普段からコーヒーや紅茶を飲むことが習慣になっている方は、多いのではないでしょうか?街中を歩いていても、お洒落なカフェやコーヒースタンドを目にする機会が増えてきました。
一方で、コーヒーや紅茶、ワインなどが歯の着色汚れ(ステイン)の原因になってしまうことがあります。「ステイン(Stain)」とは英語で「しみ・汚れ・染色」という意味です。
「コーヒーは飲みたいけど、歯が黄ばむのはちょっと…」「紅茶を飲んで歯に茶渋がつくのは嫌だな…」と考えている方のために、歯の色を元に戻す方法やステインができる原因、抑える方法を紹介していきます。
この記事の目次
1.自宅でもできる!着色汚れの落とし方
歯の着色が気になったときに、自分で対処できたらと考えるかたもいるのではないでしょうか。こちらの章では、自宅でも行いやすい、「着色汚れを落とす方法」についてご紹介します。
1-1.歯を白くする歯磨き粉
歯を白くする作用のある歯磨き粉には、研磨材や、ステインや汚れを歯の表面から取り除く成分が含まれています。こういった作用のある歯磨き粉を習慣的に使うことで、ステインを落とし、本来の歯の色を取り戻すことができます。
ステインを落とす成分には、ピロリン酸ナトリウムやポリリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコールなどがあります。
ただし、こういった歯磨き粉はあくまで歯の表面の着色や汚れを落とすだけで、ホワイトニングのように、元の白さ以上に歯を漂白する作用はありません。
また、研磨剤が歯を傷つけてしまう場合もあるため、使い過ぎ・磨き過ぎなど使用するときには注意が必要です。
1-2.歯の消しゴム
歯の消しゴムで、ステインなどの着色汚れを落とすことも可能です。
これは普通の消しゴムのように歯の表面をこするだけで、付着した着色汚れを落とすことができるというものです。
歯の消しゴムでも研磨剤が使用されているため、力を入れすぎると表面に傷を作る恐れがあります。ただし、強くこすりすぎないよう、注意が必要です。
1-3.電動歯ブラシ
電動歯ブラシの中には、着色汚れを除去しやすいものも市販されています。
超音波を使って着色汚れを落としたり、着色汚れを落とす目的で設計されたブラシが附属していたりします。
電動歯ブラシのパワーは強いので、研磨剤の入った歯磨き粉の使用を避け、歯の表面を傷つけないよう気をつけましょう。
2.セルフケアだけで落とせない汚れは歯医者さんへ
2-1.PMTCとは?
着色しやすい飲食物を避けたり、セルフケアしたりすることで、歯の着色をゼロにすることは、現実的ではありません。
しっかりとセルフケアをしていたとしても、どうしても付着してしまうステイン。
セルフケアでは落とせない頑固なステインも、歯医者さんでPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を受ければしっかりと落とすことが可能です。
PMTCとは、虫歯や歯周病になりにくい口内環境を作るため、歯科医師や歯科衛生士が専門の機材を用いておこなうクリーニングのことです。歯の表面の汚れも取り除いていくため、「着色が目立ってきたな」と感じた時や、セルフケアで歯を傷つけてしまうことに不安がある場合は、ぜひ歯医者さんでPMTCを検討してみてください。
虫歯や歯周病の治療として必要であると判断され、保険適用となる場合もあれば、自由診療で行われることもあるため、事前に歯医者さんで確認をしておくことが大切になります。
PMTCのメリットや費用の目安など詳しい情報は【たった一度でもキレイな歯になれる!歯科医のPMTCとは】でもわかります。
2-2.PMTCで汚れを落としきれない場合
PMTCのほか、エアーフローという強力なジェット水流を歯に吹き付けて汚れを落とす方法を行っている歯医者さんもいます。
吹き付ける水に、炭酸水素ナトリウムや炭酸カルシウム、グリシンといった成分を細かいパウダー状にしたものを混ぜて、歯に向けて高圧で噴射します。
水と粉を高圧で吹き付けるので、歯茎が少々チクチクする感じはありますが、それほどの痛みではありません。
歯医者さんによって導入している機器が異なるため、呼び名が異なりますが、「ジェットクリーニング」も同じ施術を指します。
また、ホワイトニングにも着色汚れを落とす作用が期待できます。ホワイトニング剤に含まれている過酸化水素に、着汚れの原因を分解する働きがあるためです。
これらの施術は、基本的に自由診療となります。
エアーフローのメリット・デメリットなどより詳しい情報は【エアーフローとは?PMTCとの違いは?歯のクリーニングに関わる単語の意味をチェック】にも掲載しています。
3.日頃からの努力で着色を防ぐ!歯の色を保つための予防方法
着色汚れが目立ってきたら、対応すればよいと考えている方もいるかもしれません。毎日のちょっとした気遣いで着色を減らすことで、着色を落とすための苦労も減らせる場合もあります。
ここでは、日常的にできるちょっとした予防方法を紹介します。
3-1.ゴシゴシ磨かない!優しい歯磨きを実践
歯の磨くときには、擦りすぎず適度な強さで磨くことを心がけてください。
歯についた汚れを落とすために力を入れすぎてしまうと、歯の表面に傷ができます。細かい傷は色素や汚れが入り込んでしまいやすいため、結果として落としにくい頑固な汚れを作ってしまうことがあります。
3-2.食後のうがいを心がける!
