歯科医院でもレントゲンを撮る機会はありますよね。そこで心配になるのが、歯のレントゲン撮影による子どもへの影響です。テレビや新聞などで放射線に関するニュースを目にし、「放射線」や「被曝」という言葉に不安を感じる方もいると思います。
ここでは、レントゲン撮影における子どもへの影響について考えながら、レントゲンの必要性について説明していきます。
【小児歯科でのレントゲン撮影が心配!身体への悪影響は?】でも小児歯科で行うレントゲンに関する情報を掲載していますので、ご参考ください。
※本記事では、放射線量の単位として、ミリシーベルトとマイクロシーベルトを併記して解説しています。なお、被曝量は撮影機器、撮影条件、撮影範囲などによって異なるため、記載している数値は目安としてご確認ください。
この記事の目次
1.歯のレントゲン撮影による身体への影響
1-1 歯科レントゲンの被曝量は比較的少ない
放射線や被曝というと特別なことのように聞こえますが、私たちは日常生活の中でも自然放射線を受けています。自然放射線には、宇宙からの放射線、大地からの放射線、食物などに含まれる自然由来の放射性物質によるものがあります。
世界平均の年間自然放射線量は、約2.4ミリシーベルトとされています。
一方、歯科で用いられるデンタルレントゲンやパノラマレントゲンの被曝量は、一般的に自然放射線と比べても少ない量とされています。ただし、撮影機器や撮影範囲によって被曝量は異なります。
現在の歯科用X線装置では被ばく線量は比較的少なく、必要性を判断した上で撮影が行われています。心配な方は、撮影は必要性を確認したうえで行うことが大切です。
1-2 妊娠中は気をつけるべき?
赤ちゃんが生まれてくる前に治療を終わらせたいけれど、レントゲンが必要といわれたらどうしよう…とお悩みの方もいらっしゃると思います。
歯科のレントゲン撮影は、撮影範囲が口や顎の周辺に限られ、腹部から離れているため、胎児への影響は小さいと考えられています。ただし、妊娠中の方は、妊娠していることや妊娠の可能性があることを、必ず歯科医師に伝えましょう。
撮影が必要かどうか、防護エプロンを使用するかどうか、治療時期を調整するかどうかは、症状や緊急性に応じて判断されます。
必要性を歯科医師に確認したうえで、説明を受けてから撮影を受けましょう。
妊娠中にほかにも気をつけておきたいことなどは【妊婦さんが安心して歯科医院にかかるための4つのポイント】にまとめてありますので、活用してみてください。
1-3 放射線の単位…シーベルトってなに?
シーベルトは、放射線が人体に与える影響を表す単位です。歯科レントゲンなどの医療被曝を説明する際には、ミリシーベルトやマイクロシーベルトという小さな単位が使われることが多いです。
1ミリシーベルトは、1シーベルトの1000分の1です。1マイクロシーベルトは、1シーベルトの100万分の1です。
日常生活で受ける自然放射線や歯科レントゲンの被曝量を説明する場合、シーベルトよりも、ミリシーベルトやマイクロシーベルトで表す方がわかりやすくなります。
吸収線量を表す単位、Gy(グレイ)とは?
放射線の量を表す単位には、Gy(グレイ)もあります。Gyは、放射線が物質に与えたエネルギー量を表す単位です。
一方、シーベルトは、放射線が人体に与える影響を考えるための単位です。歯科レントゲンの説明では、患者さん向けにはシーベルト、ミリシーベルト、マイクロシーベルトが使われることが多いです。
2.子どものレントゲンが心配な方に
2-1 レントゲン防護服の役割
レントゲンを撮る際には、防護エプロンを着用することがあります。これはX線防護エプロンなどと呼ばれ、放射線の影響を減らす目的で使われます。
歯科レントゲンでは、撮影範囲が限られており、装置や撮影方法も進歩しています。そのため、撮影の種類や医療機関の方針によって、防護エプロンを使用する場合と使用しない場合があります。
2-2 着用を希望する場合は事前に問い合わせを
レントゲン防護服は少し重く、子どもが嫌がることがあります。泣いたり動いたりすると正確な撮影が難しくなるため、撮影方法や状況によっては防護エプロンを使わない場合もあります。
現在は、歯科レントゲンの被曝量が比較的少ないことや、撮影範囲が限定されていることから、防護エプロンの必要性については医療機関によって考え方が異なる場合があります。
どうしても気になる場合には、事前に連絡して、子ども用レントゲン防護服の有無や撮影時の対応について確認することをおすすめします。
3.レントゲンの有無は歯科医院によって異なる
3-1 方針や、治療方法によって異なる
いつレントゲンを撮るのかは、症状や治療内容、歯科医師の判断によって異なります。どの歯科医院でも同じというわけではありません。
初診時にレントゲンを撮って状態を確認する場合もあれば、症状や必要性に応じて撮影する場合もあります。また、過去の写真と比較するために定期的に撮影することもあります。
歯科医院によって治療方針はさまざまなので、気になる方は、撮影の必要性や被曝量について先生に相談してみましょう。
4.レントゲンで分かること
4-1 歯根の様子
歯の根の様子を知るために、レントゲンが役立つことがあります。
歯の根の先に炎症が疑われる場合や、フィステルと呼ばれる膿の出口がある場合などは、レントゲンを撮り、炎症の範囲や根管治療の状態などを確認します。
外からは見ることのできない歯の内部や根の周囲の状態を確認するために、レントゲンが必要になることがあります。
4-2 むし歯の進行具合
一見すると小さな黒い点に見えても、内部でむし歯が広がっていることがあります。
