【この記事の要約】
外歯瘻とは:歯の根の感染が皮膚にまで広がり、頬やあごの皮膚に膿の出口ができる状態です。
外歯瘻の症状:顔の外側に小さな穴やできものができ、膿や痛み、腫れが現れることがあります。
外歯瘻の原因:進行した虫歯や歯周病による歯根部の感染が原因となります。
外歯瘻の診断・検査:視診・触診に加え、レントゲンやCTなどで感染源や範囲を特定します。
外歯瘻の治療:根管治療や外科的処置で感染源を除去し、膿の通り道を閉鎖します。
外歯瘻の予防:丁寧な歯みがきと定期的な歯科検診で虫歯・歯周病を防ぐことが大切です。
外歯瘻と間違えやすい症状・病気:にきび、皮膚炎、腫瘍など皮膚疾患と区別が難しいことがあります。
外歯瘻の治療を行っている診療科:歯科口腔外科
この記事の目次
1.外歯瘻とは
外歯瘻とは、本来であれば歯の根の部分(歯根)や顎の骨の中でとどまるはずの感染が、歯茎を越えて皮膚にまで広がり、そこから膿が排出されるようになった状態を指します。むし歯や歯周病を放置していたり、以前治療した歯の根が再び感染を起こしたりすると、やがて炎症が進行して歯茎の外側まで膿の通り道が形成されてしまいます。その結果、頬やあごなど顔の外側に小さな穴ができ、場合によってはしこりのように感じられることもあります。
2.外歯瘻の症状
外歯瘻の症状は、歯や歯茎だけではなく、顔の外側にまで症状が現れる点が大きな特徴です。以下では、代表的な症状を紹介いたします。
頬やあごに小さな穴やできものがある
頬やあごに、ニキビのような小さな穴やできものを見つけると「皮膚のトラブルかな」と思いがちですが、そこが歯の感染による膿の出口になっている可能性があります。この段階では、大きな痛みを伴わないこともあるため、しばらく放置してしまう方もいます。しかし、皮膚表面に穴が開いているということは内部でかなりの炎症が進んでいる証拠です。放置すると痛みが増すばかりか、穴が広がったり複数箇所に波及したりする恐れがあるため、できるだけ早い受診が推奨されます。
膿が出る
頬やあごにできたしこりを触ったとき、あるいはその付近を圧迫したときに白い液体や黄色っぽい膿が出てくるようであれば、外歯瘻である可能性はさらに高まります。口の中のむし歯や歯周病が原因の場合、歯茎の裏側で起こった感染が行き場を失い、皮膚表面へと抜け道を作っている状態です。ごく少量の排膿でも、体内に細菌がとどまっていることに変わりはありません。そのため、痛みが軽いとしても決して楽観視せず、早めに専門の医師に相談することが重要です。
触ると痛い
外歯瘻によって頬やあごの一部が腫れやすくなり、指先で押すと鈍い痛みや違和感を覚えることがあります。場合によっては皮膚表面が少し赤くなり、触れただけでも鋭い痛みを感じるほど炎症が強くなっているケースもあります。こうした症状が出始めたときには、すでに内部で感染が広がっている恐れがあるため、市販の痛み止めなどでごまかすのではなく、適切な検査を受けて原因を特定することが大切です。
3.外歯瘻の原因
外歯瘻の原因は、主に虫歯や歯周病などで歯根部に生じた感染が周囲組織に波及し、排膿経路として皮膚面に瘻孔が形成されることで起こります。特に進行した虫歯や適切な治療を受けられなかった歯周病が原因となりやすく、感染部位から膿が骨や軟組織を通って皮膚へ抜け道を作り、顔面や顎周辺などに外見上の異常が生じる場合があります。
4.外歯瘻の検査・診断
外歯瘻の検査・診断は、まず視診や触診で膨らみの状態や痛みの程度を確認し、歯の根元に起因する症状かどうかを慎重に判断します。さらに、歯科医院や口腔外科ではレントゲン写真を撮り、問題となっている歯や顎の骨の状況を詳しく調べるのが一般的です。外歯瘻の場合、むし歯が進行して歯根の先に病巣ができていたり、歯周病が重度化して歯の周囲に炎症が広がっていたりするケースが多いため、レントゲンを確認すれば患部の位置や広がり具合がより明確になります。
しかし、単に外歯瘻ができているかどうかを調べるだけではなく、その原因となっている歯のダメージや歯周組織の状態を正確に把握することが重要です。必要に応じてCT検査や歯科用顕微鏡を用いた精密検査を行い、神経が生きているかどうかをテストする場合もあります。こうした多角的なアプローチをとることで、感染が起こっている部位や範囲の特定がしやすくなり、適切な治療計画を立てることができるのです。
5.外歯瘻の治療
