唇が荒れてカサカサに…!?口唇炎の症状・治療法を解説

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唇がカサカサになり、荒れている…。単なる乾燥なら、保湿すれば済むでしょう。しかし、ひどく荒れていたり、長引いていたりするなら、きちんと医療機関で治療を受けたほうが良いと思います。
こちらの記事では、「唇がカサカサになり、表面が荒れる症状」をきたす口唇炎について、一般的な症状・治療法を解説することにしました。きれいな唇を取り戻すためにも、早期の治療を検討してください。

この記事の目次

1.接触性口唇炎

接触性口唇炎は「接触性皮膚炎の症状が、口唇に現れたもの」です。何らかの化学物質・金属・植物などが接触し、原因物質に反応して炎症を起こします。炎症の発生機序によって、「一次刺激性接触性口唇炎」と「アレルギー性接触性口唇炎」に区分することができます。

1-1 一次刺激性接触性口唇炎

「刺激の強い物質」「毒性のある物質」に触れたことで炎症を起こした場合は、一次刺激性接触性口唇炎と呼ばれます。化粧品・洗顔料などに含まれる刺激性物質が発症原因になりやすいです。
結局のところ、有毒物質に反応して口唇炎を起こしているので、「症状の程度」は「原因となる物質の毒性」に正比例します。

◆一次刺激性接触性口唇炎の主な原因物質

オキシベンゾン(日焼け止め・ファンデーションなど)
ホルムアルデヒド(化粧品類)
プロピレングリコール(化粧品類)
ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)
赤色202号(口紅など)
ウルシオール(アクセサリーなど)

肌の強い人は炎症を起こしませんが、一次刺激性接触性口唇炎の原因となる物質は「万人にとって刺激性・毒性がある物質」です。「肌が弱い」という自覚があるなら、刺激性物質を含んだ製品は避けたほうが無難でしょう。

1-2 アレルギー性接触性口唇炎

「アレルゲンとなる物質」に触れて炎症を起こした場合は、アレルギー性接触性皮膚炎となります。化粧品・洗顔料・食品などに含まれるアレルゲンが原因です。本人の体質によるところが大きく、「症状の程度」と「原因となる物質の毒性」に相関関係が見られない…という特徴があります。人によって「何がアレルゲンになるか」は異なり、実際、本来は無毒な物質にアレルギー反応を示す人も珍しくありません。

◆アレルギー性接触性口唇炎の主な原因物質

柑橘類(食品)
マンゴー(食品)
パイナップル(食品)
ヤマイモ(食品)
シナモン(食品)
ナツメグ(食品)
コバルト(金属)
ニッケル(金属)
アマルガム(歯科金属)
金銀パラジウム合金(歯科金属)

上で示した食品・金属はあくまでも一例です。アレルゲンは人それぞれなので、一般に「アレルゲンになる」と認識されていない物質が要因になることもあります。

接触性口唇炎の治療

根本的な解決は、「原因となる物質に接触しないこと」です。刺激性物質・アレルゲンに触れなければ、接触性口唇炎は快方に向かいます。ただ、原因物質の特定が困難な場合も多く、「原因物質との接触を断つ」というのは思っているほど簡単ではありません。
すでに発症している口唇炎には、対症療法をおこないます。「ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)」の外用薬で消炎を図るのが一般的でしょう。あまりに炎症がひどければ、内服の「抗ヒスタミン薬」を用いることもあると思います。

2.アトピー性口唇炎

アトピー性口唇炎は、「アトピー性皮膚炎が口唇に生じたもの」を指します。そのため、アトピー性口唇炎を発症するのは、アトピーの素因を持っている人です。
さて、一般に「アトピーは原因不明の皮膚炎を指す総称」と考えている人が多いですが、最近になって、だんだんと原因がわかってきているのをご存じでしょうか?
本来、表皮には外部刺激(物理的刺激をはじめとした外界からの刺激)をシャットアウトするための機構が備わっています。一般的に「表皮バリア」とか「肌本来のバリア機能」などと呼ばれる機構です。表皮のバリア機能を維持しているのは、以下に解説する2つの仕組みです。

◆タイトジャンクション構造

表皮は、内側から順に「基底層→有棘層→顆粒層→角質層」という4層構造になっています。タイトジャンクション構造を有するのは、このうち顆粒層です。
「顆粒細胞」が連結して、「外部から物質が入りこむこと」「内部の物質が出て行くこと」を防いでいます。外界からの影響を受けず、表皮の環境を維持する役目を果たしているわけです。

◆ラメラ構造

ラメラ構造を有するのは、表皮のもっとも外側に位置する角質層です。角質層には、角質細胞のほかに「細胞間脂質」と呼ばれる脂質が存在しています。細胞間脂質には、「セラミド」「脂肪酸」などがあります。
細胞間脂質は「脂質と水分をミルフィーユのように何層も重ね合わせた構造―ラメラ構造」を作り出しています。ラメラ構造は「角質層の水分が出て行くのと防ぐと同時に、外部刺激をシャットアウトする機能」を有しているのです。

