【歯科医師が解説】歯周病でも入れ歯にすることはできる?

    歯周病が進行して歯が抜けてしまうと、これまで楽しみだった食事や会話が、上手くできずに悲しい思いをする方もいらっしゃるでしょう。しかも歯周病が進行している状態では、インプラントを希望しても治療を受けることができない場合もあります。

    総入れ歯であれば、進行した歯周病であっても装着することが可能です。歯周病への不安がある方や総入れ歯を検討している方は参考にしてください。

    この記事の目次

    1.歯周病ってどんな病気?

    歯周病とは

    歯周病は、細菌が歯と歯茎の間に入り込んで感染し、炎症を起こす病気です。炎症が起こると、歯茎の周りが赤くなったり腫れ上がったりします。そのまま放置すると、歯周ポケットという穴ができます。進行すると歯がぐらつきはじめ、最終的に抜かなけらばならない状態になるケースもあります。

     

    歯周病の原因

    もともと口の中には300~500種類ほどの細菌がいます。この細菌は普段悪さをしませんが、歯磨きが不十分であったり、甘い物をたくさん取ったりすると、ネバネバした物を作り出し歯の表面に付着します。このネバネバを歯垢といい、1mgの中におおよそ10億個の細菌がいるとされ、これが歯周病の原因といわれています。

    2.歯周病でも総入れ歯は使える?

    歯周病でも総入れ歯は使用可能

    歯周病が進行すると、歯を支えている骨まで溶けてしまいます。そのため、歯を支える骨に直接ネジを埋め込むインプラントは、進行した歯周病の方にはできない場合が多いです。しかし、総入れ歯はそのまま当てはめて固定する治療法のため、歯周病の方でも装着できます。

     

    なぜ総入れ歯が使えるのか

    歯周病により骨が溶けてしまっていると、インプラントのネジを埋め込むことができません。総入れ歯は、樹脂や金属で作られた土台を歯茎の上にそのまま当てはめておくだけの治療法です。そのため、進行した歯周病であっても適用可能となります。

     

    緩くなりやすいケースも

    部分入れ歯だと、入れ歯の両側の健康な歯に金属のバネをひっかけて固定しますが、総入れ歯は引っかけて固定しません。そのため、安定性に欠け、食事のときや話しているときに緩くなってしまうという場合もあります。

     

    時間をかけて治療を行うケースも

    歯周病の進行具合によっては、歯がある程度残っていても、すべて抜いて総入れ歯にすることがあります。生活に支障が出ないように、時間をかけて少しずつ抜歯を行いながら治療を進めます。

    3.こんな人は歯周病予備軍かも?

    歯茎から膿や血が出た

    歯茎が赤く腫れていたり、歯磨きの際に出血や膿が出たりする場合には、細菌の感染で歯周病になっている可能性があります。鏡などで口の中をチェックして、歯周病の可能性がある場合は早目に歯医者さんを受診しましょう。

     

    出っ歯になった

    歯周病が進行すると歯茎が少しずつやせ細り、歯茎で隠れていた歯の下側が見えてくるようになります。そうすると、以前よりも歯が長く感じたり、前歯が出てきたように感じる場合があります。そのため、鏡で以前よりも歯が長くなっていないかを定期的に観察するとよいでしょう。

     

    口の中にネバつきを感じる

    口内で細菌が繁殖すると、ネバつきを感じるようになります。起床時に口内がネバネバして気になる場合は、睡眠中に細菌が歯垢を作り出している可能性があります。

     

    口臭が酷くなった

    細菌が繁殖し歯垢が増えると口臭が出てきます。最近、気になる口のニオイがある方は、口内で細菌が繁殖している可能性があります。歯周病が進行している場合もあるので、歯医者さんに相談しましょう。

    4.歯周病を防ぐ・抑える方法は?

    歯垢をこまめに取り除く

    歯周病の主な原因は、口の中の細菌です。細菌が糖分や食べ物のカスをもとに歯垢を作って、歯垢が歯にくっつき、歯と歯茎の間に入り込むことで、炎症を引き起こしています。歯垢は放置すると、歯石と呼ばれる硬い物質に変化します。歯石は歯磨きだけでは落ちません。歯垢が歯石になる前に、しっかりとこまめに歯磨きをして歯垢は取り除く習慣をつけましょう。

     

    口呼吸をやめる

    口呼吸になってしまうと、口の中が乾いてしまいます。細菌は乾いているところを好むため、口呼吸で口の中が乾いてしまうと、細菌が繁殖しやすくなるのです。歯周病を防ぐため、口呼吸をやめる工夫をしましょう。

     

    歯医者さんでブラッシング指導を受ける

    歯磨きで、自分の磨き残しには気づきにくいのではないでしょうか。歯医者さんでは、色素で染めて磨き足りないところをチェックしながらブラッシングの方法を教えてもらえるので、歯磨き方法の修正がしやすいです。歯周病を防ぐためにも、歯医者さんで自分の歯磨きをチェックし、見直すようにしましょう。

     

    キシリトールが含まれた製品を摂取する

    キシリトールは、歯垢が歯につきにくくするだけではなく、歯垢を歯磨きで落ちやすくしてくれます。また、細菌の繁殖を抑制する作用があるとされ、歯周病の予防効果が期待できます。そのため、キシリトールが含まれた食品をこまめに摂取することも大切といえるでしょう。

    5.まとめ

    歯周病の方でも装着できる総入れ歯ですが、歯茎や骨の健康を維持するためには、定期的に歯医者さんで検診を受けることが大切です。また、総入れ歯にすることで歯そのものについての心配はなくなりますが、口内の健康を保つ必要はあるので、普段からのケアするようにしましょう。

    また、ちょっとした入れ歯の違和感や、日常生活で注意することなど、不安がある場合は、細かいことでも歯医者さんに相談するようにしてください。

    監修医

    飯田 尚良先生

    飯田歯科医院 院長

    経歴

    1968年 東京歯科大学 卒業
    1968年 飯田歯科医院 開院
    1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
    1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
    1983年~2009年 東京歯科大学 講師
    現在に至る

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