顎骨嚢胞ってどんな病気?種類・症状・治療法を徹底解説

    顎骨嚢胞(がっこつのうほう)とは何かについて説明します。嚢胞は体のさまざまな部位にできるもので、ほとんどが良性であり、大きな問題を引き起こすことは少ないです。しかし、顎骨嚢胞の一種である歯根嚢胞は、歯髄が細菌に感染している可能性があるため、早期の診療が必要です。

    この記事では、さまざまな顎骨嚢胞の種類、一般的な治療法、診断法について詳しく説明します。

    この記事の目次

    1.顎骨嚢胞ってどんな病気?

    顎骨嚢胞とは

    嚢胞とは、血液や浸出液(血液中の水分やタンパク質)などが袋状にたまったもので、内臓など体のさまざまな部位に見られます。多くの嚢胞は良性で、放置しても問題ないことが多いですが、大きくなると組織や臓器を圧迫する恐れがあります。口の中にも嚢胞ができることがあり、口内の軟組織(粘膜など)や顎骨付近にも発生します。特に、顎骨の付近にできる嚢胞を顎骨嚢胞と呼びます。

     

    顎骨嚢胞の種類と症状

    顎骨付近にできる嚢胞には、主に3種類あります。

     

    歯根嚢胞

    顎骨にできる嚢胞の中で、約5割を占める最も一般的なものが「歯根嚢胞」です。歯根嚢胞は、歯の根元付近にできる嚢胞で、主に虫歯の進行により歯髄に細菌が侵入し、歯の根元周囲が炎症を起こすことで発生します。

    症状
    自覚症状がないことも多いですが、膿が溜まったり、歯茎が腫れたり収縮したりを繰り返すことがあります。また、歯が浮いた感じがしたり、噛むときに痛みを感じることもあり、膿が溜まって急に強い痛みが出ることもあります。

     

    含歯性嚢胞

    「含歯性嚢胞」は、埋まった歯の上部にできる嚢胞です。主に、上顎の前歯や犬歯、下顎の小臼歯など、出てくるのが遅れて埋伏している永久歯に見られます。また、埋伏している親知らずにも見られます。

    症状
    嚢胞が小さい場合は自覚症状がないことが多いですが、大きくなると歯肉が膨らんだり、歯の位置異常を引き起こすことがあります。

     

    術後性上顎嚢胞

    「術後性上顎嚢胞」は、上顎洞炎の手術後、数年から20年程度経過した後に上顎や頬にできる嚢胞です。

    症状
    嚢胞が大きくなると、頬の違和感や鼻づまり、顔の腫れなどの症状が現れます。中には、手術から40年経って初めて症状が出るという珍しいケースもあります。

     

    顎骨以外にできる嚢胞

    顎骨嚢胞のほかに、口内の軟組織にできる嚢胞などもあります。

     

    粘液嚢胞

    「粘液嚢胞」は、唾液腺が詰まったり、唾液が周囲の組織に漏れたりしてできる嚢胞です。口内の軟組織にできる嚢胞の大部分がこの粘液嚢胞で、唇の裏側や舌の裏側にできることが多いです。特に、舌の裏の口底部分にできるものは「ガマ腫」と呼ばれます。

    症状
    粘膜の表面が膨れて柔らかく、触るとぷよぷよしていることが多いです。痛みはほとんどありません。

     

    類皮嚢胞

    「類皮嚢胞」は、嚢胞の袋が皮膚と同じ組織でできている嚢胞です。皮膚と同じ組織なので、汗腺や脂腺、毛包(発毛する組織)を持っていますが、これらを持たないものは「類表皮嚢胞」と呼ばれます。体のさまざまな部位にできることがありますが、口内では主に口底に発生します。

    症状
    嚢胞が大きくなると、舌を圧迫して発音障害や嚥下障害(飲み込みにくくなる障害)を引き起こします。

    2.顎骨嚢胞の治療法とは?

    嚢胞自体は良性で害のないものであることが多いのですが、顎骨嚢胞の場合には嚢胞を摘出するのが望ましいこともあります。ここでは治療法について詳しく見ていきましょう。

     

    歯根嚢胞の治療法

    歯根嚢胞の多くは、歯髄が細菌に感染することが原因で発生します。そのため、まず根管治療が必要です。歯根嚢胞の場合、これに加えて嚢胞の摘出も行います。感染が歯根の先まで達し、根管治療だけでは不十分な場合には、歯茎を切開して歯根の先を取り除く手術(歯根端切除術)を行います。また、歯の損傷が大きく、根管治療などで保存が難しい場合には、抜歯も検討されます。

     

    含歯性嚢胞の治療法

    埋まっている歯の歯冠(歯の上部)にできた嚢胞は、嚢胞の摘出や、嚢胞を切開して内容物を吸引する開窓術で治療します。また、親知らずに含歯性嚢胞ができた場合、嚢胞の摘出とともに、必要に応じて親知らずの抜歯も行います。

     

    術後性上顎嚢胞の治療法

    上顎にできた嚢胞の治療は、基本的に全摘出手術が行われます。しかし、CTで嚢胞の位置を正確に把握することで、内視鏡を使って嚢胞に穴を開けて内容物を取り除く開窓術が一般的になってきています。また、頬の腫れがひどくない場合には、抗生物質の服用で症状を軽減することが可能です。

    3.顎骨嚢胞の診断方法とは?

    嚢胞が小さい場合、あまり自覚症状がみられないこともあります。そういった場合でも、レントゲンで診断をすると嚢胞があるかどうか、すぐに分かります。

     

    レントゲン検査

    レントゲン検査では、嚢胞部分に類円形のX線透過像が見られるため、嚢胞の存在がすぐに分かります。X線透過像とは、X線が多く通過する部分の像で、レントゲン写真では黒く写る部分のことです。嚢胞の内部は主に液体であるため、X線が透過しやすく、レントゲン写真では黒く見えるのです。

     

    組織生検

    多くの嚢胞は良性で、腫瘍になる可能性は低いです。しかし、病変が大きい場合には、念のため組織を採取して腫瘍でないかどうかを確認します。

    4.まとめ

    嚢胞は体のさまざまな部位にでき、その多くは良性であるため、緊急に切除する必要はなく、定期的に経過を観察することが一般的です。

    しかし、顎骨にできる嚢胞は、腫れを繰り返したり、違和感や不快感、痛みを引き起こす可能性があるため、切除が必要かどうかを歯科口腔外科で相談することをお勧めします。特に歯根嚢胞の場合、歯髄の細菌感染が原因であることが多いため、早期の診断と治療が重要です。

    監修医

    髙橋 貫之先生

    本町通りデンタルクリニック 歯科医師

    経歴

    2003年 大阪歯科大学 卒業
    2003年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 入学
    2007年 大阪歯科大学 大学院歯学研究科博士課程 修了
    2008年 大阪歯科大学 勤務
    2016年 大阪歯科大学歯周病学 助教退職
    2016年 本町通りデンタルクリニック 勤務
    現在に至る

    日本歯周病学会 歯周病専門医

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