磨耗症

    【この記事の要約】

    磨耗症とは:歯ぎしりや食いしばり、強いブラッシングなどにより歯がすり減り、形や高さが変わってしまう症状のこと。

    磨耗症の症状:知覚過敏、歯の欠け、歯のくぼみなどが現れ、放置すると悪化します。

    磨耗症の原因:歯ぎしり、食いしばり、強すぎるブラッシング、酸性飲食物の摂取などが挙げられます。

    磨耗症の診断・検査:歯の表面の傷や欠け、噛み合わせの異常を視診やレントゲンで確認します。

    磨耗症の治療:マウスピースの装着や歯の修復処置、ブラッシング指導や生活習慣の改善を行います。

    磨耗症の予防:正しい歯磨きや歯ぎしり対策、酸性飲食物の摂取頻度の見直しが重要です。

    磨耗症と間違えやすい症状・病気:くさび状欠損や酸蝕症などが類似した症状を示します。

    磨耗症の治療を行っている診療科:一般的な歯科

    この記事の目次

    1.磨耗症とは

    磨耗症とは、歯が本来あるべき高さや形状よりもすり減ってしまった状態を指します。多くの場合、歯ぎしりや食いしばりなどの物理的な力によって歯が削られてしまうのが原因です。就寝中は無意識に力が加わりやすいため、自覚がないまま症状が進行することも多く、気づいたときには歯の形が変わっていたり噛み合わせが狂っていたりすることがあります。

    さらに、磨耗症は酸性度の高い食べ物や飲み物、逆流性食道炎などによって引きおこる酸蝕症と併発することがあります。これらはいずれも歯の表面を保護するエナメル質が薄くなる原因となるため、気づかないうちに深刻なダメージが蓄積されているかもしれません。

    こうした摩耗が進むと、歯そのものが弱くなるだけでなく、知覚過敏や歯の欠けなどの二次的なトラブルに繋がるリスクが高まります。

    2.磨耗症の症状

    磨耗症は、進行するといくつかの特徴的な症状が現れます。症状は人によって異なりますが、気になるサインを見逃さず、できるだけ早く対処することが重要です。

    知覚過敏

    歯がしみる知覚過敏は、磨耗症の代表的な症状のひとつです。すり減ったエナメル質の下にある象牙質が外気や飲食物にさらされるため、冷たい飲み物や甘いものを口に含んだときに鋭い痛みを感じやすくなります。ブラッシングの際にも歯ブラシが当たるだけでしみることがあり、毎日のケアが億劫になってしまうケースも見受けられます。

    初期の段階では痛みが出たり引いたりを繰り返すため、「たまにしみる程度だから大丈夫」と思って放置してしまう人もいますが、症状が進むほどにしみる頻度が増してケアもしづらくなるので注意が必要です。

    歯の欠け

    歯ぎしりや食いしばりが続くと、特定の歯に過度な力がかかって歯の一部が欠けてしまう場合があります。とくに硬いものを噛んだときに歯が「パキッ」と欠けるような感覚があった場合は、すでにエナメル質が薄くなっていた可能性があります。

    歯の欠けが大きいと見た目への影響が大きいだけでなく、欠けた部分からさらなる摩耗や虫歯が進行しやすい状態になり、深刻なトラブルにつながりかねません。軽微な欠けであっても放置するとどんどん広がるリスクがあるため、早めに歯科医院での処置を検討することが大切です。

    歯のくぼみ

    一見すると歯が欠けているわけではないのに、鏡でよく見ると歯の表面にくぼみができていることがあります。このくぼみは歯ぎしりや強いブラッシングによって表面が削れたり、酸性飲料などによる酸蝕が重なったりして生じるものです。くぼみがあると歯磨きの際に汚れが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

    また、くぼみが進行すると歯の神経にまで影響が及び、知覚過敏や痛みが生じる場合もあります。

    3.磨耗症の原因

    磨耗症の原因は、ブラッシングの力が強すぎることや、硬い歯ブラシや研磨剤入りの歯磨き粉を長期間使い続けることが挙げられます。これは物理的な刺激によって歯の表面が少しずつ削り取られるためですが、さらに食習慣も無視できません。

    また、就寝時に無意識に歯を強く噛みしめる「歯ぎしり(ブラキシズム)」も、歯をすり減らす大きな要因です。緊張やストレスが強いときなど、寝ている間に強い力で歯をこすり合わせることが続くと、歯にかかる負担は想像以上に大きくなります。

