【この記事の要約】
黒毛舌とは:舌の表面の舌乳頭が伸びて黒や茶色に着色し、毛のように見える状態です。
黒毛舌の症状:舌の変色や舌乳頭の伸長が見られ、口臭の原因になることもありますが痛みはほとんどありません。
黒毛舌の原因:喫煙やコーヒーなどの嗜好品、薬の副作用、ストレスや免疫力低下、ドライマウス、洗口液の影響などが挙げられます。
黒毛舌の診断・検査:視診と問診が基本で、必要に応じて舌の細胞検査を行うこともあります。
黒毛舌の治療:抗真菌剤の処方や舌・口腔内の清掃、生活習慣の改善が主な対策です。
黒毛舌の予防:禁煙や色素の強い飲食物の摂取後の口すすぎ、適切な舌ケアと口腔清潔が有効です。
黒毛舌と間違えやすい症状・病気:毛状白板症が外見上似ていますが、原因や性質は異なります。
黒毛舌の治療を行っている診療科:歯科口腔外科
この記事の目次
1.黒毛舌とは
黒毛舌とは、舌の表面を覆う舌乳頭が何らかの影響で過度に角化し、黒や褐色に着色してしまう状態を指します。角化した舌乳頭が伸びると毛のように見えるため「黒毛舌」と呼ばれます。実際には毛が生えているわけではなく、あくまで舌乳頭の変化による視覚的なものです。しかし、鏡で見ると驚くほどはっきりと黒っぽく見えるため不安を覚えやすい症状です。
この黒毛舌は、口腔内にいる常在菌が増殖しやすい環境になることで起こりやすくなります。単なる見た目の問題だけでなく、放置すると口臭に影響が出る場合もあるため、早めの対策が望ましいといえるでしょう。
2.黒毛舌の症状
黒毛舌の症状は主に以下のとおりです。
・舌の表面が黒く、または茶色・緑色などに変色する
・舌乳頭が長く伸び、毛のように見える
・通常、痛みやしみる感覚はない
・口臭の原因になることもある
視覚的なインパクトが強いため不安を感じる方が多いですが、重篤な病気であることはまれです。
3.黒毛舌の原因
黒毛舌の原因は、いくつかの要因が重なって舌乳頭の代謝サイクルや口腔内の環境が乱れることで発症しやすくなります。原因は一つだけに限定されるわけではなく、生活習慣や服用している薬など、身近に潜む複数の要因が関係しているケースが多いです。まずは、黒毛舌と深く関わりのある主な原因を押さえ、自分に当てはまるものがないかをチェックしてみましょう。
喫煙やコーヒーなどの嗜好品
タバコの煙にはタールなどの着色成分が含まれているため、吸い込んだときに舌の表面へ付着しやすくなります。さらに、コーヒーや紅茶といった色の濃い飲み物は、繰り返し摂取するうちにステイン(着色汚れ)が溜まって、舌乳頭に残りやすくなるのです。
薬の副作用(抗生物質など)
抗生物質などの薬を服用していると、口腔内の細菌バランスが崩れることがあります。通常は善玉菌と悪玉菌がバランスを保っている口の中ですが、抗生物質の影響で善玉菌が減少すると、真菌などの増殖を抑えにくくなり、黒毛舌が生じるリスクが高まります。
また、ステロイド剤や特定のうがい薬でも、舌表面の環境が変化し、黒毛舌につながる場合があります。
過度のストレスや免疫力の低下
強いストレスを受け続けたり、体力が落ちて免疫力が低下したりしていると、体内だけでなく口腔内の状態も乱れがちになります。免疫力が弱ることで、細菌や真菌が過剰に増殖しやすくなり、黒毛舌が発生することがあります。ストレスは食生活や睡眠の質にも影響を及ぼすため、生活習慣の乱れとも相まって黒毛舌の原因になりやすいのです。
ドライマウスや口呼吸
口腔内が乾燥しやすい人や、普段から口で呼吸する習慣がある人も黒毛舌になりやすいとされています。唾液は口の中を常に潤し、食べかすや細菌を洗い流す働きがありますが、ドライマウスや口呼吸が続くと唾液の量が減ってしまい、舌の清潔が保てなくなります。その結果、舌乳頭が伸びて着色や菌の繁殖が進行しやすい環境になってしまいます。
洗口液の影響
口臭や虫歯予防のために洗口液やうがい薬を愛用している方も多いと思いますが、成分によっては舌表面を過度に殺菌したり染めたりして、口腔内の正常な細菌バランスを乱すことがあります。特に、アルコールや強い抗菌成分が含まれる製品は、毎日繰り返し使うことで黒毛舌を引き起こす可能性があるため、使用状況や成分を見直すことが大切です。
4.黒毛舌の検査・診断
黒毛舌の検査・診断は、その外見からすぐに疑われることが多く、歯科医院や口腔外科などで舌を目視すれば比較的簡単に診断できます。医師が舌の状態を観察し、糸状乳頭の伸び具合や着色の範囲、さらに口腔内の衛生状態などを総合的にチェックします。
もし黒毛舌が疑われても、悪性の可能性が完全に排除できないようなケースでは、念のため舌の細胞を採取して検査する場合もありますが、通常は視診と問診でほぼ確定に至ります。
