顔の痛み・ピクつき・歪み…神経の病気かも?サインを見逃さず早めに相談を

    顔面の神経性疾患は、日常生活においてとても不安でストレスを感じるものです。顔を洗った拍子に、電気が走るように強く痛みが出たり、動かそうとしないのに勝手に目元が痙攣してしまったり、顔が歪んでうまく表情を作れないこともあります。

    この記事では、顔面の神経性疾患について詳しく解説し、お薬や手術などによるさまざまな治療法と神経性疾患と間違われやすい別の疾患などについても、詳しくご紹介いたします。

    この記事の目次

    1.こんな症状はありませんか?顔の神経の病気チェック

    顔には三叉神経と顔面神経が通っています。三叉神経とは、眼の神経と上顎の神経、下顎の神経の3つに枝分かれした神経であることから、このように呼ばれています。運動の指令を伝達する運動神経と、感覚を伝える知覚神経が混合されたもので、脳神経の中でも最大の神経となっています。

    また、顔面神経は顔の表情筋のすべてに広がっていて、表情筋を動かすための運動神経です。顔面の神経性疾患とは、主にこの三叉神経や顔面神経の疾患となります。

    ・電気が走るような顔の痛みがある
     →三叉神経痛の疑い

    ・顔の片側が動かしにくい、歪んでいる
     →顔面神経麻痺の疑い

    ・まぶたや頬がピクピクする
     →顔面神経痙攣の疑い

    2.顔の神経の主な病気:原因と症状

     

    顔面の主な神経疾患の原因や症状、治療法についてご紹介します。

     

    ■三叉神経痛:顔に走る激痛の原因と治療法

    【症状】
    三叉神経痛は、顔や口の片側に突然、電気が走るような激しい痛みが現れる病気です。この痛みは短時間でおさまりますが、何度も繰り返し起こります。食事や洗顔、歯磨きなどの刺激で痛みが誘発されることがあります。

    【原因】
    三叉神経痛には2つのタイプがあります。
    症候性三叉神経痛: 末梢領域のさまざまな原因によって二次的に起こります。このタイプでは、ピリピリとした痛みや感覚の異常がみられることがあります。
    真性三叉神経痛: 中枢神経に原因があります。

    【治療法】
    症候性三叉神経痛: 原因を調べて、その原因となる病気の治療を行います。
    真性三叉神経痛: 軽い場合は、カルバマゼピンという薬を使って神経の伝達を抑え、痛みを和らげることがあります。
    薬で改善しない場合は、脳神経外科で手術を行うことがあります。三叉神経が血管に圧迫されている場合、その圧迫を取り除く手術(ジャネッタ手術)を行い、良い結果が得られています。

     

    ■顔面神経麻痺:顔の歪みの原因と治療法

    【症状】
    顔面神経麻痺は、顔の表情に歪みが生じるような症状をもたらします。具体的には、額のシワを寄せることができなくなったり、まぶたが垂れたり、口角が下がったり、口笛が吹けない、よだれが垂れてしまうといった症状があります。部位によっては、味覚や聴覚の障害や、涙や唾液の分泌量が少なくなるといった症状も併発します。

    【原因】
    顔面神経麻痺の原因としては、局所的な血液の循環障害やウイルスが関係している場合があります。

    【治療法】
    お薬で治す場合には、循環改善剤や抗ウイルス薬、末梢神経拡張薬を使った治療があります。血行を促進するために、マッサージや低周波を使った方法などもあります。
    また、首にある交感神経節に局所麻酔を施し、神経を一時的にブロックすることで血管を拡張させ、痛みを改善する星状神経節ブロックという方法もあります。外科手術による治療では、圧迫されている神経を開放する顔面神経開放術などが行われています。

     

    ■顔面神経痙攣:顔のピクつきの原因と治療法

    【症状】
    顔面神経痙攣は、顔の筋肉が勝手にピクピクと動く病気です。最初は目の周りの筋肉が痙攣して、まばたきが多くなることがあります。症状が進むと、頬や口の周り、さらには顎や舌の筋肉もピクピクと動くことがあります。顔面神経麻痺は筋肉が動かない状態、顔面神経痙攣は筋肉が動きすぎる状態です。

    【原因】
    この病気は、顔面神経が異常に興奮することで起こります。具体的には、顔面神経に圧力がかかることで、神経が過剰に反応してしまうことが原因とされています。

    【治療法】
    治療法には主に3つの方法があります。1つ目は薬による治療で、神経の興奮を抑える薬を使いますが、効果には個人差があり、副作用もあります。2つ目はボツリヌス毒を使った神経ブロックで、痙攣している筋肉に注射して筋肉の動きを抑えます。ただし、効果は一時的で、数ヶ月ごとに繰り返す必要があります。3つ目は手術で、顔面神経に圧力をかけている動脈を移動させる方法です。手術は根本的な治療法で、高い治癒率がありますが、全身麻酔や入院が必要で、合併症のリスクもあります。

     

    3.注意!顔の神経の病気と間違えやすい病気

     

    自分の判断では神経疾患と間違えやすい病気もあります。いくつかご紹介いたします。

     

