明るい笑顔は人を魅力的に見せてくれます。しかし一方で、自分の口元や歯の色に自信がなく大きな口をあけて笑うことができない人もいるのではないでしょうか。普段の生活習慣や加齢によって黄ばんでしまった歯の色は、ホワイトニングをすることで綺麗な白さを取り戻し、笑顔に自信を持つことが出来ます。
歯医者さんで行うオフィスホワイトニングに加え、最近は自宅でできるホームホワイトニングも人気です。しかし自己管理のもとに行うホームホワイトニングには注意すべき点もあり、それらの注意事項はホワイトニング前、ホワイトニング中、ホワイトニング後と、段階によっても変わります。ここでは、ホームホワイトニングをするにあたり、段階ごとに気をつけることをまとめてご紹介します。
1.ホームホワイトニングを始める前の注意点
ホワイトニングを始めるにあたり、自分の体や歯の状態がホワイトニングに適しているかを確認しましょう。また必ず白い歯を手に入れる!という心構えも必要です。
1-1 歯医者さんを受診する
歯医者さんで行うオフィスホワイトニング同様、ホームホワイトニングも自分の歯型をもとに専用のマウスピースを作成します。またホワイトニング剤は医薬品に準ずる扱いとなっているため、医師の指示・指導のもとに使用しなければなりません。歯医者さんを受診してマウスピースを作成するとともに、薬剤の使用法や注意点を確認した上で、ホームホワイトニングを開始するようにしましょう。
なかには歯をより強力に白くする成分が含まれたホワイトニング剤を海外から独自に取り寄せる人もいますが、それらは厚生労働省の認可を得ていない薬剤の可能性が高く、一歩間違えると危険をともなう場合もあります。使用にあたっては必ず歯医者さん指導のもとに行うようにしましょう。
1-2 効果を実感するまでに時間がかかる
オフィスホワイトニングと比較して、ホームホワイトニングで使用する薬剤は安全性を考慮し、その濃度は約十分の一となっています。また歯医者さんでは光をあてて一気に歯を白くするのに対し、ホームホワイトニングではゆっくりと歯に薬を浸透させていきます。そのため、歯が白くなったと実感するには時間がかかります。個人差はありますが、一般的に2週間から1ヶ月ほどかかると考えておくとよいでしょう。
結婚式やイベント事に合わせて早くホワイトニングしたいという方は、オフィスホワイトニングをおすすめします。また、余裕のある方にはさらに効果の期待できるオフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用する、”デュアルホワイトニング”という方法もあります。
1-3 ホワイトニングができる状態かをチェック
以下のような方はホワイトニングができない場合があります。歯医者さんに自分の体の状態や口内をチェックしてもらい、ホワイトニングが可能かを見極めましょう。
◆妊娠中の方
妊娠中はホルモンバランスが大きく変化する時期です。ホワイトニングで使用する薬剤が体に何かしらの影響を及ぼす可能性を完全には否定できないので、妊娠中のホワイトニングは控えましょう。
◆虫歯がある方
オフィスホワイトニングは虫歯部分を保護しながら行うこともできますが、ホームホワイトニングはそれができません。その結果、薬剤がしみたりする恐れがありますので、虫歯がある場合は、事前に歯医者さんに相談の上、ホワイトニングをするとよいでしょう。
◆極端に歯並びが悪い
歯並びが極端に悪いとマウスピースが装着できない場合があります。
◆未成年
未成年は発育途中のため歯の組織が形成されきっておらず、歯の表面のエナメル質も不完全な状態です。この時期に歯を漂白する薬剤を塗布すると、今後の発育に影響する恐れがあります。
◆無カタラーゼ症の方
無カタラーゼ症の方は、ホワイトニング薬剤に含まれる過酸化水素を体内で分解することができません。分解されなかった過酸化水素は有害物質として体内に残ってしまうため、ホワイトニングを行うことはできません。
1-4 ホワイトニングできない歯もある
以下のような歯は、他の歯に比べてホワイトニング剤の効果が出にくい場合があります。
◆神経を抜いた歯
ホワイトニング剤は神経がある生きた歯に作用するため、神経を抜いた歯では効果が出にくく、結果として神経のある歯とない歯で、色の差が出てしまうことがあります。
◆人工歯や被せ物
ホワイトニングは薬剤で歯の内部の色素を分解して漂白するものです。歯の内部の色がエナメル質を通して見えているものが歯の色となります。そのためもともと色がついている人工歯や被せ物には、その効果を期待できません。
1-5 自分の生活サイクルをチェック
