妊婦さん必見!妊娠したら歯科検診と治療が必要なワケ

妊婦 歯科検診

妊婦さん必見!妊娠したら歯科検診と治療が必要なワケ

妊娠するとホルモンバランスが大きく変わり、体にもさまざまな変化が生じます。お口の中も、妊娠前とは状況が異なりトラブルが起こりやすくなります。さらに、赤ちゃんが生まれると生活パターンもがらりと変わり、歯医者さんに通う時間を作るのが難しくなってきます。

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そのため、妊娠しているときにこそ、歯の健康を意識して、治療などを受けておくべきであるといえます。たとえ虫歯などの心配がなかったとしても、念のため、妊娠中に一度は歯科検診を受けるようにしましょう。

この記事の目次

1.妊娠中に歯科検診・治療が必要な理由

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妊娠中は歯のトラブルが起こりやすい

妊娠しているときは、次のような理由から虫歯や歯周病などになるリスクが高まります。

・つわりで歯をきちんと磨けない
・つわりによる胃酸逆流のほか、酸っぱいものを好んで食べるので口内が酸性になりやすい(お口の中が酸性に傾くと虫歯が繁殖しやすくなります)
・一度に食べられる量が少ないので、食べ物を口にする回数が増える。結果、歯の再石灰化(溶けだした歯を元の状態に戻す働き)が起こる時間が短くなる
・ホルモンバランスの変動によって唾液がねばつくようになり、歯周病菌が繁殖しやすくなる
・産婦人科の通院などで忙しくなり、歯医者さんに行く機会が減ってしまう

虫歯や歯周病菌で早産のリスクが高まる

妊娠中に、虫歯菌や歯周病菌がお口から体内に入り込んでしまうと、妊娠37週未満で出産してしまう早産や、新生児の体重が2,500gに満たない低体重児出産を引き起こす可能性があるといわれています。
飲酒や喫煙でも同様のリスクがあるとされていますが、それよりも歯周病のほうが危険性は高いことがアメリカの研究によってわかったのです。

赤ちゃんに虫歯をうつしてしまう

赤ちゃんのお口の中には、もともと虫歯菌は存在しません。生後1歳7か月ころから2歳7か月ころの間に、大人の唾液を介して感染してしまうのです。
つまり、子供を虫歯から守るためには虫歯菌をうつさないことが重要となります。
食器の共有や、食べ物をフーフーして冷ますことで、赤ちゃんのお口の中に虫歯菌が入り込んでしまいます。ついついやってしまいがちですが、そういった行為は極力控えるようにしましょう。
また、念のため、赤ちゃんが生まれてくる前に、一緒に生活する大人たちの虫歯も治療しておくことが大切です。

出産したら歯医者さんに行きにくくなる

赤ちゃんが生まれてお世話が始まると、一気に忙しくなります。赤ちゃん中心の生活となり、想像以上の時間のなさに、自分のことなどかまっていられなくなるでしょう。赤ちゃんを預けられる人がいないと、歯医者さんに通うことすら難しくなるのが現実です。

2.妊婦が受けられる歯科検診と治療

検診や治療を受けるタイミング

妊娠1か月から4か月の初期のうちは切迫流産の危険があるので、緊急を要する治療が必要な場合以外は歯医者さんに行くのは控えましょう。妊娠5か月ころを過ぎて安定期に入ったら、通常の治療を受けることができます。ただし、治療する側にも配慮が必要となるので、必ず妊娠していることを伝えてください。妊娠8か月を過ぎて後期に入ると、陣痛がいつきてもおかしくない状態になりますから、緊急以外での治療は控えなければなりません。

つまり、つわりの時期が過ぎて、安定期に入ってから歯科検診を受けるのが望ましいです。そうすれば、必要に応じて治療を受けることも可能です。また、お腹が大きくなればなるほど治療の姿勢を保つのがつらくなるので、妊娠後期に入る前に、早めにすませておくのがおすすめです。

妊婦歯科検診の主な内容

妊婦歯科検診の内容は、歯医者さんによって細かな内容は異なりますが、虫歯の有無や歯肉の様子をチェックするのが一般的です。唾液から虫歯菌の量を調べることもあります。正しい歯磨きのやり方などのアドバイスも受けられます。妊娠中や産後の歯の問題など、気になることは遠慮せずに相談しておきましょう。

妊婦歯科検診を受けられるところ

もよりの歯医者さん以外でも、市区町村で妊婦歯科検診を実施していることも多いので、お住いの自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。無料で受けられるところもあります。せっかくなので、うまく活用していきましょう。

