ドライマウス(口腔乾燥症)とは

    【この記事の要約】

    ドライマウス(口腔乾燥症)とは: 唾液の分泌が減少し、口の中が乾く状態を指します。さまざまな原因で起こり、慢性化すると口腔内トラブルのリスクが高くなります。

    ドライマウス(口腔乾燥症)の症状: 口の中が乾く、話しづらい、食べ物が飲み込みにくい、口臭が気になる、舌や口腔粘膜の痛み、ひりつきなどの症状が現れます。

    ドライマウス(口腔乾燥症)の原因: 薬の副作用、糖尿病やシェーグレン症候群などの疾患、加齢、ストレス、口呼吸、喫煙習慣、放射線治療の影響など、さまざまな要因が関係します。

    ドライマウス(口腔乾燥症)の診断・検査: 視診や問診に加えて、唾液分泌量の測定、口腔内カメラによる粘膜の状態観察などを通して診断されます。必要に応じて血液検査も行われます。

    ドライマウス(口腔乾燥症)の治療: 原因に応じた治療が行われます。薬の見直し、人工唾液や保湿剤の使用、唾液腺マッサージなどが主な対応方法です。全身疾患が原因の場合は内科との連携も必要です。

    ドライマウス(口腔乾燥症)の予防: 十分な水分補給、よく噛んで食べる、口呼吸を避ける、禁煙、ストレスの緩和、唾液腺のマッサージや軽い運動など、生活習慣の見直しが予防につながります。

    ドライマウス(口腔乾燥症)に似ている病気(症状): カンジダ性口内炎、鉄欠乏性貧血、更年期障害による症状、舌痛症など

    ドライマウス(口腔乾燥症)に対応している歯科の診療科目: 一般歯科、口腔外科

    この記事の目次

    1.ドライマウス(口腔乾燥症)とは

    ドライマウスとは、口の中が乾いて不快に感じる症状を指し、医学的には口腔乾燥症と呼ばれています。唾液の分泌が減ることで、話しづらさや飲み込みにくさ、口臭など、日常生活にさまざまな支障が出ることも少なくありません。

    唾液はただの水分ではなく、口腔内の健康を保つ上でとても重要な役割を果たしています。消化を助けるだけでなく、虫歯や歯周病を防ぐ働き、口腔粘膜を保護する効果、細菌の繁殖を抑える作用などがあります。ただ口が乾くだけと軽視してしまいがちですが、身体全体の健康にも影響するため注意が必要です。

    2.ドライマウス(口腔乾燥症)の症状

    ドライマウス(口腔乾燥症)の症状は以下になります。

    ■口腔内の乾きによる違和感
    口腔内の乾きにより最初に感じるのは、口の中のネバつきなどの違和感です。水を飲んでも改善せず、喉が乾くような感じがすることもあります。

    ■生活面に影響することも
    話している最中に口が乾いて声が出にくくなる、食事中に飲み込みづらくなる、味がわかりにくいといった症状が現れます。唇や舌がひび割れたり、口内炎ができやすくなったりすることもあります。食べかすが口の中に残りやすくなり、細菌が増殖しやすくなるため、口臭が強くなるのもよく見られる変化です。
    さらに進行すると、誤嚥による肺炎のリスクが高くなることもあります。

    3.ドライマウス(口腔乾燥症)の原因

    ドライマウス(口腔乾燥症)の原因は多岐にわたります。まずは以下のどのような原因からドライマウスが起こっているのか知ることが大切です。

    ■薬の副作用
    ドライマウスの原因として多くみられるのが、薬の副作用です。特に降圧剤、抗うつ薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬、睡眠導入剤、筋弛緩薬、抗てんかん薬といった、唾液分泌に影響する薬剤は数多くあります。1種類だけでなく複数の薬を服用している場合、影響が重なって症状が強く出ることもあります。高齢者や慢性疾患のある方では、特に薬の影響によるドライマウスがみられます。

    ■全身疾患との関係
    自己免疫疾患のひとつであるシェーグレン症候群は、涙腺と唾液腺に炎症を起こし、唾液の分泌量を低下させます。女性に多く、乾燥症状が長期間続くのが特徴です。他にも、糖尿病では神経障害や代謝異常により唾液分泌が減少しやすくなります。

    腎不全や肝疾患、甲状腺機能異常といった内分泌疾患も原因の一つです。パーキンソン病などの神経変性疾患やうつ病など精神的な影響を伴う疾患も、唾液分泌の異常につながることがあります。慢性的なストレスや精神的な緊張、うつ状態では、自律神経のバランスが乱れ、唾液の分泌が低下します。脱水症状も原因となることがあり、十分な水分が体内に不足していると唾液の量が少なくなります。

    ■口呼吸
    鼻炎やアレルギーなどで鼻が詰まりやすい方、就寝中に口が開いてしまう方では、無意識のうちに口呼吸が習慣化していることがあります。口呼吸は口腔内に常に空気が流れ込むため、粘膜の乾燥につながり、唾液の働きを妨げてしまいます。特に夜間は唾液分泌が低下しているため、口呼吸による乾燥の影響がより強く出る傾向があります。

