タバコは、全身の健康を害するばかりでなく、吸い込んだ煙が最初に接触する口内に悪影響を及ぼします。歯にヤニの汚れを付けるだけでなく、口内環境が悪化しやすくなります。
この記事では、タバコはやめられないけれど歯を白くしたいという方に、タバコのヤニの落とし方や、ホワイトニングでの注意点を詳しくご紹介します。
この記事の目次
1.タバコのヤニはホワイトニングで落とせる?
タバコのヤニってどんなもの?
歯の表面には、唾液によって歯を保護するタンパク質の層(ペリクル層)があります。タバコに含まれるタールは、このペリクル層に取り込まれる性質があり、これがいわゆる「ヤニ」となります。
ヤニは水溶性なので、すぐに口をすすいだり歯磨きをすれば、実は簡単に落ちるものです。ところが、半日~1日程度放置してしまうと、タールとペリクルが強く結びついて、落としにくいものになってしまうのです。
ヤニは歯のクリーニングで落とせる
日々のセルフケアで落としにくくなったヤニでも、歯医者さんでのクリーニングを行えば、比較的簡単に落とせるものです。歯医者さんで扱っているクリーニングには、下記のようなものがあります。
超音波スケーラー
スケーラーとは歯石などを落とす器具ですが、超音波スケーラーは超音波の振動によって汚れを浮かせて落とす装置です。歯石を始め、強固に張り付いたヤニや茶渋などを除去することができます。
ジェットパウダー洗浄
細かい塩成分のパウダーを強く噴射して、歯の表面の汚れを除去するのがジェットパウダー洗浄です。強くこびりついた汚れの除去に効果的ですが、歯の表面がザラザラになり、再びヤニが付着しやすくなるので、仕上げとしてPMTCを行うのが理想的です。
PMTC
PMTCとはプロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの頭文字を取ったもので、フッ化化合物などを含有するペーストを使用して、歯の表面をツルツルに磨き上げるものです。タバコのヤニを始め、深く沈着していない汚れを取るのに効果的です。
色素沈着していればホワイトニングを行う
歯の表面に固着したヤニは上記の方法で除去することができますが、食べ物の色素など、さまざまな着色汚れが歯に沈着してしまうと、こうした物理的な方法でも落としにくくなります。過酸化水素をベースにしたホワイトニング剤で色素を分解することで、ヤニを始め、歯をトータルで白くすることができます。
歯茎の黒ずみにはガムピーリングを行う
タバコのヤニの影響は、歯の表面だけではありません。タバコは歯茎組織の血行不良やビタミンCの破壊を招くもので、これによって歯茎の色がくすんでしまうこともあります。こうした歯茎の黒ずみは、ガムピーリングという方法で対処します。フェノールアルコールを歯茎に塗布して、歯茎の痛んだ表面を剥がすことで、健康的な歯茎の色を取り戻す治療法です。
2.喫煙者がホワイトニングで注意すべきこと
喫煙はホワイトニングの大敵です。だからといって、すぐに禁煙するというのはなかなか難しいことです。白くしたいけど、どうしてもタバコはやめられないという方に、ホワイトニング時の注意点をご紹介します。
オフィスホワイトニング後、24時間は禁煙を
過酸化水素によるホワイトニングでは、歯の表面のペリクル層(歯を守るタンパク質の皮膜)とミネラル分が一時的に失われます。特に、過酸化水素の濃度の高い薬剤を扱うオフィスホワイトニングでは、施術後の24時間程度はとても着色しやすい状態になっています。できればこの間は、タバコを控えるのが望ましいといえます。
ホームホワイトニング後、1時間は禁煙を
ホームホワイトニングは過酸化水素の濃度が低い薬剤を使っているので、オフィスホワイトニングと比較すると、施術後の着色はしにくいものです。しかし、施術直後はやはり着色しやすい状態になっています。ホームホワイトニングではマウスピースを使って、毎日2時間程度、薬剤を塗布します。その後の1時間程度は喫煙を控えましょう。
喫煙後に口をゆすぐ
ヤニは基本的に水にすぐ溶けるものです。ただし、ペリクル層の内部に入り込んだり、色素が歯の表面に沈着してしまうと、落としにくくなります。喫煙したらすぐに口をゆすぐだけでも、ヤニの沈着を軽減できます。
3.ヤニ取り効果のある歯磨き粉
ここでは、固着する前に日々のセルフケアでヤニを落とすための歯磨き粉の選び方についてご紹介します。
ヤニ取り成分が入った歯磨き粉を選ぶ
歯磨き粉でヤニ取り効果を示す際に、必ず配合しなければならない成分と言うものがあります。厚生労働省が示すヤニ取り効果が認められる成分は、ポリリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンが上げられています。
歯を傷をつけないものを選ぶ
歯磨き粉によって歯の表面に細かい傷が付いてしまうと、逆にヤニが歯の内部に入り込んで、落としにくくなるという結果につながります。研磨剤の粒子が細かいものや、研磨剤の入っていない歯磨き粉を選ぶのが得策です。
4.ヤニだけじゃない!喫煙が及ぼす口内への影響
ヤニ汚れは、クリーニングやホワイトニングで落とせるといっても、それでタバコによる問題がすべて解決するというわけではありません。喫煙は口内環境を悪化させる大きな要因となることを知っておきましょう。
歯茎に栄養が届きにくくなる
タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があります。これが歯茎の組織に作用すると、歯茎の血管が収縮して、血液の循環が悪くなり、歯茎に栄養が届きにくくなります。
細菌が繁殖しやすくなる
ニコチンによって血液の循環が悪くなると、歯の周囲の組織の免疫力も低下していきます。悪い細菌が繁殖しやすい環境になり、歯茎が炎症を起こしやすくなって、歯周病などの悪化が早くなるリスクが高まります。
口内環境の悪化に気付きにくくなる
歯茎の異変は、出血や腫れなどによって自覚するものですが、喫煙によって歯茎の血管が収縮していると、こうした症状を自覚しにくくなるリスクもあります。一見大きな問題がないように見えても、実は口内環境がかなり悪化していたりと、口内環境の悪化を気付きにくくなります。
歯茎が黒ずんでくる
タバコによる見た目の悪影響は、歯にヤニが付着するだけでなく、歯茎の黒ずみなどにも現れます。歯茎の血行が悪くなり、ニコチンによってビタミンCが破壊され、メラニン色素が沈着することで、歯茎の色が悪くなってしまうのです。
口臭が強くなる
タバコは、歯茎の血液の循環を悪くするだけでなく、唾液の分泌量を低下させる一因にもなります。免疫力が低下し、悪い細菌が増殖しやすくなる上に、歯の自浄作用をもたらす唾液が少なくなれば、口内環境が大きく悪化し、慢性的に口臭に悩まされるリスクが高まります。
5.まとめ
喫煙は口内環境に多くの悪影響を及ぼしますが、適切なセルフケアと歯科でのクリーニングを行うことで、ヤニ汚れを落とし、歯を白く保つことが可能です。ホワイトニングを行う際には、施術後の喫煙を控えることが重要です。
また、喫煙による口内環境の悪化を防ぐためには、禁煙が最善の方法ですが、禁煙できない場合は、健康な歯と歯茎を維持するために日々のケアを怠らず、定期的に歯科医の診察を受けることを心がけましょう。

監修医
本部 悠一郎先生
東葉デンタルオフィス 院長
経歴
1993年 明海大学歯学部卒業後、千葉県内歯科医院勤務
1995年 すまいる歯科分院長就任
1998年 あすか歯科クリニック分院長就任
2012年 東葉デンタルオフィスを開設
現在に至る
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