小さな乳歯が抜け、永久歯が生えそろい、成長していく姿を見守るのは、保護者にとってうれしいものですよね。乳歯から永久歯への生え変わりには個人差がありますが、12歳前後までに多くの歯が生え変わることが一般的です。ただし、中学生になっても乳歯が残っていることもあります。
人によっては、永久歯がもともと存在しない、または歯ぐきや骨の中に埋まっていて生えてこない場合もあります。日本小児歯科学会の全国規模調査では、第三大臼歯を除く永久歯の先天性欠如は約10.1%と報告されています。
ここでは、乳歯が抜けるメカニズムや、生え変わらない場合に考えられる原因、歯科医院で相談したいケースについて紹介します。
この記事の目次
1.乳歯が抜ける時期やメカニズム
1-1 時期が来たら根っこが溶ける
歯のもととなる歯胚は、胎児のころから準備されています。乳歯の歯胚は、胎生7週から10週ごろに形成され、永久歯の歯胚も胎生3か月半ごろから形成が始まるとされています。
永久歯が成長して乳歯の根元付近まで近づくと、乳歯の根が少しずつ吸収されます。根が短くなることで乳歯がグラグラし、やがて抜けて永久歯が生えてきます。
つまり、永久歯の準備が整っていない場合や、永久歯そのものがない場合、乳歯がなかなか抜けないことがあります。
1-2 生え変わりは6~7歳から本格化
乳歯が生える時期に個人差があるように、生え変わりの時期にも個人差があります。6歳ごろから前歯や奥歯の生え変わりが始まり、12歳前後までに多くの永久歯がそろっていきます。
下の前歯から生え変わることが多く、次に上の前歯、奥歯へと進んでいきます。ただし、順番や時期には個人差があるため、少し遅いだけで必ず異常とは限りません。
また、生え変わる歯だけでなく、6歳ごろには第一大臼歯、いわゆる6歳臼歯も生え始めます。永久歯は、親知らずを除くと全部で28本です。親知らずは、10代後半以降に生えてくることがありますが、生えない人もいます。
2.乳歯が生え変わらない3つの原因
2-1 永久歯の成長が遅い
乳歯から永久歯に生え変わる時期が人によって異なるのは、永久歯の成長にも個人差があるためです。乳歯も生えてくる順番や時期が一人ひとり違うように、永久歯にも個人差があります。
永久歯の成長が遅れているだけの場合もありますが、永久歯がもともと存在しない先天性欠如の可能性もあります。気になる場合は、歯科医院でレントゲン撮影などの検査を受け、永久歯の有無や位置を確認してもらいましょう。
2-2 先天性欠如
先天性欠如とは、永久歯が生まれつき存在しない状態を指します。先天欠如歯、欠損歯などと呼ばれることもあります。
永久歯がない場合、乳歯の根が吸収されにくく、乳歯が抜けずに残ることがあります。日本小児歯科学会の全国規模調査では、第三大臼歯を除く永久歯の先天性欠如者数は1,568名、発現頻度は10.09%と報告されています。
先天性欠如の原因は、はっきり分かっていない部分があります。子どもの場合は、乳歯の状態や咬み合わせを見ながら経過観察することがあります。必要に応じて矯正治療を検討することもあります。
大人になってから乳歯が抜けてしまった場合は、状態に応じて入れ歯、ブリッジ、インプラントなどで補うことがあります。どの方法が適しているかは、残っている歯や骨の状態、年齢、咬み合わせなどによって異なります。
2-3 埋伏歯
埋伏歯とは、歯が骨や歯ぐきの中に埋まっていて、通常の位置に生えてこない状態を指します。埋伏歯には、いくつかの種類があります。
完全埋伏歯
永久歯があごの骨の中に完全に埋まっている状態です。
不完全埋伏歯または半埋伏歯
歯の一部だけが見えている状態です。
水平埋伏歯
歯が横向きに近い方向で埋まっている状態です。
埋伏歯があっても、周囲の歯や咬み合わせに大きな影響がない場合は、経過観察となることがあります。状態によっては外科的処置や矯正治療が検討されることがあります。
歯がないのではなく、埋まっている状態かどうかは、見た目だけでは判断できません。歯科医院でレントゲン撮影などを受け、状態を確認してもらいましょう。
3.成人しても乳歯が残っていることがある
成人しても乳歯が残っている人がいます。原因の一つとして、永久歯の先天性欠如が考えられます。永久歯がない場合、乳歯が抜けるきっかけが起こりにくく、そのまま残ることがあります。