食事の後に、歯磨きやうがいの習慣をつけましょう。
着色しやすい食べ物を口にした際に歯を磨くことが難しい場合、食後すぐにうがいをすることで、着色の原因を洗い流すことができます。
3-3.よく噛んで、唾液の分泌を促す!
唾液には、口内の汚れ・雑菌を洗い流したり、殺菌したりする働きがあります。
そのため、食べ物をよく噛んだり、ガムを噛んだりして唾液の分泌を促すことで、着色や虫歯の予防につなげることができます。
4.コーヒーで歯が着色するのはなぜ?
4-1.コーヒー・紅茶の色が直接沈殿するわけではない?
そもそも、コーヒーや紅茶を飲むと歯に汚れがつきやすいと言われるのはなぜでしょうか。細かく言うと、歯が着色するメカニズムとして「コーヒーの色がそのまま歯にこびりつく」というわけではありません。
着色汚れには、歯の表面にある「ペリクル」という薄い膜が関係してきます。
ペクリルはタンパク質でできていて、
・歯の表面のエナメル質を保護する
・虫歯菌がつくる酸によって歯が負ったダメージを「再石灰化」で修復する
といった虫歯に対する防御作用の一面をもちます。
しかし歯の着色汚れにおいて、ネガティブな働きをするという側面も持ちます。
4-2.「ペリクル」によるネガティブな働きとは
ペリクルの性質として、細菌や食べかすが付着しやすいというものがあります。
コーヒーや紅茶を飲んだ際に、ペリクルにステインが付着することで、歯に着色汚れがつくようになります。
これが習慣的に繰り返されることによって、だんだんと目に見えるステイン汚れになっていき、ブラッシングで落とすことが難しくとなってしまいます。
ステイン汚れの原因や予防方法などより詳しい情報は【イヤ~な歯のステインは徹底オフ!付着する原因と予防対策】に掲載しています。
5.コーヒー以外にも?歯の着色を引き起こす元は何?
5-1.着色しやすい飲み物・食べ物
ステイン汚れにつながる飲食物は、コーヒーだけではなく、例えば以下のようなものが存在します。
◆紅茶、緑茶
紅茶や緑茶に含まれる「タンニン」は、唾液に含まれるミネラルと結びついて、ステインとなります。
タンニン自体はポリフェノールの一種で、健康に良いものです。
◆赤ワイン
赤ワインにもタンニンが含まれているほか、ポリフェノールを多く含んでいると、着色につながりやすい傾向があります。
◆緑黄色野菜
色が濃く、ポリフェノールが多く含まれているため、歯の着色につながります。
◆カレー
カレーのように色の濃い食べ物はステイン汚れの原因になります。
色の濃い飲食物を口にしたら、早めに歯磨きをしましょう。その他、色の濃い調味料なども歯の着色を起こしやすいです。
◆チョコレート
カカオポリフェノールを含んでいて、着色しやすくなります。
◆ニンニク、ネギ
ニンニク・ネギは、硫黄(いおう)を多く含む食材です。硫黄には、色素が歯にこびりつくのを促す働きがあります。
5-2.その他の着色の原因
飲食物以外にも、以下のような原因で着色汚れがつきやすくなるケースがあります。
◆タバコ
タバコのヤニは着色汚れの原因となり、一度こびりつくと落ちにくいものです。
◆汚れがつきやすい、清掃しにくい口内環境
歯の表面の傷や、歯石の蓄積は、着色しやすくなる原因になります。また、歯並びが悪いと清掃がしにくく、着色汚れも落としにくくなります。
◆ドライマウス
お口の中が乾きやすくなっていると、唾液によって歯の表面を洗い流すことができず、汚れが定着しやすくなってしまいます。
6.まとめ
コーヒーを楽しみながら着色を防ぐには、その他の着色原因や予防方法を知っておくこともポイントになります。
着色が目立ちはじめたら、歯医者さんでPMTCをはじめとしたクリーニングを受けるという選択肢もあります。
コーヒーをやめるのではなく、上手につきあっていけるように、正しいケア方法を確認しておきましょう。
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監修医
貝塚 浩二先生
コージ歯科 院長
経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
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