エアーフローとは?PMTCとの違いや歯のクリーニングに関わる単語の意味

    歯医者さんでよく聞く「歯のクリーニング」という言葉。実際には「スケーリング」「歯石取り」「エアーフロー」「ジェットクリーニング」「PMTC」など、さまざまな種類があります。これらの呼び方は歯医者さんによって異なり、患者さんの口の中の状態によっても適用されるかどうかが変わります。さらに、保険適用かどうかも異なるため、混乱する方も多いでしょう。今回は、歯のクリーニングに関する疑問を解消するため、それぞれの方法について詳しく説明します。

    ※この記事では一般的な用語の意味を解説しています。歯医者さんによって用語の定義が異なることもあるため、歯のクリーニングを受ける際は事前に施術内容を確認することをおすすめします。

    ※掲載する平均費用はあくまで参考のためのものであり、施術内容や症状によって費用が変動する可能性があります。必ず各院の治療方針を確認し、ご自身の症例に合った歯医者さんを選んでください。

    この記事の目次

    1.それぞれの単語が指す治療内容とは?

    エアーフロー、ジェットクリーニング、PMTCはどう違うの?

    クリーニングについて調べると、「エアーフロー」や「ジェットクリーニング」、「PMTC」、「スケーリング」などの言葉を見かけます。歯科医院のホームページでも、クリーニングと書いているところもあれば、エアーフローと書いてあるところもあります。使う状況や患者さんの口内の状態によって意味合いが変わることもありますが、基本的な意味は次の通りです。

    エアーフロー(ジェットクリーニング)

    エアーフローやジェットクリーニングは、同じ施術を指します。どちらの言葉を使うかは、歯医者さんや導入している器具のメーカーによって異なります。

    具体的には、細かなパウダー状にした炭酸水素ナトリウム(重曹)やグリシン(アミノ酸の一種)を強力なジェット水流で歯に吹き付けて汚れを落とす器具のことです。また、これらの器具を使用して歯の汚れを落とすこと自体を意味することもあります。

    歯の表面に付着した細菌のかたまりであるバイオフィルムや、茶渋、タバコのヤニといった着色を、水圧とパウダーの力で隅々まで落とすことができます。

    PMTC

    PMTCとは、「プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング」の略称で、専門的な器具・材料を使って歯の清掃をし、口の中の環境を整える一連の治療を指します。

    デンタルフロスや歯間ブラシでの清掃に加え、ブラシやチップを先端に取り付けた器具を使い、歯の表面の汚れを落とします。また、フッ素が配合されたペーストで歯の環境を整えることもあります。

    専門家による歯の清掃という意味で、PTC(プロフェッショナル・トゥース・クリーニング)と呼ぶ場合もあります。

    スケーリング(歯石取り)

    エアーフロー(ジェットクリーニング)やPMTCでは、歯にこびりついた歯石を除去することはできません。そのため、プラーク除去の前にスケーリングを行い、歯石を取り除くのが一般的です。

    スケーリングには、手動で歯石を除去するハンドスケーラーや、超音波で除去する超音波スケーラーが一般的に使用されます。

     

    機械を使って行う歯面の清掃はすべてPMTC

    エアーフロー(ジェットクリーニング)は、PMTCよりも後に開発された新しいクリーニング方法です。エアーフロー(ジェットクリーニング)とPMTCは汚れの落とし方が異なるため、厳密には別の施術と言えます。しかし、PMTCは「機械で行う歯のクリーニング」という意味を持つため、エアーフロー(ジェットクリーニング)もPMTCに含まれます。

    また、スケーリングも「歯面に沈着した歯石やその他の沈着物を機械的に除去すること」を目的としているため、「専門器具による清掃、プラーク除去作業」であるPMTCの範囲内と考えることができます。「PMTCは歯科医院で行う専門的なクリーニング」とする見解は、日本臨床歯周病学会でも採用されており、一般的な考え方です。PMTCの目的は「可能な限り完全にプラークを除去すること」です。

