「歯根嚢胞」という言葉を聞いたことがある方は少ないのではないでしょうか。歯根嚢胞(しこんのうほう)は痛みや自覚症状が初期段階では表れないケースもあり、自身では気づきにくいものです。元をたどると身近な存在である虫歯から進行し、気づかない間に歯根嚢胞となっている場合もあります。この記事では歯根嚢胞の症状や原因、治療方法などについて、詳しくまとめていきます。
この記事の目次
1.歯根嚢胞になるとどのような痛みや症状がある?
1-1.初期段階では痛みや自覚症状が出ない場合も
歯根嚢胞は目立った自覚症状が少ないため、ほかのお口にかんするトラブルの検査や定期的なメンテナンスで、歯医者さんを訪れた際に見つかるケースも多いのが現状です。特に痛みや症状が表れずに日常生活にも支障がない場合は、発見が遅れて重症化してしまうこともあります。
1-2.歯茎から膿が出てくる、歯がグラグラする
患者さんによっては、歯が浮いている感じがしたり歯茎にニキビのようなものができたりして歯医者さんを訪れ、歯根嚢胞と診断されることもあります。膿がたまっている場合は、お口のなかに瘻孔(ろうこう)と呼ばれる膿の出口ができているため、変化に気づいた際には歯医者さんを受診しましょう。膿が出ていても自身では気づきにくいので、日頃から歯医者さんにメンテナンスで通っていると、歯根嚢胞を早い段階で発見できる可能性があります。
1-3.感染するとズキズキとした痛みが生じる
歯根嚢胞は、症状が進行して歯の根っこ部分にある膜にまで感染が及ぶと、噛んだときにズキズキとした痛みをともなうほか、骨が膨らむケースもあります。また、副鼻腔の近くにある上顎の奥歯に歯根嚢胞ができてしまった際には、細菌が鼻を経由して頭痛をまねくこともあります。食事中にお口のなかに痛みを感じたり、頭痛の症状が現れたりしている場合は、歯根嚢胞の可能性を考えて歯医者さんを受診してみましょう。歯根嚢胞は周囲の骨を吸収しながら広がっていくので、そのままにしておくと下顎の骨の空洞化により、骨折にもつながることがある疾患です。
2.歯根嚢胞はなぜおこるのか?きっかけになる病気を解説
2-1.歯根嚢胞の原因になる根尖性歯周炎
歯根嚢胞は、虫歯により神経が死んでしまった歯が腐敗することが原因となって発症しやすい病気です。歯根の歯周組織にまで細菌が広がった場合、内部に膿がたまり根尖性歯周炎を引き起こします。やがて顎の骨が溶け始め、顎の痛みや腫れといった症状が現れると同時に、歯根嚢胞へと発展する危険性があります。
2-2.根尖性歯周炎の状態が続くことで歯根嚢胞になる
根尖性歯周炎が悪化すると、歯根のなかにたまっていた膿が袋の形をした嚢胞となって出現し、歯根嚢胞と診断されます。嚢胞の大きさはエンドウ豆ほどのものから、大きくなると鶏卵大まで膨れることもあり、レントゲン検査によって確認します。乳歯にできることは少なく、永久歯に虫歯ができやすい方は特に注意する必要があります。
3.歯根嚢胞になってしまった場合の治療方法
3-1.歯の神経に施す根管治療
根管治療は歯をできる限り守ることを前提にしておこなう処置のため、患者さんにとってもリスクの軽減につながる方法です。細菌によって機能しなくなった神経や血管をていねいに除去し、根管内をきれいにすることで、歯を健康な状態へと導きます。根管治療は繰り返し通院する必要がありますが、健康なお口の環境を維持するために、自己判断で治療をやめてしまわないようにしましょう。
3-2.歯を残しながら原因箇所を切除する歯根端切除
根管治療をおこなっても歯根嚢胞を繰り返していたり、嚢胞が大きすぎたりすると、抜歯をすすめられることも少なくありません。しかし、感染している部分のみを切除する「歯根端切除術」をすることで、抜歯を避けられるケースもあります。
3-3.歯の状態が悪いと抜歯するしかない場合も
根管治療や歯根端切除をおこなっても歯を残すことが難しい場合には、嚢胞の摘出とあわせて抜歯をおこないます。お口のなかに袋状のできものを見つけた際には、できるだけ抜歯をせずに済むよう早めに歯医者さんを受診しましょう。
4.まとめ
歯根嚢胞は早期発見が難しいお口の疾患ですが、もし痛みをはじめとした気になる症状があるときにはそのままにしないことが大切です。目には見えなくても症状が進行していることも考えられます。歯根嚢胞の疑いがある場合は、大切な天然歯を守るためにも、歯医者さんをできるだけ早く受診しましょう。
【監修医 松岡浩司先生のコメント】
歯根嚢胞による痛みだけでなく、ほかにも原因が見つかるケースが多々あります。
不具合を感じたら歯医者さんで診てもらうように心がけましょう。
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