    4.磨耗症の検査・診断

    磨耗症の検査・診断は、歯の表面にある微細な傷や欠けの有無、歯の形の変化を注意深く観察します。さらに、噛み合わせの状態や顎関節に違和感がないかを確認しながら、歯がすり減るスピードや部位の特徴を総合的に見極めます。

    必要に応じてレントゲン撮影や口腔内写真の記録を行い、少しずつ進行している変化も見逃さないよう管理するのです。たとえば、歯ぎしりの頻度が高いと思われる場合には、就寝時の歯の接触状況を調べるためにスプリント(マウスピース)を用いた検査方法が選択されることもあります。

    5.磨耗症の治療

    磨耗症の治療は、一度すり減ってしまったエナメル質を元に戻すことはできませんが、進行を抑えたり症状を改善したりする治療手段は複数存在します。症状の程度や原因となる要因によって治療方法が異なるため、歯科医院で自分の口腔内をしっかり診断してもらうことが大切です。

    マウスピース(ナイトガード)

    歯ぎしりや食いしばりによる力を和らげる目的で使用するのが、マウスピースやナイトガードです。就寝時に装着することで上下の歯が直接強く当たらないようにし、歯への負担を軽減できます。歯ぎしりの癖がある人は寝ている間に自覚なく歯を強く食いしばっていることも多いため、マウスピースを使うだけでも磨耗の進行を予防できるケースがあります。作製にあたっては、歯型をとって自分の歯列に合ったものをオーダーメイドで作るのが一般的です。

    歯の修復(レジン・セラミック・クラウン)

    すでに歯が大きくすり減っていたり、欠けが進行している場合には、レジンやセラミック、クラウンなどを用いて歯の形態を補う治療が検討されます。レジンはプラスチック素材で比較的安価に修復でき、初期の小さな欠けなら保険診療の範囲で処置できることが多いです。

    一方で、セラミックは審美性や耐久性が高く、自然な歯の色合いを再現しやすいというメリットがありますが、歯の欠けが大きかったり歯自体の強度が低下している場合には、クラウンをかぶせる方法で歯全体を補強することもあります。

    ブラッシング指導・生活習慣改善

    磨耗症は歯ぎしりや過度なブラッシングなど、日々の習慣が原因になるケースが多いです。そのため、治療と同時に正しいブラッシングの指導や、生活習慣の見直しが欠かせません。歯科医院では歯科衛生士から、歯ブラシの当て方や力加減、歯磨き粉の選び方などのアドバイスを受けることができます。また、酸性飲料やお菓子を摂取する頻度を減らしたり、ストレスを溜め込まないよう睡眠や運動を意識したりすることで、歯の健康だけでなく全身の健康維持にもつながります。

    6.磨耗症の予防

    磨耗症の予防は、まず原因となりうる生活習慣を見直すことです。たとえば、歯ブラシの持ち方や力加減を意識し、できるだけやさしく円を描くように磨くと、物理的なダメージを抑えられます。

    歯ぎしりが疑われる場合は、寝る前のリラックス方法を取り入れたり、ストレスを軽減する生活リズムを考えてみることも効果的です。それでも歯ぎしりのコントロールが難しい場合には、歯科医院でマウスピースを作ってもらい、就寝時に装着する方法があります。これにより、歯が直接擦れ合うのを防いで、余分な力がかかるのを軽減できます。

    7.磨耗症に似ている病気(疾患)

    磨耗症に似ている病気(疾患)は、歯の表面が削れて見えるという点で共通している場合が多いですが、実際にはまったく異なる原因をもつことがあります。
    以下にていくつか解説いたします。

    くさび状欠損

    噛み合わせの乱れによって一部の歯だけに強い力がかかり、歯と歯茎の境目にくさび状の欠損を引き起こす「くさび状欠損」は、その見た目が磨耗症と酷似しています。しかし、これはブラッシングの力や歯ぎしりではなく、歯並びやかみ合わせの偏りが大きな要因となっており、根本的には噛み合わせの調整などが必要になります。

    酸蝕症

    「酸蝕症」という病気も磨耗症に似た症状を引き起こす代表的な例です。酸蝕症は、酸性度の高い飲食物や胃酸の逆流などによって、歯の表面を保護しているエナメル質が長期間にわたって溶かされることが主な原因です。酸蝕が進むと歯が薄くなったり表面が削れたりしてしまい、一見すると磨耗症のように見えることもあります。

    8.この病気・疾患に対応している歯科の診療科目

    一般的な歯科

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