検査の際には、黒毛舌の原因として考えられる生活習慣や服用中の薬なども問診で確認されます。例えばヘビースモーカーの方、コーヒーや紅茶などの色素がついた飲み物を頻繁に摂取する方、あるいは抗生物質を長期服用している方などは、黒毛舌ができやすいと言われています。
5.黒毛舌の治療
症状が重い場合や、自己ケアを行っても一向に改善が見られない場合は、抗真菌剤を処方してもらう必要があります。黒毛舌は口腔内のカビの一種が原因となることもあるため、適切な薬剤を使うことで症状が改善する場合があります。 ただし、自己判断で市販薬を選ぶのではなく、歯科医や口腔外科など専門家の診断を仰ぐようにしましょう。
黒毛舌の治療には、日常の口腔ケアを見直すことも重要です。生活習慣を改善しないと再発したり、治らない可能性がある為、できることから始めてみましょう。
唾液の分泌を促す
黒毛舌を改善するうえで、まずは唾液を十分に出す習慣を身につけることが重要です。よく噛んで食べることや適切な水分補給を心がけると、唾液の分泌が促されて舌の表面が常に潤い、汚れが溜まりにくくなります。ガムを噛む習慣を取り入れるのも、唾液が出やすくなるひとつの方法です。
禁煙する
黒毛舌の原因のひとつに喫煙が挙げられる以上、禁煙は対策として効果が期待されることがあります 。煙草を吸うと舌の表面にニコチンやタールが直接付着するほか、全身の免疫力にも影響が及びやすくなります。禁煙することで、舌表面だけでなく口腔全体の健康状態を向上させ、黒毛舌の改善につながります。
洗口液やうがい薬の使用を見直す
洗口液の使用が日常的になっている方は、一度中断してみる、あるいは成分が穏やかな製品に切り替えてみるとよいでしょう。口腔ケアは歯磨きやデンタルフロスだけでも十分な場合が多く、洗口液を使わなくても問題ないこともあります。使用する際は医師や歯科医師に相談し、自分の口腔環境に合った製品を選ぶのがベストです。
口腔ケアを適切に行う
舌ブラシや柔らかい歯ブラシを使って、舌の表面をやさしく清掃する方法も有効です。ただし、力を入れすぎると舌を傷つけ、かえって炎症や痛みを引き起こすこともあるため、適度な圧で行うことが大切です。また、歯や歯ぐきのケアを怠らないことも、細菌や真菌の繁殖を防ぐうえで欠かせません。
体調管理
ストレスのコントロールや十分な睡眠、栄養バランスの取れた食生活によって免疫力を高めることも大切です。免疫力が落ちると体内だけでなく、口腔内でも細菌や真菌の増殖が活発になり、黒毛舌の症状を長引かせてしまうことがあります。まずは無理のない範囲で自分の生活習慣を見直すことが、治療と予防の両面で効果的です。
6.黒毛舌の予防
黒毛舌の予防は、日々のオーラルケアです。歯磨きや舌専用のブラシや柔らかめの歯ブラシを使い、舌の表面を傷つけない程度の力加減で清掃することが効果的とされています。
また、喫煙はヤニが舌にこびりつくだけでなく、そもそも口腔内の環境を悪化させやすいので、黒毛舌予防という面から見てもできるだけ控えるのが望ましい習慣といえます。
加えて、コーヒーや紅茶、赤ワインなどの色素を含む飲み物をこまめに水やお茶で流すなど、口の中に長時間とどまらない工夫をするのも有効です。口腔内を清潔に保つことで、糸状乳頭の過度な伸びや変色を防ぎ、結果として黒毛舌のリスクを下げることが期待されます。
7.黒毛舌に似ている病気(疾患)
黒毛舌に似ている病気(疾患)は「毛状白板症(もうじょうはくばんしょう)」があります。その名に「毛状」がついている通り、舌や口腔内に白い毛のようなものが見られる症状ですが、こちらは免疫低下や特定のウイルス感染に関連する場合があるため、黒毛舌とは全く別の原因であることが多いです。
見た目だけで自己判断するのではなく、黒毛舌かどうか確かめるためにも、気になる変化があれば早めに医療機関で診察を受けることが大切です。
8.この病気・疾患に対応している歯科の診療科目
歯科口腔外科

監修医
古橋 淳一先生
あおぞら歯科クリニック本院 理事長・院長
経歴
2000年 広島大学歯学部 卒業
2000年~2001年 医療法人社団 不二見会 ふじみ歯科医院浦安診療所 勤務
2001年~2005年 医療法人社団 不二見会 ふじみ歯科医院南行徳診療所 勤務(所長)
2005年 あおぞら歯科クリニック 開院
2007年 医療法人社団爽晴会 設立・理事長就任
2010年 あおぞら歯科クリニック鎌ヶ谷 開院
2012年 あおぞら歯科クリニック新館 開院
2015年 なないろ歯科クリニック 開院
2017年 あおぞら歯科クリニック下総中山 開院
現在に至る
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