ただし、残っている乳歯は永久歯に比べて根が短いことがあり、長期的には揺れたり、すり減ったり、抜けたりすることがあります。そのため、乳歯が残っている場合は、歯科医院で定期的に状態を確認してもらうことが大切です。
先天性欠如では、永久歯そのものを新たに生やす治療は一般的ではありません。そのため、乳歯をできるだけ長く使う、矯正治療で隙間を整える、乳歯が抜けた後に補綴治療をおこなうなど、口の中の状態に合わせた対応が検討されます。
中学生や高校生になっても乳歯が残っている場合は、自己判断せず、歯科医院で相談しましょう。
4.乳歯が抜けていないのに永久歯が生えてきた
4-1 多くは経過観察となりますが、確認が必要です
乳歯が抜けていないのに、永久歯が生えてくることがあります。特に、下の前歯の裏側から永久歯が見えてくるケースは比較的よく見られます。
乳歯には、食事をする役割だけでなく、永久歯が生える場所を確保し、正しい位置へ導く役割もあります。しかし、永久歯が生えるスペースが少ない場合や、乳歯の根の吸収が遅れている場合、永久歯が少しずれた位置から生えてくることがあります。
多くの場合は、舌の力や成長にともなって位置が整っていくこともあります。ただし、乳歯がなかなか抜けない、永久歯がかなり生えてきている、歯並びが乱れてきているなどの場合は、歯科医院で抜歯が必要かどうか確認してもらいましょう。
4-2 隙間が少ない場合は注意が必要
乳歯よりも永久歯のほうが大きいため、永久歯がきれいに並ぶには十分なスペースが必要です。体の成長にともなってあごも発達しますが、歯の大きさやあごの大きさには個人差があります。
乳歯の段階で歯と歯の間に隙間がほとんどない場合、永久歯が並ぶスペースが不足することがあります。その結果、永久歯が内側や外側から生えてきたり、歯並びが乱れたりすることがあります。
また、よく噛むことは、口やあごの機能の発達に関係します。食事では、年齢に合った硬さや大きさの食品を取り入れ、よく噛んで食べる習慣をつけることも大切です。
乳歯が抜けていないのに永久歯が生えてきた場合や、乳歯の隙間が少ないと感じる場合は、早めに歯科医院で相談し、スペースや生え変わりの状態を確認してもらいましょう。
5.まとめ
小学校高学年や中学生になると、習い事や友人との予定などで、歯科医院を受診する時間を確保しにくくなるかもしれません。
しかし、永久歯は長く使う大切な歯です。中学生になっても乳歯が残っている場合、永久歯の成長が遅れているだけのこともありますが、先天性欠如や埋伏歯が関係していることもあります。
乳歯がなかなか抜けない、永久歯が変な位置から生えてきた、左右で生え変わりの時期が大きく違うなど、気になることがある場合は、できるだけ早めに歯科医院で相談しましょう。レントゲン撮影などで永久歯の有無や位置を確認してもらうことで、必要な対応を検討しやすくなります。
【参考サイト】
・日本歯科医師会 テーマパーク8020「歯とお口の発生と育ち方」
https://www.jda.or.jp/park/function/teeth-grow.html
・J-STAGE「日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspd/48/1/48_29/_article/-char/ja/
・厚生労働省「歯科の診療録及び診療報酬明細書に使用できる略称について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4921&dataType=1&pageNo=1
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監修医
中村 達哉先生
大和駅前歯科 院長
経歴
2000年 横浜歯科技術専門学校 卒業
2000~2003年 横浜市内歯科医院院内ラボ 勤務
2010年 鶴見大学歯学部 卒業
2010年 鶴見大学歯学部附属病院 勤務
2011年 ランドマーク歯科三島 勤務
2013年 スカイビル歯科 勤務
2015年 大和駅前歯科 継承開院
現在に至る
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