顎関節症の原因の一つに噛み合わせの悪さがあります。症状を改善させるには「スプリント」と呼ばれるマウスピースを使用します。カクカクと音が鳴ったり、痛みを伴ったりする症状をこれ以上悪化させないようにするために、この方法を用います。また、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方にも、「歯の擦り減りの防止」というマウスピースならではのメリットがあります。
この記事では、顎関節症治療の中でも一般的な方法として用いられるマウスピースについて詳しく紹介していきます。
1.顎関節症とは
顎関節症とは、顎の関節や筋肉に痛みや異常が生じる病気です。ここでは、顎関節症の症状と原因をご紹介します。
顎関節症の症状と進行度
初期:顎まわりが痛い、カクカクと音が鳴る
顎には関節円盤といわれる、関節と関節の間にあるクッションのような役割を担う部位が存在します。この部分が擦り減ると、ズレが生じてしまうのです。関節円盤のズレは顎関節症の代表的な症状である顎の痛みや異音を引き起こします。
中期:ジャリジャリと音が鳴る
顎関節症が悪化して顎の骨と頭の骨がこすれるような状態まで及んでしまっています。やがて骨が擦り減り、関節円盤が完全にズレてしまうと音まで止んでしまいます。
後期:口が開けにくくなる
耳のあたりに違和感があり口がスムーズに開けられない、食事のときに口が開かない場合は、顎関節症がかなり悪化してしまったということを意味しています。
顎関節症の原因
顎関節症は、複数の要因が合わさって顎関節症を引き起こすと考えられています。中でも代表的な原因として、噛み合わせの悪さや、歯ぎしりや食いしばりの癖があることが挙げられます。これらが原因で、顎関節の歪みを引き起こしたり、顎関節に負担がかけてしまい、顎関節症に至ってしまうのです。
2.マウスピースで顎関節症を改善する方法
顎関節症を改善させるには、顎にかかる負担を軽減させることが重要です。歯科口腔外科では「スプリント」と呼ばれるマウスピースを上顎の歯、もしくは下顎の歯に装着して正しい噛み合わせを保ちます。スプリントは夜の就寝時に使用し、寝ている間に歯ぎしりをする癖がある人にも効果的な器具です。使用する期間は症状によって変わりますが、だいたい8週間くらいで効果を感じられます。
スプリントは夜間のみの使用で問題ありませんが、痛みがある方は日中も装着することで顎の筋肉の緊張緩和と、噛み合わせを改善させる狙いがあります。
3.マウスピースの種類と値段
ここでは、歯科口腔外科で行われる顎関節症の改善策であるマウスピースの種類と値段についてお伝えしていきます。マウスピースにはいくつか種類があり、顎に感じる症状によって使用されるものが異なります。
マウスピースの種類
スタビライゼーション型スプリント
顎の筋肉の緊張をほぐし、顎への負担軽減に役立ちます。噛み合わせの悪化による顎関節症治療を目的としたマウスピースです。
アンテリア リポジショニング型スプリント
口の開閉時にポキッと音が鳴ったり、口が開かなかったりする症状のある方に向けたマウスピースです。関節円盤を正常な位置に誘導していくことが目的のマウスピースです。
ディスク リキャプチャリング型スプリント
マウスピースを用いても症状が改善されない場合、医師によって患者さんの顎を動かして改善を目指す運動療法「マニピュレーション法」があります。この方法を用いたあとに、再発を防止するために用いるのが、このマウスピースです。
マウスピースの値段
スプリントは保険適用の3割負担ならば、「約5,000円」の値段で作製できます。また自費診療の場合は「約1~3万円」という値段となっています。
※自費診療のマウスピースを希望する場合、値段は医院によって異なりますので、詳しくは医師に直接お問い合わせください
4.まとめ
顎関節症とマウスピース治療について紹介してきました。マウスピースを使った顎関節症の治療目的は、噛み合わせの改善にあります。治療に使われるスプリントと呼ばれる症状のレベルによって異なる種類のマウスピースがあります。
痛みがある、異音がするなどの顎の症状に悩まされている方は、症状が悪化しないうちに、一度歯科口腔外科が併設された歯医者さんを尋ね、医師の診断を仰ぎましょう。

監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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