    帯状疱疹

    帯状疱疹とは、水ぼうそうと同類のウイルスが引き起こす皮膚病です。ウイルスが神経に沿って増殖するのが特徴で、三叉神経に感染すると、通常の三叉神経痛に似た、電気が走るような痛みを伴います。お顔の帯状疱疹では三叉神経に沿って、皮膚にも疱疹ができることなどから違いが分かります。ただし、表面の疱疹が治ってからも神経の痛みはしばらく続くので、三叉神経痛と区別がつきにくくなります。

     

    群発頭痛

    目のあたりに激痛を感じる群発頭痛も、三叉神経痛と間違えがちな疾患です。三叉神経痛と同じく強い痛みですが、痛みは数十秒程度で長く続かないものです。一方、群発頭痛は痛みを感じる時間がもっと長いものです。

     

    顎関節症

    顎関節症は、口を大きく開けられなかったり、顎を動かす時に異音が聞こえたり、痛みが出たりする関節の疾患です。通常、顎を動かす時だけ痛むので区別できますが、時折、顎を動かさなくても痛くなることもあります。

     

    副鼻腔炎

    副鼻腔炎とは、ウイルスや細菌の感染が原因となって、副鼻腔(鼻腔とつながっている骨内の空洞)が炎症を起こすものです。顔に痛みが出る症状もあるのですが、三叉神経痛とは痛みの質が違うので、問診によって区別できます。

     

    歯痛

    逆に、三叉神経痛の痛みを歯痛と間違えるケースもあります。歯茎の周辺に強い痛みを感じるケースもあり、この場合、歯に問題があると勘違いしがちになります。実際、抜歯したにもかかわらず痛みが消えないことから、三叉神経痛であることが判明したという事例もあります。

     

    眼瞼痙攣

    眼瞼痙攣は、顔面神経痙攣と同じく、まぶたの痙攣が見られます。ただし、顔面神経痙攣では、どちらか片側のまぶたが痙攣するものですが、眼瞼痙攣では両目のまぶたが痙攣します。

     

    異常共同運動

    顔面神経が麻痺する病気を患い、それが回復後に、意図する箇所とは違うところがつられて動いてしまうことがあります。たとえば、目を閉じようとすると、口元も動いてしまったりといったりといったことが起こります。これを顔面痙攣と勘違いする方もいますが、顔面痙攣の場合は、顔を動かそうと意図しなくても勝手に動くのが特徴です。

     

    脳梗塞

    脳梗塞でも顔面神経麻痺と同じく、顔の歪みが見られます。しかし、脳梗塞による顔の歪みは、眉や額の歪みは少なく、口元の麻痺が目立ちます。さらに、顔面の歪み以外にも、手足の麻痺などが同時に見られるケースがほとんどとなります。この場合には、治療に一刻を争うので、すぐに救急車を呼ぶべきです。

    4.顔のことでお悩みなら、まずは専門医に相談を!

     

    顔面の神経性疾患は、中枢系からくるものであれば、脳神経外科で扱うものですが、顔に痛みを感じたり、顔が麻痺して歪んだり、顔が痙攣するようなときには、まずお近くの病院あるいは神経外科、歯科口腔外科で診てもらうのがよいでしょう。

    ただし、顔の麻痺に手足の麻痺が伴う場合には、脳梗塞の疑いがあるので、すぐに救急車を呼びましょう。

     

    歯科口腔外科ではどんなことを診てくれるの?

    歯科口腔外科は、歯科と口腔外科を扱う歯医者さんです。歯科は歯のトラブルを扱うのに対し、口腔外科では、口内の軟組織やお口の周囲、唇、頬、顎、顔面に至るまでの部位を幅広く扱います。

    外傷や骨折、粘膜疾患、神経性疾患、内科的疾患、先天的異常、腫瘍など、あらゆる疾患をカバーしています。従って、ご紹介した部位に関するトラブルやお悩みは、まず歯科口腔外科に相談するのが賢明です。

    5.まとめ

    お顔の神経疾患は、とても煩わしいものです。突然激しい痛みを感じたり、時折痙攣が続いたり、お顔の歪みが生じれば、日常生活にも支障が出てくるはずです。

    中枢系の場合には脳神経外科での治療が必要となりますが、神経疾患のように見えても、そうでないケースもあります。最初に相談する診療科としては、神経内科あるいは歯科口腔外科で診てもらうのが得策です。

    監修医

    鄭 尚賢先生

    アイボリー歯科クリニック 顧問

    経歴

    1999年 渋谷教育学園幕張高等学校 卒業
    2005年 東京歯科大学 卒業
    2005年 ドルフィン歯科(千葉県佐倉市) 勤務
    2005年 スウェーデンデンタルセンター (東京都千代田区) 勤務
    2007年 駿河台下デンタルオフィス 開業 (東京都千代田区)
    2008年 アイボリー歯科クリニック 開業 (東京都八王子市)
    2010年 医療法人社団パーフェクトスマイル 設立
    2014年 三鷹駅前デンタルオフィス開業 (東京都三鷹市)
    2016年 荻窪駅前デンタルオフィス 開業 (東京都杉並区)
    2018年 吉祥寺デンタルオフィス 開業 (東京都武蔵野市)
    2024年 顧問 就任
    現在に至る

    取得資格・専門医資格
    日本歯周病学会 歯周病専門医

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