長年放置していた虫歯が、ある時から痛くなくなったという経験はありませんか?
痛みが消えたからといってさらに虫歯を放置し続けていると、歯を失ってしまう危険性があるだけでなく、身体全体に悪影響を及ぼすようなケースもあります。
この記事では、「歯の痛みが消えたのは虫歯が治ったから?」「あれは本当に虫歯の痛みだったの?」といった、虫歯の痛みに関わる疑問について探っていきます。
この記事の目次
1.痛みが消えたら、虫歯は治った?
1-1虫歯の痛みってどんな痛み?
いままで痛くて虫歯だと思っていた歯が痛くなくなったときに、あれは虫歯の痛みじゃなかったのかも、と考えてしまうこともあります。
では、虫歯ができているとどんな風に痛むのでしょうか?
虫歯による痛みは、虫歯によって歯の表面が溶けていき、歯の神経まで刺激が伝わりやすくなることで引き起こされます。
神経付近まで穴が広がると冷水がしみるようになったり、神経まで虫歯が到達することで激痛が走るようになったりします。
そのため、しみる・ズキズキするといった神経の痛みを感じていた場合は、虫歯になっている可能性が高いです。
一方で、食べ物を噛む時に痛む場合には、歯根膜と呼ばれる部分に痛みが生じており、別の病気である可能性も考えられます。
1-2虫歯が自然に治ることはある?
初期段階の虫歯であれば、「再石灰化」することも期待できます。
再石灰化とは、唾液の働きを利用して、歯の表面の「エナメル質」という部分に必要な成分を構成し直すことを言います。
エナメル質が白濁する程度の初期段階であれば、ブラッシングやフッ素塗布によって再石灰化を促すことはできます。
さらにエナメル質が溶かされていくと、再石灰化が難しくなり、患部が黒くなることもありますが、この段階でも強い痛みを感じることは少ないです。
虫歯がエナメル質よりも内側の象牙質にまで進行することで、ようやく痛みが生じるようになっていきます。
そのため、虫歯を自覚できるほどの痛みが既にあったという場合には、「痛くなくなったから虫歯が治った」ということは考えにくいです。
1-3痛みがなくても虫歯?痛くなくなった原因として考えられるもの
それではどうして、治療していないのに虫歯が痛くなくなった、ということが起こるのでしょうか?
放置し続けた虫歯は、内部にまで侵食していきやがて神経に到達します。
さらに放置していると神経が死んでしまい、神経による痛みを感じなくなってしまうのです。
こうなると虫歯の痛みを感じることはなくなりますが、虫歯菌がいなくなったわけではないため、菌が全身に回って思いもよらない病気を引き起こす可能性もあります。
また治療する場合も、歯の根っこまできちんと清掃することが必要になったり、抜歯が必要になったりと、より複雑な治療になってしまいます。
2.痛みが出た虫歯・痛くなくなった虫歯の治療方法は?
2-1痛みが出始めたばかりの虫歯
痛みがある虫歯の治療は、どのようなものになるのでしょうか?
虫歯の痛みといった自覚症状が出始めたばかりの虫歯は、象牙質には到達していますが、神経にはまだ達していないと考えられます。
象牙質まで達している場合は基本的に、虫歯の進行を止めるために歯を削ることになってしまいます。
この段階であれば虫歯部分だけを削りますが、虫歯が深い場合は神経の近くまで削っていくことになるため、麻酔で痛みを抑えます。
削った後は、神経を助ける薬を塗ってふたをする処置が行われます。
これにより「第2象牙質」と呼ばれる新しい象牙質が形成されると、次第に痛みは落ち着いていきます。
このとき、神経がきちんと働かないと、神経が死んでいってしまうケースもあります。
後から歯が痛んだり、腫れて浮いてしまうような症状が現れたりした場合は、注意が必要です。
2-2神経まで達した虫歯
激しい痛みがある場合は、虫歯が神経まで進行してしまっている可能性が高いです。
神経まで到達している虫歯の場合は、虫歯だけでなく神経も取り除いていくことになります。
根っこの治療を行うことで、抜歯は避けることができますが、広範囲にわたる虫歯と神経を取り除いた後は、詰め物では対応できなくなってしまいます。
そのため、空洞に薬を詰めてから、その上に土台をつくって被せ物をしていきます。
根の治療後は、材料を詰めることで根の先が刺激され、噛んだときに痛みが生じることもありますが、一週間ほどで落ち着きます。
2-3痛くなくなった虫歯
虫歯が痛くなくなった、というケースでは、前章の通り既に神経が死んでしまっていると考えられます。
ここまで虫歯が進行してしまっていると、虫歯菌がさらに奥まで侵入し、顎の炎症といった歯以外の部分まで害を及ぼす可能性が出てきます。
そのため、根っこの治療と被せ物の処置だけでは危険だと判断された場合、抜歯が必要になってしまいます。
3.虫歯以外の原因で歯が痛くなることも?
3-1虫歯じゃないのに歯が痛い
冒頭でも触れましたが、歯が痛くなるときの原因は虫歯だけとは限りません。
虫歯以外には、次のようなものが歯に痛みを引き起こす原因と考えられます。
・知覚過敏
冷たいものがしみる、噛むと痛むといった症状があります。
歯の表面が削られて内側にある象牙質があらわになってしまうことで引き起こされます。
・歯髄炎
歯髄とは神経のことで、神経が炎症を起こしている状態を指します。
虫歯菌の侵入のほか、外傷による刺激が原因となるケースもあります。
・根尖性歯周組織炎
歯の根っこが病気になっている状態です。
熱がでる、噛むと痛む、何もしなくても痛むといった症状があります。
・親知らず
親知らずの周囲が炎症を起こすことや、隣の歯を押してしまうことがあり、痛みにつながります。
・咬合性外傷
歯に無理な力がかかることで、歯や周囲の組織が損傷することを咬合性外傷と言い、噛んだ時に痛みが生じます。
・詰め物の劣化
金属でできた詰め物が取れかけた状態になっていると、噛む時にこすれて痛むケースがあります。
・非歯原性歯痛
お口の中の問題だけでなく、全身の不調や心理的な要因によって、歯の痛みが起こることもあります。
3-2歯が黒いのは虫歯?
痛みはないけど歯が黒くなっている、という場合には、初期虫歯のほかに次のようなケースが考えられます。
・薬の副作用
・歯石が黒ずんでいる
・着色汚れ
・歯の神経が死んでいる
原因によっては、虫歯でなくても早めに歯医者さんに相談することが大切になります。
4.まとめ
「放置し続けていた虫歯が痛くなくなった」というのは、虫歯が自然に治ったわけではなく、神経が死んでしまっているサインであることがわかりました。
今まさに虫歯の痛みを感じているという方はもちろん、虫歯の痛みを感じなくなったという方も油断せず、早めに歯医者さんを受診してみてください。
また、歯の痛みの原因は虫歯だけとは限りませんが、迷ったときには自分で判断せず、医療機関で意見を聞くことも大切です。
【監修医 貝塚浩二先生のコメント】
歯って一度削ったら、もう元にはもどりませんので、かかりつけ歯科医院で良く相談して下さい。
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監修医
貝塚 浩二先生
コージ歯科 院長
経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
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