顎に痛みが生じる顎関節症は、治療せずに放置するとどうなるのでしょうか?顎関節症は自然に治る病気なのか、放っておくとどうなるのかをお伝えします。
顎関節症を改善するためには、歯医者での治療に加えてセルフケアも重要です。まずは、顎関節症の症状を正しく理解することから始めましょう。
この記事の目次
1.顎関節症って何?主な症状を解説
口を開けると音がする
口を開けたときや閉じたときに「カクカク」「ポキッ」「カコン」というような音がします。これは顎の関節のなかにある軟骨がずれて口の開閉時にすべってしまい、音がなっている状態です。このずれが大きくなっていくと、顎の骨が軟骨にひっかかって口が開かなくなってしまうこともあります。
悪化してさらに軟骨がすり減ると、骨と骨が直接こすれ合い「ジャリジャリ」といった音がするようになります。
顎の関節が痛い
口を大きく開けたときに顎の関節に痛みがでます。日常生活の中では、食べ物を口に入れるときやあくびをするときなどに痛みを感じることが多いです。症状が悪化してくると、大きな口を開ける必要のないような、通常の食事でも痛みが生じるようになってしまいます。ひどくなると顎を動かすたびに激痛が走り、苦痛で食事ができなくなることもあります。
口が開かない
痛くて口を開けることができず、人差し指と中指、薬指の3本をそろえて口の中に縦にいれられなくなります。口を開けるときは、顎関節の骨が前のほうにすべるのが正常ですが、軟骨の位置がずれていると口を開けるときに軟骨が邪魔をして骨が動かなくなってしまいます。
症状には「急性」と「慢性」がある
顎関節症の症状は人によって異なります。急性症状で突然口を開けられなくなる人もいれば、慢性的に顎が痛い人もいます。急性症状は1週間ほどすると治まったように感じますが、実際には顎や関節の骨の変形がみられるなど、慢性的な症状へ移行していることがほとんどです。
急性的に口が開けられなくなったといった症状が現れた場合、食事の仕方を変えるなどの対策を講じても、噛み合わせが正常に戻るわけではありません。一時的に痛みが減っただけで、慢性的な顎関節症へと進行している可能性があることを頭に入れておきましょう。
2.顎関節症を放置するとどうなる?
重症化する可能性がある
顎関節症の症状があるにも関わらず放置していると、悪化して会話や食事が困難になるほど重症化するおそれがあります。ひどい場合には全身に症状が広がったり、手術が必要になったりすることもあるのです。
もちろん、必ずしも重症化するわけではなく、一時的なごく軽い症状であれば治療を受けなくても自然に治る可能性はあるでしょう。ただし、顎関節症は基本的に治療が必要であり、適切な治療を受ければ8割の人は改善がみられるという報告があることは覚えておいてください。
全身や精神に悪影響を及ぼす可能性がある
顎関節症になると、筋肉の緊張が首の周辺にまで広がっていきます。そのため、首や肩が重く、常に凝っている状態になるでしょう。頭痛をともなう人も少なくありません。さらに、自律神経にも影響を及ぼすおそれがあり、落ち込みやすくなる、だるいといった症状もあらわれやすくなります。
自然に治るケースも
顎関節症は自然と症状が消えるというケースもあります。しかし、全員が放置して完治したわけではありません。顎関節症は治療をしなくても大丈夫、などと誤った自己判断をせず、病院での診断を受けるようにしましょう。少しの痛みであれば治療を受けなくても我慢できるかもしれませんが、症状が進行してからでは自然治癒は期待できません。
3.歯医者さんで行う顎関節症の治療
まずは検査を行う
顎関節症の疑いがあるときには、まず、問診や視診でどこがどのように痛むのか、口はどのくらい開けることができるのかなどを最初に確認します。レントゲンやMRIを用いて顎関節の変形などを調べる場合もあるでしょう。
治療方法
検査のあと、症状や状態に応じて原因を改善する治療や症状をやわらげる治療をいくつか組み合わせて治療していきます。治療方法は下記の通りです。
・認知行動療法
顎関節症の原因となる習慣やクセを自覚し、改善します。
・物理療法
痛みの起きているところを温めたり冷やしたりして症状を軽減します。
・運動療法
口の開閉や顎を動かす訓練を行います。
・スプリント療法
歯列を覆う装具を付け、顎関節や筋肉へかかる負担を減らします。
・薬物療法
炎症を抑える薬や筋肉の緊張をゆるめる薬のほか、入眠剤や抗不安薬、抗うつ薬を服用します。
・外科療法
治療を受けても改善がみられない場合には手術を検討します。
4.自宅でできる顎関節症のセルフケア
顎関節症の発症には生活習慣が深く関係しているので、問題となる習慣やクセを洗い出して改善することが重要となります。日常生活で気をつけるべきポイントや、症状がある場合のケア方法をご紹介します。
日常生活での注意点
・歯を食いしばらない
無意識に歯を食いしばらないように、上下の歯を触れさせないようにしましょう。
・食事内容を見直す
かたいものは控えて、食べ物は小さく切りましょう。
・口を無理に大きく開けない
特にあくびには注意しましょう。
・寝るときの姿勢を気をつける
顎や首の筋肉に負担をかけるうつぶせ寝や高過ぎる枕は避けましょう。
・姿勢を正す
顎が前に出るような姿勢や猫背に注意しましょう。
・リラックスする
筋肉にストレスがかからないように意識的に力を抜きましょう。
・運動をする
ウォーキングや水泳などの全身運動で血行をよくしましょう。ストレス解消の効果も得られます。
症状がある場合のケア方法
・症状にあわせた患部のケアをする
急性の痛みは冷やし、慢性の痛みは温めましょう。
・マッサージで血流を促す
顎の筋肉をマッサージしましょう。ただし、筋肉を傷めないように優しくもみましょう。
・ストレッチをする
痛みが落ち着いてきたら口を大きく開け、顎を横に動かすなどして顎まわりの筋肉のストレッチをしましょう。首や肩のストレッチも効果的です。
※顎関節の状態によっては悪化させるおそれもあるので医師の指示に従って行ってください。
5.まとめ
顎関節症の症状に気づいていても、仕事が忙しいなどの理由で治療を行っていない人は多いようです。しかし、放置している期間が長いほど症状がひどくなってしまう可能性が高くなるので、早めに適切な治療を受けてください。
もちろん、日ごろから顎関節症の予防を心がけることは大切です。生活習慣の見直しなど、自分でできる対策は積極的にしていきましょう。

監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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