事故で歯がなくなったり、虫歯や歯槽膿漏などで抜歯した場合、手軽な治療法のひとつとして挙げられるのが部分入れ歯です。20〜30代などの若い世代の方の中には「部分入れ歯は目立つし、入れ歯なんて…」と抵抗感を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし最近は目立たない審美性に優れた部分入れ歯も登場しています。
この記事では、おすすめの部分入れ歯についてご紹介します。
この記事の目次
1.目立たないおすすめの部分入れ歯
部分入れ歯には、歯を固定する「クラスプ」という留め具がついています。クラスプは、一般的に金属で作られているため、装着中に目立ってしまい、部分入れ歯を付けているということが周囲に知られやすくなります。ここでは、その留め具が目立ちにくいおすすめの部分入れ歯をご紹介いたします。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、クラスプに樹脂を使用しているため、目立ちにくいのが特徴です。樹脂の色が歯茎に似ているため、部分入れ歯を装着していることが周囲に気づかれにくいメリットがあります。また、前歯にも奥歯にも使用できる点も魅力です。
さらに、樹脂は金属に比べて弾力性が高く、装着時の違和感が少ないです。レジン床の部分入れ歯と比べても異物感が大幅に軽減され、軽く薄く作れるため、より快適に使用できます。
ノンクラスプデンチャーの費用
ノンクラスプデンチャーの費用は自由診療になるため歯医者さんによって差があります。一般的な目安は以下になります。
・1〜3歯で8万円程度
・4〜7歯で10万円程度
・8〜13歯で13万円程度
ノンクラスプデンチャーのデメリット
ノンクラスプデンチャーには以下のようなデメリットもあります。
・費用が高い
通常の部分入れ歯は保険が適用され、5,000円〜13,000円程度の費用で治療できますが、ノンクラスプデンチャーは審美的な要素が強く自由診療となるため、経済的な負担が大きくなります。
・強く噛めない
取り外しが可能な部分入れ歯のため、強く噛むときに少し不安定さを感じることがあります。しっかり噛みたいという要望がある方は、ブリッジ、インプラントなどを検討したほうがいいでしょう。
・永久的には使用できない
部分入れ歯は定期的に作り直す必要があります。何度も作り直した場合は、結果として治療費が高価になります。
・お手入れが必要
特殊な樹脂を使っているため、お手入れをするには専用の洗浄剤が必要になります。
・補修できない場合も
部分入れ歯は取り外しができるため、不意に落としてしまったりして故障させてしまうことがあります。この場合、補修できないことが多く、一から作成する必要が出てきます。
コーヌスクローネ義歯
コーヌスクローネは、留め具がない部分入れ歯です。残っている歯に金属キャップを装着し、その上に義歯をかぶせて固定します。留め具が見えないため審美性が高く、薄さと安定性を兼ね備えているので、咀嚼時の違和感が少ないのが特徴です。また、雑菌がつきにくく、口腔ケアが比較的しやすい点もメリットです。さらに、発音に支障が出にくいという特徴もあります。
コーヌスクローネ義歯の費用
コーヌスクローネ義歯の費用は自由診療になるため歯医者さんによって差があります。
一般的な目安は約40〜120万円です。ただし、歯の本数によって費用は変動します。
コーヌスクローネ義歯のデメリット
コーヌスクローネ義歯には以下のようなデメリットもあります。
・費用が高い
通常の部分入れ歯は保険が適用されますが、コーヌスクローネ義歯は審美的な要素が強く自由診療となるため、経済的な負担が大きくなります。
・多くの歯を削る必要がある
コーヌスクローネ義歯は歯を削る必要があるため、使える人が限定されてしまう部分入れ歯です。場合によっては神経を抜かなければいけないことも出てきます。また、歯をすべてなくしてしまった方も使えません。
・残存歯の負担が大きい
残された歯に負荷がかかるため、残された歯が折れてしまう可能性があります。健康な歯に負担をかけるということは、大きなデメリットといえるでしょう。
その他の部分入れ歯
ノンクラスプデンチャーやコーヌスクローネ義歯以外にも、以下のような部分入れ歯があります。
マグネットデンチャー
クラスプを使わずに磁石で固定する部分入れ歯です。歯根部分に磁石を取り付け、入れ歯にも超小型の磁石を埋め込みます。クラスプがないため、非常に目立ちにくいのが特徴です。
金属床
金属の床で入れ歯を支える部分入れ歯で、金属床義歯とも呼ばれます。素材にはゴールド、チタン、コバルトクロムなどがあり、目的や要望に応じて使い分けられます。
2.部分入れ歯のメンテナンス方法
ここからは、部分入れ歯のメンテナンス方法についてご紹介していきます。
部分入れ歯用洗浄剤に浸けて洗浄する
部分入れ歯を使用する際は、毎日のお手入れが必要です。部分入れ歯は専用の洗浄剤に浸けて洗浄します。洗浄剤を溶かした水に一晩浸けておくのが一般的です。ただし、入れ歯の種類によっては使用できない場合もあるため、メンテナンス方法については必ず歯医者さんに確認しましょう。
食後の歯磨きを行う
食後の歯磨きも欠かせません。部分入れ歯によっては、研磨剤が傷や汚れを引き起こすことがあります。そのため、医師から使用を禁止された場合は、歯みがき粉を使用しないようにしましょう。
定期的に通院し調整する
部分入れ歯が割れたり、ゆるくなったりした場合、自分で調整することはできません。そのため、完成後も定期的な調整のために通院が必要になることがあります。調整には費用がかかり、保険適用の場合は300〜1,000円程度、保険適用外の場合は自由診療となり、費用は歯医者さんによって異なります。
作り直しになる場合も
入れ歯にはそれぞれ耐用年数があります。コーヌスクローネ義歯やマグネットデンチャーは、メンテナンスをしっかり行い、歯や噛み合わせに問題がなければ10年以上使用できます。一方、ノンクラスプデンチャーの耐用年数は約3年とされています。これは義歯の中でも短い耐用年数です。作り直しのコストについても、事前にしっかりと認識しておくことが重要です。
3.まとめ
若い世代の方が部分入れ歯を使用する際、抵抗感を感じることもあるでしょう。
しかし、義歯技術の進歩により、目立たない審美性の高い部分入れ歯が普及しています。歯がない状態を放置すると、咀嚼に問題が生じ、身体全体のバランスを崩す可能性があります。目立たない部分入れ歯は安価ではありませんが、精神的な負担を軽減する効果もあります。歯医者さんと相談し、自分の状態と要望に合った治療方法を選びましょう。

監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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