歯医者さんでもレントゲンを撮る機会は多いですよね。そこで心配なのは、歯のレントゲン撮影による子供への影響です。テレビや新聞でも放射能についてたくさんのニュースが上がっており、放射能や被爆という言葉に多少なりとも「怖い」というイメージをお持ちの方は多いと思います。
ここでは、レントゲン撮影における子供への影響について考えながら、レントゲンの必要性について説明していきたいと思います。
【小児歯科でのレントゲン撮影が心配!身体への悪影響は?】でも小児歯科で行うレントゲンに関する情報を掲載していますので、ご参考ください。
※「放射線医学総合研究協会」の調べにおいて、放射線量の単位を「ミリシーベルト」で表記していること、また、馴染みのある単位として「マイクロシーベルト」が挙げられることを踏まえ、本記事でも放射線量の単位として、ミリシーベルトとマイクロシーベルトを併記して解説しております。
この記事の目次
1.歯のレントゲン撮影による身体への影響
1-1 医療被爆量は飛行機に乗るより少ない
放射能や被爆というと特別なことのように聞こえますが、実は誰もが毎日放射線源(放射性物質)※を浴びて生活しています。
テレビや電子レンジなど電子機器からもでていますが、普段私たちが食事をする食べ物からも実は放射線源(放射性物質)は出ているのです。
食事による内部被曝は年間平均410マイクロシーベルト(0.14ミリシーベルト)で、東京~ニューヨーク間を飛行機で往復するとおよそ200マイクロシーベルト(0.2ミリシーベルト)もの放射線源(放射性物質)を浴びることになります。
一方、歯科のデンタルレントゲンは1回で1~8マイクロシーベルト(0.001~0.008ミリシーベルト)なので、年に数回レントゲンを撮っても大きな被害を受けることはありません。
また、取り込まれた放射線源(放射性物質)は新陳代謝によってある程度排出されるため、日常生活を送る上では気にする必要はありません。
※放射線源(放射性物質)とは、放射線の発生源のことを言います。放射線源(放射性物質)が取り込まれ、新陳代謝により排泄されます。
1-2 妊娠中は気をつけるべき?
赤ちゃんが生まれてくる前に治療を終わらせたいけれど、レントゲンが必要といわれたらどうしよう…とお悩みの方もいらっしゃると思います。
国際放射線防護委員会の勧告によると、妊婦さんが出産までに浴びていい放射線源(放射性物質)は10000マイクロシーベルト(10ミリシーベルト)です。
それに対して、歯科で使用するレントゲンは1~20マイクロシーベルト(0.001~0.008ミリシーベルト)なので、それほどレントゲンを心配する必要はありません。
安心してレントゲンを撮ってください。
妊娠中にほかにも気をつけておきたいことなどは【妊婦さんが安心して歯医者にかかるための4つのポイント】にまとめてありますので、活用してみてください。
1-3 放射線の単位…シーベルトってなに?
シーベルトという言葉は、放射線量を示す単位の一つです。
多くの場合、「1シーベルト」は「1シーベルト毎時(Sv/h)」と表すのがより正確と言えます。
もちろん、「1シーベルト毎秒」や「1シーベルト毎年」といった表記方法もありますが、一般的な計測方法や表記方法としては「1シーベルト毎時」が使われることが多いでしょう。
「シーベルト」を使用するときは、基本的に「1シーベルト毎時」を指すことが多いため、「毎時」を省略して使用することが増えています。
「1シーベルト」が、ある特定の場所(地域)で“1時間で”測定された放射線量だということはわかりました。
それでは、1シーベルトの放射線量とはどのくらいの量でしょうか?
上述したように、地球上で生活しているだけで放射線を浴びています。
世界の平均で、人間は年間およそ0.002シーベルト(この場合は毎年)の放射線を浴びているとされています。
一方、生命の危険があるレベルの放射量とは、「人間が通常の生活を送り1年間で浴びる放射線量の、1000倍の量を1時間に浴び続ける」量です。
この条件に見舞われた人のうち、20人に1人が死に至るとされています。
具体的には、
1時間に1シーベルト:吐き気を感じる
1時間に2~5シーベルト:頭髪が抜ける
1時間に3シーベルト以上:30日以内に半数の人が死亡する
と考えられています。
このように、「1シーベルト」はとてつもなく多い量を示す単位のため、1/1000の単位である「ミリシーベルト」や、1/1000000の単位である「マイクロシーベルト」が主に使われています。
■吸収線量を表す単位、Gy(グレイ)とは?
