「一生自分の歯で美味しい食事をとりたい!」と思っている人は多いでしょう。ところが、虫歯などで実際に自分の歯が老後まで残せる人は少ないのが現状です。
虫歯は、歯の一番外側の固いエナメル質が酸によって溶けることから始まります。つまり、エナメル質を再生できれば、虫歯になりにくい健康な歯がよみがえるのです!
エナメル質の再生には、唾液の力やキシリトールガムなどを始め、様々な方法で働きかけることができます。身近にある方法ばかりなので、ずっと自分の歯が健康でいられるようにトライしてみましょう。
※ 掲載する平均費用はあくまでユーザー様のご参考のために提示したものであり、施術内容、症状等により、施術費用は変動することが考えられます。必ず各院の治療方針をお確かめの上、ご自身の症例にあった歯医者さんをお選びください。
この記事の目次
1.エナメル質の再生4つの方法
傷ついたエナメル質は、唾液の力や食後の歯磨き、間食を控えるなど総合的に気をつければ再生できます。
1-1 唾液の力で歯を再生
食後は、口内中が酸性状態になり、エナメル質が溶かされやすくなりますが、カルシウムやリン酸が豊富に含まれた唾液により元の状態に戻ることができます。これを再石灰化といいます。
唾液の分泌量
1日に分泌される唾液量は1.5ℓ〜2ℓです。よく噛むと口の筋肉がよく動き、その刺激によって唾液腺も活発化します。ただ、唾液の出方や質には個人差があり、高齢者では特に唾液腺の働きが鈍くなるため、唾液分泌量が少ない傾向にあります。
唾液の分泌をスムーズにするために
分泌量を増やすためには、食事に硬い食材を取り入れたり、ガムや飴などを食べたりします。また、唾液の成分は水分ですから、水分をこまめに取り入れましょう。
唾液の主な成分と役割
唾液には、次のような役割があるので、唾液の分泌を正常に保つ必要があります。
・消化作用
・粘膜を修復作用
・粘膜保護作用
・再生石化作用
1-2 食後の歯磨き
歯磨きのタイミング
食後の歯磨きは、歯を溶かす酸を作りにくい状況にし、口内中の虫歯菌を減少させます。歯磨きは、食後すぐに行うのがベストです。プラークから出る酸が歯のエナメルを溶かすため、早めにプラークの餌となる口中の食べかすを取り除きましょう。
ただ、例外もあります。炭酸やジュースなどを飲んですぐは、口中が酸性になっていて歯のエナメルが柔らかくなり、傷つきやすくなっています。そのような状態の時には、唾液で中和されるまで30分〜1時間ほど待ってから歯磨きをしてください。
理想的な歯磨き粉
歯磨き粉は、プラークによる酸の発生を抑制し、さらに歯の表面を酸に強い構造にしてくれる効果があるフッ素入りがオススメです。また、歯磨きをする上で大切なのは、歯のエナメルを傷つけないようにすることです。
色素沈着など歯の白さを追求する目的で使用する研磨剤成分は、歯のエナメル質を傷つけ、そこから虫歯に発展する可能性が高くなります。歯のエナメル質を守りたいのであれば、研磨剤がたくさん配合されている歯磨き粉は極力控えてください。
1-3 間食を控える
ダラダラ食べをしていると、いつまでも口の中が中和されず酸性のままになってしまいます。酸性であるという事は、先にも述べたとおり、虫歯になりやすくなる状態です。
つまり、なるべく間食を避けることで、エナメル再石灰化の時間が増えて再生されやすくなるのです。
1-4 キシリトールガムを噛む
歯のエナメル質をよみがえらせてくれるのは、唾液中のカルシウムやリン酸です。唾液をたくさん分泌させるために、ガムで咀嚼を促しましょう。ガムの種類は、虫歯菌を抑える効果が期待できるキシリトールガムが良いですね。
キシリトールとは…
果物、野菜などの食物に含まれる天然成分で、自然甘味料に属します。甘味料の中でも、唯一、虫歯菌を抑制することができます。
キシリトールガムを選ぶ時のポイント
