口の中がネバネバしていると、不快であると同時に「何か病気ではないか」と不安に感じる人もいるかもしれません。実は口の中がネバつくときには、ストレスが増加していたり、病気が隠れていたりすることもあるようです。
ここでは、ネバネバの原因とその対処法を解説します。自分でできるケアをはじめ、歯科医師によるケアの方法についてもまとめていますので、口の中のネバつきを解消したい、とお困りの方はぜひご覧ください。
この記事の目次
1.口の中がネバネバしていると感染症のリスクが増加
口の中がネバついているときは、唾液の量が減少していることが多いです。唾液には自浄作用があるため、唾液が少なくなると細菌が増殖しやすい環境になります。虫歯や歯周病は細菌によって引き起こされる病気なので、口がネバついているときにはこれらの発症リスクも高くなるといえるでしょう。虫歯や歯周病は歯を失う原因になることも多く、見過ごしてはいけない病気です。
さらに唾液の量が減っているときには、食事をとりにくくなります。うまく飲み込めないために食べたものが気管に入り、その中の細菌が原因で誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす恐れがあります。厚生労働省がまとめた2018年の人口動態統計によると誤嚥性肺炎は死亡原因の7位に位置しており、こちらも見過ごせない感染症といえます。
【参考】第6表 性別にみた死因順位(第10位まで)別 死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei18/dl/10_h6.pdf
2.口の中がネバネバになる原因とは?
2-1.細菌の増殖や歯周病
口の中の虫歯菌や歯周病菌は、食べ物の糖分をエサに増殖します。虫歯菌や歯周病菌は増殖すると同時にネバネバした物質を作り出し、その中でさらに増殖を繰り返します。つまり細菌が増殖することによって、より口の中がネバつくようになるのです。
2-2.唾液の減少(ドライマウス)
唾液の分泌量が減るドライマウスでも、口の中がネバつきます。理由としては、冒頭に紹介した自浄作用が減って細菌が増殖することが挙げられます。
ドライマウスに陥る原因としては、次のようなものがあります。
・口呼吸
・糖尿病や腎不全
・ストレスや筋力の低下
・薬の副作用
・やわらかい食べ物を好むなど、噛まない食生活への変化
2-3.ストレスでネバネバした唾液が分泌
ストレスがあると唾液の分泌量が減って口の中がネバつくことがありますが、さらにストレスがあるときには、分泌される唾液そのものがネバついているという場合があります。
唾液には副交感神経が働いているときに分泌されるサラサラした唾液と、交感神経が働いているときに分泌されるネバネバした唾液の2種類があります。
通常、副交感神経と交感神経は、シーソーのようにお互いバランスを取りながら働く神経です。しかしストレスの多い日々を過ごしていると交感神経ばかり働くようになり、その結果、ネバネバした唾液ばかりが分泌され、口の中がネバつくようになります。
2-4.糖尿病などの全身の病気
口の中がネバネバする背景には糖尿病や更年期障害、シェーグレン症候群などの病気が原因になることもあります。
そのため、口の中のネバつき以外にも気になる症状がある場合は、こうした病気が原因となっている可能性も視野に入れることが必要です。
3.口の中のネバネバを取り除く五つの方法
3-1.口の中を乾燥させない生活習慣にする
口の中がネバつく原因のひとつに唾液の減少があるため、口の中を乾燥させない生活を心がけるといいでしょう。
具体的には次のような生活習慣です。
・よく噛んで食事をする
・酸っぱい食べ物を食べる
・お酒やタバコを控える
・ストレスを溜めない
・唾液腺をマッサージする
よく噛んで食べることで、口の周りの筋肉が働き、それに連動して唾液が分泌されます。酸っぱい食べ物も唾液腺を刺激します。お酒は体の水分を奪い、口が渇きやすくなるので飲みすぎには注意しましょう。タバコやストレスは交感神経を刺激し、ネバネバの唾液が出やすくなるので、禁煙やストレス発散を心がけることも予防につながります。
これらの生活改善に加え、唾液腺をマッサージすると唾液が分泌されやすくなります。次のような方法で行いましょう。
①頬に指をあてて、後ろから前に向かって10回ゆっくりと回す
②顎の骨の内側(首に近いほう)にあるやわらかい場所を、耳の下から顎下にかけて5カ所、5~10回ずつ親指で押す
③顎の骨の内側(首に近いほう)の中心を、下から上へ押す
3-2.口のセルフケア
口の中がネバネバになる原因として細菌の増殖も挙げられます。そのため、細菌が増殖しないような口のケアも大切です。
次のポイントを押さえて毎日の歯みがきをしましょう。
・奥歯の噛む面を歯ブラシの先で細かくみがく
・歯の側面は歯ブラシの毛先を直角にあて、横に往復させてみがく
・歯と歯茎の間はななめ45度に歯ブラシをあて、やさしく細かい動きでみがく
・歯と歯の間はデンタルフロスや歯間ブラシを使用する
・歯ブラシは鉛筆を持つようにして握る
・歯ブラシは1か月に1回新しいものに交換する
3-3.歯科医院でのケア
歯医者さんでは歯の治療だけでなく、口のトラブルの相談にも対応しています。口のネバつきが気になる場合も歯医者さんに相談してみましょう。
「口のネバつきだけで歯医者さんに行くのは気が引ける」という方は、歯医者さんの定期検診に行ってみてはいかがでしょうか。定期検診では虫歯や歯周病のチェック、歯みがき指導、歯の汚れの除去など口の健康を保つためのサポートも受けられます。口のネバつきへの対処と並行して、ほかのトラブルも一緒に対処してもらうことができます。
3-4.対応する医療機関の受診
口のネバつきが起こる原因には、口呼吸や口以外の病気、薬の副作用もあります。そのため、可能であれば、病気に対応する医療機関を受診するのがよい対処方法となります。例えば、次のような診療科を受診するとよいでしょう。
・口呼吸…耳鼻咽喉科の受診
・糖尿病…内分泌内科の受診
・シェーグレン症候群…膠原病を専門とする内科
・薬の副作用…薬を処方している医療機関
しかし、自分がどの病気になっているのか予想するのは困難ですし、ましてどの診療科を受診すればいいか選ぶのはますます難しいことです。そのため、口のネバつきが気になる場合にはまずかかりつけの歯医者さんに相談しましょう。
歯医者さんは、口にかかわる病気についてよく知っているので、口以外の病気や薬の影響が考えられる場合には、症状に合った診療科を紹介してもらうことができます。
4.まとめ
口の中がネバつく原因は、細菌の増殖や唾液の減少、ストレスや病気などさまざまな要因が考えられます。細菌の増殖や唾液の減少、ストレスには、生活習慣の改善や口のセルフケアを中心に対処していきましょう。さらに歯医者さんのサポートも借りることで、原因を正しく把握し、より口のネバつき解消に近づきます。
また、口がネバネバする背景には、口以外の病気が潜んでいることもあります。口以外の病気には、それぞれ専門の医療機関での治療が必要です。「どの診療科を受診していいかわからない」という場合にも、まずは歯医者さんに相談してみてください。セルフケアと医療機関での治療で、口のネバつきを改善させましょう。
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監修医
野村 雄司先生
本町通りデンタルクリニック 理事長
経歴
2003年 大阪歯科大学卒業
2007年 大阪歯科大学保存学講座入局
2009年 まごころ歯科勤務
2012年 まごころ歯科退職
2012年 本町通りデンタルクリニック開業
2013年 大阪歯科大学保存学講座歯学博士号取得
現在に至る。
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