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矯正治療で抜歯をする理由とは?

歯を矯正するために、抜歯が必要となることは珍しくありません。健康な歯をわざわざ抜くことに、抵抗を感じる人もいるはずですが、抜歯が必要となるのは、下記のようなさまざまな理由があるからです。

もちろん、非抜歯でも歯列を整えられる状態であれば、わざわざ歯を抜く必要はありません。非抜歯の矯正ができるケースについては、4章で詳しくお伝えします。

歯を移動するスペースを作る

日本人に見られる多くの不正咬合は、顎が小さいために、歯が横一列に接して並ぶことができないことが、大きな原因の1つとなっています。10人がけの椅子に、11人が座らなければならない状況が、不正咬合の一因なのです。

たとえば、前後に重なっている歯を移動して、一列に並べるためには、移動した歯が収まるスペースが必要があるのです。これが、矯正で抜歯が必要となる、一番の理由です。

奥歯を真っ直ぐに保つため

歯列全体を大きく後方に移動することで、前歯に空間ができれば、抜歯しない矯正も可能です。しかしこの場合、奥歯を支点にして歯列全体を引っ張る形になるので、逆に奥歯が引っ張られて、前方に倒れてしまうリスクもあります。抜歯には、こうしたリスクを防ぐ役割もあります。

後戻りを軽減するため

歯が移動するスペースがないものを、無理やり移動すると、その分後戻り(歯が矯正前の状態に戻ってしまうこと)のリスクも大きくなります。しかし、その一方で、抜歯したスペースを埋めるために、大きく歯を動かす必要が生じた場合にも、後戻りのリスクがあるものです。

口元が盛り上がってしまうのを防ぐため

大きく重なった歯や出っ歯などを、非抜歯で無理に一列に並べようとすると、口元全体が盛り上がってしまう可能性もあります。このような状態を、俗にゴリラ顔といいます。抜歯をすることで、歯列を無理なく引っ込めて、ゴリラ顔を防ぐことができます。

抜歯が必要となることの多い症例

多くの不正咬合は、本来、顎のアーチに沿って、歯が横一列に並ぶはずの歯が、顎が狭く並ぶスペースがないために、その一部がはみ出してしまっている状態です。

顎のスペースが狭く、乱れている度合いが大きいほど、抜歯が必要となる可能性が高いといえます。一部の歯がほとんど前後に重なってしまっていたり、大きく前方に突出していたりするようなケースです。抜歯が必要となる典型的なケースは、下記のとおりです。

・重度の叢生
・過度の出っ歯(上顎前突)
・過度の受け口(下顎前突)
・上下ともに歯が突出している場合(上下顎前突)

 

 

どの歯を抜くの?主に抜くは歯と抜かない歯

矯正で抜歯をするといっても、スペースがないところにある歯を、闇雲に抜くというわけではありません。矯正で主に抜く歯は決まっています。また、矯正では基本的に抜かない歯についても、あわせて説明しましょう。

【主に抜く歯は第二小臼歯】

矯正治療で主に抜く歯は、小臼歯です。小臼歯には、上下の噛み合わせのポジションを保つ役割があります。小臼歯は第一小臼歯(前から4番目の歯)と第二小臼歯(前から5番目の歯)があり、そのどちらかを抜いても、小臼歯の役割として、噛み合わせに大きな影響はないものとされています。

矯正で抜く歯は主に第二大臼歯(前から5番目の歯)です。もし、第一小臼歯が虫歯などで、状態が悪い場合には、第一小臼歯を抜くことになります。小臼歯を抜くことで、前歯の歯列を広げながら後方に動かしやすくなります。

・第ニ小臼歯(5番目の歯)
・第一小臼歯(4番目の歯)
・過剰歯(通常の本数よりも過剰に生えている歯)
・状態が悪く寿命が短いと思われる歯

【抜かない歯】

・前歯(1番目の中切歯と2番目の側切歯)

噛み切るために、必要な歯となりますし、見た目にも重要な歯なので、矯正で前歯抜くことはありません。

・犬歯(3番目の歯)

犬歯は、顎のスペースが狭い場合に、特に前方に飛び出しやすい歯ですが、犬歯自体を抜くことはありません。前歯同様に、歯の見た目でも重要な歯であり、根っこが長く寿命が長いので、他の歯を強く支える大黒柱のような役割があるからです。

