虫歯を予防するための基本は「歯磨き」です。しかし、多くの人がちゃんと歯磨きしていたのに虫歯になった…と悩んでいるのが現実です。中には、本当に歯磨きで予防できるのか疑っている人もいるかもしれません。
この記事では、虫歯を予防するための正しい歯磨き方法を解説します。今までの歯磨き方法を見直して、末永く、歯の健康を守るための第一歩を踏み出しましょう。
この記事の目次
1.虫歯を予防する正しい歯磨きテクニック
自己流の歯磨きでは、十分な予防作用を期待できません。まずは、正しいブラッシング法を確認しましょう。
スクラビング法
スクラビング法は、「歯に対して垂直に歯ブラシをあてる方法」です。毛先全体が接触するので、歯の表面を効率的に磨けます。強くあてると毛先が曲がってしまうので、軽い力で小刻みに動かしてください。大きく動かすのではなく、歯ブラシを振動させるような感覚です。
この方法は、歯の表面に付着した歯垢を落とすのに向いています。歯周病になっておらず「虫歯を予防できれば十分」という人におすすめの磨き方です。
バス法
バス法は、「歯に対して斜め45°に歯ブラシをあてる方法」です。歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に向けて、斜め45°にあてます。毛先が歯茎にもあたるので、力を入れすぎないように注意してください。歯茎を傷つけないように、軽い力で小刻みに動かします。
こちらの方法は虫歯だけでなく、歯周病の予防・進行抑制にも適しています。歯磨きで出血する、歯茎に違和感があるなど、歯周病の自覚がある人におすすめです。歯周ポケットの内側を磨けるバス法は、歯茎の健康を守る磨き方と言えます。
2.虫歯の予防に役立つ歯磨き粉の選び方
つぎに、歯磨き粉の選び方について解説していきます。
「フッ素配合」のものを選ぶ
虫歯予防に有用なおすすめの成分は「フッ素」です。フッ素には、歯の表面のエナメル質を強化する働きがあります。エナメル質は酸に弱く、虫歯菌がつくる乳酸で溶けてしまいます。エナメル質を構成している物質「ハイドロキシアパタイト」が、あまり酸に強くないからです。
しかし、フッ素にはエナメル質を強化する力があります。「ハイドロキシアパタイト」を「フルオロアパタイト」という物質に変えるからです。「フルオロアパタイト」は酸に強いので、虫歯になる確率が下がるのです。
「フッ素濃度」に着目して選ぶ
フッ素を利用した虫歯予防を考えているなら、フッ素濃度に着目しましょう。
現在、日本では「1,500ppm以下」のフッ素濃度が認められています。誤差で1,500ppmを超えないように、市販の歯磨き粉では1,450ppmまでの濃度となっています。基本的に、フッ素濃度が高いほど虫歯予防の作用は強くなると考えてください。できるかぎり、「フッ素濃度:1,450ppm」の歯磨き粉を選んだほうが、虫歯になる確率を抑えられるでしょう。
3.虫歯予防大国スウェーデンでの歯磨きテクニック
スウェーデンは国全体で虫歯予防にとりくんだ結果、非常に虫歯が少ない国として知られるようになりました。80歳以上の高齢者にも、「自分の歯が20本以上残っている人」がたくさんいるそうです。そんなスウェーデンで歯科の研究をおこなっている大学「イエテボリ大学」が推奨する歯磨きテクニックをご紹介します。
歯磨き粉
まず、歯磨き粉はフッ素配合の製品を使います。可能なら、「フッ素濃度=1,450ppm」の歯磨き粉を使用してください。1回の歯磨きに対して、1.5g(2cm程度)の歯磨き粉を使います。ただし、お子さんは0.5gにとどめてください。
ブラッシング方法
「歯ブラシを斜め45°の角度であてる磨き方(=バス法)」を採用します。歯周ポケットの方向に歯ブラシを傾けて、小刻みに動かすようにしましょう。1本1本の歯をきちんと磨くため、歯1本に対して、歯ブラシを10往復させる意識を身につけてください。最低でも3分間、できれば10分間かけて、すべての歯を磨きます。歯の表側、歯の裏側、噛み合わせ面など、磨き残しがないように注意してください。
うがい方法
歯を磨き終わったら、口の中に残っている泡を吐き出さずに少量の水を口に含みます。「おちょこ1杯」くらいの水で十分です。歯磨き粉の泡と一緒に軽くゆすいで、吐き出してください。あまりブクブクせず、軽くゆすぐだけにしてください。丁寧にうがいをすると、歯磨き粉に含まれていたフッ素が流れてしまうからです。
4.歯磨きで虫歯を予防できる根拠とは
ひょっとしたら「本当に歯磨きで虫歯予防できるのかな?」と疑念を抱いている人もいるかもしれません。ここでは、歯磨きは口の中の健康を守るのに役立つという根拠を解説します。
歯科医院でも歯磨き指導を実施している
歯科医院でも、患者さんに正しい歯磨き方法を教えています。実際、歯磨き指導は「保険診療」として認められています。健康保険が適用になるのは、「診療報酬」という規定に含まれている処置です。ブラッシング指導には、「歯科衛生実地指導料」という診療報酬が存在していて、きちんと保険診療の1つになっているのです。
健康保険が適用になるということは、厚生労働省が意味のある処置と認めていることを意味します。この事実を踏まえると、正しい歯磨きをマスターすることは、虫歯予防に役立つと考えて間違いありません。
初期虫歯「CO」は歯磨き改善で治ることも
当然ながら歯に穴があいてしまったら、いくら歯磨きをしても治りません。歯科医院を受診して、治療を受ける必要があります。しかし「ごく初期で、穴があく前の虫歯(CO:要観察歯)」ならば、まだ自然に状態が戻る見込みがあります。歯の表面のエナメル質に含まれる「カルシウム」「リン」が溶け出しているだけで、物理的に穴があいているわけではないからです。
実際歯科医院でも、ごく初期の虫歯に対しては、歯磨き指導をして経過観察するだけにとどめることがあります。正しい歯磨きをマスターすれば、問題に至らない可能性があるからです。虫歯が治るというのは言い過ぎにしても、虫歯になりかけている歯を救うことができるというのは間違いありません。
5.まとめ
正しい歯磨きテクニックを身につければ、虫歯になる確率を減らすことができます。特におすすめしたいのは、「フッ素」と「バス法」を組みあわせたスウェーデン式の歯磨き方法です。
虫歯の初期段階「CO」なら、歯磨きの方法を変えるだけで改善することもあります。少し拡大した捉え方をするなら、歯磨きで虫歯が治るという言い方も、まったくの嘘ではありません。歯磨きの可能性を信じて、今日からでも正しいブラッシング法を身につけてください。

監修医
貝塚 浩二先生
コージ歯科 院長
経歴
1980年 岐阜歯科大学 卒業
1980年~ (医)友歯会ユー歯科~ 箱根、横浜、青山、身延の診療所 勤務
1985年 コージ歯科 開業
1996年~2002年 日本大学松戸歯学部生化学教室 研究生
歯学博士号 取得
2014年 昭和大学 客員講師
現在に至る
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