    しかし、エアーフロー(ジェットクリーニング)とPMTCを別の治療科目として表記している歯医者さんも多く存在します。この場合、エアーフロー(ジェットクリーニング)は「流水を使用したプラーク除去」、PMTCは「専門的な器具を使用したプラーク除去」を意味することがほとんどです。同様に、スケーリングとPMTCを別の施術として扱っている歯医者さんも多くあります。スケーリングは「歯石除去」という意味合いで使われることが多いようです。

    これは、患者さんがイメージしやすいように使い分けたり、歯医者さんによって用語の定義が微妙に異なったりするためです。

     

    「クリーニング」は歯を清掃する施術の総称

    歯医者さんによって、「歯の清掃」を指す単語が異なることがあります。クリーニングという単語を使う歯医者さんもいれば、PMTCという単語を使う歯医者さんもいます。PMTCは専用の器具を使った清掃を指しますが、クリーニングは歯科医院によってスケーリング(歯石を除去する施術)やPMTC、またはその両方を指すことがあります。

    ここで、歯のクリーニングの流れの一例を紹介します。

    ◆クリーニングの施術例

    1.プラークの染め出し
    プラーク(歯垢)の染め出しとは、特殊な薬剤を使って歯に残っている汚れ(プラーク)を分かりやすく示す作業です。普段のブラッシングで磨き残してしまいがちな部分を把握するために行います。染め出しを行うと、プラークが残っている部分が赤く染まります。まずは、この染め出しを元に、どうすれば磨き残しなくブラッシングできるかアドバイスを受けます。

    2.スケーリング(歯石除去)
    次に、スケーリングで歯石を取り除きます。

    3.エアフロー/ジェットクリーニング(ジェット水流によるプラーク除去)または、器具を使用したプラーク除去
    エアーフロー(ジェットクリーニング)や器具を使用して歯に残っているプラークを落とします。器具を用いたプラーク除去では、歯の表面を磨く「ブラシ」、歯間を清掃する円錐型の「ラバーチップ」、歯と歯茎の間を清掃するお椀型の「カップ」などを使用します。エアーフロー(ジェットクリーニング)や器具でのプラーク除去によって歯の表面をツルツルに仕上げ、プラークがつきにくくなります。

    4.トリートメント、フッ化物塗布
    仕上げに、歯のトリートメントやフッ素を塗布し、歯をコーティングします。

    ※この一連の流れは歯医者さんによって異なることがあります。かかりつけの歯医者さんにクリーニングの内容を問い合わせてみると良いでしょう。

    2.エアーフロー(ジェットクリーニング)のメリットとデメリットは?

    エアーフロー(ジェットクリーニング)のメリットとデメリットを、専門的な器具を使用したプラーク除去と比較していきましょう。

     

    エアーフロー(ジェットクリーニング)のメリット

    器具を使用したクリーニングでは落とせないレベルの着色汚れ、タバコのヤニ、コーヒーによるステイン汚れをきれいにすることができます。一般的に、1回30~90分の施術で、歯本来の白さを取り戻すことができます。また、歯茎の周りや歯周ポケットの中など、小さな隙間にある細菌のかたまりを分解することもできます。

     

    エアーフロー(ジェットクリーニング)のデメリット

    エアーフロー(ジェットクリーニング)に使用するパウダーには独特な味があります。レモンなどの風味がついているものもありますが、味が苦手な方もいるでしょう。また、強めの水圧で汚れを落とすため、水流が舌や歯茎に当たるとチクチクとした痛みを感じることがあります。施術中にチクチク感がつらい場合は、スタッフに伝えましょう。無理をせず、できる範囲で受けることが、定期的なクリーニングを続けるコツです。

     

    エアーフロー(ジェットクリーニング)の料金相場

    エアーフロー(ジェットクリーニング)は自由診療です。そのため、内容や費用は歯医者さんによって異なります。

    一例として、東京都内の歯科医院でエアーフロー(ジェットクリーニング)を受けた場合、費用の相場はおおよそ4,000~6,000円程度です。しかし、これはあくまでも目安であり、プランの内容や施術にかける時間によって料金は変わります。