ホームホワイトニングは毎日決まった時間にマウスピースを装着する必要があります。次の章でご説明するとおり、マウスピースを外した直後も飲食を控えるなどの注意点があるため、不規則な生活をしている方はホームホワイトニングで十分な効果を得られない可能性があります。この場合はオフィスホワイトニングを選択するとよいでしょう。
2.ホワイトニング実施時の注意点
2-1 1日2時間以上を、決まった時間に
ホームホワイトニングは 一回につき2 時間以上、薬剤を注入したマウスピースを装着している事が有効な漂白効果を得るコツです。オフィスホワイトニングとは異なり、濃度の薄い薬剤を使って徐々に歯を白くしていく方法のため、すぐに効果を感じられずとも辛抱強く継続することが大切です。
通常はホワイトニング開始後、2~3日ほどで白くなってきたことを実感しますが、あまりに長期間効果を感じられない場合は歯医者さんに相談してみるとよいでしょう。
通常はホワイトニング開始後、数週間ほどで白くなってきたことを実感しますが、あまりに長期間効果を感じられない場合は歯医者さんに相談してみるとよいでしょう。
2-2 マウスピースから薬剤が溢れたら
「薬を沢山使った方が早く効果が出るのでは?」と、ついついマウスピースに沢山薬を入れたくなってしまうかもしれませんが、量を多くしてもマウスピースを歯にセットすると、ほとんどあふれ出てしまいますので、効果が出るまでの期間や白さの度合いは変わりません。薬剤は歯医者さんから指示された適量を使用するようにしましょう。
もしマウスピースを歯に装着する際に薬剤があふれ出てしまったら、すぐに綿棒や脱脂綿等で拭き取ってください。薬が歯茎に長時間ついたままでいると、歯茎が薬の影響で一時的に白濁してしまう事があります。
2-3 マウスピースの噛み締めに注意
マウスピースを強く噛み締めすぎると破損の原因となってしまいます。普段から歯ぎしりや噛み締め癖のある方はもちろんのこと、マウスピース装着中はリラックスした状態で過ごすとよいでしょう。
2-4 装着後はしっかり口をすすぐ
マウスピース装着前に歯磨きをして汚れを落とすのはもちろんのこと、マウスピースを外した後もしっかりと口をすすぎましょう。薬剤が歯に多く残っていると感じる時には、歯ブラシで軽く磨くとよいでしょう。薬剤が残ったままでは歯に汚れがつきやすくなるため、注意が必要です。
2-5 ホワイトニング後はすぐに飲食しない
ホワイトニングは薬剤の効果によって歯の色を抜いていきます。歯の色を抜くということは、一時的に歯の表面にダメージが残っているため、歯に色が入りやすくなることも意味してます。そのため、マウスピースを取り外した後は、 30分〜1 時間は飲食は控えて頂いた方が、いい結果が出やすいと言われています。
ですが、例えば就寝時にホワイトニングをしていた場合は、外してから30分~1時間も朝食を抜く、というのも大変だと思います。「必ず時間を空けなくてはいけない」というわけではないので、自分の生活スタイルと照らし合わせながら、毎日のマウスピース装着時間を設定するようにましょう。
2-6 しみたり痛みが出たりしたら
薬剤が歯茎にしみたり、流れてしまったりして薬剤で喉に痛みが出ることがあります。そのような場合には装着時間を短くする、1日おきの装着にするなどして対処しましょう。
通常は数日すれば痛みはおさまりますが、あまりに長く続く場合には歯医者さんに相談してください。
3.ホワイトニング中に控えたいこと
3-1 飲食物の注意
ホワイトニング中は歯の色を抜く薬剤の影響で、逆に色がつきやすい状態にもなっています。このような状態で、カレーやミートソース、コーヒー等の色の濃い食べ物や飲み物(着色性食品)や、タンニンが含まれるワイン、紅茶などを口にすると、着色汚れとなるステインが歯に付着しやすくなってしまいます。この期間は、着色性の強い食べ物や飲み物は控えるとよいでしょう
また、食べ合わせにも注意が必要です。着色性食品はすぐに口をすすげばある程度の着色をおさえることができますが、着色性食品と同時に着色補助食品をとってしまうと、口の中が酸性化し、歯の表面が溶けてさらに着色しやすくなってしまいます。
◆控えたい食べ物
カレー、ミートソース、醤油、味噌、ケチャップ、トマトソースなどの色の濃い食べ物や、着色料を使用している食品
◆控えたい飲み物
赤ワイン、コーヒー、ココア、紅茶、抹茶、コーラなどの色の濃い飲み物
◆着色補助食品
炭酸飲料、スポーツドリンク、柑橘系食品、酢など
3-2 飲食物以外での注意
タバコに含まれるタールやニコチンは口の中で茶色に変化しますが、これらが唾液中のカルシウムと結びつくことで歯に付着しやすくなり、着色の原因となります。この他、口紅やうがい薬等も着色の原因となるため、控えることをおすすめします。
3-3 歯磨きは大丈夫?
