仕事上の会議やプライベートの会食など、人前で話す機会のたびに気になるのが口臭。他人の口臭に顔をしかめつつ、「もしかしたら自分も!?」と不安に思ったことは、誰でもあるのではないでしょうか。周囲を不快にさせてしまう口臭ですが、実は歯のクリーニングで軽減、予防することができるのをご存じでしょうか。歯医者さんで受ける歯のクリーニングで口臭をケアできる理由と、口臭ケアのためのクリーニングの種類、流れ、費用などをまとめました。
※ 掲載する平均費用はあくまでユーザー様のご参考のために提示したものであり、施術内容、症状等により、施術費用は変動することが考えられます。必ず各院の治療方針をお確かめの上、ご自身の症例にあった歯医者さんをお選びください。
1.歯のクリーニングで口臭を防げるわけ
口臭の原因となる歯垢を除去できるから
お口の中に残った食べカスや汚れに、細菌が増殖してできる歯垢(プラーク)。これが歯周病や虫歯の原因となることはよく知られていますが、実はこの歯垢は口臭の原因にもなるのです。歯みがきで落としきれなかった歯垢が溜まって時間が経つと、発酵して硫化水素などといった特有の臭いのあるガスを発生させます。このガスが口臭を生み出す元となるのです。
自分では取れない歯石も取れるから
歯みがきで落としきれない汚れに雑菌が繁殖して作られる歯垢ですが、これを長く放置すると、唾液中のミネラルなどと結合して固まり「歯石」となってしまいます。こうなると、どんなに一生懸命ブラッシングをしても、ご自身の力だけで除去することはほぼ不可能になります。
歯石がついた歯の表面は、ザラザラとしていて余計に歯垢がつきやすい状態になり、口臭を悪化させる原因となってしまいます。こうなってしまったら、歯医者さんでクリーニングをして取ってもらうしかありません。
歯周病を予防することができるから
歯の表面に歯石がつくと、それを起点に歯周病菌が繁殖を始め歯周病が進行して行きます。歯周病菌は「メチルメルカプタン」という腐ったタマネギのような不快な臭いのガスを発生させます。定期的な歯のクリーニングによって歯周病を予防することが、そのまま口臭を予防することにもつながるのです。
歯茎の腫れ、出血を予防できるから
歯の表面についた歯垢が固まって歯石となると周辺の歯茎が炎症を起こし、腫れて簡単に出血したりするようになります。この症状が進行してくると、出血による血生臭さや、腫れた歯茎から出る膿などの悪臭が口臭を悪化させてしまいます。こうした嫌な口臭を防ぐためにも、歯のクリーニングが欠かせません。
2.口臭をケアするクリーニングの主な流れとは
口臭測定
すべての歯医者さんで行うわけではありませんが、一部の歯医者さんではクリーニングの前に特殊な装置を使って口臭測定を行う場合があります。口臭の状況が成分や数値で確認できるので、例えばクリーニング前後での口臭の改善などを客観的に知る事ができます。
原因分析
歯医者さんがお口の中の状況を直接診ることで、口臭の原因を探ります。虫歯や歯周病、歯や舌の汚れから詰め物の劣化まで、口臭のさまざまな原因が特定できます。なかには内臓由来の口臭など内科的な口臭もありますが、口臭の原因がお口の中にある場合は問題箇所の治療やクリーニングでそれを改善、予防することができます。
スケーリング・ルートプレーニング
「スケーラー」と呼ばれる器具を用いて、歯の表面についた歯石と歯垢を取り除きます。 スケーラーには手動で汚れを落とすものと、超音波を使って汚れを落とすものがあり、汚れの状況によって使い分けます。歯周ポケットという歯茎の深い部分についている歯石は、スケーラーを使ったルートプレーニング(SRP)という特殊な手法で除去します。
舌クリーニング
必要に応じて、歯の表面だけではなく舌の表面をクリーニングすることもあります。舌の表面は絨毯のようになっており、汚れが非常につきやすい場所です。舌についた汚れは舌苔(ぜったい)と呼ばれ、口臭の原因の7〜8割を占めているともいわれています。この舌苔を除去することが、口臭の軽減と予防に大きな効果を発揮するのです。
ホームケア指導
歯と歯の間や歯周ポケット、舌の表面といった、汚れの残りやすい部分を中心に普段自分でも掃除ができるように指導します。歯や舌のクリーニングは通常3ヶ月前後に 1 回受けるのがおすすめですが、それ以外の日はご自身で掃除をしなくてはならないので、この指導はとても大切な事なのです。
3.口臭をケアするクリーニングの種類と費用
保険適用のクリーニング
口臭をケアする目的としてではありませんが、歯周病治療の一環としての歯のクリーニングであれば、健康保険の枠内受けることができます。1回数百円から千円程度と費用は抑えられますが、内容が限定的だったり、複数回の通院が必要だったりといったデメリットもあります。
保険適用外のクリーニング(PMTC)
健康保険の適用を受けない歯のクリーニングはPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)とも呼ばれます。保険適用の歯のクリーニングと比較すると費用がかかりますが、内容が充実しており、1度の施術でお口の中の汚れを落としきることができるというメリットがあります。PMTCのメニューや価格は歯医者さんによってまちまちですが、一般的に数千円から1〜2万円が相場となっているようです。
舌クリーニング
舌の表面についた舌苔を除去し、口臭をケアする舌クリーニング。PMTCに含まれている場合もありますが、オプションや独立したメニューとしている歯医者さんも多いようです。舌クリーニングの費用も歯医者さんによって異なりますが、1500円程度から受けられます。
歯のクリーニングでケアできない口臭も
口の中以外に原因がある口臭はケアできない
歯のクリーニングを受けることで、多くの場合口臭軽減と予防の効果を期待できます。とはいえ、すべての口臭を歯のクリーニングでケアできるわけではありません。口臭には胃や腸といった内臓疾患から由来するものなどもあり、こうしたお口の中以外に原因がある口臭では、歯のクリーニングを受けても改善効果は期待できません。歯のクリーニングでケアできるのは、あくまでお口の中に原因がある口臭に限られるのです。
4.まとめ
他人に嫌な印象を与えてしまう口臭にはさまざまな原因があります。すべての口臭をケアできるわけではありませんが、お口の中に原因がある場合、歯のクリーニングが口臭軽減、予防の効果を発揮するケースが多くあります。口臭については気になるものの「誰に相談すべきかわからない」という声もよく聞かれますが、まずはかかりつけの歯医者さんに相談して、原因とクリーニングなどの対策を一緒に探ってみるのがおすすめです。
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監修医矢島昇悟先生
青山通り歯科 院長
■院長略歴
2007年 | 日本歯科大学 生命歯学部卒業 |
2008年 | 埼玉県羽生市 医療法人社団正匡会 木村歯科医院 |
2010年 | 埼玉県新座市 おぐら歯科医院 |
2011年 | 東京都文京区 後楽園デンタルオフィス |
2015年 | 東京都港区 青山通り歯科 院長 |