歯医者さんへ行くと聞く、「歯のクリーニング」という単語。「クリーニング」と言っても、その内容は「スケーリング」「歯石取り」「エアーフロー」「ジェットクリーニング」「PMTC」などなど、様々なキーワードに分類されます。これらのキーワードは、歯医者さんによっても呼び方が変わりますし、患者さんの口の中の状態によっても対象・対象外に分けられます。さらに、保険適用・適用外といった違いもあり、混乱してしまう方も多いはずです。今回はそんな歯のクリーニングに対する疑問を解消するために、それぞれ細かく説明していきます。
※この記事では、一般的な用語の意味を解説しています。歯医者さんによって用語の定義が変わることもあるため、歯のクリーニングを受ける際は事前に施術内容を確認することをおすすめします。
※ 掲載する平均費用はあくまでユーザー様のご参考のために提示したものであり、施術内容、症状等により、施術費用は変動することが考えられます。必ず各院の治療方針をお確かめの上、ご自身の症例にあった歯医者さんをお選びください。
1.それぞれの単語が指す治療内容とは?
1-1.エアーフロー、ジェットクリーニング、PMTCはどう違うの?
クリーニングについて調べていくと、「エアーフロー」や「ジェットクリーニング」、「PMTC」、「スケーリング」などの言葉を見かけます。
歯科医院のホームページを見てもクリーニングと書いているところがあれば、エアーフローと書いてあるところもあります。
使うときの状況や患者さんの口内の状態によって意味合いが変わることもありますが、基本的な意味は次のようになります。
■エアーフロー(ジェットクリーニング)
エアーフローやジェットクリーニングという単語は、同じ施術のことを指します。
どちらの言葉を使うかは、歯医者さんや導入している器具のメーカーによって変わります。
具体的には、細かなパウダー状にした炭酸水素ナトリウム(重層)やグリシン(アミノ酸の一種)を、強力なジェット水流で歯に吹きつけて汚れを落とす器具のことです。
また、これらの器具を使用して、歯の汚れを落とすこと自体を意味することもあります。
歯の表面に付着した細菌のかたまりであるバイオフィルムや、茶渋、タバコのヤニといった着色を、水圧とパウダーの力ですみずみまで落とすことが出来ます。
■PMTC
PMTCとは、「プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング」の略称で、専門的な器具・材料を使って歯の清掃をし、口の中の環境を整える一連の治療のことを指します。
デンタルフロスや歯間ブラシでの清掃に加え、ブラシやチップを先端に取り付けた器具を使い、歯の表面の汚れを落とします。
また、フッ素が配合されたペーストで歯の環境を整えることもあります。
専門家による歯の清掃という意味で、PTC(プロフェッショナル・トゥース・クリーニング )と呼ぶ場合もあります。
■スケーリング(歯石取り)
エアーフロー(ジェットクリーニング)やPMTCでは、歯にこびりついた歯石までは除去できません。
そこで、プラーク除去の前にスケーリングをおこない、歯石を取り除くという手順を踏むのが一般的です。
スケーリングに用いる機械には、手動で歯石を除去するハンドスケーラー、超音波で除去する超音波スケーラーが使われるのが一般的です。
1-2. 機械を使って行う歯面の清掃はすべてPMTC
エアーフロー(ジェットクリーニング)は、PMTCよりも後にできた新しいクリーニング方法です。
前述したように、エアーフロー(ジェットクリーニング)とPMTCは汚れの落とし方が違うため、厳密には別の施術と言えます。