ガムのキャッチフレーズに「虫歯になりにくいキシリトール」という言葉がよく使用されていますが、キシリトールガムならなんでも良いわけではありません。以下の2つの点をチェックし、ベストなキシリトールをセレクトしましょう。
キシリトールの濃度
キシリトール濃度50%以上を選びましょう。歯科で購入できるキシリトールガムは、100%のものがほとんどなので理想的な濃度といえるでしょう。
他の甘味料の使用はないか
せっかくのキシリトールガムも、他の甘味料が配合されていれば虫歯リスクは高まります。
キシリトールガムの上手な噛み方
キシリトールガムは次のようなタイミングで噛むのが効果的です。
・口内中が酸性に傾く食後
・歯磨き後の清潔な状態
・就寝前 (就寝中は唾液量が減るため)
2.エナメル質を守る為に必要なこと
歯の表面にある厚さ2〜3ミリのエナメル質がすり減り、もろくなる理由は、硬い食べ物で傷がついたり、歯磨きを強くし過ぎたり、食後の酸による歯のミネラル流出などによるものです。これらの原因にあった対策をすれば、エナメル質を守ることができます。
2-1 エナメル質の強化
人間の体の中で最も硬い歯のエナメル質は、食事内容やフッ素などで強化されます。
食事による積極的な強化成分摂取
ご存知の通り、歯や骨のミネラル主成分としてカルシウムは欠くことのできない成分です。煮干しなどの噛み応えある小魚などをメインに食べていると、カルシウム摂取と同時に顎の筋肉も鍛えられ、歯の再石灰化を行う唾液腺も活発になり唾液も出やすくなります。
ただ、カルシウムは、人体に最も吸収されにくいという特徴があります。吸収をサポートするキノコ類などのビタミンDの同時摂取も必須でしょう。
また、人体の中で一番硬いといわれる歯のエナメル質を強化するビタミンAを含む、ほうれん草や海藻類、エナメル質の中に存在する象牙質の強化をするビタミンCが豊富なピーマンや大根、果物などを摂取することで虫歯の進行をくいとめることができます。
2-2 フッ素を塗る
定期的なフッ素の塗布で、虫歯を防ぎ、歯のエナメル質を丈夫にするなど、あらゆる虫歯菌の抑制につながります。
フッ素が歯に良い理由
・初期の虫歯を治す
1日の間に、プラークは酸性になったり中性になったりを繰り返しています。そのバランスが崩れた時に、歯に穴が空いて初期虫歯になります。フッ素を塗布すると、再石灰化が促進し、流出されたミネラルも吸収され、初期虫歯が治ります。
・歯を丈夫に強くする
フッ素を塗布することで、歯の再石灰化時にエナメル質の成分と結びつき歯をより強くします。この構造はフルオロアパタイトと呼ばれ、ミネラルなども溶けにくい丈夫な歯の状態になるのです。
・盛んな虫歯菌の活動を抑制する
フッ素は、歯を溶かす酸を放つ様々な虫歯菌を抑制することが可能です。
子どもから大人まで幅広く使えるフッ素
フッ素と聞くと、乳歯の子どもや永久歯の生え始めた子どもが塗るイメージが強いかもしれませんが、大人にも非常に有効です。特に、不規則な食生活の方や虫歯になりやすい唾液の質を持つ方、年齢とともに歯茎が下がりぎみでエナメル質が柔らかく灰石化しやすい高齢者などに効果的です。
フッ素の効果的な使用方法・回数
フッ素は、定期的に歯科で塗ってもらうのが一般的です。1度だけでは十分な効果が得られないため、エナメル質が柔らかい歯の子どもの場合は3ヶ月に1回、大人の場合でも半年に1回などを目安に、定期検診を受けるついでに塗ってもらうと良いでしょう。
また、最近では歯磨き粉にフッ素が配合されているケースもありますが、フッ素濃度は純粋なフッ素と比較すると薄いため、歯科でのフッ素塗布と併用して使用したほうが効果的です。
フッ素入り歯磨き粉の効果的な使用方法としては、何もつけないブラシでプラークを落としてから、歯磨き粉をブラシに適量つけて磨きます。
その時は歯の表面に均一にのばすような感覚です。最後は、唾液を吐き出して30分の間飲食は控えます。
自宅使用にオススメのフッ素ジェル
