ラミネートベニアは、歯の表面を薄く削り、削った部分に薄いシェルを貼り付けることで歯を白く、または歯の形を美しくできる治療法です。3mm以下の隙間であれば、すきっ歯も治すことができます。
ラミネートベニアは1回の施術で複数の悩みを解消できるため、自分の歯にさまざまなコンプレックスがある方に魅力的な施術法です。しかし、ラミネートベニアは0.3~0.5mmというとても薄いセラミックでできています。そのため、使い方を間違えると、割れて取れてしまうこともあるのです。
この記事では、ラミネートベニアの平均的な寿命をはじめ、長く使うためのポイントや、万が一ラミネートベニアにトラブルが起こってしまった場合の対処法などをご紹介していきます。
1.ラミネートベニアの寿命について
ラミネートベニアの施術では、セラミック製のシェルと自分の歯を身体に害のないセメントで接着します。セラミックは、天然の歯と耐久性や強度が同じ程度です。さらに、接着後の強度は200kg/c㎡ほどあるため、大きな衝撃を与えたり、誤った使い方をしなければ、ラミネートベニアが剥がれ落ちて壊れることはありません。
しかし、ラミネートベニアにも寿命があり、使い方を間違えればひび割れや、自分の歯から剥がれるなどの問題が生じます。まずは、ラミネートベニアの平均的な寿命と、取れやすいケースを確認してみましょう。
1-1 平均的な寿命
ラミネートベニアの平均的な寿命は、10~20年程度です。使用していると粘着力が弱まるため、寿命が来ると、歯から取れてしまいます。接着剤の劣化は、施術後4~5年ごろからはじまるため、施術から3年以上経過している場合には一度クリニックを受診した方が良いでしょう。
また、「ラミネートベニアは施術後に変色しないの?」と気になる方もいるかもしれませんが、ラミネートベニアはセラミックであるため、着色汚れや色の変化による寿命はありません。
1-2 どんな時に取れやすいのか
ラミネートベニアは基本的に前歯に対して施術を行うケースが多い治療法です。そのため、前歯で硬いものを噛みちぎろうとすると、取れてしまうことがあります。前歯でなくても、施術した歯に強い負担がかかってしまうとシェルが取れてしまうのです。
また、施術直後は接着剤がまだ安定していないため、シェルが取れやすくなっています。施術を受けた後しばらくは、自分の歯でないために違和感があるかもしれませんが、あまり触らないほうが良いでしょう。
1-3 こんな人は取れやすいので注意
噛み合わせに問題がある方や、寝るときに歯ぎしりをする方は、ラミネートベニアが取れやすいため、注意しましょう。また、噛みしめ癖がある方も、ラミネートベニアが取れやすいといえます。
治したい歯の面積が狭い場合は、接着剤を塗る量が必然的に少なく、接着面積も狭いため、シェルが剥がれやすい可能性があります。
そのため、歯ぎしりや噛みしめ癖のある方は、ラミネートベニアではない施術の方が適している場合もあります。ラミネートベニアの施術を受ける前に、自分の噛み合わせは大丈夫か、施術後取れる心配はないかなど、担当医に相談しておきましょう。
2.ラミネートベニアの寿命を延ばすために
ラミネートベニアを長く使用するためには、施術部分に大きな負担をかけないことがまず重要です。しかし、ラミネートベニアの元々の形がフィットしていない、また、接着がうまくいっていないと、シェルが取れやすく、「1年も経たずに剥がれてしまった」というケースもあります。そのため、長い期間ラミネートベニアを使うためには、セルフケアだけでなく、技術のある歯医者さんで施術を受けることが大切なのです。
どのようなポイントでクリニックを選べば良いのか、またクリニックで確認した方が良いこと、自己ケアで気を付けるべきポイントなどを確認しておきましょう。
2-1 技術のある歯医者さんに行こう
- ラミネートベニアを長く使うためには
ラミネートベニアの治療では「シェルと自分の歯の接着面がフィットすること」と「ラミネートベニアをきちんと接着させること」の2点が重要です。この2つの条件がそろっていれば、ラミネートベニアを長く使用することができます。
そのため、ラミネートベニアは、歯科医師の適切な診断力と研磨や接着などの技術力、医師の診断に基づいてシェルを作成できる歯科技工士の技術力が必要不可欠です。また、クリニックでラミネートベニアの施術ケースが多いかどうかも、重要な判断材料になります。
- クリニック選びのポイント
技術のあるクリニックかどうかを判断するためには、施術前のカウンセリングで、施術のメリットだけでなくデメリットも教えてくれるか、他の施術方法との違いを説明してくれるか、ラミネートベニアでの施術経験はあるかなどを担当医に聞くことがポイントです。
それぞれの質問に納得のいく回答が得られた上で、実際にラミネートベニアの施術を受けるか検討しましょう。担当医の得意な施術を聞いてみるのも良いかもしれません。
クリニックによっては、カウンセリングをする医師と実際に治療を行う医師が異なる場合もあるため、担当医が変わることはないか、確認しておくことも重要です。
2-2 正しい自己ケアをしよう
- 食べ方に気を付ける
施術を受けた部分に、大きな負担がかかってしまうとラミネートベニアは剥がれてしまいます。特に硬い食べ物を噛む時には、無意識に強い力で歯を噛みしめてしまうため、スルメやキャラメルなどを食べるときには、施術を受けた歯を使わないように注意して食べた方が良いでしょう。
- 態癖を無くす
「態癖(たいへき)」とは、歯並びを悪くしてしまう「癖」のことです。この態癖を減らすことによっても、ラミネートベニアを長く使用することができます。態癖の例として挙げられるのは、頬杖や横向きで寝る姿勢、舌の癖などです。
歯並びが変わってしまうと、ラミネートベニアの強度が落ちてしまい、シェルが取れてしまう原因になります。また、どちらか一方で食べ物を噛む癖も、歯並びを悪化させてしまう原因です。ラミネートベニアの施術を受けた後は、両側で噛むように噛み癖を直した方が良いでしょう。
- 小さな欠けやひびは放置しない
ラミネートベニアは、貼り付けたシェルが全て取れるだけでなく、シェルが欠けてしまうことや、ひび割れしてしまうこともあります。この状態で放っておくとラミネートベニアが取れてしまう原因になるため、気づいたら歯医者さんで早めに治してもらうようにしましょう。
- 定期的にお口の状態をチェックする
ラミネートベニアの素材である「セラミック」は、天然の歯と異なり、基本的に変色はしません。しかし、ラミネートベニアの施術を受けてから5年、10年が経過すると、自分の天然の歯が変色してしまいます。
その結果、ラミネートベニアと元の歯の色に違いが生じ、美しいはずのラミネートベニアが不自然に見えてしまうこともあります。歯は大きく変色してしまうと、元の色に戻すためには時間も費用もかかってしまいます。
そのため、ラミネートベニアの施術を受けた後は、定期的に歯のクリーニングやホワイトニングを受けると良いでしょう。定期的に受診することで、ラミネートベニアのチェックもしてもらえます。
3.まとめ
ラミネートベニアの寿命は、歯医者さんの技術やその後のケアで変化します。長く使えるラミネートベニアの治療を受けられるよう、歯医者さん選びから慎重に行いましょう。
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監修医小川隆介先生
後楽園デンタルオフィス 院長
■院長経歴
2005年 日本歯科大学 卒業
2005~2006年 東京医科歯科大学摂食機能構築学 医員
2007~2011年 東京都内歯科医院 副院長
2011年 後楽園デンタルオフィス 院長就任
現在に至る