「舌にできものがある」「舌の色や表面がおかしい気がする」とふとしたときに気が付いて、舌の病気かもと不安になる方は多いのではないでしょうか。
書き出し:この記事では舌の色やできものといった症状をはじめ、舌がんとそのほかの病気の種類について解説しています。また、子どもの舌に起こる症状にも触れています。自分や家族に気になる症状がある方は、受診を検討する材料として確認してみてください。
この記事の目次
1.舌に起きるさまざまな症状と考えられる病気
1-1.口内炎のような症状や口のなかの傷がなかなか治らない
食べたり飲んだりしたときに口のなかが痛むと、口内炎かな?と思う方は少なくないでしょう。しかし、症状がなかなか治らない場合には口内炎以外の疾患も考えられます。
例えば、紅板症という疾患は粘膜の一部分が鮮やかな赤色を帯びて痛みを生じるため、口内炎との区別がつきにくいです。しかし、この疾患はがん化する可能性が高い傾向にあるので、患部は切除したほうがよいとされています。
舌がんの場合、初期だと自覚症状を感じにくいのですが、症状が進んでくるにつれ痛みや舌を動かしたときの違和感などが現れます。多くは舌の両脇にできると言われていますが、舌の裏側のような見えにくいところにある場合もあります。
また、一般的な口内炎だったとしても身体の異変によって発症しているケースも考えられます。白血病やクローン病、ベーチェット病、潰瘍性大腸炎などの疾患が潜んでいる場合もあるので、症状が長引くときには一度医療機関へ相談してみることをおすすめします。
1-2.できものや硬いしこりがある
舌にポコッとできものがある、しこりがある、でこぼこしているなどの症状は舌がんの恐れもあります。
舌がんが進行すると、口内炎のようなものが潰瘍に変化したり、首周辺のリンパが腫れたり、出血するといった症状が出てきます。
舌がんは舌にできるがんのことを指しますが、口のなかにできるがんをまとめて口腔がんと呼びます。舌のほか歯肉部分にできるがんや口腔底がんなどもあるので、お口のなかに異常を感じたときは早めの受診を検討しましょう。
1-3.舌に白いものが付いている・ただれている
舌に白く苔のようなものが付いている場合、口腔カンジダ症や白板症、扁平苔癬といった疾患が考えられます。
口腔カンジダ症とは、口のなかに存在するカンジダ菌が免疫力の低下によって異常繁殖を起こしてしまう疾患で、ヒリヒリとする痛みを感じます。原因としてはほかにも口のなかの清掃不良や唾液の分泌不足、投薬による副作用などもあります。口のなかを清潔に保ち、抗真菌薬を含んだうがい薬や塗り薬で治療していきます。
白板症もまた粘膜の一部が白くなる疾患で、口内炎のような接触痛や食べ物・飲み物がしみるといった症状がある場合もあります。白板症は紅板症などと同様に前がん病変と呼ばれるものの一つで、放置していると悪性のがんになる可能性のある病気です。喫煙や飲酒、入れ歯が原因となる慢性的な刺激、ビタミン不足などが関係しているとも言われています。
扁平苔癬は、粘膜が白く細くレースを編んだような状態になる疾患です。多くは頬の粘膜に現れますが、舌にもできることがあります。食べ物がしみる、触れると痛むほか、潰瘍やびらんをつくることもあります。はっきりとした原因は不明ですが、金属アレルギーや代謝、免疫、ストレスなどがかかわっていると考えられています。
1-4.赤い斑点がある・一部だけ赤い
舌に赤く斑点が現れた、または一部だけ赤くなっているといった症状は、これもまた紅板症や舌がん、そのほかでは紅斑性カンジダ症などを抱えていることが考えられます。
紅斑性カンジダ症は、口腔カンジダ症と同じくカンジダ菌が原因となる疾患ですが、舌に紅斑をともないヒリヒリとした痛みも生じます。症状はやや異なるものの、同じ菌によるものなので基本的な原因や対処法は同じです。
1-5.見た目に異常はないのにピリピリと痛む
舌が痛いけれど見た目は何ともない、舌痛症という疾患も存在します。ヒリヒリ・ピリピリといった痛みが長く続くほか、口の乾燥や味覚・触覚の異常などを訴える患者さんもいます。別の何かに集中していたり、寝ていたりするときにはそれほど痛みを感じないようです。舌痛症のはっきりとした原因はわかっておらず、症状を軽減させる対症療法が行われる場合がほとんどです。
2.子どもの舌に異変がある場合に疑われる病気
2-1.舌にいちごのようなブツブツ
舌の異変は大人ばかりでなく子どもにも起こります。
「溶連菌感染症」は喉の痛みや高熱とともに、舌にはいちごのようなつぶつぶが現れます。また、身体や手足に発疹が出る場合もあります。溶連菌感染症は急性腎炎の併発や家族への感染の恐れもあるため、できる限り早めに医師の診療を受けるようにしましょう。
2-2.広範囲に赤く腫れている
外傷や火傷または細菌、ウイルスなどによって舌が炎症を起こすことを舌炎と言います。潰瘍になったり、赤く腫れて味を感じにくくなったりします。
舌全体に地図を描いたような斑紋が生じる地図状舌という症状もあります。原因は不明で、発熱の際にも確認されることがあります。
2-3.舌がまだら模様になっている
舌に赤っぽいところと白っぽいところがあり、まだら模様になるのもまた、地図状舌の症状です。模様は日によって変化し、何日かで消えていくこともあれば数か月、数年間と続く場合もあります。
3.舌の病気は何科で診てもらえるの?
3-1.舌の病気に対応する診療科
舌の病気を担当している診療科は、主に耳鼻咽喉科や歯科口腔外科です。1-1でご紹介したような白血病やクローン病など、原因が全身疾患である場合にはその疾患を扱う診療科が担当になります。また、口腔がんの検査に対応している歯医者さんでは、歯科口腔外科の範囲を超える疾患だった場合に、大学病院や耳鼻咽喉科への紹介をスムーズにおこなえることもあります。
3-2.口内炎?危険な病気?受診に迷ったら
舌がんや白板症などの場合、自然に改善することはないため、早めに受診することが大切です。しかし、初期の舌がんは口内炎との見分けがつかないこともあります。また口内炎であっても、同じ箇所に繰り返しできることで、がんになるケースもあると言われています。口内炎やそれに似た症状で受診を迷う場合、以下のような症状があるときには、受診を検討しましょう。
・再発を繰り返す
・2週間以上治らない
・患部が大きくなっている
・たくさんできる
・強い痛みがある
・腫れ、しこり、ただれがある
・舌の側面や端が痛い
4.まとめ
舌の病気や種類について解説してきました。口内炎と間違えてしまいそうな疾患や、見た目から異常を感じる疾患、さらに子どもに起こりやすい疾患などがありますが、心あたりがあれば早めの受診が大切です。舌や口腔粘膜の異常は耳鼻咽喉科や歯科口腔外科、または歯科口腔内科で診療しているので、まずは自身の行きやすいところを選んでみてください。
お口のなかを清潔に保つことで予防できる症状や、舌の異常が別の病気の早期発見につながるケースもあるので、これを機にお口や舌の状態について意識する習慣をつけていきましょう。
参考サイト
口腔外科相談室|日本口腔外科学会
[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
舌がん・口腔がん 何科を受診すればいいの? | 日本耳鼻咽喉科学会
【監修医 貝塚浩二先生のコメント】
気になるようなら、まずはかかりつけ歯科医院で診てもらって専門医療機関に紹介してもらってください。
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監修医
貝塚 浩二先生
コージ歯科 院長
経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
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