差し歯が痛い、違和感があるといった症状で困ってしまったときはありませんか?痛みや違和感の原因には、意外な病気や問題が隠れているかもしれません。
こちらの記事では、差し歯が痛いときに行う応急処置のほかに、差し歯が痛くなってしまう原因や、差し歯の寿命についてもまとめています。差し歯についてお困りの方はぜひ確認してみてください。
この記事の目次
1.差し歯が痛むときの応急処置
1-1.鎮痛薬を飲む
眠れないほど差し歯が痛い…といった症状でお困りの場合は、鎮痛薬で痛みを緩和することが可能です。
市販薬を服用する場合は、次のような成分が入っているものを探してみてください。
・ロキソプロフェン
・イブプロフェン
・アセトアミノフェン
こうした成分には痛みを和らげる作用があり、歯痛の緩和が期待できます。
上から順に、作用が強い順となっています。ロキソプロフェンを主成分とする薬は作用が強い代わりに、販売時に薬剤師から説明を行う必要がある「第1類医薬品」となっているため、購入できる場所が限られています。一方でアセトアミノフェンは作用が弱く、副作用も少なくなっています。小児用の鎮痛薬にも使用されています。
長期間の使用や空腹時の服用を避け、それぞれの用法用量・注意事項を守って使用してください。
1-2.差し歯のまわりを冷やす
原因によっては、腫れることもあります。腫れが強い場合には、差し歯のまわりを冷やします。
氷を直接当てて冷やすと冷やしすぎてしまうこともあるので、ぬれたタオルや市販の冷却シートを活用するのが便利です。
1-3.血流がよくなる行動を避ける
血流がよくなると神経が圧迫され、痛みが強くなってしまいます。
そのため痛みを抑えたいときは、運動や長時間の入浴といった血流がよくなるような行動は避けた方がいいとされています。
体温の上昇も同じく痛みを増幅させる原因となるため、飲酒や喫煙も控えましょう。
1-4.痛みが引かないときは…
差し歯が痛い場合、差し歯そのものに問題が起きている可能性はもちろん、周囲の歯茎や歯の根っこに問題が隠れている可能性も考えられます。
応急処置はあくまで一時的に痛みを抑えるもので、根本的な原因に対処するものではないため、痛みが引かない場合は早めに歯医者さんを受診してみてください。
次章では、そんな差し歯の痛みや違和感について、考えられる原因を詳しく見ていきます。
2.差し歯が痛くなってしまう原因は?
2-1.歯の根が折れている
歯根破折(しこんはせつ)と言って、歯の根が割れたりヒビが入ったりする症状があります。
かみ合わせが悪く負荷がかかり続けていると、こうした症状が発生する可能性が考えられます。差し歯の痛みほか、差し歯がグラグラして付け直してもまた取れてしまう、というときも破折が原因になっていることがあります。歯の根が割れてしまうと、差し歯の土台が抜けてしまうことがあるためです。ほかにも、歯茎が腫れたり、でき物ができたりすることもあります。
神経を取ると歯が割れやすくなってしまうため、虫歯治療のために神経を取って差し歯を入れた箇所は、より負荷に弱くなってしまいます。かみ合わせを調整したり、土台に柔軟性のある素材を採用したりすることで、予防につながります。
歯根破折が起こってしまった場合は、抜歯になることが多いです。
2-2.歯の根が病気になっている
何らかの原因によって歯の根の先に膿がたまると、歯根嚢胞(しこんのうほう)という症状を引き起こす場合があります。
神経を取る治療を行ったことがきっかけになることもあるため、差し歯にした歯が痛むときには、歯の根の奥にこうした病気が隠れている可能性もあります。歯根嚢胞ができているケースでは、歯茎に膿の出口のようなでき物ができることがあります。
嚢胞が大きくなると抜歯が必要になってしまうため、早めに手術で取り除くことが大切です。
2-3.歯周病が原因になっている
歯周病が、差し歯が痛む原因となっていることもあります。
痛みや腫れといった、歯の根が原因の場合と似た症状のため、自分では判断することが難しいです。歯周病が原因になっているときはかみ合わせ全体を改善していくため、大がかりな治療を行うケースもあります。
歯周病を予防するためには、歯医者さんを定期的に受診しケアを受けることが大切です。痛んでいる差し歯以外の歯を守ることや、生活習慣病の予防にもつながります。
3.差し歯の異変は寿命だから?
3-1.グラグラするのは取れる前兆?
差し歯がグラグラしていたり、痛んだりしているのは、差し歯が取れる前兆なのでしょうか?
もちろん、差し歯が取れかけていてグラグラする、というケースはあります。しかし差し歯の異変の原因には、前述のような症状も考えられ、対処方法もその原因によって異なってきます。
歯根破折や歯根嚢胞、歯周病のような症状がなく、歯の状態に問題がなければ、差し歯を付け直したり作り替えたりすることになります。何度も差し歯が取れるときには、破折などが起こっていなくても、歯の状態が悪く別の処置が必要になることもあります。
3-2.差し歯の寿命は?
差し歯が取れかけていてグラグラしている場合、気になるのが差し歯の「寿命」と作り直す際の「費用」です。これは、差し歯に使用されている素材によって異なります。
金属や硬質レジンといった保険適用の素材は、7~10年もつと言われています。白いプラスチックで5000~7000円前後、金属のものではさらに費用を抑えられることもあります。
保険適用外の場合も寿命は10年ほどと言われていますが、保険適用のものより強度があり、口内環境次第では20年使えることもあります。長持ちしやすい代わりに、費用は6~15万円ほど必要になります。
10年以上使用している差し歯であれば、寿命の可能性も考えられるため、作り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
3-3.差し歯以外の選択肢
そもそも差し歯とは、歯根に心棒を差し込む形ではめる人工の歯で、歯根に差し込む棒の部分と表に見えている人工歯の部分が一体になっています。虫歯や外傷により、歯の大部分が失われた際に行われる治療です。
しかし近年では、土台を入れてから冠(クラウン)を被せる方法が一般的になっています。土台には金属のものやプラスチックのものがあり、いずれも保険が適用されます。
また保険適用外の治療として、プラスチックの土台を天然歯に近い色の素材で補強する方法もあります。これにより歯根の破折を防止するとともに、天然歯に近い見た目に改善することができます。
差し歯がグラグラするので治療をし直したい…という方は、これを機に別の治療方法を検討してみるのも手段のひとつです。
4.まとめ
差し歯が痛い、違和感があるといった悩みの原因には、さまざまな可能性が考えられることがわかりました。
特に痛みが強い場合や、周囲が腫れている場合には、差し歯そのものではなく歯の根や歯茎に異変が起きているかもしれません。大がかりな治療や抜歯が必要なケース、早期の発見が大切になるケースもあるので、痛みを感じたら応急処置のみで対応するのではなく、なるべく早く歯医者さんを受診してみてください。
【監修医 貝塚浩二先生のコメント】
金属の支台だと、強い力がかかると、くさびみたいな力が加わり根が破折することがあります。それを防ぐには、ファイバーで補強されたレジンコアはり曲げ強度が金属より歯根に近いため、歯根と一体化して歯根の破折を防止できます。後は歯質の上に冠を被せることが、破折、ダツリの予防になります。
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監修医
貝塚 浩二先生
コージ歯科 院長
経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
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