かります。
また、さらに歯を健康に保っていけるよう、口腔内の機能低下(オーラルフレイル)を予防するといった取り組みもおこなわれています。
3.歯の健康を意識する年代
3-1.子どものころから歯の健康を意識しよう
歯の健康は、永久歯が生えてくる前の乳幼児から意識することも大切です。
子どもの場合、自分で口腔ケアをしっかりとおこなえないため、親御さんが子どもの歯を徹底的にケアする必要があります。
例えば、定期検診時にフッ素塗布をおこなうと虫歯の予防が期待できます。フッ素には、虫歯になりにくいよう歯質を強化したり、歯の修復(再石灰化)を促したり、虫歯の原因となる細菌を弱らせる働きがあります。
また、歯が生え始めた乳幼児期は、歯磨きを学ぶ大切な時期となります。最初は正しい歯磨きができないかもしれませんが、まずは歯磨きそのものを習慣付け、親御さんが仕上げ磨きをしてあげましょう。
歯磨きが習慣化されれば、永久歯に生え変わった後でも、しっかりと自分で口腔ケアができるようになるでしょう。
4.歯の寿命はどれくらい?
4-1.歯の種類によっても寿命が違う
歯の平均寿命は、種類によって異なります。
虫歯や歯周病といった、口腔内の状況によっても異なりますが、特に寿命の長い歯は「下顎犬歯」で約66年の寿命になっています。
現在の日本人の寿命は男性が約81歳、女性が約87歳となっているので、歯の平均寿命から考えると、20年近くは歯がない生活を送らなければいけません。
そのため、歯の寿命を少しでも伸ばすために、日ごろの口腔ケアは非常に大切となります。
4-2.歯を失う原因とは?
歯を失ってしまう原因として、虫歯、歯周病、事故による外傷などさまざまな原因がありますが、中でも虫歯と歯周病が半数以上の割合を占めています。
つまり、口腔ケアを怠ったことによって口腔内の細菌が増え、虫歯や歯周病を発症して歯を失う方が多いと考えられます。
そのため、歯の健康を保つためにも、日ごろからしっかりと歯磨きをおこない、口腔ケアを心がけるのが大切になります。
また、高齢者が歯周病を起こしてしまうと、誤嚥性肺炎を発症するリスクも高まり非常に危険です。
4-3.痛くなくても定期的に歯医者さんへ
歯の寿命を延ばすためには、虫歯や歯周病にならない環境をつくるのがとても重要です。定期的に歯医者さんへ行き、痛くなる前に予防することを心がけましょう。
毎日の歯磨きも大事ですが、磨き残した歯垢が歯石へと変化すると、自分では落としきれなくなってしまいます。
予防歯科では、歯科医師や歯科衛生士といった専門的な知識を持つスタッフが、歯やお口のクリーニングをしてこうした汚れを除去してくれます。生涯にわたって歯の健康を維持するためにも、定期的に検診を受けましょう。
5.まとめ
歯の健康は、長生きするうえでも重要です。
そして、歯の健康を保つためには、日ごろから歯磨きなどの口腔ケアをしっかりとおこない、丈夫な歯をつくるために、カルシウムやタンパク質、ビタミンA、B、Cの摂取が必要になります。
また、80歳以上でも自分の歯で食事ができるように「8020運動」がおこなわれていますが、高齢になっても自分の歯を保つためには、子どものころから歯を守る習慣を身に付けることも必要になるでしょう。
丈夫な歯で豊かな人生を歩むためにも、日ごろの口腔ケアはしっかりとおこない、口腔内を清潔に保てるように心がけてください。
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監修医
遠藤 三樹夫先生
遠藤歯科クリニック 院長
経歴
1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
現在に至る
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