入れ歯の正しいお手入れ方法をご存じでしょうか?入れ歯はお手入れが不足すると口臭を引き起こしたり、歯茎に炎症を起こす原因となります。入れ歯を清潔に保つために、正しい入れ歯のお手入れ方法を知り、目に見えない細菌を退治してくれる入れ歯洗浄剤を上手に活用するようにしましょう。
この記事では、入れ歯の正しいお手入れ方法や、入れ歯洗浄剤の必要性について説明します。
この記事の目次
1.入れ歯洗浄剤の特徴や種類
入れ歯洗浄剤は、入れ歯を清潔に保つためには欠かせないものです。ここでは、入れ歯洗浄剤の特徴や種類をご紹介していきます。
入れ歯洗浄剤の主なはたらき
入れ歯洗浄剤としてさまざまな商品が市販されていますが、基本的に同じ目的を持っていて、共通して主に次の4つのはたらきをもっています。
・殺菌の作用
・洗浄の作用
・消臭の作用
・歯石の予防
入れ歯洗浄剤の種類
入れ歯洗浄剤は成分によって大きく「過酸化物系」、「酵素系」、「次亜塩素酸系」の3種類にわけられます。それぞれの特徴を理解して、上手に使い分けましょう。
過酸化物系
一般的な入れ歯洗浄剤で発泡作用があります。泡の力で汚れや着色を落とします。
殺菌力はそれほど期待できない分、安全性が高いことが特徴です。部分入れ歯のクラスプ(金属バネ)が変色することがあるので注意しましょう。
酵素系
酵素の力でタンパク質を分解する洗浄剤です。食べかすや細菌を取り除き、脱臭作用が期待できます。安全性は高いものの、ヤニや茶渋などの着色に対する漂白作用はほとんど期待できません。
次亜塩素酸系
非常に強いアルカリ性成分のため洗浄剤の中では最も殺菌力が高く、着色汚れに対しても優れた漂白作用が期待できます。その反面、長時間入れ歯をつけておくと、素材として使われているレジン(プラスチック)を痛め、変色させることがあるため注意が必要です。
2.入れ歯の毎日のお手入れ方法
次に、入れ歯の正しいお手入れ方法や、気を付けたい注意点をご紹介していきます。
正しいお手入れ方法
入れ歯のお手入れをするときは、落下による破損を防止するために、水を張った洗面器の上などでお手入れをしましょう。正しい入れ歯のお手入れ方法について6つのステップでご説明します。
①入れ歯をはずして洗浄する
装着したままではなく、必ず外してから洗浄しましょう。
②水やぬるま湯で洗い流す
表面にある目立った汚れを水やぬるま湯で洗い流します。熱湯やアルコールによる消毒は入れ歯の素材であるレジン(プラスチック)の変形や変質を引き起こすことがあるので避けましょう。
③専用ブラシで入れ歯を磨く
洗い流しただけでは落ちない細かな汚れは、水で流しながら専用のブラシでやさしく丁寧に磨きます。クラスプ(金属バネ)やその周辺は汚れがたまりやすいので、特に意識をして磨くようにしましょう。ただし、クラスプは強い力がかかると変形することがあるので、取り扱いには注意してください。
④水またはぬるま湯ですすぎ洗いする
汚れを磨いたら水またはぬるま湯ですすぎ洗いします。
⑤入れ歯洗浄剤にひたす
水やぬるま湯をコップなどに入れたら洗浄剤を溶かして洗浄液をつくり、入れ歯全体がひたるようにします。適切な水温や時間は洗浄剤によって異なるので説明書をよく読みましょう。
⑥洗浄液を洗い流す
入れ歯を洗浄液から取り出したら水で洗い流します。使用した洗浄液は洗浄力が低下し、汚れが混入して不衛生なため、再利用しないでください。
やってはいけないお手入れ方法
歯磨き粉は研磨剤を含んでいるため、歯ブラシと同じく入れ歯に傷をつけてしまい、細菌の温床となってしまうことがあるため、使うのは控えてください。ブラッシングだけでは落としきれないなど、どうしても汚れが気になる場合は、食器洗い用の中性洗剤を使って磨きましょう。
口内を清掃することも大切
入れ歯の洗浄にだけ注目してしまいがちですが、口内を清潔に保つことも入れ歯の洗浄と同じくらい大切です。汚れたままの口内では歯茎が腫れたり、肺炎などを引き起こす場合もあるのです。入れ歯を洗浄剤につけている間、うがい薬などで口内を洗浄したり、入れ歯に接している面や歯と歯の間の面などを歯ブラシや歯間ブラシを使って丁寧に磨くようにしましょう。
3.入れ歯洗浄剤を使わないとどうなる?
ここでは、入れ歯洗浄剤を使わない場合のリスクをご紹介します。
カビが生えてしまう
口内は適度な温度と湿度によってカビが生えやすいお風呂のような環境になっています。カビは入れ歯にある細かい傷などに隠れてしまうため専用ブラシで磨くだけでは落としきれません。
また、口の中にはカンジダ菌というカビ(真菌)が常にいます。普段は唾液の殺菌力でカンジダ菌の増殖をおさえていますが、入れ歯にカビが生えていると口内で菌が増殖し、歯茎の痛みや入れ歯による痛みの原因になります。そのため入れ歯洗浄剤を毎日使ってカビが生えるのをおさえる必要があります。
口臭の原因になってしまう
入れ歯洗浄剤で入れ歯を清潔に保たないと、口内の歯垢が入れ歯に付着し、発酵することで口臭を引き起こします。入れ歯についた細菌は乾燥することでますます落ちにくくなり、少しずつ増えながら口臭を強くしていきます。また、入れ歯を汚れたままにすると歯と同じように歯石がつき、入れ歯がざらついてより歯垢や汚れが付着しやすくなるため、洗浄剤を活用して清潔を保つ必要があります。
虫歯を引き起こす
残っている歯をきれいに磨いても、入れ歯に細菌が付着している状態のままにしておくと、入れ歯の細菌が残った歯に感染し虫歯を引き起こします。特に、入れ歯によって口内の唾液の流れが悪くなると、歯の再石灰化が抑制されるので、虫歯が悪化しやすくなります。
歯周病になりやすくなる
入れ歯はクラスプ(金属バネ)を残った歯にひっかけて使うため、入れ歯を支える歯には大きな負担がかかります。入れ歯に付着した細菌は残っている歯を歯周病にし、ぐらつかせる原因となります。
4.入れ歯は定期的に歯医者さんでチェックしてもらおう
毎日の入れ歯洗浄とあわせて、3カ月に一度歯医者さんで定期健診を受診し、入れ歯だけではなく残った自分の歯もケアするのがおすすめです。
また、毎日欠かさずお手入れをしているのに口臭が気になる人は、間違った方法でお手入れをしている可能性があります。歯医者さんに正しいお手入れ方法を指導してもらいましょう。
5.まとめ
口内はどのような人でも細菌が多く存在している場所です。せっかく入れ歯治療を受けても、それが原因で口内の状態が悪化してしまっては元も子もありません。入れ歯洗浄剤と上手に付き合いながら正しいお手入れを継続し、口内環境を清潔に保ち健康的な毎日を送りましょう。
入れ歯のお手入れに迷ったら歯医者さんからアドバイスをもらい、自分に合った洗浄剤やお手入れ方法を検討していきましょう。

監修医
飯田 尚良先生
飯田歯科医院 院長
経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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