体内に石ができる疾患は、尿管結石や胆石ばかりではありません。唾液を分泌する器官である唾液腺にも、石ができて、唾液が流れにくくなったり詰まってしまうことがあるのです。これを唾石症といいます。唾液が多く分泌される食事中に、腫れたり痛んだりするのが一つの特徴です。
この記事では、唾石症の症状や原因、放置するリスク、唾石症の治療法などについて、詳しくご紹介いたします。
この記事の目次
1.唾石症ってどんな病気?
唾石症(だせきしょう)とは、唾液を分泌する唾液腺の排出管に石ができる疾患です。唾液腺には、その部位によって、耳下腺、舌下線、顎下腺がありますが、主に顎下線に発症します。唾石症の原因や、主な症状について見ていきましょう。
唾石症の原因は?
唾石症は、唾液腺や導管の炎症、唾液の停滞、さらに唾液の性状の変化などにより起こります。
唾石症の症状は?
・唾液の分泌障害
石が小さいうちは、唾液の分泌が排出されにくくなり、石が大きくなって唾液腺の排出管を完全に塞いでしまうと、唾液が排出できなくなります。
・唾液腺の痛み
唾液の排出管が完全に詰まると、唾液が出ないばかりでなく、痛みも生じます。ものを食べようとしたり、食べている最中に唾液腺のある顎の下(顎下腺)が腫れ、激しい痛みが起こり、しばらくすると徐々に症状がなくなっていくのが特徴です。
・唾液腺の腫れ
顎下線の場合には、顎の左右どちらか、結石のあるところが腫れるようになります。また、耳下腺の場合には、耳の前方から下にかけて、腫れてきます。唾液の分泌が活発になる、食事中に腫れることが多く、食後しばらくすると腫れが引いてきます。
唾石症だと思ったら何科を受診する?
唾石症では、顎下線では顎の下周辺が痛み、耳下腺では耳の横から下にかけての腫れや痛みになるので、どの診療科にかかったら良いのか分からない場合もあるでしょう。
この場合、口内や口周辺をはじめ、顎や頬、顔面周辺の疾患を幅広く診療できる「歯科口腔外科」に診てもらうのが得策です。
唾石症の診断方法は?
ご紹介したような典型的な症状があれば、歯科口腔外科での問診をはじめ、視診や触診によって、診断できます。また結石の大きさや形状の診断には、レントゲンや歯科用CT(組織を3次元的にスキャンできる特殊なレントゲン装置)が用いられます。
放置した場合はどうなる?
唾液腺が流れにくくなると、細菌が唾液腺の中に侵入しやすくなり、急性の唾液腺炎を引き起こすリスクが高くなります。唾液腺炎を発症すると、唾液線が腫れて痛みをともない、炎症の開口部分から、膿が出てくるようになります。また、耳下腺の場合は、耳下腺炎を伴い、髄膜炎や脳炎を引き起こす可能性もあります。
2.唾石症の治療法は?
ここでは、唾石症の治療法について解説します。治療法は、石の大きさや発症した部位によって異なります。
石が小さい場合はマッサージで排出
小さな結石の場合には、唾液腺のマッサージによって、唾液の出口方向に誘導することで、石を取り除くこともできます。ただし、炎症を伴っていることも多いので、抗生剤を投与することも行われます。
顎下腺や舌下腺の結石
排出管の出口付近に結石が見られる場合には、口内から唾液腺を切開して、石を取り除きます。排出管の奥に石がある場合には、顎の下を切開して、結石を唾液腺ごと取り除く手術を行います。
耳下腺の結石
耳下腺は、唾液腺の中でも、もっとも唾液の分泌量が多く、結石が自然に排出されることもあります。従って、抗生剤を投与しながら経過観察が基本です。手術をする場合は、耳下腺を切開して、石を取り除きますが、後遺症のリスクが伴います。
3.耳下腺の石は要注意!
耳下腺の結石は、耳下腺炎を伴っているリスクがあるため、唾石症の中では、もっとも注意が必要となります。
耳下腺炎から髄膜炎になる可能性も
耳下腺炎を起こしていると、おたふく風邪と同じような、高熱や頭痛、吐き気といった全身症状が見られます。さらに、耳下腺炎を放置していると、脳炎や髄膜炎(脳を覆う保護膜の炎症)を引き起こす可能性もあります。
投薬で様子を見る治療が基本
耳下腺炎を伴っているケースが多いので、まずは、抗生剤やステロイド剤、痛み止めなどを処方して、疾患の経過観察を行いながら、自然に結石が排出されるのを待つ、保存治療が基本です。
外科手術は最終手段
自然排出できない場合には、外科手術となりますが、頸部を耳下腺まで切開して、耳下腺内にある石を取り出すので、大掛かりな手術になります。また、術後の後遺症として、顔面神経麻痺や唾液腺の詰まりが、高い確率で生じるものです。保存治療を第一にする理由がここにあります。
4.唾石症の予防法は?
唾石症を予防するためには、普段から唾液の分泌を促し、唾液腺の通りを良くしておくことが大切です。普段からよく噛んで食事をとることはもちろん、唾液の分泌を促す梅干しやレモンなどの食品を意識してとったり、水分を多く摂ることを心がけましょう。
また、耳から顎の下にかけての唾液腺をマッサージするだけでも、唾液の分泌が促されるものです。普段から通りを良くしておけば、異物が入っても、停滞して石化することなく排出されるようになります。
5.まとめ
唾石症についてご紹介してきました。唾液腺のマッサージや唾液を出しやすくする食生活を心がけて、結石ができないように注意しましょう。ご紹介した症状を参考にして、もし少しでも違和感があるなら、結石が大きくなる前に、速やかに歯科口腔外科で診てもらうことをおすすめします。

監修医
鄭 尚賢先生
アイボリー歯科クリニック 顧問
経歴
1999年 渋谷教育学園幕張高等学校 卒業
2005年 東京歯科大学 卒業
2005年 ドルフィン歯科(千葉県佐倉市) 勤務
2005年 スウェーデンデンタルセンター (東京都千代田区) 勤務
2007年 駿河台下デンタルオフィス 開業 (東京都千代田区)
2008年 アイボリー歯科クリニック 開業 (東京都八王子市)
2010年 医療法人社団パーフェクトスマイル 設立
2014年 三鷹駅前デンタルオフィス開業 (東京都三鷹市)
2016年 荻窪駅前デンタルオフィス 開業 (東京都杉並区)
2018年 吉祥寺デンタルオフィス 開業 (東京都武蔵野市)
2024年 顧問 就任
現在に至る
取得資格・専門医資格
日本歯周病学会 歯周病専門医
この記事は役にたちましたか?
- すごく
- いいね
- ふつう
- あまり
- ぜんぜん