しかし、PMTCは「機械でおこなう歯のクリーニング」という意味に当たるため、エアーフロー(ジェットクリーニング)もPMTCに含まれます。
また、スケーリングも、「歯面に沈着した歯石、そのほかの歯面沈着物を機械的に除去すること」を目的としているため、「専門器具による清掃、プラークを落とす作業」であるPMTCの範囲内と考えることもできます。
「PMCTは歯科医院にて行う専門的なクリーニング」とする見解は、日本臨床歯周病学会でも採用されており、PMTCに対する一般的な考え方です。
また、PMTCの目的は「可能な限り完全にプラークを除去すること」です。
しかし、エアーフロー(ジェットクリーニング)とPMTCを別の治療科目として表記している歯医者さんも、多く存在しています。
この場合、エアーフロー(ジェットクリーニング)は「流水を使用したプラーク除去」、PMTCは「専門的な器具を使用したプラーク除去」を意味することがほとんどです。
同様に、スケーリングとPMTCを別の施術として扱っている歯医者さんも多くあります。
スケーリングは、「歯石除去」といった意味合いで使われることが多いようです。
これは、患者さんがイメージしやすいように使い分けていたり、歯医者さんによって用語の定義が微妙に異なったりするためです。
1-3.「クリーニング」は歯を清掃する施術の総称
歯医者さんによって、「歯の清掃」を指す単語も異なっています。
クリーニングという単語を用いている歯医者さんや、PMTCという単語を用いている歯医者さんがあります。
PMTCは専用の器具が用いられる清掃を指しますが、クリーニングは歯科医院によってスケーリング(歯石を落とす施術)であったり、PMTCであったり、あるいはそれらのセットであったりします。
ここで、歯のクリーニングの流れの一例を紹介します。
<クリーニングの施術例>
①プラークの染め出し
②スケーリング(歯石除去)
③エアフロー/ジェットクリーニング(ジェット水流によるプラーク除去)または、器具を使用したプラーク除去
④トリートメント、フッ化物塗布
①プラークの染め出し
プラーク(歯垢)の染出しとは、特殊な薬剤を使い、歯に残っている汚れ(プラーク)を分かりやすく示す作業です。
普段のブラッシングで磨き残してしまいがちな部分を、把握するためにおこないます。
染め出しをおこなうと、プラークが残っている部分は赤く染まります。
まずは、この染め出しを元に、どうすれば磨き残しなくブラッシングできるようになるか、アドバイスを受けます。
②スケーリング(歯石除去)⇒③エアフロー/ジェットクリーニング(ジェット水流によるプラーク除去)または、器具を使用したプラーク除去
次に、スケーリングで歯石を取り除き、エアーフロー(ジェットクリーニング)や器具を使用して歯に残っているプラークを落としていきます。
器具を用いておこなうプラーク除去で使用するものは、歯の表面を磨く「ブラシ」、歯間を清掃する円錐型の「ラバーチップ」、歯と歯茎の間を清掃するお椀型の「カップ」といった道具です。
エアーフロー(ジェットクリーニング)や器具でのプラーク除去によって歯の表面をツルツルに仕上げることで、プラークがつきにくくなります。
④トリートメント、フッ化物塗布
仕上げに、歯のトリートメントやフッ素を塗布し、歯をコーティングします。
この一連の流れは、歯医者さんによって異なります。
かかりつけの歯医者さんに、クリーニングの内容を問い合わせてみると良いでしょう。
2.エアーフロー(ジェットクリーニング)のメリットとデメリットは?
