歯磨きのときに力を入れすぎていませんか?知らず知らずのうちに、歯茎を傷つけてしまっているかもしれません。歯茎の傷はさまざまな原因によって作られ、そのまま放置してしまうと傷が悪化し、炎症を起こすこともあります。
この記事では、歯茎に傷ができる主な原因や対処法、間違った口腔ケアによって引き起こされるトラブルについても解説していきます。
この記事の目次
1.歯茎に傷ができてしまう原因と対処法
オーバーブラッシング
歯茎に傷ができる原因の代表格は「オーバーブラッシング」です。必要以上の力で磨くことをオーバーブラッシングと呼んでおり、歯茎は粘膜ですから、力任せにゴシゴシと磨けば簡単に傷がつきます。
<対処法>
力任せにゴシゴシ磨いたところで、歯磨きの効率は上がりません。腕の力を抜き、歯ブラシの毛先が広がらない程度の力で磨きましょう。オーバーブラッシングにならないような適度な力加減と正しい磨き方を身に付けることが大切です。
デンタルフロスによる傷
デンタルフロスは歯と歯の隙間を掃除する道具です。歯と歯の隙間に付着した歯垢は、歯ブラシでは除去しきれません。そのため、デンタルフロスや歯間ブラシなどのケアグッズを使用する人も増えてきています。しかしデンタルフロスも、使い方を間違えると歯茎を傷つける要因になってしまいます。実際、正しい使い方を知らないまま、なんとなく糸ノコのように何往復もさせている人がたくさんいるようです。歯茎に接触したまま何往復もさせたら、傷ができて出血するのは自明の理と言えます。
<対処法>
歯茎ではなく、歯の方向にフロスを沿わせて1往復すれば十分です。歯と歯の隙間をきちんと通過したなら、歯垢は除去できているはずですので、やりすぎには注意しましょう。
入れ歯・かぶせ物による傷
入れ歯の床(土台)が歯茎を傷つけたり、虫歯治療に使った、かぶせ物の根元が歯茎に刺さったりすることがあります。鋭利になった部分が歯茎を傷つけるわけです。入れ歯・かぶせ物はずっと口の中に入っているので、慢性的な傷になりがちです。
<対処法>
入れ歯・かぶせ物などによる外傷は、原因となる補綴物が存在する限り、自然治癒は期待できません。突起・鋭利な部位を取り除くか、補綴物を作製しなおすかして、根本原因を取りのぞく必要があります。
偶発的な傷
食事中に魚の骨などの尖ったものが刺さって、偶発的に傷ができることがあります。負傷すること自体は問題ですが、一時的な事故のようなものなので、あまり心配する必要はありません。
<対処法>
基本的には自然治癒を待つだけで構いません。
2.オーバーブラッシングが招くトラブル
冒頭に示したとおり、歯茎に傷ができる原因の代表格はオーバーブラッシングです。ここでは、オーバーブラッシングが招くトラブルをご紹介します。
楔状欠損(くさびじょうけっそん)
歯の根元がすり減り、細くなった状態を「楔状欠損」と呼びます。研磨剤配合の歯磨き粉でオーバーブラッシングを繰り返すと、歯の根元が摩耗することがあるのです。ひどい場合、歯が根元から折れることもあります。
象牙質知覚過敏症
オーバーブラッシングが癖になっていると、表面のエナメル質はどんどん摩耗していきます。象牙質が露出すると、冷たいものや甘いものに痛みを感じる「知覚過敏」の症状が出てくるでしょう。
歯茎の後退
年齢を重ねると、歯茎が痩せて、歯が長くなったように感じるなどの変化が出てきます。オーバーブラッシングの悪習慣は、歯茎が下がるペースを明確に早めてしまうのです。
3.歯茎の傷が炎症を起こすことも
ほとんどの場合、傷ができる原因を取りのぞくだけで、問題は解決します。正しいオーラルケアを身につける、問題のある補綴物を調整するなどの対処をすれば、傷は自然治癒に向かうでしょう。しかし稀に傷が悪化し、以下のようなトラブルを起こすことがあります。
歯肉膿瘍(しにくのうよう)
歯茎の傷が細菌感染を起こし、化膿することがあります。歯茎の内側に膿が溜まることから、腫れあがって、触るとブヨブヨすると訴える人が多いです。ほとんどは一時的な炎症を起こすだけですが、稀に重症化して、周囲一帯に痛みや腫れが生じるケースもあります。
<対処法>
治療は、抗生物質・鎮痛消炎薬を処方すると同時に、膿を出して内側を洗浄するのが普通です。患部に魚の骨やエビの殻などが刺さりっぱなしになっていることも多いので、歯茎に傷を負ったら、刺さっているものを取りのぞき、患部を清潔にすることを心がけましょう。
カタル性口内炎
歯茎などの口腔粘膜に外傷を負うと、「カタル性口内炎」のきっかけになることがあります。カタル性口内炎は、一帯が赤く腫れて、紅斑(赤く小さな斑点)ができる口内炎です。痛みは強くありませんが、ヒリヒリとした熱感があります。
<対処法>
放っておいても1週間~10日くらいで治癒しますが、口腔内が不衛生だと長引く傾向があります。クロルヘキシジンを含むうがい薬など、低刺激な薬剤で口腔内を消毒すると良いでしょう。
4.まとめ
歯磨きやデンタルフロスの使い方を正しく理解し、口腔内を傷つけないセルフケアテクニックを身につければ、歯茎に傷をつける心配もなくなるでしょう。
ただ、優しく磨いても歯茎から出血するという場合は要注意です。すでに歯周病になっている恐れがあります。ブラッシングを改善しても歯茎から出血するようなら、早めに歯科医院を受診するようにしてください。

監修医
貝塚 浩二先生
コージ歯科 院長
経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
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