抜歯と同時に義歯を装着できる!「即時義歯」について

    虫歯や歯周病などで抜歯が必要になることがありますが、特に気になるのは、歯が抜けたままの生活や見た目の問題です。義歯(入れ歯)というと、製作に時間がかかり、歯が抜けた状態で何日も過ごすイメージがあるかもしれません。しかし、実は抜歯と同時に装着できる「即時義歯」という治療法があります。

    今回は、歯がない期間を作らない即時義歯についてご紹介します。

    この記事の目次

    1.抜歯直後に装着できる「即時義歯」とは

    即時義歯とは

    抜歯手術後に入れ歯を製作する場合、部分入れ歯でも完成までに約1カ月かかります。この期間中、歯が抜けた状態で過ごすことは「周囲の視線が気になる」「抜歯後の傷を痛める」「食べかすが穴に入る」など、口内に悪影響を及ぼし、患者さんに負担をかけることがあります。そこで、抜歯前に入れ歯の製作を開始し、抜歯と同時に装着できるようにするのが即時義歯です。

     

    即時義歯の治療法について

    即時義歯による治療は、以下のような手順で即時義歯を製作することから始まります。
    1、抜歯の準備として、歯と歯茎の型を取り、模型を作成します。
    2、模型上で抜歯予定の歯を削り取り、抜歯後の状態を予測します。
    3、抜歯後の模型を基に、抜歯手術で使用する義歯を完成させます。
    4、抜歯手術と同時に、抜けた歯の場所に義歯を装着します。

     

    即時義歯と通常の義歯との関係

    即時義歯は抜歯手術と同時に装着しますが、通常の義歯は抜歯後の傷口が落ち着くまでの2週間から数カ月後に製作を開始します。この2つの違いは主に精度に現れます。即時義歯は模型から作るため、形が合わず適合不良を起こしやすいです。そのため、即時義歯は一時的な入れ歯と考え、最終的には即時義歯を基にした通常の義歯を使用することがあります。

     

    即時義歯の落とし穴、保険適用上のルール

    即時義歯は保険が適用されますが、入れ歯には「一度作ったら6カ月は作れない」という制限があります。即時義歯は模型から製作するため、口内の形状とずれが生じやすく、さらに抜歯後の歯茎の変化によってもずれが生じます。このようなずれた義歯でも、保険適用の制限があるため、6カ月間は調整しながら使用することになります。

     

    6カ月ルールを自由診療で補う

    保険適用の義歯は一度作ると、6カ月以上経たないと新しく作れませんが、自由診療の場合は異なります。自由診療で最終的な義歯を作ることで、6カ月以内に完成させることが可能です。保険診療に比べると費用は高くなりますが、選べる種類が豊富です。義歯によって治療方法も異なるため、歯医者さんと相談しながら検討しましょう。

    2.即時義歯が受けられる抜歯の条件

    虫歯が原因で歯根の状態が悪いとき

    虫歯が進行して歯根の状態が悪くなっている場合、口内の清潔を保つために抜歯が必要です。強い痛みやひどい腫れがない場合は、即時義歯を準備して抜歯後に利用することができます。

     

    歯周病が重度になったとき

    歯周病が進行すると、歯がグラつく症状が現れます。さらに悪化すると、周囲の歯にも悪影響を及ぼすだけでなく、歯周病菌が血液を通じて心臓や脳にまで影響を与えることがあります。そのため、即時義歯を使った抜歯治療を行うことがあります。ただし、重度の歯周病の場合は、抜歯と即時義歯による治療の前に、歯周病治療を進める必要があるため注意が必要です。

     

    歯根が割れてしまったとき

    歯ぎしりなどで歯根が割れたり折れたりすると、歯根の周りに汚れが溜まりやすくなり、細菌の繁殖によって痛みや腫れを引き起こすことがあります。放置すると顎の骨にも影響し、骨髄炎や蓄膿症などの疾患を引き起こすことがあるため、抜歯治療が必要です。ただし、歯の割れ方によっては、抜歯せずに歯根を治療できる場合もあります。その場合、即時義歯を準備する必要はありません。

    3.即時義歯のメリット

    歯抜け期間がない

    抜歯後に歯がない状態が続くと、前歯の場合は見た目が気になり、奥歯の場合は食事の際に噛みづらかったり不快感があります。即時義歯は、この抜歯後のストレスを軽減できます。

     

    抜歯後の疾患対策になる

    抜歯後は歯茎に大きなダメージを与えます。傷口には食事中に食べカスが入り込みやすく、ドライソケット(骨がむき出しになる状態)などで強い痛みを引き起こすことがあります。即時義歯があれば傷口を覆って守ることができ、回復を助ける効果が期待できます。

     

    スケジュールを優先できる!計画的な抜歯治療

    即時義歯を作る際は、完成日である抜歯日から逆算して治療を開始します。完成までに1カ月間で3~4回の通院が必要ですが、仕事やプライベートの予定に合わせた治療計画を立てることができます。

    4.まとめ

    即時義歯は抜歯と同時に装着できるため、歯抜けにならず、抜歯した傷口を覆って守る効果も期待できます。保険が適用されるため、希望する方も多いでしょうが、保険適用の制限や義歯の選択によって希望に沿わない場合もあります。

    即時義歯を選択する際は、歯医者さんと相談して、希望に合った治療計画を立てましょう。

    監修医

    飯田 尚良先生

    飯田歯科医院 院長

    経歴

    1968年 東京歯科大学 卒業
    1968年 飯田歯科医院 開院
    1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
    1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
    1983年~2009年 東京歯科大学 講師
    現在に至る

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