エアーフロー(ジェットクリーニング)のメリットとデメリットを、専門的な器具を使用したプラーク除去と比較していきましょう。
メリット |
デメリット |
施術時間 |
診療区分 |
費用 |
|
エアフロー/ジェットクリーニングでのプラーク除去 |
量の多い着色や、細かい所まで入り込んでしまった汚れなども、細かいパウダーを吹き付けることで一気に落とすことが出来る。 |
口の中が粉だらけになってしまう。 |
30~90分 |
自由診療 |
4000~6000円 ※東京都内の歯医者さんでの費用目安 |
器具を使用したプラーク除去 |
歯の表面をツルツルに仕上げ、汚れをつきにくくする事が出来る。 |
量の多い汚れを落とすには時間がかかる。 |
30~60分 |
歯周病の治療内であれば保険診療 |
2,500~3,500円 ※初診の場合 |
2-1.エアーフロー(ジェットクリーニング)のメリット
器具を使用したクリーニングでは落とせないレベルの着色汚れ、タバコのヤニ、コーヒーによるステイン汚れをきれいにすることができます。
一般的に、1回30~90分の施術で、歯本来の白さを取り戻すことができます。
また、歯茎の周りや歯周ポケットの中といった、小さな隙間にある細菌のかたまりを分解することもできます。
2-2.エアーフロー(ジェットクリーニング)のデメリット
エアーフロー(ジェットクリーニング)に使用するパウダーには、独特な味があります。
レモンなどの風味をつけているものもありますが、味が苦手な方もいるでしょう。
強めの水圧で汚れを落としていくため、水流が舌や歯茎に当たるとチクチクとした痛みを感じます。
施術中、チクチク感がつらければ、スタッフに伝えましょう。
無理をせず、出来る範囲で受けることが、定期的なクリーニングが続けられるコツです。
2-3.エアーフロー(ジェットクリーニング)の料金相場
エアーフロー(ジェットクリーニング)は、自由診療です。
そのため、内容や費用は歯医者さんによって異なります。
一例ですが、東京都内の歯科医院でエアーフロー(ジェットクリーニング)を受けた場合、おおよそ4,000~6,000円程度が費用の相場のようです。
しかし、これはあくまでも目安であり、プランの内容や施術にかける時間によって、料金は変わってきます。
エアーフロー(ジェットクリーニング)は表面の汚れや着色を落とすもので、歯石のように厚く固まったものを取り除く事はできません。
歯石を取り除く必要がある場合、保険診療でスケーリング(歯石除去)を受けてから、エアーフロー(ジェットクリーニング)をおこなうことが多いようです。
これも、医院や患者さんのお口の状況によって変わってきますので、かかりつけの歯医者さんに問い合わせてみましょう。
3.歯医者さんでおこなうクリーニングに対する考え方
3-1.クリーニングでの歯の削れは心配しなくてよい?
クリーニング作業は、歯を傷つけるほどの強い力ではおこないません。
各施術には適切な技術を身に着けた専門家が携わっているので、歯に対するダメージを心配する必要はほとんどないでしょう。
PMTCやスケーリング(歯石除去)の施術中に、歯が削れてしまうのではないかと心配する方もいるようです。
スケーリングに使う超音波の器具は非常に細かく振動したり、甲高い音が響いたりするため、不安になるかもしれません。
不安であれば、PMTCのより詳しいメカニズムを、先生や歯科衛生士さんに確認してみると良いでしょう。
3-2.クリーニングの新しい施術方法
顕微鏡で拡大して見ると、通常、人の歯の表面は全体的にデコボコしています。
このデコボコに汚れや着色が溜まってしまうことは、ある程度仕方がありません。
クリーニングの目的は、このデコボコの表面に着いた汚れを落とした上で、仕上げの研磨をし、汚れをつきにくく歯にすることです。
仕上げの研磨をする際、デコボコを削って平らにすることで、歯の表面に汚れが付きにくい状態にするのが、従来のクリーニングでした。
近年では、デコボコの底を詰めることで平らにしていく方法の研究が進められています。
近い将来、こういった方法のPMTCも歯医者さんで受けられるようになるかもしれません。
4.まとめ
歯医者さんで行われるクリーニングにまつわる疑問は解消したでしょうか?
用語の違いがわかっていれば、実際に施術をお願いするときに自分がどうしたいのかが伝えやすいでしょう。
また、料金と内容と比較して、妥当であるかどうかを見極めることもできます。
プラークの除去は虫歯や歯周病の予防につながります。
毎日の歯磨きで落としきれない汚れは、プロの手を借りてきれいにしていきましょう。
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監修医矢島昇悟先生
青山通り歯科 院長
■院長略歴
2007年 日本歯科大学 生命歯学部卒業
2008年 埼玉県羽生市 医療法人社団正匡会 木村歯科医院
2010年 埼玉県新座市 おぐら歯科医院
2011年 東京都文京区 後楽園デンタルオフィス
2015年 東京都港区 青山通り歯科 院長