自宅でも簡単に使用できるフッ素ジェルがいくつか販売されています。歯磨きでしっかり汚れを落とした後に、併用すると歯の再石灰化を促進してくれます。以下にオススメのフッ素ジェルをご紹介します。
コンクールジェルコートF ¥1,080
出典 www.amazon.co.jp
フッ素成分が歯の再石灰化をスムーズにし、もう一つの有効成分塩酸クロルヘキシジンが虫歯菌の増殖を抑制します。研磨剤などの歯の表面を溶かすような成分が配合されていない点も安心です。
3.エナメル質が失われる理由
鉄よりも硬いエナメル質ですが、様々な要因で削れたり、すり減ったりします。エナメル質が失われるそれぞれの原因を知り、適切な対処でエナメル質のトラブルを回避しましょう。
3-1 脱灰
虫歯は、突然穴が開くものではありません。口の中の虫歯菌であるミュータンス菌などが酸を作り、その酸がエナメル質を溶かします。これを脱灰といいます。
通常ならば、唾液により再石灰化が行われ、初期虫歯なら自然に治るのですが、脱灰の状態に再石灰化が追いつかない状態が続くと、歯は初期虫歯から深い虫歯へと進行していまいます。
脱灰が盛んになればなるほどエナメル質は失われやすくなります。
3-2 歯ぎしり、かみしめ
ストレスや噛み合わせが原因で生じる毎晩の歯ぎしりは、歯に体重以上の力がかかっています。毎晩の歯ぎしりによりダメージを受けたエナメル質は、だんだんとすり減ってしまうのです。歯ぎしりがあまりにもひどい時は、マウスピースで矯正するなどし、歯ぎしりの治療も併用する必要があります。
3-3 虫歯になりやすいエナメル質がある
通常、エナメル質は硬くて丈夫ですが、乳歯や永久歯の生え始めは柔らかめのエナメル質が特徴になっています。また、年齢を重ねると歯槽膿漏や歯肉炎などにより歯茎が下がり、エナメル質が柔らかくなります。こうした幼児や高齢者の柔らかいエナメル質は、脱灰が生じやすいため虫歯になりやすい歯として注意が必要です。
4.エナメルリペア(エナメル質再生療法)
歯のエナメル強化が画期的にできる「エナメルリペア」という治療法があります。フッ素治療と比較しながら、どちらが自分に合っているかを確認しましょう。
エナメルリペアの治療内容
簡単にいってしまえば、特殊な薬品を歯に塗り、エナメル質の上にエナメルでコーティングしてしまうという治療です。歯を削らずに虫歯を治したり、強くしたりする歯の強化治療として注目されています。他にも、口臭予防・知覚過敏の治療としても効果的です。
歯の強化といえば、フッ素治療が思いつきますが、フッ素はカルシウムを抜き取るのに対して、エナメルリペアはカルシウムを抜き取ることがない点もメリットです。
エナメルリペアの予算感
歯科によって料金に違いがあり、通常30分〜60分の治療時間で3,000円〜5,000円の料金幅があります。年齢で金額設定を変えている場合もあります。
エナメルリペアがオススメな人
・歯を削らずに虫歯治療がしたい
・最近歯に冷たいものがしみる
・口臭が気になる
・歯に老化を感じる
・歯磨きはきちんとしているのに虫歯が次から次へとできる
5.まとめ
虫歯のない丈夫な歯は、それをガードする硬いエナメル質の強化が大切です。いつまでも自分の歯で食事をとりたいという夢は、毎日のエナメルケアや歯科による再生治療などを定期的に受けることで叶う日が来ます。
また、「歯磨きなど常に気をつけているのに虫歯が次々できて困っている…」、「虫歯を削らないで治したい…」という方は、エナメル質の再生にチャレンジしてみてください。
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監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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