治療したときの詰めた物が、急に取れてしまうことがあります。そんなときにはどうすればよいのか知っておけば、慌てずに対処することができます。このようなケースで誰もが疑問に思う点についてまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
詰め物が取れてしまう原因はいくつかあります。詰め物が取れたまま放置すると良くない影響がありますが、すぐには受診できない場合もあります。受診するまでにすべきことも理解しておきましょう。
1.詰め物が取れてしまったら、自分ではめ直さずに歯医者さんへ
1-1 無理にはめ直さない
取れてしまった詰め物は、無理にはめ直してはいけません。自分の手で元通りに戻すことは難しく、無理に入れ直すことで詰め物を変形させたり、歯を痛めたりすることもあります。再び取れてしまう可能性も高く、その際に誤って飲み込んでしまうと危険です。
1-2 取れた詰め物は保管しておく
取れてしまった詰め物は、何か入れ物に入れて保管をしておき、受診時に持参してみてもらいましょう。金属製の詰め物などは、劣化の程度によっては再度入れてもらうこともできます。きちんと管理しておかないと、なくしてしまうだけでなく、変形させてしまったりすることがあります。
・詰め物が取れたところが黒くなっているのはなぜ?
取れた後の歯が黒くなっている場合には、虫歯のこともあれば、接着剤として使われたセメントが黒く変色しているケース、詰め物として入れていた金属が原因のケースなどが考えられます。
1-3 放置せずに歯医者さんに行こう
虫歯の治療をして詰め物をしていた場所は、詰め物が取れてしまうとそこからまた虫歯になる危険性があります。歯の詰め物が取れてしまったときにかかる歯医者さんは、詰め物の治療をしてもらった歯医者さんでなくても特に問題はありません。詰め物をした歯医者さんでなくても事情を話せば治療をしてもらえますので、都合のよい近くの歯医者さんにかかりましょう。
旅行先などで取れてしまった場合には応急手当をしてもらい、自宅に戻ってから地元で通院できる歯医者さんに再度診てもらうようにします。
治療せずに放置してしまうと、以下のようなトラブルが生じる可能性があります。
・虫歯になる
詰め物が取れてすぐに虫歯になるわけではなく、2週間程度はそのままでも虫歯が進行する可能性は低いので慌てないようにしましょう。しかし、長期間放置すれば虫歯のリスクは高まります。遅くとも一カ月以内には歯医者さんを受診することが大切です。
・かみ合わせが悪くなる
歯の詰め物は、詰め物をした状態のかみ合わせを考慮して作られています。そのため詰め物が取れてしまうと、歯のかみ合わせが不安定な状態になります。長い間放置してしまうとかみ合わせがよくない状態が続き、あごの痛みや頭痛などを引き起こす可能性もあります。
・歯周病になる
詰め物が取れた部分は、食事をしたときに食べ物のカスが詰まりやすくなっています。食べ物のカスをえさにする歯周病菌の活動が活発になり、歯周病を引き起こすことがあるのです。
2.歯医者さんを受診するまでにしておくこと
2-1 丁寧な歯磨き
歯磨きはいつも通りして構いません。むしろ、詰め物が取れた歯は念入りに磨く必要があります。治療した部分がむき出しになっている歯は、虫歯になりやすい象牙質という部分がむき出しになってしまっているため、虫歯のリスクが高くなっているからです。あまり力を入れないで、ゆっくりと丁寧に磨いていきましょう。
さらに、詰め物が取れてしまった部分には穴があいているので、食べ物のカスが残りやすくなってしまいます。丁寧に磨かなければカスが蓄積してしまうので、しっかり歯磨きをするように心がけましょう。
2-2 詰め物が取れた歯を使わないようにする
詰め物が取れてしまった歯は、弱くなっています。かたい食べ物や噛みごたえのある物などを噛むことで、歯を傷めてしまうことがあります。歯が割れるケースもあるので注意しましょう。食事をするときには、詰め物が取れている歯はなるべく使わないように心がけます。
2-3 しみる飲食物を避ける
詰め物を入れる治療の際に、歯は大きく削られています。詰め物が取れることで歯の内部までむき出しになっているので、知覚過敏を引き起こしやすくなっています。象牙質がむき出しになっている状態では神経が刺激を受けやすくなっているので、熱い物や冷たい物などは極力控えるようにしましょう。
3.詰め物が外れた原因は?
3-1 虫歯
詰め物が取れる原因として特に多いのは虫歯です。詰め物の内部で虫歯が進行し、残った歯の部分が変形することで詰め物と合わなくなり、外れてしまいます。
虫歯になる原因は二つあり、何らかの原因で詰め物と天然歯との間に隙間ができてしまう場合と、隙間が無くても、残っている天然歯の部分が再度虫歯になるケースとがあります。
また歯ぎしりや食いしばりなど、患者さんの側に原因がある場合もあります。詰め物が外れやすくて困っている、という方は、意識的に対策をとってみてはいかがでしょうか。
3-2 詰め物の劣化
歯の詰め物に使われる素材はいろいろありますが、経年変化で劣化は避けられません。レジンや金銀など劣化しやすい素材は、劣化によって外れやすくなります。
3-3 接着剤の劣化
詰め物と残っている歯をくっつけるために使用していた接着剤が劣化することによって、詰め物と歯の間に隙間がうまれてしまうことがあります。詰め物が取れてしまったら早めに歯医者さんに受診してくださいね。
4.まとめ
詰め物が外れてしまう原因はさまざまですが、素材の劣化などやむを得ないケースもあります。歯の詰め物が取れてしまったときは、慌てなくても大丈夫です。状態によってはまた入れ直してもらうこともできるので、取れた詰め物を保管しておき、1週間程度を目安に受診するようにしましょう。
受診するまでの間は、詰め物が取れた歯をなるべく使わないようにし、虫歯や歯周病にならないよう、いつもよりも念入りに歯を磨くよう心がけます。
詰め物が取れたまま長期間放置することはよくありません。一カ月を過ぎると虫歯のリスクもぐんと高まりますので、早めに取れた詰め物を持って歯医者さんを受診するようにしてください。
~飯田先生からのコメント~
詰め物をするときに使用するセメントの劣化によって外れることが多々見られます。詰め物の周囲からの虫歯によることも多く見受けられます。
詰め物が外れたままでいるとその尖った部分による口内炎が発生し、褥瘡性潰瘍とも言われ癌に変化する場合もあります注意が必要です。
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監修医飯田尚良先生
飯田歯科医院 院長
■院長経歴
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る