市販の歯磨き粉は原材料に着色料を含んでいることがあります。歯への着色が気になる方もいるかと思いますが、歯磨き粉に入っている着色料はそれほど多い割合ではないので、あまり神経質になる必要はないでしょう。しかしながら、白い歯を意識する方にお勧めしたいのは、白くて研磨剤の無いペースト状の歯磨き粉です。研磨剤入りのものに慣れてしまうと、少々物足りなさを感じてしまうかもしれませんが、その分しっかりと丁寧に磨くことができるのではないでしょうか。
4.ホワイトニング後の注意点
歯は日々の生活や加齢によって色が変わるため、ホワイトニング効果が永久的に持続するわけではありません。少しでも白さを長持ちさせるために、以下を意識してみてください。
4-1 しっかりと歯磨きを
歯に食べ物の色素が付着、沈着しないよう、食事後は少しでも早く歯磨きをしましょう。その際、色素を分解し、着色を防ぐ成分が含まれた歯磨き粉を使用するのもよいでしょう。
歯磨きをすることが難しければ、口をすすぐだけでもある程度の着色をおさえることができます
4-2 定期的なメンテナンス
歯は使っているうちに、食べ物等による着色で、だんだんと黄ばんできます。定期的に歯医者さんを受診し、必要があれば再びホームホワイトニングを行いましょう。
またホワイトニングは行わないまでも、歯医者さん専用の機器で歯のクリーニングをしてもらうのもおすすめです。これにより、日々の歯磨きでは落としきれない着色汚れを除去することができます。
5.マウスピース、薬剤の取り扱い・保管
5-1 マウスピースは清潔に
使用後のマウスピースは、傷つけない程度に軽くブラシで磨き、しっかりと乾燥させてからケースにしまいましょう。湿ったままではカビや細菌の原因となってしまいます。また洗い流す時はお湯でなく水を使ってください。熱湯をかけるとマウスピースが変形する可能性があります。
5-2 薬剤は冷暗所・冷蔵庫に
薬剤は熱や太陽光に弱い性質を持っているため、冷暗所か冷蔵庫に保管しましょう。この際、冷凍庫の使用は厳禁です。また誤って口にしないよう、お子さんの手の届かない所に保管してください。
6.まとめ
いかがでしたか?ホームホワイトニングの注意点についてお分かりいただけたでしょうか。
ホームホワイトニングはゆっくりと時間をかけて行う分、自然に歯を白くしていくことができます。またオフィスホワイトニングと比較して、効果が長く続くこともポイントです。価格の手ごろな製品もあるため気軽に始めることができます。日々の生活習慣を見直したり、マウスピース・薬剤の正しい使用を心がけたりすることで、効果的に歯を白くしていきましょう。
ホームホワイトニングは、歯医者さんとの意思の疎通が大事です。しっかりとコミュニケーションを取れる歯医者さんで行いたいですよね。
・ホームホワイトニングを始める前の注意点
└必ず歯医者さんを受診する
└効果を実感するまでに時間がかかる
└ホワイトニングができる状態かをチェック
└妊娠中の方
└虫歯がある方
└極端に歯並びが悪い
└未成年
└無カタラーゼ症の方
└ホワイトニングできない歯もある
└神経を抜いた歯
└人工歯や被せ物
└自分の生活サイクルをチェック
・ホワイトニング実施時の注意点
└1日2時間以上を、決まった時間に
└マウスピースから薬剤が溢れたら
└マウスピースの噛み締めに注意
└装着後はしっかり口をすすぐ
└ホワイトニング後はすぐに飲食しない
└しみたり痛みが出たりしたら
・ホワイトニング中に控えたいこと
└飲食物の注意
└控えたい食べ物
└控えたい飲み物
└着色補助食品
└飲食物以外での注意
└歯磨きは大丈夫?
・ホワイトニング後の注意点
└しっかりと歯磨きを
└定期的なメンテナンス
・マウスピース、薬剤の取り扱い・保管
└マウスピースは清潔に
└薬剤は冷暗所・冷蔵庫に
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監修医矢島昇悟先生
青山通り歯科 院長

■院長略歴
2007年 | 日本歯科大学 生命歯学部卒業 |
2008年 | 埼玉県羽生市 医療法人社団正匡会 木村歯科医院 |
2010年 | 埼玉県新座市 おぐら歯科医院 |
2011年 | 東京都文京区 後楽園デンタルオフィス |
2015年 | 東京都港区 青山通り歯科 院長 |