舌痛症は漢方薬で治る?原因別のおすすめ漢方をご紹介

    舌痛症は、炎症や傷など明確な痛みの原因がないにもかかわらず、舌がヒリヒリと痛む症状です。特に女性に多く見られ、生活習慣やストレスが原因とされていますが、はっきりとした原因はまだ解明されていません。そのため、医師の診断も難しく、多くの方が苦しんでいます。

    最近では、舌痛症の治療法として漢方の有効性が注目されています。しかし、東洋医学的アプローチを採用している歯科医は少なく、漢方薬を処方する歯科医も限られています。それでも、漢方薬を服用することにはメリットがあり、特に原因不明の舌痛症に対しては効果的とされています。ここでは、漢方薬がどのように舌痛症に作用するのか、またどのような漢方薬が効果的であるかをまとめました。舌痛症に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

    この記事の目次

    1.舌痛症に漢方薬は効果的!

    体質を根本的に改善できる漢方薬

    舌痛症に効果的な漢方薬は約20種類あり、大きく分けて心理面の問題を改善するものと口腔内の乾燥を改善するものがあります。個人の体質や症状に基づいて「証」と呼ばれる漢方の概念に従って、個別に合わせた薬が処方されます。漢方薬は病気の症状に対してではなく、体質を改善することを目的としており、舌痛症の原因となる体質を根本から改善できるのが大きな特徴です。

     

    心因性の舌痛症の改善に効果的な漢方薬

    心因性の舌痛症には、加味逍遥散という漢方薬が効果的です。これは舌痛症の治療の第一選択薬としてよく使用され、舌の痛みだけでなく、イライラや怒りなどの精神的ストレスを慢性的に抱えている方に適しています。また、舌痛症は原因不明な場合が多く、そのため治療が難しいことがほとんどです。このような場合、一度漢方薬を試してみるのは有効な手段といえます。

    さらに、疲れやすい、肩こり、冷えなどの症状を抱えている方にもおすすめです。これらの症状は漢方では「気」と「血」が滞ることによって起こると考えられています。

    加味逍遥散には、薄荷が含まれており、緊張や痛みを緩和し、体内で滞っている「気」を巡らせる作用があります。また、牡丹皮は「活血」と呼ばれる滞った血液の流れを促進する作用があり、舌痛症の原因を根本から改善します。

     

    ドライマウスの改善に効果的な漢方薬

    ドライマウスからくる舌痛症の症状に効果的な漢方薬をご紹介します。最もよく知られているのは白虎加人参湯で、比較的体力のある方に処方されます。この漢方薬は体内の水分の停滞を調整し、口腔内の乾燥を改善します。

    麦門冬湯は喉の違和感や乾燥の改善に主に使用される漢方薬ですが、ドライマウスの改善も期待できるため、舌痛症の治療にもよく処方されます。こちらは体力が低下している方に処方される傾向があります。

    五苓散も体内の水分調節によりドライマウスの改善に効果があるとされています。体力の有無に関わらず、水分代謝が不十分な際に起こる症状とされる舌に歯の痕が付いている舌痛症の方に良く処方されます。

    2.知っておきたい漢方薬の知識

    飲み続けることが大切

    漢方薬の特徴は、病気の症状に直接対処するのではなく、身体の調和を図り自然治癒力を高めることに重点を置いている点です。そのため、個々の体質や体力などの特徴を重視し、その人に合った処方が行われます。一般的に西洋薬のような即効性はありませんが、漢方薬は継続して服用することで、ゆるやかに体質を根本から改善していく特性があります。継続するほど効果が現れてきます。

    処方を守って長期的に漢方薬を服用するには根気が必要ですが、焦らずじっくりと飲み続けることが重要です。

     

    漢方薬と西洋薬の違い

    西洋薬と漢方薬の違いについて説明します。西洋薬は単一の有効成分を含み、症状に対してピンポイントで処方されるため、即効性があり強い効果を発揮します。一方、漢方薬は患者の症状や体質を判断する「証」という概念に基づいて処方され、身体全体を整えるように働くため、徐々に効果が現れるのが特徴です。

    また、漢方薬は複数の生薬を組み合わせて作られるため、多くの有効成分を含んでいます。西洋薬は症状の数だけ薬の種類が増えますが、漢方薬は1種類でも様々な効果が期待できます。そのため、舌痛症のように複数の症状を持つ病気の治療には特に効果を発揮します。

     

    漢方薬は保険適用が可能

    漢方薬は歯科・口腔外科の領域では、エキス顆粒を主とした7種類の漢方薬が健康保険の適用対象となっています。しかし、漢方薬は病名や症状ではなく、患者さんの体調や体質を判断する「証」と呼ばれる概念に基づいて処方されるため、同じ舌痛症患者でも処方される薬は異なります。

    証を診断した結果、保険適用の薬が処方されれば薬代を抑えることができますが、保険適用外の薬が合っている場合は保険適用外となります。また、一般歯科では漢方薬の処方が保険審査を通りにくいのが実情ですので、保険適用内で処方できるかどうか、診療してもらう歯医者さんに確認すると良いでしょう。

    ただし、漢方薬のエキス顆粒は比較的安価ですので、保険外の薬が処方されたとしても法外な出費になることはほとんどありません。金額を気にするよりも、自分の証に合った薬を処方してもらうことが重要です。

     

    服薬と同時に生活習慣の改善も重要

    漢方の考え方では、漢方薬の服用と同時に生活習慣の改善が重視されます。この考え方は「養生」と呼ばれ、漢方を扱う医院や漢方薬局では、薬の処方と同時に養生の指導を行うことが多いです。

    漢方医学では、病気を治すために崩れた身体のバランスを整えるために漢方薬を服用すると考えます。そのため、根本的な病の原因となる生活習慣を改善しないと、再び病気になってしまうとされています。より健康な状態を目指すためにも、漢方治療を行う際には生活習慣の見直しも視野に入れておきましょう。

    3.漢方薬はどこで手に入る?入手先や相談先

    漢方薬を取り扱っている病院を受診

    舌痛症の治療に漢方薬を用いたい場合は、舌痛症の治療を専門的に行い、漢方薬を取り扱っている医療機関を選ぶのが良いでしょう。まずは、お住まいの地域で舌痛症を取り扱う医院を調べてピックアップします。そして、漢方薬による治療を行っているかを問い合わせて確認するのが確実です。

    ただし、舌痛症を取り扱う医療機関自体がまだ少ない上に、漢方治療を行っているところを探すとなると、近辺では見つからない場合もあります。その際は、漢方薬局も含めて探してみると良いでしょう。

     

    漢方薬局で相談してみよう

    舌痛症の治療に漢方薬を考えているなら、漢方薬局で相談するのも効果的です。病院での診療とは異なり、漢方薬局での相談は1~2時間にも及びます。不調の症状や患者さんの性格、体質、体格、ライフスタイル、声の張り具合など、非常に細かいヒアリングを行い、漢方の「証」に基づいて生薬を選び、調合してくれます。

    漢方薬剤師はまさに漢方のエキスパートですので、漢方薬による舌痛症の治療を希望している方は、漢方薬局での相談を選択肢に入れてみると良いでしょう。

    監修医

    遠藤 三樹夫先生

    遠藤歯科クリニック 院長

    経歴

    1983年大阪大学歯学部 卒業
    1983年大阪大学歯科口腔外科第一講座 入局
    1985年大阪逓信病院(現 NTT西日本大阪病院)歯科 勤務
    1988年遠藤歯科クリニック 開業
     現在に至る

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