奥歯(6番目の第一大臼歯と7番目の第二大臼歯)

奥歯は、食べ物をすり潰すための、重要な歯なので抜くことはありません。何より、奥歯を抜いてスペースを作っても、前歯から小臼歯まで移動して隙間を埋めなければならないので、矯正の効率を高めることにもつながりません。

親知らず(8番目の第三大臼歯)

奥歯を抜かないのと同様、ここにスペースを作っても、歯列の移動を助けることにはつながらないので、抜きません。親知らずを抜くのは、斜めや横向きに生えたりと悪さをする場合のみで、真っ直ぐ生えていて、特に問題がない場合には、抜く必要がないものです。

 

 

抜歯のメリットとデメリット

メリットに関しては、1章でお伝えした、矯正で抜歯をする理由と重複する部分もありますが、改めて抜歯のメリットをまとめてみましょう。また、抜歯をするデメリットについても、是非知っておきましょう。

【メリット】
前歯を移動しやすくなる

2章でお伝えした通り、主に抜歯をするのは小臼歯です。ここにスペースを作ることで、前歯の歯列全体を移動しながら、アーチに沿って横一列に整えやすくなります。特に、前歯が大きくでこぼこになっていたり、前方に大きく突出している場合などでは、効率よく歯列を整えることにつながります。

無理なく歯列を整えられる

非抜歯で、特に前歯周辺にスペースを作る場合には、歯列全体を後方に移動する必要があり、どうしても移動に無理が生じるものです。また、引っ張る支点とする奥歯に大きな力がかかると、逆に奥歯が前に倒れ込んでしまうリスクもあります。抜歯をすることで、無理のない治療が可能となります。

矯正期間が短くなる

非抜歯で歯列全体を動かすとなると、大きく移動しなければならない歯の本数が増えるので、抜歯の矯正よりも治療期間が長くかかる可能性があります。抜歯をすることは、治療期間の短縮にもつながってきます。

後戻りしにくくなる

前述した通り、非抜歯による矯正は、スペースのない状況で歯列全体を無理に移動しなければなりません。大きく動かした歯は、後戻りも大きくなります。適切な抜歯によって、無理に動かす歯が少なくなれば、後戻りの影響も軽減されます。

顎のスペースと歯の本数のバランスが整う

顎が小さい場合、そのスペースに対する歯の本数が多すぎて、バランスを崩しがちです。それが原因となって、多くの不正咬合をもたらすわけですが、抜歯して本数を減らすことで、顎のスペースと歯の本数のバランスが整い、矯正後も歯列が乱れにくくなります。

口元が出た状態を改善できる

1章でご紹介した通り、狭いスペースの中で、無理に横一列に並べようとすると、どうしても歯列全体が盛り上がってしまい、口元が膨らんだ印象になります。抜歯をすることで、矯正後のこうした問題を回避することができます。

歯茎が下がりにくくなる

狭いスペースに、無理やり歯列を整えれば、歯が安定しにくく、後戻りが大きくなることは前述したとおりです。さらに、歯に大きな負担がかかるので、歯茎が後退して痩せてくるリスクもあります。抜歯をすることで、こうしたリスクを避けることができます。

【デメリット】
健康な歯を失う

もっとも大きなデメリットは、やはり健康な歯を失ってしまうことです。抜いても歯の全体の機能的に問題がないとされる小臼歯ですが、抜く必要がなければ、非抜歯に越したことはありません。

抜いた部分の骨が痩せる

歯を抜いたところは、歯槽骨(歯を支える骨)が痩せてくるものです。抜いたまま放置すれば、そこに両隣の歯が倒れ込んで歯列を乱します。矯正では、このスペースを埋めるように、歯列を移動するものなので、そうした心配はありませんが、やはり歯列の強度が落ちる可能性があります。

全体的な噛む力が落ちる

中切歯から第ニ大臼歯までの全28本の歯で支えてきたものを、2本から4本程度抜歯する場合、やはり本数少ない分、歯列全体の強度が落ちるリスクがあります。全体的な噛む力が落ち、それぞれの歯に掛かる負担も大きくなります。

歯の移動距離が大きいと治療期間が長引く

歯が移動するスペースを作り、移動しやすくするための抜歯ですが、空いたスペースを埋めるためには、歯を大きく移動する必要が生じます。抜歯は治療期間を短縮するメリットがあるものですが、空いたスペースが大きく、移動距離が長くなる場合には、逆に治療期間が長引くリスクもあります。

 

 

抜歯を避けられる可能性はある?

