舌がんだけじゃない!口腔がんの初期症状と早期発見のための対策

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口腔がん 初期 症状01

食事や会話などの日常生活を送る際に重要な役割を持つお口の健康を保つことは生きていくうえで大切なことです。

こちらの記事では、お口の中にできてしまうがんの中で発症率の高い「舌がん」の症状や原因を始め、「口腔がん」の種類や症状、早期発見のためのセルフチェック方法、口腔がん検診についてお伝えしていきます。

日頃からお口の中の変化をみるように心がけることで、健康な口腔内環境を保てるよう参考にしてください。

この記事の目次

1.治らない口内炎は舌がんの可能性も

1-1.そもそも舌がんとは?

口の中や唇などその周辺の場所に発生する悪性の腫瘍(がん)を総称して口腔がんと言い、日本人が発生する全てのがんの中で1〜3%くらいの発生頻度と言われています。

日本人が発症する口腔がんの中で一番割合が多いがんと言われている「舌がん」は、その名の通り舌にできるがんで、頻度としては口腔がん全体の半分くらいの割合を占めています。

舌がんの多くは舌の表面を覆う細胞から発生します。「舌がん」の初期症状では痛みを伴わないこともあり、見逃してしまうこともあるため、症状を知っていくことが大切になります。

1-2.舌がんの症状って?

舌がんの初期症状では、舌にできるしこりやただれといった症状がよくみられます。時としてカリフラワー状に盛り上がった形であったり、舌の粘膜の一部分がへこんで噴火口のように見える形である場合もあります。

発生する場所は、舌の少し奥の側面にできることが多く、舌先の裏側にできる場合もあります。舌の表面の中央部や舌の先端にできることはあまりありません。

痛みや出血といった自覚症状がないこともあるため、普通の口内炎と見間違えてしまう人もいます。口内炎は通常2週間程度で治るため、長期にわたり口内炎が治らない場合は歯医者さんに相談してみてください。

初期症状では痛みを感じないこともある舌がんですが、進行が進むにつれて食事の際にしみたり、歯ブラシがあたって痛んだりするようになります。また、さらに進行が進むと食べ物を食べることが困難になったり、言葉が発音できないほどの障がいがおこったりする場合もあります。

女性

1-3.舌がんの進行とステージ

一般的にがんの進行度は第Ⅰ期から第Ⅳ期までの4段階に分かれます。舌がんをはじめとした口腔がんでは、「TNM分類」と呼ばれる腫瘍(原発巣)の大きさと進展度(T)、所属リンパ節への転移の有無や範囲、周辺組織への浸潤の有無(N)、遠くの臓器への転移の有無(M)の3つの観点から病気の状態を判断し、ステージを決めています。

2.舌がん以外にもある口腔がんとその原因

2-1.お口の中にできるがんの総称が「口腔がん」

第1章で取り上げた「舌がん」以外の口腔がんを一部まとめました。今回は身体の表面組織(上皮)にできるがんをまとめましたが、このほかにも唾液腺で発症した「腺様嚢胞がん」や顎の骨に生じた骨肉腫などあります。

・歯肉がん
歯肉の粘膜にできるがんです。上顎より下顎、奥歯の近くに発症することが多いです。

・口腔底がん
舌と下顎の間にできるがんです。普段は舌により隠れている場所のため発見が遅れてしまうこともあります。

・頬粘膜がん
頬の内側にできるがんです。触った際に粘膜の舌にしこりや膨らみ、痛みを感じる症状がでることもあります。

・口蓋がん
上顎にできるがんです。がんのなり始めに痛みを感じることは少なく、症状が進行することで粘膜の表面が白くなったり、刺激を感じたりする場合があります。

・口唇がん
上唇・下唇にできるがんです。外側にできる場合だけでなく、内側にできる場合もあります。

2-2.痛みに気づけないことも!口腔がんの初期症状

口腔がんの初期症状では、痛みや出血を感じることが少なく気づいたときには進行していたという場合もあります。下記に口腔がんの初期症状と言われているものをあげています。

口腔がんの発生率は、身体全体で発生するがんの1%~3%程度のため気にしすぎる必要はありませんが、不安に思うことがある場合には、はやめに歯医者さんへの受診を検討してみてください。

・口内に固いしこりやただれがある

・口内炎が2週間以上たっても治らない

・粘膜が変色や充血によって白や赤に変化してしまっている

・首のリンパ節がはれている

・口の中で出血する頻度が高くなっている

・舌が動かしづらい

・ものが食べづらくなった

2-3.がんになってしまう可能性もある!「白板症」

口の中の歯ぐきや舌の粘膜の表面が帯状に白くなり、特に痛みやしこりもない状態は「白板症」と呼ばれる病態である可能性があります。白板症の一部は前癌病変と呼ばれ、現状はまだがんとは言えないまでも、この先がん細胞に変化していく可能性のある細胞が含まれているケースがあります。

このような症状が発見させた場合は、見た目だけの判断が難しいため、組織の一部分を採取して病理検査を行います。特に悪性度の高い細胞が見つからなければ経過観察しますが、一部でも準悪性の所見のある細胞が発見された場合は予防的に切除することもあるので、気になる場合は歯医者さんに相談してみることをおすすめします。