3.妊娠中の歯の治療で気になること

レントゲン

歯医者さんで使用しているレントゲンは放射線量が微量です。口全体を写す場合でも1回につき約0.04ミリシーベルトほどです。1年間で人間が自然に浴びている放射線量は2.4ミリシーベルトほどで、胎児に影響を及ぼす放射線量は50~100ミリシーベルトといわれていますから、ほとんど心配しなくてもよい数値です。また、レントゲン撮影する際には防護エプロンも着用します。防護エプロンを着れば、被ばく量はほぼゼロになります。

麻酔

抜歯するときなどに歯茎にうつ麻酔はごく少量です。赤ちゃんや母体への影響を心配するほどのものではありませんから、痛みに耐えて治療を受けるよりも麻酔を打ってもらうほうがよいでしょう。

鎮痛剤・抗生物質

100%問題のない薬剤というのは存在しませんが、妊婦には比較的、身体に影響の少ない鎮痛剤・抗生物質を処方するようになっています。ですから、必ず治療前に、妊娠中であることを告げるようにしてください。
また、必要に応じて、かかりつけの産婦人科医に相談することも大切です。

治療の姿勢

お腹が大きくなると、歯医者さんの治療用のいすに、仰向けの状態で長時間横たわるのはつらくなってくるはずです。無理にがまんしないで、つらいときには早めにスタッフに伝えましょう。対応には慣れているので、すぐに対処してもらえるはずです。

4.妊娠中に起こりやすい歯のトラブル

歯肉炎

妊娠によるホルモンバランスの変化により、歯肉炎が起こりやすくなります。歯肉炎の原因菌は歯垢の中にひそんでいますから、毎日の歯みがきで歯垢をしっかりと取り除くことで治すことができ、予防作用も見込めます。逆に放置しておくと、歯周病へと進行してしまうので注意してください。

虫歯

妊娠すると唾液が酸性になるので、虫歯菌が作りだす酸を中和しにくくなってしまいます。
さらに、つわりの時期には食べ物をちょっとずつしか口にできなくなり、1日に何回もちょこちょこと食べ物をつまみがちです。こうするとお口の中が酸性になっている時間が長くなるので、虫歯ができやすくなります。
また、吐き気があると歯みがきを丁寧にできなくなるので、つわりの時期には虫歯に注意しましょう。吐き気がおさまっているときなどを選んで、できる限り歯みがきをすることが大切です。正しいブラッシング法でお口の中を清潔に保ちましょう。

歯のぐらつき

出産しやすいように骨盤がゆるんでくるのにともない、歯と顎の骨をつないでいる靭帯(じんたい)もゆるみ、歯が少し動くことがあります。妊娠8か月ころまでに歯のぐらつきが見られますが、それ以降は自然とおさまっていくので心配しなくても大丈夫です。

歯の神経の痛み

妊娠中は、歯の神経がある歯髄(しずい)の中が充血することがあります。すると、神経が圧迫されて痛みを感じます。妊娠5か月ころまでに起こりますが、そのあとは痛みは自然と消えていくはずです。ただし、素人にはなにが原因の痛みか判断できないでしょうから、痛みを感じたら歯医者さんの診察を受けたほうが確実でしょう。

5.妊娠中に心がけたい歯のケア

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つわりで歯を磨けないとき

つわりで歯を磨けないときには、食後に水でうがいをするだけでもだいぶ違います。抗菌剤の入っているうがい薬や、抗菌作用のあるカテキンが含まれている緑茶でうがいをするのもよいでしょう。
吐き気をもよおさないように、子供用の小さな歯ブラシを使うのもひとつの手です。気分が悪いときには無理に磨く必要はありません。調子のよいときでかまわないので、すみずみまで丁寧に磨くようにしましょう。

フッ素とキシリトールを活用

歯医者さんでフッ素を塗ってもらうと、歯の質が強くなるので虫歯予防の作用が見込めます。また、キシリトールには細菌の増殖を抑える働きがあります。このふたつをうまく活用して、虫歯や歯周病対策をしていきましょう。

歯医者さんでは必ず妊娠を伝える

歯医者さんに行ったら、妊娠の時期に関係なく、妊婦であることを必ず事前に伝えてください。妊娠中であることを考慮した検査や治療を行う必要があります。歯医者さんには数多くの妊婦さんが訪れているので、なにも遠慮する必要はありません。

6.まとめ

妊娠中に歯科検診や治療を受けておくと、産後に歯のトラブルに悩まされる可能性が低くなります。自分の歯の健康を守るためだけでなく、生まれてくる赤ちゃんのためにも、お口の中の環境は整えておかなければなりません。特に問題がなかったとしても、妊娠初期と後期を避けた安定期のころを目安に、一度は診療を受けておくようにしましょう。
検査や治療にあたって少しでも不安な点があったら、歯医者さんや産婦人科医に相談することも忘れないでくださいね。

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監修医 飯田尚良先生

飯田歯科医院

院長

【経歴】
1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る
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