    エアーフロー(ジェットクリーニング)は表面の汚れや着色を落とすもので、歯石のように厚く固まったものを取り除くことはできません。歯石を取り除く必要がある場合、保険診療でスケーリング(歯石除去)を受けてからエアーフロー(ジェットクリーニング)を行うことが多いようです。

    これも、医院や患者さんのお口の状況によって変わるため、かかりつけの歯医者さんに問い合わせてみましょう。

      エアフロー/ジェットクリーニングでのプラーク除去 器具を使用したプラーク除去
    メリット 量の多い着色や、細かい所まで入り込んでしまった汚れなども、細かいパウダーを吹き付けることで一気に落とすことが出来る。 歯の表面をツルツルに仕上げ、汚れをつきにくくする事が出来る。
    少量の汚れであれば、すべて落とすことができる。
    デメリット 口の中が粉だらけになってしまう。
    水流が歯茎に当たるとチクチクと痛む。
    量の多い汚れを落とすには時間がかかる。
    細かい部分までは器具が届かない事もある。
    施術時間 30~90分 30~60分
    診療区分 自由診療 歯周病の治療内であれば保険診療
    費用 4000~6000円

    ※東京都内の歯医者さんでの費用目安
    ※編集部調べ

    2,500~3,500円

    ※初診の場合
    ※2回目以降は1,000円前後

    3.歯医者さんでおこなうクリーニングに対する考え方

    クリーニングでの歯の削れは心配しなくてよい?

    クリーニング作業は、歯を傷つけるほどの強い力では行いません。各施術には適切な技術を身につけた専門家が携わっているので、歯に対するダメージを心配する必要はほとんどありません。

    PMTCやスケーリング(歯石除去)の施術中に、歯が削れてしまうのではないかと心配する方もいます。スケーリングに使う超音波の器具は非常に細かく振動したり、甲高い音が響いたりするため、不安になるかもしれません。不安がある場合は、PMTCの詳しいメカニズムを先生や歯科衛生士さんに確認してみると良いでしょう。

     

    クリーニングの新しい施術方法

    顕微鏡で拡大して見ると、人の歯の表面は全体的にデコボコしています。このデコボコに汚れや着色が溜まるのは、ある程度仕方がありません。クリーニングの目的は、このデコボコの表面に付いた汚れを落とし、仕上げの研磨をして汚れが付きにくい歯にすることです。

    従来のクリーニングでは、仕上げの研磨でデコボコを削って平らにし、歯の表面に汚れが付きにくい状態にしていました。近年では、デコボコの底を詰めて平らにする方法の研究が進められています。近い将来、こういった方法のPMTCも歯医者さんで受けられるようになるかもしれません。

    4.まとめ

    歯医者さんで行われるクリーニングに関する疑問は解消できましたか?用語の違いを理解していれば、施術をお願いする際に自分の希望を伝えやすくなります。また、料金と内容を比較して、妥当かどうかを判断することもできます。

    プラークの除去は虫歯や歯周病の予防につながります。毎日の歯磨きで落としきれない汚れは、プロの手を借りてきれいにしていきましょう。

    監修医

    矢島 昇悟先生

    青山通り歯科 院長

    経歴

    2007年 第100回歯科医師国家試験合格
    2007年 日本歯科大学 生命歯学部卒業
    2008年 埼玉県羽生市 医療法人社団正匡会 木村歯科医院
    歯科医師としてのホスピタリティの基礎を学ぶ。
    2010年 埼玉県新座市 おぐら歯科医院
    地域に密着した医院で地域医療に携わり、
    小児から高齢者歯科まで治療を行う。
    2011年 東京都文京区 後楽園デンタルオフィス
    施設の訪問診療などにも携わる。
    2015年 東京都港区 青山通り歯科 院長
    現在に至る

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