エナメル質を失う原因と対処法とは?歯が黄ばむ理由も解説

  • 9
  • 8
  • 4
  • 2
  • 1
エナメル質

エナメル質は歯の内部を保護する、人体で最も硬い組織です。その一方、酸や摩擦などの浸食には弱いとされています。エナメル質を失うと知覚過敏や歯の内部の虫歯になりやすくなるため、エナメル質を保つことがとても大切です。この記事では、エナメル質の役割や、失う原因とその対処法について解説します。口の健康を保ち、歯を失いたくない方はぜひご覧ください。

この記事の目次

1.エナメル質は歯の内側を保護している

エナメル質とは歯肉縁上の歯の外側を覆う組織のことをいいます。

私たちの歯を縦に割ってみると、3つの層に分かれた構造が見られ、外側からエナメル質、象牙質(ぞうげしつ)、歯髄(しずい)と呼ばれます。エナメル質は水晶と同じくらいの硬さによって内側の象牙質や歯髄を保護する組織です。エナメル質は硬さがある一方、酸の刺激に弱く、虫歯菌が作り出す酸や食べ物に含まれる酸によって溶けてしまう性質があります。

初期虫歯の段階では、エナメル質から溶け出したミネラルを唾液の作用によって戻す再石灰化(さいせっかいか)で修復できます。しかし、虫歯で歯に穴が開いてしまうと自己修復は不可能で、削ってレジンや詰め物を使った治療をすることになります。

エナメル質

2.エナメル質が薄いとどんな影響がある?

歯の内部を保護するエナメル質が薄くなると、知覚過敏や虫歯の悪化など口の健康を保ちにくくなるだけでなく、見た目にも影響が現れます。具体的にどのような影響がでるのかみていきましょう。

2-1.エナメル質が薄いせいで知覚過敏になる理由

エナメル質は痛みや温度を感じませんが、エナメル質の内側や歯根部にある象牙質は痛みや温度を感じる組織です。
エナメル質に十分な厚さがあれば、歯に軽い刺激が加わってもなにも感じないことがほとんどです。しかし、エナメル質が薄くなると象牙質に刺激が伝わりやすくなり、冷たいものや歯ブラシがあたったときなどに痛みが生じる知覚過敏を引き起こします。

2-2.エナメル質が薄いせいで歯の内部が虫歯になる理由

一般的に虫歯は、歯の表面から進行していきます。虫歯菌が出す酸にさらされても、エナメル質は固いため内部まで進行するのに時間を要します。また、酸によってエナメル質のカルシウムやリンが溶け出しても、再石灰化によって修復することができます。

しかし、エナメル質が薄いと再石灰化が間に合わず、短い時間で表面に穴が開きやすくなり、そこから虫歯菌が内部へ侵入します。歯髄まで虫歯菌が侵入すると強い痛みを感じたり、場合によっては骨の中で虫歯菌が増殖したりと、歯だけでなく全身に影響が出る恐れもあります。

エナメル質

2-3.エナメル質が薄いと歯が黄ばんで見えやすくなる

エナメル質は透明感のある白色を、象牙質は黄色っぽい色をしています。エナメル質に十分な厚みがあれば、象牙質の色を覆い隠してくれるため、比較的歯は白っぽく見えます。

しかし、加齢などでエナメル質が薄くなると、象牙質の色が透けて見えやすくなり、その分歯が黄ばんで見えがちになります。

3.エナメル質が失われる原因

3-1.虫歯による影響

虫歯菌が繁殖すると、酸を作りだし、歯の表面を溶かしてしまいます。この状態が虫歯です。初期虫歯の段階であれば再石灰化で修復できます。しかし、歯の表面のエナメル質は溶ける状態が続くとついには穴があいてしまいます。

3-2.酸で歯が溶ける(酸蝕歯)

エナメル質は酸に弱いため、口の中で酸性の状態が長く続くと、エナメル質が溶けてしまいます。口の中が酸性になりやすい状態は、次のような場合です。
・柑橘類、酢など酸の強いものを食べる
・口のケアを十分にしない
・病気などで嘔吐を繰り返し、胃酸の影響を受ける

3-3.日々の生活や歯ぎしりによる摩耗

毎日使う歯は、私たちも気づかない間に少しずつ削られていきます。そのためにエナメル質が失われることもあります。
特に歯ぎしりや食いしばりなどの癖がある人は、癖がない人に比べて歯が削られる時間が長くなるため、より早くエナメル質が失われやすいといえます。

エナメル質

3-4.過剰なブラッシング

口の健康を保つために歯みがきは欠かせないケアの1つですが、正しい方法でおこなわなければ逆効果になってしまうこともあります。いくら衝撃に強いエナメル質であっても、毎日歯みがきによって強い力でこすられれば徐々に削られていってしまいます。
エナメル質が失われやすい歯磨きとは、次のような方法です。
・強い力で歯をみがく
・硬めの歯ブラシを使って歯をみがく
・研磨剤(炭酸カルシウム、ケイ素)を含んだ歯みがき粉を使用する

4.エナメル質を保つ方法

4-1.口腔ケアをする

虫歯や酸によってエナメル質を失わないためには、口のケアを十分におこなうことが大切です。

また、過剰なブラッシングによってエナメル質が失われている場合にも、正しい方法でのケアを知ることが必要といえるでしょう。
正しい歯磨きをするために、次のようなポイントを押さえましょう。

・歯ブラシはペンを持つときと同じように持ち、手をグーにして握るのを避ける
・歯の表面と裏側は、歯ブラシの毛先を直角にあてて横方向にみがく
・歯の裏側をみがくときには、歯ブラシを縦にしてみがく
・歯と歯茎の間は歯ブラシをななめ45度にあてて弱い力で小刻みにみがく
・奥歯の噛む面は歯ブラシの毛先をあて、小刻みに振動させる
・歯と歯の間にはデンタルフロスや歯間ブラシを使用する
・歯ブラシは1か月に1度交換する