外歯瘻の治療は、歯の根の部分に生じた感染を徹底的に取り除き、膿の通り道を塞ぎ、再発を防ぐことを目指します。具体的な方法は症状の程度や原因の場所によって異なりますが、多くの場合は根管治療や外科的な処置が必要となり、その後の経過観察やメンテナンスも含めて数週間から数か月にわたって通院することがあります。
根管治療の重要性と再発防止
外歯瘻の治療で大きな役割を担うのが根管治療です。これは、むし歯や外傷などによって歯の内部が感染した場合に、その汚染された神経や組織を除去し、根の中を消毒・洗浄してから詰め物をする手順を指します。外歯瘻は、歯の中で起きた感染が皮膚のほうへと抜け道を作っている状態なので、膿を排出するだけでは不十分で、歯の根元の原因をしっかり取り除かなければ再発するリスクが高まります。
根管治療には通常、何度かの通院が必要となり、レントゲンやCTを使って進行状況を確認しながら慎重に進めていきます。治療がうまくいけば、膿の出口だった穴は自然に塞がり、腫れや痛みも徐々に治まっていきますが、その後も予防のためのケアを怠ると再発の恐れがあるため、完治後のメンテナンスにも意識を向けることが大切です。
切開や外科的処置が必要なケース
症状が重度に進行していたり、根管治療だけでは改善が見込めない場合には、切開や外科的処置が必要になることがあります。例えば、膿が大きな膿瘍として溜まってしまっている場合は、皮膚や歯茎をわずかに切開して直接膿を排出させる必要があり、その際には局所麻酔を用いて痛みを最小限に抑えつつ行われます。また、根の先端に病変が大きく広がっているケースでは、歯肉を開いて病巣部分を直接取り除く「歯根端切除術」が実施されることもあります。
これらの外科的な治療はやや負担が大きい反面、短期間で膿を出し切り、感染源を直視下で処理できる利点があります。治療後は傷口が落ち着くまで数日から1週間ほどの安静や食事制限を求められる場合もありますが、適切に処置が行われれば長期的に安定した状態を保ちやすくなります。
6.外歯瘻の予防
外歯瘻の予防は、まず日々の歯みがきを丁寧に行い、歯と歯ぐきの間に汚れが残らないように気を配ることが基本です。とくに歯と歯の間は歯ブラシが届きにくいため、デンタルフロスや歯間ブラシを活用して、歯垢(プラーク)や食べかすをこまめに取り除くのが大切です。歯垢が長くとどまると歯石へと変化し、さらに歯周病リスクを高めてしまいます。
また、むし歯や歯周病は初期のうちには痛みや腫れなどの目立った症状がないことも多いため、症状の有無にかかわらず、定期的に歯科検診を受ける習慣をつけておくと安心です。早期に小さなむし歯を発見して適切な治療を受ければ、外歯瘻のような重い状態に陥る可能性を大きく減らせます。
7.外歯瘻に似ている病気(疾患)
外歯瘻に似ている病気は、皮膚の表面に膿や腫れが生じるにきびや吹き出物、皮膚炎などが代表的です。外歯瘻の場合は、歯の根元にできた感染巣から膿が皮膚側に抜けてきているため、ぱっと見の症状だけでは単なる皮膚トラブルなのか歯の問題によるものなのか、見分けがつきにくいという特徴があります。実際、「頬にできた痛みのあるしこりが、まさか歯から来ているとは思わなかった」という声も少なくありません。
そのほか、顔や首回りにできるおできや腫瘍なども含めて、外側から見ただけでは外歯瘻と区別がつかない病気は意外と多いものです。こうした症状を正確に突き止めるためには、皮膚科だけでなく歯科や口腔外科での検査を受け、歯が原因となっていないかを調べることが欠かせません。
8.この病気・疾患に対応している歯科の診療科目
歯科口腔外科

監修医
古橋 淳一先生
あおぞら歯科クリニック本院 理事長・院長
経歴
2000年 広島大学歯学部 卒業
2000年~2001年 医療法人社団 不二見会 ふじみ歯科医院浦安診療所 勤務
2001年~2005年 医療法人社団 不二見会 ふじみ歯科医院南行徳診療所 勤務(所長)
2005年 あおぞら歯科クリニック 開院
2007年 医療法人社団爽晴会 設立・理事長就任
2010年 あおぞら歯科クリニック鎌ヶ谷 開院
2012年 あおぞら歯科クリニック新館 開院
2015年 なないろ歯科クリニック 開院
2017年 あおぞら歯科クリニック下総中山 開院
現在に至る
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