親知らずは抜くべき?どうやって抜くの?抜歯に関する疑問を解説

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ほとんどの人が、「親知らずは、基本的に抜くものだ」と考えていると思います。実際、放っておくと隣の歯を圧迫したり、まわりの歯茎が腫れてしまったり、良くない結果を招くことも多いようです。

そこで、今回の記事では「親知らずを抜くか、抜かないか」というテーマを扱うことにしました。本当にどんな場合でも抜いたほうが良いのか、どうなのか。実際のところを確認してみましょう。

この記事の目次

1.親知らずは抜くべき?抜歯の判断基準とは

親知らずを抜くかどうかの判断基準は、歯医者さんにもよります。ですが、だいたいの基準というのは存在していて、その基準はわりとシンプルです。ひとことで言い表すなら、「まわりに悪影響があるかどうか」という基準になります。例えば、以下に示すようなケースです。

 

親知らずが斜めに生えている

親知らずは真っすぐ生えることは少なく、斜めに傾いて生えくることが多い歯です。問題は、斜めに生えた親知らずが、たいてい手前の歯(=12歳臼歯)のほうに傾いていることです。

親知らずに圧迫された12歳臼歯は、押された方向に動いてしまうかもしれません。12歳臼歯は、さらに手前の6歳臼歯を押してしまい、歯並びの悪さの原因になってしまいます。

 

歯の根元が圧迫されている

親知らずが12歳臼歯の根元を押している場合は、もっと深刻になります。歯の根っこは、ぎゅうぎゅう圧迫されると溶けてなくなってしまうからです。根っこが溶ければ、当然、その歯の寿命にネガティヴな影響を与えることでしょう。若いうちに、12歳臼歯が抜けてしまうかもしれません。

 

親知らずの一部が歯茎に埋まっている

一部が歯茎に埋まったままだと、歯垢が蓄積し、炎症の原因になることがあります。歯茎に埋まった部分は歯磨きのしようがありません。当然、そのあたりには大量の歯垢が溜まるでしょう。歯垢は雑菌のかたまりなので、増加すれば、感染・炎症の要因になります。

 

歯茎が炎症を起こしている

親知らずの周辺に炎症が起きることを「智歯周囲炎」といいます。智歯周囲炎になると、歯茎は赤く腫れて、耐えがたい痛みを引き起こすかもしれません。
細菌感染なので、抗生物質を投与すれば炎症は治まるでしょう。

しかし炎症がおさまっても再発する確率が高いため、根本原因である親知らずを抜いて「炎症が起こらない環境」を作り出したほうが合理的といえます。

 

噛み合わせの歯が無い

歯は上下がそろっていて、初めて役目を果たします。歯と歯が噛み合っていないと、噛むのには適しません。ところが親知らずというのは、2本だけ、3本だけしか生えてこない人もおり、4本全部がきちんと生えてくる保証がないのです。

その結果、「噛み合わせる相手が存在しない」という状況があり得るのです。噛み合わせる相手がいないと、反対側の歯茎を噛む形になり、口の中にケガをする可能性があります。

2.親知らずはどうやって抜くの?抜歯の手順とは

まわりに悪影響が出るようなら、親知らずを抜かなくてはいけません。ところで、「親知らずを抜く」というのは、具体的にそんな処置なのでしょう。具体的な手順について解説していきます。

 

抜歯の手順

手順①

麻酔をしたら、歯と歯茎の隙間にピンセットを差しこんで、歯のまわりをぐるりと一周させます。歯と歯槽骨をつなげる靱帯―歯根膜(しこんまく)を切断するためです。

手順②

「ヘーベル」と呼ばれる道具を歯と歯茎の隙間に入れます。これは、テコの原理で、歯を浮き上げる道具です。テコの原理で歯に力を加えると、歯根が歯槽骨から脱臼します。

手順③

あとは、骨から外れた歯を鉗子(ペンチのような道具)で引っぱれば、歯を抜くことができます。最後に、歯を抜いた空洞をキレイにします。刃のついた耳かき状の器具―鋭匙(えいひ)で、傷口を掻爬(そうは:ひっかくように擦ること)するのです。これで歯を抜く処置は終わりです。