治療前にレントゲンを撮ることで、むし歯の深さや神経との距離、隣の歯との間にできたむし歯などを確認できる場合があります。
ただし、レントゲンだけですべてのむし歯が分かるわけではありません。視診や触診などとあわせて総合的に判断します。
4-3 骨の様子
歯は歯ぐきだけでなく、顎の骨にも支えられています。歯周病が進むと、歯を支える骨が吸収されることがあります。
骨の状態は外から見ただけでは分かりにくいため、レントゲンで骨の様子を確認し、治療方針を立てることがあります。
4-4 被せ物の様子
被せ物は、一度被せれば永久的に歯を守り続けるものではありません。
歯と詰め物・被せ物の隙間から細菌が入り、根の周囲に炎症を起こしたり、むし歯が再発したりすることがあります。
そのため、異常を感じなくても、定期的に詰め物や被せ物をした歯を確認することが大切です。
詰め物や被せ物を毎回外して確認するわけにはいきませんが、レントゲンで確認することで、内部の状態を把握しやすくなる場合があります。
5.レントゲンなしでも治療は可能なのか
5-1 症状によって異なる
レントゲンは万能で、すべてが分かるというわけではありません。角度によっては写りにくい部分があったり、レントゲンだけでは判断できないこともあります。そのため、レントゲンだけで判断するのではなく、口の中の診察や症状の聞き取りなどとあわせて総合的に判断します。
レントゲンなしでも治療できる症状もありますが、歯の根や骨の状態、むし歯の深さなどを確認しないと、診断や治療計画に必要な情報が不足する場合があります。
撮影が必要かどうかは、症状や治療内容によって異なります。不安がある場合は、なぜ撮影が必要なのかを歯科医師に確認しましょう。
6.歯のレントゲンの種類と被曝量
6-1 パノラマレントゲン
パノラマレントゲンは、歯の一部ではなく、口全体を1枚に写すレントゲンです。
歯や骨の状態を大まかに知りたいときに使用され、親知らず、歯周病、顎の骨の状態、歯の本数などを確認する際に使われます。
レントゲンの機械が頭の周りを回って撮影します。
歯科用パノラマレントゲンの被曝量は、撮影機器や条件によって異なりますが、1回あたり10~30マイクロシーベルト程度とされることがあります。
6-2 デンタルレントゲン
デンタルレントゲンは、パノラマレントゲンとは違い、一部分だけを撮影するレントゲン写真です。細かい部分まで確認したい場合に使われ、一度に数枚撮ることもあります。
デンタルレントゲンの被曝量は、撮影機器や条件によって異なりますが、1枚あたり数マイクロシーベルト程度とされることがあります。
6-3 セファログラム
セファログラムは頭部X線規格写真とも呼ばれる、一定の規格に基づいて撮影された頭部のX線写真です。
矯正治療の診断や治療計画に用いられることがありますが、一般的なむし歯治療ではあまり使われません。
セファログラムの被曝量は、撮影機器や条件によって異なりますが、数マイクロシーベルト程度とされることがあります。
6-4 歯科用CT
平面ではなく3Dで歯や顎の状態を確認できるのが歯科用CTです。
歯科用CTは、親知らずの位置、顎の骨の厚み、神経や血管との位置関係、インプラント治療、根管治療などで必要に応じて使われることがあります。
医科用CTと比べて撮影範囲が限られる場合がありますが、通常の歯科レントゲンより被曝量が多くなることがあります。被曝量は撮影範囲や機器によって大きく異なるため、必要性を確認したうえで撮影を受けましょう。
6-5 その他のレントゲンの被曝量の目安
胸部レントゲン:50マイクロシーベルト(0.05ミリシーベルト)程度
胃のレントゲン:500マイクロシーベルト(0.5ミリシーベルト)程度
世界平均の年間自然放射線量:2400マイクロシーベルト(2.4ミリシーベルト)程度
上記の数値は目安です。被曝量は、照射する範囲、機器、撮影条件によって変化します。
胸部レントゲンや胃のレントゲンの被曝量が歯科用レントゲンと比べて高くなることがあるのは、照射部位や撮影条件が異なるためです。一概に「その他のレントゲンは危険である」ということを示すものではありません。
7.まとめ
歯科レントゲンの被曝量は比較的少ないとされていますが、まったく影響がないと断定するのではなく、必要性を確認したうえで撮影することが大切です。
レントゲンを撮ることで、目で見えない歯の根や骨、むし歯の進行具合などを確認しやすくなり、診断や治療計画に役立つことがあります。子どもの撮影が心配な場合は、撮影の目的、被曝量、防護エプロンの使用について歯科医師に相談しましょう。
【参考サイト】
・日本歯科放射線学会
https://www.jsomfr.org/
・日本歯科放射線学会 歯科エックス線撮影における防護エプロン使用についての指針
https://jsomfr.sakura.ne.jp/wp-content/uploads/2019/09/apron_guideline.pdf
・環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/current-kisoshiryo.html
・ICRP Publication 84 妊娠と医療放射線
https://www.icrp.org/docs/P84_Japanese.pdf
・厚生労働省 医療放射線の適正管理に関する情報
https://www.mhlw.go.jp/
【あわせて読みたい】
監修医
高村 剛先生
高村歯科医院 院長
経歴
出身校(最終学歴) 北海道医療大学 歯学部
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