さて、表皮バリア機能を守る上で、より重要な働きをしているのは「角質層のラメラ構造」です。外部刺激に対してはアレルギー反応を起こす場合、免疫細胞が機能しているはずです。免疫が反応しなければ、アレルギーは起こらないからです。
そして、表皮の免疫細胞―「ランゲルハンス細胞」は、タイトジャンクション構造の外側まで樹状突起を伸ばし、反応することができます。
この事実から、「外部刺激によるアレルギーを防ぐには、ラメラ構造の時点で刺激をシャットアウトする必要がある」とわかります。ラメラ構造を突破されてしまえば、アレルギー反応を起こす恐れがあるからです。
ラメラ構造は「脂質と水分の重ね合わせ」ですから、角質層の水分が失われると破綻をきたします。実際、アトピー性皮膚炎を起こしている部位は、水分を失ってカサカサになっているはずです。そう、アトピー性皮膚炎になっている部位では、表皮―角質層のラメラ構造が破綻しています。

角質層の水分が失われる要因としては、「フィラグリン」と呼ばれる物質の不足が考えられます。フィラグリンは角質細胞の中身(細胞質)を満たす物質であり、同時にNMF(天然保湿因子)に変わる物質でもあります。
簡単に言うなら、「角質層の水分量を維持するために役立つ物質」と考えてください。
ということは、「フィラグリンが不足する=角質層の水分量が減る」という帰結になるはずです。ひいては、表皮バリアの中心的存在―ラメラ構造の破綻を招くことでしょう。
実際、アトピー性皮膚炎の患者さんのうち20~30%は、フィラグリン遺伝子に異常を持っていることがわかっています。

以上から、アトピー性口唇炎は「フィラグリン遺伝子異常など、何らかの要因で口唇の表皮バリアが破綻している」と考えることができます。表皮バリアの破綻により、外部刺激に対し、簡単にアレルギー反応を起こしてしまい、唇が荒れるわけです。

アトピー性口唇炎の治療

アトピー性皮膚炎の原因はある程度わかってきましたが、しかし、現段階では「原因を取り除く治療法」が確立されていません。「対症療法を続けながら、自然と症状が落ち着くのを待つ」という治療方針を採ることになります。
基本的には「ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)」「タクロリムス軟膏(商品名:プロトピック)」といった外用薬で消炎を目指すことになるでしょう。軽度のアトピー性口唇炎であれば、「ヘパリン類似物質(商品名:ヒルドイド)」「白色ワセリン」などで保湿し、様子を見ることもあります。

3.剥脱性口唇炎

剥脱性口唇炎は、唇表面のターンオーバー(新陳代謝)が過剰になったことが原因です。成熟していない細胞が表面に出てくることで、唇がカサカサに荒れるわけです。そのほか、「皮がむける(落屑)」「黄色っぽい「かさぶた」ができる」といった症状が見られます。どちらかというと、大人より子供に多く見られる口唇炎です。
唇を頻繁になめると剥脱性口唇炎を招くので、別名で「舌なめずり口唇炎」と呼ばれることもあります。ただ、詳細な発症メカニズムはわかっておらず、「原因を取り除く治療法」も確立されていません。治癒までには、時間がかかる例が多いです。

剥脱性口唇炎の治療

「剥脱性口唇炎そのものを治す方法」は確立されておらず、対症療法を続けながら落ち着くのを待つ方向性になります。「ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)」「亜鉛華軟膏」「白色ワセリン」などで、「消炎」「滲出液の吸収」「患部の保湿」などを図ります。

4.肉芽腫性口唇炎

唇に「腫れ・むくみ」が出て、表面が荒れたり、皮がむけたりします。蜂に刺されたかと勘違いするほど大きく腫れますが、痛み・かゆみはなく、症状は数時間~数日で治まります。しかし、同様の症状が何度も再発する傾向があります。
最終的には、炎症を繰り返した唇の一部が硬くなり、まるでゴムのような質感になる例もあるようです。
「唇の腫脹」に加え、「舌に大量のシワができる(皺襞舌)」「顔面神経痛」が出ることもあり、3つの症状がすべて発現すると「メルカーソン・ローゼンタール症候群(MRS)」と呼ばれます。
肉芽腫性口唇炎を「MRSの不完全な発症」「MRSの症状の一部」と捉える医師もいるようです。
原因は不明ですが、「食物アレルギー」「金属アレルギー」との関連を疑う人もいます。肉芽腫性口唇炎を「MRSの一部症状」と捉える観点からは、遺伝的素因が強く関連している…と考える人も多いようです。

肉芽腫性口唇炎の治療

原因がはっきりしていないので、「原因を取り除く治療法」「確実性の高い治療法」は確立されていません。ただ、「根尖病変(歯茎に膿が溜まる症状)」「虫歯」などの口腔疾患を治療した際、肉芽腫性口唇炎が快方に向かった…という例が報告されています。
以上から、口腔内に存在する病巣を取り除くことは、肉芽腫性口唇炎の治療にポジティブな影響を与えると考えられます。そのほか、炎症を抑えるため、ステロイド剤の一種―「トリアムシノロン」の局所注射をおこなう場合もあります。

5.まとめ

唇が荒れてボロボロになる…という場合、難治性の口唇炎を疑う必要があります。接触性口唇炎・アトピー性口唇炎・剥脱性口唇炎・肉芽腫性口唇炎はいずれも、「こうすれば、すぐに治る」という治療法が確立されていません。
いずれにしても、炎症が悪化してからでは、症状を抑えるのに時間がかかります。「唇がカサカサに荒れて、2週間ほど待っても改善しない」という場合は、早めに皮膚科・歯科口腔外科などを受診してください。

 

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監修医

尾上 剛先生

ごうデンタルクリニック 院長

経歴

出身校:神奈川歯科大学
卒業年月日:2009年3月

2010年 新潟大学付属医歯学総合病院 勤務
2011年 神奈川歯科大学付属横浜クリニック 入局
2013年 斉藤歯科クリニック 院長就任

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