2-4.口腔がんの原因になり得るもの

舌がんをはじめ口腔がんは口腔内環境がよくなかったり、慢性的に刺激があったりすることが原因になることが多いです。

具体的な要因としては、お酒やたばこに限らず、熱いものなどの刺激物、虫歯が原因でかけた歯や合わない差し歯や入れ歯を着用することで起こる口内への刺激、粘膜の炎症などがあげられます。

たばことアルコール

3.お口の中の異変に気づけるセルフチェック

3-1.口腔がんは自分で異変を見つけられるがん

口腔がんは他の器官にできるがんとは異なり、目に見える場所に発生します。そのため、セルフチェックを行うことでがんを早期に発見することも可能です。

一カ月に1度を目安にセルフチェックを行うことで自分のお口の中の変化に気づくことができます。

口の中を確認している女性

セルフチェックの際は、明るい場所で鏡を活用して行ってください。デンタルミラーがある人はそれを活用することによって、より詳細に確認することができます。お口の中を触るため、手や器具を清潔な状態にしておくことも大切になります。

3-2.口腔がんセルフチェックの方法

セルフチェックでは、唇の内側や上下のあご・歯茎・頬の粘膜・舌などに対して「粘膜が赤や白に変色していないか」「お口の一部または全体的に腫れていたり、ただれをおこしたりしていないか」「しこりのようなものはないか」といったことを手や目を使って確認していきます。

このときに、舌を出して舌の両脇や舌と下顎の間に異変がないか、下顎から首にかけてもしこりなどがないかということもチェックしてみてください。

4.年に1度は口腔がん検診を!

4-1.口腔がん検診と口腔検診

口腔がんの早期発見は日頃のセルフチェックだけでなく、年に1度を目安に歯医者さんで行っている「口腔がん検診」を受けることで、口腔がんを早期発見することができます。

こちらの検診はがんや異形成段階を早期発見するためにお口の中をチェックする検診です。似たような検診に「口腔検診」と呼ばれるものがありますが、こちらは口腔内を総合的に検査するものです。

お口の中

4-2.口腔がん検診の方法

検診では主に視診・触診やカウンセリングを行っています。視診にて粘膜が白や赤に変色していないか、潰瘍がないかということを確認します。また、蛍光観察装置と呼ばれる特殊な光を照射して病変してしまった組織を発見できる検査を行う場合もあります。

触診では、しこりや盛り上がりがないかなどを触って詳しく調べます。口腔がんの場合、首のリンパ節に転移してしまうこともあるので、頚部の触診もあわせて行います。

カウンセリングでは患者さんに回答してもらった問診票や検査結果をもとに口腔内の現状を説明していきます。

4-3.検診の結果によってはさらに検査を行うことも

口腔がん検診の結果、なんらかの異常があったと判断された場合はより詳しくがんの疑いのある細胞を調べたり画像による診断を行ったりします。

4-4.口腔がん早期発見の啓発『レッド&ホワイトリボンキャンペーン』

アメリカなどの海外では口腔がんの早期発見を目的とした『レッド&ホワイトリボンキャンペーン』が開催されています。

『レッド&ホワイトリボン』は、口腔がんの炎症などにより「赤」や「白」に変色してしまった口腔内を元に制定されたイメージカラーです。

日本でも『いい歯の日』として制定されている11月8日や『口腔がん検診の日』として制定されている11月15日にちなんで、2019年11月に1回目の『レッド&ホワイトリボンキャンペーン』が行われることになりました。

口腔がんを早めに発見するため、このような機会に一度「口腔がん検診」の受診を検討してみてはいかがでしょうか。EPARK歯科もこのキャンペーンに協賛しています。

 

5.まとめ

口腔がんのなかでよく耳にする「舌がん」ですが、お口のなかにできるがんには様々な種類があります。口腔がんは初期症状を自覚することは難しい病気ですが、目に見える場所にできるがんです。なかなか治らない口内炎や舌のしびれ、しこりなど、早めに口腔内の変化に気づけるよう日頃から自分でお口のなかを確認したり、「口腔がん検診」を活用したりしてみてください。

【監修医 遠藤 三樹夫先生からのコメント】

つい先頃、テレビなどによく出演されている女性タレントさんが舌がんになり、手術を受けたニュースが世間を騒がせていました。実はあの直後は多くの患者さんが自分の口の中の状態を気にされて口腔外科を受診し、ほとんどの方は診察の結果何も問題のないことがわかってホッとされました。

確かに舌がんのみならず口腔がんの頻度は低いのですが、口は話したり食事をしたりととても重要な器官であるのみならず、顔という最も外観的に重要な部分の一部を構成していますので、早期発見して大きな障害を残さないように早めの処置を行うことが大切だと思われます。

 

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監修医

遠藤 三樹夫先生

遠藤歯科クリニック 院長

経歴

1983年大阪大学歯学部 卒業
1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
1988年遠藤歯科クリニック 開業
 現在に至る

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