歯医者さんでは、虫歯などの口のトラブル発見はもちろんのこと、正しい歯みがきの方法を指導してもらうこともできます。
自己流の歯みがきでは、みがき残しができてしまったり、自分にあった歯ブラシや歯間ブラシ選びが難しかったりするので、歯医者さんを定期的に受診して確認してもらうといいですね。

エナメル質

4-2.歯ぎしりにはナイトガードや癖の改善、ボトックス注射を

寝ているときにしてしまう歯ぎしりの一般的な治療法は、ナイトガードの装着です。患者さん一人ひとりの歯の形に合わせた樹脂製のカバーを歯に装着することで、エナメル質の摩耗を防ぎます。
起きているときは、時間を決めて歯ぎしりや食いしばりの癖をしていないかセルフチェックをすることで、徐々に改善させていきます。

一方、自由診療にはなりますが、歯ぎしりに対してボトックス注射で治療をおこなう歯医者さんもあります。
ボトックス注射とは、ボツリヌス菌が産生するたんぱく質を精製して筋肉に注射する方法です。歯ぎしりをしているとき口周りの筋肉には大きな力が加わりますが、ボトックス注射によってこの筋肉の働きを和らげ、歯ぎしりを予防します。

副作用としては、薬が効きすぎることによる脱力や表情の変化、注射した部位の腫れなどが報告されています。また、まれではありますがアナフィラキシーショック(アレルギー発作によってショック状態に陥ること)の副作用も報告されています。そのため、ボトックス注射をする前に歯医者さんと十分に相談し、納得して治療を受けるようにしましょう。

4-3.フッ素塗布やフッ素を配合した歯磨き粉の使用

「歯の健康を保つのにフッ素が効く」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。フッ素には、次のような効果が期待できます。

・酸に対してエナメル質が強くなる
・虫歯菌による酸の産生を抑える
・脱灰を抑制して再石灰化を促す

これら3つの作用からも、フッ素はエナメル質を保つために大変有効な物質だといえます。
最近はフッ素が配合された歯みがき粉や洗口剤が多く販売されています。これらのアイテムを使って毎日の口のケアを継続するといいでしょう。

さらに歯医者さんでは、歯の表面にフッ素の塗布をしてもらうこともできます。歯医者さんで使用する薬剤は一般的に販売されているものよりも濃度が高いため、より高い効果が期待できます。ただし、フッ素塗布のデメリットは、定期的に継続してフッ素塗布をしなければならない点です。目安として年に2回以上、長く続けていくことが必要です。

4-4.食生活の改善でエナメル質にも嬉しい効果が

毎日の食生活を改善することも、エナメル質を保つ効果が期待できます。
次のポイントに気をつけた食事を心がけましょう。

・よく噛んで食べる
・食事の時間を決めて食べる
・強い酸性の飲食物を避ける

食べ物をよく噛むと、その分たくさんの唾液がでます。唾液のおかげで歯が汚れづらくなり、虫歯になりにくくなります。虫歯になりにくいということは、エナメル質を失いにくいということです。
よく噛むためには、食事の時間を十分に確保し、歯ごたえのある料理を食べるのが効果的です。一緒に水を飲むと口の中が洗い流されてよい効果がありそうですが、食べ物を十分に噛まずに流し込んでしまう恐れがあるため注意が必要です。

また、だらだらと長い時間食べ続けるのもよくありません。私たちが食事をすると、3~5分後には口の中が酸性に傾きます。口の中が酸性になっているときは、エナメル質にとってよくない環境です。

エナメル質

その後、口の中は徐々に中性に戻って再石灰化をおこないますが、だらだらと食事を続けていると、口の中は中性に戻ることができなくなってしまいます。そのため、食事は1日3回、決まった時間に取るようにし、食べ物を口にしない時間帯も確保するようにしましょう。

酸性の強い飲食物は次のようなものがあります。少量口にする分には問題ありませんが、頻繁に長い時間食べ続けるのは避けましょう。

・柑橘類
・清涼飲料水
・酒
・酢

5.まとめ

エナメル質は体で最も硬い組織である一方、現時点では失ったあとの再生方法は確立していないのが現状です。エナメル質が薄くなると知覚過敏や虫歯の重症化、見た目の悪さなどの影響が現れるので、失わないように気を付けることが大切です。

そのためには口のケアや食生活の改善など、日々の生活で努力できることもいくつかあります。まずは生活習慣の改善から取り組んでみてはいかがでしょうか。さらに歯医者さんの力も借りることで、よりエナメル質を保ちやすくなります。定期的に歯医者さんを受診し、相談しながら口の健康を維持していきましょう。

 

【あわせて読みたい】

エナメル質の再生で歯の健康を!一生自分の歯で食事をとるには!

白い歯は第一印象を変える!歯のヤニ取りをしよう

お住まいの地域の歯科検診情報まとめ「歯科検診N」

監修医

野村 雄司先生

本町通りデンタルクリニック 理事長

経歴

2003年 大阪歯科大学卒業
2007年 大阪歯科大学保存学講座入局
2009年 まごころ歯科勤務
2012年 まごころ歯科退職
2012年 本町通りデンタルクリニック開業
2013年 大阪歯科大学保存学講座歯学博士号取得
現在に至る。

この記事は役にたちましたか?

  • すごく
  • いいね
  • ふつう
  • あまり
  • ぜんぜん
不正確な情報を報告

歯医者さんを探す