放射線量は「シーベルト」で表しますが、人や物体に放射線が及ぼしたエネルギー量を表す単位として「Gy(グレイ)」があります。
放射線は「もの」に当たると、その「もの」を構成する分子構造を変えたり、電子をはじき飛ばしたりする特徴があります。
このとき、放射線が構造を変えるために「もの」が受けたエネルギー量を表すのが、Gyという単位です。
「シーベルト」は、放射線が人間に当たったときに、どのような健康的な影響があるかを測るための単位です。
シーベルトの算出方法にはGyが関わっていますが、生活する上で多く使用するのは「シーベルト」という単位です。
ですので、まずは「シーベルト」がどういった単位なのか、正しく理解しておきましょう。
2.子供のレントゲンが心配な方に
2-1 レントゲン防護服の役割
レントゲンを撮る際には、ずっしりとした防護服やエプロンを着用することがありますね。
これはレントゲン防護服やX線防護服と呼ばれ、特殊な加工を施してあり、放射線源(放射性物質)の透過を緩和することができます。
つまり、防護服を着ることでより身体への影響を減らすことができるのです。
2-2 着用を希望する場合は事前に問い合わせを
レントゲン防護服は少し重く動きにくいため、嫌がる子供も多くいます。
泣いてしまうとなかなかレントゲンが撮れないため、防護服を着用しないで撮影というのも珍しくありません。
そもそも、歯科のレントゲンは放射線源(放射性物質)量が微量であることや、防護服は気休め程度の効力であることから、防護服を着ない歯科医院も多いのが現状です。
しかし、どうしても気になるという場合には、事前に連絡して、子供用レントゲン防護服の有無を確認することをおすすめします。
3.レントゲンの有無は歯医者によって異なる
3-1 方針や、治療方法によって異なる
いつレントゲンを撮るのかは先生の判断によるもので、どの先生でも同じというわけではありません。
初診は必ずレントゲンを撮って状態をチェックする先生もいれば、何もなくても年に一度撮影し、去年との違いを確認する先生もいます。
歯医者さんによって治療方針は様々なので、気になる方は、ぜひ先生に相談してみましょう。
4.レントゲンで分かること
4-1 歯根の様子
歯の根っこの様子を知るためにレントゲンは欠かせません。
歯の根っこが炎症を起こしているフィステルなどはレントゲンを撮り、腫れている部分や薬がきちんと注入できているかなどを確認します。
外からは見ることのできない「歯の内部の治療」にとって、レントゲンは欠かせない存在です。
4-2 虫歯の進行具合
一見、小さな黒い点であり小さな虫歯だと思っていたら、入り口は小さく、奥に入ると広く深くといったタイプの虫歯は子供に多くみられるパターンです。
治療前にレントゲンを撮ることで、虫歯の状態や進行具合を確認することができます。
4-3 骨の様子
歯は歯茎だけでなく、骨にも支えられていますが、歯周病が進むと顎の骨が溶けてしまうことがあります。
外からは分からないため、まずはレントゲンで骨の様子を確認して治療方針を立てていきます。
4-4 被せ物の様子
被せ物は一度被せれば永久的に歯を守りつづけると考えられがちですが、それは違います。
歯と詰め物の隙間から細菌が侵入し、根っこで炎症をおこしたり、虫歯を進行させることもあります。
そしてこれは決して稀な現象ではありません。
そのため、異常を感じなくても数年に1度は詰め物をした歯を点検することをおすすめします。
しかし、いちいち詰め物を取っていると時間もお金もかかりますよね。
そんな時もレントゲンで確認することで、スピーディーに検査をすすめることができるのです。
5.レントゲンなしでも治療は可能なのか
5-1 症状によって異なる
レントゲンは万能ですべてが分かるというわけではありません。
角度によっては写り込んでいなかったり、見落とす可能性もありますので、レントゲンだけで判断するのではなく、総合的に判断しています。
そのため、使うタイミングや枚数などは先生の判断で変わってきたり、症状によっても異なります。
レントゲンなしでも治療は症状によっては可能ですが、それでは危険な場合もあるのです。
6.歯のレントゲンの種類と被曝量
6-1 パノラマレントゲン
パノラマレントゲンは、歯の一部ではなく、口全体を1枚に納めるレントゲンです。
歯や骨の状態を大まかに知りたいときに使用され、インプラントや歯周病・親知らずの抜歯などの治療の際に使われます。
レントゲンの機械も大きく、頭の周りをグルリと回って撮影します。
歯科用パノラマレントゲン1枚で20マイクロシーベルト(0.02ミリシーベルト)です。
6-2 デンタルレントゲン
パノラマレントゲンとは違い、一部分だけを撮影するレントゲン写真です。細かい部分まで鮮明に写るため、詳細な情報がほしい場合に使われ、一度に数枚撮ることもあります。
デンタルレントゲンは1枚で1~4マイクロシーベルト(0.001~0.004ミリシーベルト)です。
6-3 セファログラム
セファログラムは頭部X線規格写真とも呼ばれる、一定の規格に基いて撮影された頭部のX線写真です。
矯正をする場合に必要ですが、その他の歯科治療ではあまり使われません。
セファログラムは1回で3~5マイクロシーベルト(0.003~0.005ミリシーベルト)です。
6-4 歯科用CT
平面ではなく3Dレントゲンを撮影できるのが歯科用CTです。
CTと聞くとベッドに寝て狭い空間へ入っていく大きな機械で撮るイメージがありますが、歯科用CTはあくまで歯やあごの部分だけなので被曝量も微量です。
歯科用CTは1回で100マイクロシーベルト(0.1ミリシーベルト)です。
6-5 その他のレントゲンの被曝量の目安
胸部レントゲン:50マイクロシーベルト(0.05ミリシーベルト)
胃のレントゲン:500マイクロシーベルト(0.5ミリシーベルト)
世界平均の年間自然放射線量:2400マイクロシーベルト(2.4ミリシーベルト)
※上記の数値は、「国連放射線影響科学委員会報告(2000年)」を参考に記載しています。
被曝量は、照射する範囲によって変化します。
胸部レントゲンや胃のレントゲンの被曝量が歯科用レントゲン被曝量と比べて高いのは、照射部位が広いためです。
一概に、「その他のレントゲンは被曝量が高い(危険である)」ということを示すものではありません。
7.まとめ
レントゲンの被爆量はごく僅かで、1日数枚撮っても身体にさほど影響はありません。
レントゲンを撮ることで、より正確な判断をすることができるので安全に治療を受ける為にも、レントゲン撮影はとても重要なことなのです。
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