    ■喫煙やアルコール
    タバコの煙に含まれる化学物質は口腔粘膜に刺激を与え、慢性的な乾燥や炎症を引き起こす原因となることがあります。

    また、アルコールには利尿作用があるため、体内の水分が失われやすくなります。その結果、全身の脱水状態が進み、唾液の分泌も少なくなってしまうため、日常的な飲酒習慣もドライマウスを引き起こす要因の一つです。

    4.ドライマウス(口腔乾燥症)の検査・診断

    ドライマウス(口腔乾燥症)の検査・診断は唾液の検査が基本となります。実際には以下のような検査が行われます。

    ■基本的な評価
    まずは口腔内の視診と問診で、唾液の分泌量や粘性、舌や口腔粘膜の状態などを確認します。また、患者さんが感じている乾燥の程度、食事や会話への影響といった自覚症状についても詳しく聞き取ります。症状が現れる時間帯や薬の服用状況、既往歴なども重要な手がかりになります。

    ■唾液分泌量の測定
    ドライマウスが疑われる場合、客観的な指標として唾液の分泌量を測定する検査が行われます。以下のような方法が代表的です。

    ・サクソンテスト
    滅菌した乾燥ガーゼを口の中に入れ、2分間ゆっくり噛み続けます。その後、唾液を含んだガーゼの重さを計測し、分泌量をグラム単位で算出します。

    ・ガムテスト
    ガムを5分間噛み続け、その間に出た唾液を計量カップなどに吐き出して量を測定します。唾液の刺激時分泌量を測る検査であり、食事中の乾燥感との関連も評価しやすい検査です。

    ・安静時唾液量測定
    刺激を与えず、何もせずに5分間座ったまま自然に出る唾液を採取します。ガムテストとは異なり非刺激時分泌量を評価します。

    これらの検査を通じて、ドライマウスの重症度や原因の特定を行い、適切な治療方針が立てられます。また、全身疾患がある場合は、歯科だけでなく内科や耳鼻咽喉科、膠原病内科などとの連携が必要となるケースもあります。

    5.ドライマウス(口腔乾燥症)の治療

    ドライマウス(口腔乾燥症)の治療は、原因によって異なります。まずは原因を突き止め、それらに合った治療を行います。

    ■原因となる疾患の治療
    薬の副作用が疑われる場合は、処方を行っている主治医と連携し、可能であれば薬の種類や服用量の見直しが必要になります。ただし、持病の治療が優先される場合もあるため、自己判断で中止することは避けなければなりません。
    また、シェーグレン症候群や糖尿病、甲状腺機能の異常など、全身疾患が関与している場合は、専門科による適切な管理が重要です。これらの病気のコントロールが進むことで、唾液の分泌が改善する可能性もあります。

    ■唾液の分泌を促す
    唾液の分泌を促す方法としては、唾液腺マッサージが効果的です。耳下腺、顎下腺、舌下腺を軽く押しながら円を描くように刺激することで、唾液腺の分泌を促すことができます。
    また、食事の際によく噛むことも大切です。

    ■保湿アイテムを使用する
    市販されている人工唾液や口腔用保湿ジェル、スプレータイプの潤滑剤などを利用することで、乾燥による粘膜の不快感を和らげることができます。特に夜間は唾液の分泌が大きく減少するため、就寝前に保湿ジェルを塗布しておくと、乾燥による目覚めを防げることがあります。

    6.ドライマウス(口腔乾燥症)の予防

    ドライマウスを予防するためには、日常生活の中で唾液の分泌を促すような習慣を意識することが大切です。まず、水分は一度に大量ではなく、少量ずつこまめに摂ることを心がけましょう。食事の際にはよく噛んで食べることで唾液腺が刺激され、自然な分泌が促されます。

    また、無意識に口呼吸になっている方は注意が必要です。鼻呼吸を意識し、就寝中の乾燥対策として、口閉じテープや保湿マスクの使用も有効です。喫煙や飲酒の習慣がある方は、唾液の分泌を妨げる要因となるため、可能な範囲で控えることも予防につながります。加えて、適度な運動や入浴、趣味の時間、十分な睡眠を通じてストレスを緩和することも大切です。

    7.ドライマウス(口腔乾燥症)に似ている病気(症状)

    ドライマウス(口腔乾燥症)に似ている病気(症状)は、口腔カンジダ症などが挙げられます。舌や口腔粘膜に白苔状の付着物が現れ、ヒリヒリとした痛みや灼熱感(灼けるような感覚)を伴うことがあります。これは免疫力の低下などが関係しており、抗真菌薬による治療が行われます。さらに、舌痛症(※1)、更年期障害(※2)、鉄欠乏性貧血などでも、口の中の乾燥感や不快感、ヒリヒリとした感覚などが現れることがあります。

    (※1)舌痛症:舌に明らかな病変が見られないにもかかわらず、痛みを感じる機能性の疾患で、精神的要因が関係することもあります。
    (※2)更年期障害:ホルモンバランスの変化により唾液分泌が減ることがあります。

    8.ドライマウス(口腔乾燥症)に対応している歯科の診療科目

    歯科、歯科口腔外科

    監修医

    植村 考雄先生

    渋谷サクラステージ徳誠会歯科・矯正歯科 東京エリア統括院長

    経歴

    国立東北大学歯学部 卒業
    独立行政法人 横浜労災病院 歯科口腔外科 勤務
    現在に至る

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