手順④

「テトラサイクリン系抗生物質」といって細菌が増えるのを防ぐ薬を入れて、ガーゼ・脱脂綿による止血をおこないます。血が止まってくれば、ひと安心といったところでしょうか。

 

骨に癒着している場合

すべての親知らずがあっさりと脱臼してくれるわけではありません。歯根が骨に癒着していたり、歯根が曲がりくねっていたりすると、テコの原理では不十分です。歯根を骨から外さないと、抜くことはできません。

歯根が骨と癒着しているなら、骨を削る処置が必要です。歯を削るタービンを使うなどして、骨を切り開きます。この処置を「骨開削(かいさく)」といいます。歯根がぐにゃぐにゃで抜けない…という場合には、歯根を分割しなくてはいけません。「歯根分割術」といわれる方法で抜歯をおこないます。このように、抜歯に苦労する例を「難抜歯(なんばっし)」といいます。

 

横向きで埋まっている場合

難抜歯より、もっとややこしい状況なのが、親知らずがほとんど真横を向いて骨に埋まっているケースです。歯槽骨の中に埋まっている歯を掘り出して抜く必要があります。歯を抜くときは、歯が生えている方向に引っぱる必要があります。上を向いている歯は、上に引き抜きます。横向きで埋まっている歯もまた、生えている方向に抜く必要があります。

しかし、横向きの親知らずは、たいてい手前の歯―12歳臼歯の方向に倒れているのです。12歳臼歯の方向に引っぱることはできないため、横向きで埋まった歯を抜くときは、まず歯茎を切開して、歯を露出させます。その後、歯槽骨に埋まった状態のままで歯を分割し、取り出していくのです。この術式を「水平埋伏智歯抜歯術」といいます。

3.抜歯後の痛みを抑える方法3選

歯を抜いているときは、麻酔がきいているので痛みはありません。問題は、麻酔が切れてからの一晩です。歯を抜いた当日夜~翌日朝までが、もっとも厳しい時間になります。
原則として、傷口の痛みは、抜歯の難易度に比例します。難しい抜歯ほど、傷口が大きくなるからです。抜歯後の痛みを少しでも抑えるために、次のような工夫をしてみてください。

 

①麻酔が切れる前に、1回目の痛み止めを飲む

痛みを感じはじめると痛み止めは効きづらくなるため、1回目の痛み止めは、麻酔が切れる前に飲んでしまいましょう。痛み出す前に飲んだほうが、効き目を実感しやすくなります。

 

②24時間は患部を冷やす

炎症がある場所を冷やすと、痛みは楽になることが多いです。そこで、氷・冷却シートなどを使い冷やしてみましょう。ただ、傷口に氷が触れるのは刺激が強すぎますから、ほっぺの上から冷やすようにしてください。ただし冷やして良いのは、歯を抜いてから24時間以内です。長く冷やしすぎると、今度は血流が悪くなって、治りが遅くなります。

 

③傷口に刺激を与えない

歯を抜いた傷口は、ゼリー状の血液で満たされます。かさぶたのかわりに、傷口を守ってくれると考えてください。このゼリー状の物体を「血餅」といいます。もし血餅が外れてしまうと、傷口の治りは遅くなります。骨が見える状態になってしまい、当然ながら、痛みも増します。

この状態を「ドライソケット」といいます。傷口を指・舌でいじったり、勢いよくブクブクうがいをしたりすると、血餅が外れることがあります。傷口を刺激せず、血餅を維持するようにしましょう。

4.まとめ

周りの歯・歯茎に悪影響を与える恐れがある…。そんなふうに判断された親知らずは、抜歯するしかありません。抜歯の難易度によっては、外科処置が得意な歯科口腔外科に相談したほうがスムーズでしょう。

抜いた後の痛みが心配なら、血餅を外さないように、痛み止めを飲み忘れないように、きちんと自己管理をすることが大切です。歯医者さんで告げられた注意事項を守って、少しでも痛みが少なくなるように努めてください。

監修医

高村 剛先生

高村歯科医院 院長

経歴

出身校(最終学歴) 北海道医療大学 歯学部

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