抜歯による矯正は、治療の効率化を図り、できるだけ短い治療期間で、良好な治療結果を得るために、必要なケースがあると考える歯医者さんも多いものです。しかし、どうしても歯を抜きたくないと考える方も少なくないでしょう。

ここでは、非抜歯が可能な歯の状態や、非抜歯でも効果的な矯正を実現できる、先進的な治療法についてご紹介します。

【抜歯しなくても良いケース】

歯列の大きな重なりや突出が少ない

顎のアーチから、一部の歯が大きくはみ出している場合には、アーチに横一列に並べるために、大きなスペースが必要となります。歯の大きな重なりや、突出が少ない場合には、抜歯をしなくても、歯列を整えられる可能性があります。軽度の叢生や出っ歯などが上げられます。

歯を移動する空間がある場合

歯を移動する空間が十分にある場合には、わざわざ抜歯してスペースを作る必要はありません。すきっ歯(空隙歯列)のように、もともと空間がある不正咬合などでは、ほとんど抜歯する必要がないものです。

アーチの幅を広げられるケース

乳歯期と混合期(乳歯と永久歯が混在する時期)の、顎の成長を促すことができる子供の矯正の場合には、抜歯の必要性はないものです。顎が発育途上にあり、顎の拡大を促進する治療ができるので、顎の拡大に従って、永久歯の歯列が自然に整ってくるからです。子供の矯正では、主に顎の拡大を促す治療が主体になります。

【抜歯を避けるための矯正法】

歯間を削る方法

健康な歯を抜かず、歯を移動するスペースを作るために、歯間部分を削る方法もあります。これをストリッピングといいます。歯を削ると言っても、自然に再形成されるエナメル質を削るものです。ただし、前後の重なりや突出が軽度で、抜歯するほど、大きなスペースを必要としない場合に限ります。

歯間の幅を広げる方法

ブラケットの矯正装置(歯にワイヤーを固定してその弾力を利用して歯を動かす装置)などを付ける前に、専用のワイヤー装置で、歯間の隙間を広げる方法もあります。あらかじめ空間作ることで、歯を移動しやすくするものですが、ストリッピングと同様に、重度の重なりや突出には不向きです。

歯列全体を大きく動かす先進の治療法

・セルフライゲーションブラケット

歯を短期間で大きく動かせる矯正法として、近年注目を集めている装置が、セルフライゲーションブラケットです。歯は大きな力をかけるほど大きく動くという常識を覆し、弱い力を継続的にかけて、歯の周囲の組織の新陳代謝を利用することで、効率的な歯列の移動を可能にするというものです。

一般的なブラケットと違い、ブラケット内をワイヤーが自由に動く仕組みによって、歯列の大きな移動を可能としています。

・インプラント矯正

非抜歯の矯正の場合、歯列全体を大きく後方に移動することで、前方の空間を作らなければなりません。しかし、奥歯を引っ張る支点にすると、奥歯自体も動くというリスクがあります。

インプラント矯正は、歯を支点にするのではなく、顎の骨に埋め込んだチタン製のネジを支点にします。これにより、大きな力で歯列全体を移動でき、非抜歯の可能性を広げてくれるものとなります。

・歯槽骨の外科手術を伴った矯正

矯正の原理は、歯に力を加えることにより、歯が収まっている歯槽骨の穴の向きを変えるものです。一方、歯槽骨自体に切れ目を入れる外科手術をブラケット矯正に併用して、土台から歯を動かす方法もあります。

歯を大きく動かすことができ、切れ目を入れた骨は再生する際に、より強くなります。歯を大きく動かせるので、抜歯の必要がない上、治療期間が短く、後戻りが少ないというメリットがあります。

 

 

まとめ

矯正で抜歯をすることは、治療効率を高め、仕上がりを良くするという大きなメリットがあります。その一方、健康歯を失うことで、歯列全体の強さが落ちるといったデメリットもあります。こうした一長一短を理解した上で、抜歯の矯正に踏み切るかどうか、十分検討してみましょう。

また、先進の矯正治療では、歯列を効率的に移動することで、非抜歯の可能性を広げるものもあります。費用は割高になりますが、検討する価値のある治療法です。

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2022-08-16T13:42:13+00:00