天然の歯と同じように物を噛めたり、見た目の仕上がりも美しいと評判のインプラント。しかし、その治療費が高額なことが大きなハードルとなっています。
ここでは、そんなインプラントの高額な治療費負担を軽減してくれる「医療費控除」についてご紹介します。これまで経済的な理由で治療できなかった人は、ひとつの解決策になるかもしれません。
この記事の目次
1.インプラントは医療費控除の対象
医療費控除とは
医療費控除は、支払った医療費が10万円以上(その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)になると、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。自分だけでなく家族の医療費総額が10万円以上なら利用できます。
インプラントも医療費控除の対象
インプラントは基本的には保険診療の対象外ですが、医療費控除制度の対象になります。インプラントは1本で30〜40万円前後と、高額な費用がかかる治療です。医療費総額が10万円以上なら利用できるので、1本だけの治療でも対象にあたります。
ただし、1年の控除額の上限は200万円までです。費用がかさんだ場合は、すべてが控除対象ではない点に注意してください。
医療費控除の対象となる費用
インプラント治療をする上で医療費控除の制度に申請できるのは、以下の費用となります。インプラント治療にまつわる費用も対象となる場合がありますので、きちんとその範囲を覚えておきましょう。
・検査費用
・診断費用
・インプラント体、被せ物にかかる費用
・手術費用
・その他調整料
・診療のために必要だった交通費
交通費は意外に捉えられるかもしれませんが、通院の際に必要だった交通費などはきちんと記録を残しておくといいでしょう。ただし、自家用車のガソリン代は申請から除外されます。
2.医療費控除を受ける際のポイント
領収書や書類を保管しておく
医療費控除を申請するには、費用の金額を証明する領収書などが必要です。初診時からきちんと領収書をとっておき、確定申告をする際まで保管しておきましょう。他にも、以下の資料等が申請に必要となりますのでチェックしておきましょう。
・確定申告書
・医療費の明細書
・医療費の支出を証明する領収書など
・源泉徴収票(所得があれば)
・保険給付金の控え
・医療費のお知らせ(医療費通知)
・マイナンバー
・印鑑
・通帳
医療費控除の手続きについて詳しく知りたい場合は、お近くの税務署や国税庁ホームページなどでその方法を詳しく調べてみるといいででしょう。
申告期間を確認する
医療費控除の申告ができるのは、過去5年間にわたる医療費です。過去5年間の医療費であれば控除の対象になりますので、思い当たる部分があれば、今からでも調べてみるといいでしょう。家族の医療費などもあわせて申告できるので、とにかく領収書などを探してみると、経済的な負担を軽減できるかもしれません。
※タイミングに注意
インプラントは治療に長い期間を要することがあります。そのため、年をまたいで治療費の支払いが必要となるケースも少なくありません。医療費控除は年単位で申請をしますので、「何年にいくら払ったのか?」ということが明確である必要があります。いつ支払ったのかはその都度記録して、医療費控除の申請時に備えておきましょう。
ローンでの支払いも対象になる
治療費が高額となるインプラント治療では、デンタルローンを使って分割で支払うことも多くなります。その場合でも医療費控除の対象となるので心配いりません。
ただし、まだデンタルローンの支払いが終わってない場合、手元に領収書がないということもあるでしょう。そういった場合は、デンタルローンの契約書の写しも保管しておき、添付して申請するようにしましょう。
補てん金などは差し引く必要がある
インプラント治療をする際に、健康保険組合などから補てんされる金額があれば、それらは医療費から差し引かなければいけません。
もし、医療費控除の申請を考えている方で、健康保険組合からの補填される金額があれば、きちんと記録を残しておくようにしましょう。
3.インプラントは保険適用になる?
インプラントは自由診療
インプラント治療は保険外診療であるため、費用は全額患者さんの負担となります。ブリッジや差し歯などと比べて費用がかさみがちなのは、保険が適用されないことが大きな理由なのです。保険診療と違い、自由診療は歯医者さんごとに料金が変わります。使う素材や治療本数によっても大きく金額が変動するのも特徴です。
インプラントでも保険適用になる場合がある
インプラントでも、特別な理由がある場合は保険が適用されます。適用の症例は以下の通りです。
保険適用となる症例
・骨移植によって顎の骨が再建された状態にある場合
・顎の骨の形成不全である場合
・腫瘍や顎骨子骨髄炎などの病気、事故の外傷などによって顎の骨が3分の1以上連続して失われた場合
・顎の骨の3分の1以上が連続して失われている状態で、医科保険医療機関の主治医が先天性疾患と診断した場合
加えて、保険が適用されるには受診する医療機関が定められています。
医療機関の条件
・入院病床が20床以上ある病院内の歯科、歯科口腔外科
・当直体制が整っている医療機関
・国が定める医療機器、医薬品が管理、整備されている医療機関
・上記に当てはまる病院の歯科、または歯科口腔外科で5年以上の治療経験を有し、インプラント義歯の治療経験が3年以上ある医師が常勤で2名以上配置されている医療機関
4.まとめ
特別な条件にあてはまらない限り、自由診療となってしまうインプラント治療。保険が使えないからと全額を負担する人が多いですが、医療費控除を利用すれば実質的な経済的負担を減らすことが可能です。インプラント治療にのぞむにあたって、やはり費用面が一番のネックではないでしょうか。医療費控除を利用して少しでも負担を減らす努力をしましょう。
申請のためには関連書類が必要となります。領収書等はきちんと保管するようにし、スムーズに申請できるように備えておきましょう。医療機関までの交通費も対象となることも忘れないでくださいね。

監修医
鄭 尚賢先生
アイボリー歯科クリニック 顧問
経歴
1999年 渋谷教育学園幕張高等学校 卒業
2005年 東京歯科大学 卒業
2005年 ドルフィン歯科(千葉県佐倉市) 勤務
2005年 スウェーデンデンタルセンター (東京都千代田区) 勤務
2007年 駿河台下デンタルオフィス 開業 (東京都千代田区)
2008年 アイボリー歯科クリニック 開業 (東京都八王子市)
2010年 医療法人社団パーフェクトスマイル 設立
2014年 三鷹駅前デンタルオフィス開業 (東京都三鷹市)
2016年 荻窪駅前デンタルオフィス 開業 (東京都杉並区)
2018年 吉祥寺デンタルオフィス 開業 (東京都武蔵野市)
2024年 顧問 就任
現在に至る
取得資格・専門医資格
日本歯周病学会 歯周病専門医
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